ロシア生活2004-2012

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koshka0467

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2005/02/04
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カテゴリ: 観劇記
ペテルブルク滞在も残り一日となった金曜夜、

ここはモスクワのボリショイ劇場と肩を並べる
ロシアの代表的劇場ですが、
最近はボリショイより水準が高いといわれているそうです。
この劇場を率いるカリスマ的指揮者ゲルギエフの名前を
聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
ソ連時代はキーロフ劇場という名前だったそうで、
そういえば10年近く前、キーロフバレエが日本に来て


この夜の演目は、プロコフィエフのオペラ『セミョン・コトコ』。
ロシア革命期のウクライナを舞台に、
兵士セミョン・コトコのつらい運命が描かれます。
ウクライナというところは交通の要衝だけに
いろいろな勢力が侵入してきてしまう土地柄で、
革命時は、ドイツ軍には蹂躙されるわ白軍は来るわ
ハイダマキ(現地人の民族主義的騎兵隊)は暗躍するわで大混乱、
セミョン・コトコが恋人と引き裂かれそうになったりするけれども、
最後には赤軍(後のソ連軍ですな)が全てを救済する、
というお話。実話を元に1930年代に製作された作品だそうです。

プログラムであらすじを確認した私の頭には

忘れもしない、ボリショイで観たショスタコービッチの
『ムツェンスク郡のマクベス夫人』の陰惨さ。
またプロレタリア文学オペラを観ることになるのか…

ところが開幕してびっくり。
舞台装置は全く抽象的で、まるで月面世界の廃鉱のよう。

けれども人々の衣装や身のこなしは、
まるでウクライナ民話を見るようで、
これが抽象的な背景と合わさると、絵のように美しいのです。
特にオーヴァーチュア(一幕目最初の曲)と
アントラクト(二幕目最初の曲)のときに、
音楽に合わせて静かに繰り広げられる踊りは息を呑むばかり。
またそういうときのプロコフィエフの曲が
なんとも切なくて、大変印象に残りました。
(不思議と野田秀樹の芝居とよく似ていました。)

この演出がオリジナル通りなのか、
最近のアレンジなのか、
調べていないのでわかりませんが、
少なくとも最終幕、赤軍による救済のシーンは
現代のアレンジなのではないかと思います。
というのも、舞台を埋め尽くすほどの登場人物全てが、
ヒロインも含めて、皆、中国の人民服に着替えて、
毛沢東語録と思われる赤い手帳を持つのです。
救済は全体主義へと向かった、
とのアイロニーなのでしょうか。

ともあれリアリズムよりも記号的表現に彩られており、
想像や解釈の余地がある演出の方が好きな私には
とてもおもしろい、そして生き生きした作品でした。
ペテルブルクに行くことがあったら
マリインスキーは必見ですよ。





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Last updated  2005/02/09 12:43:05 AM
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