人生の楽しみは後半にあり!

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2026年08月07日
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カテゴリ: Oの人生論
願望は叶うのか?

叶う願望もあれば、
叶わない願望もある。
頼りない答えだが、
自分自身の70年を振り返ってみると、
願望は叶った方だと思う。

ぼくの場合、
文章を書く仕事がしたいという願望があった。

最初に勤めた会社を2年で辞めた。

したいことがあるわけでもないし、
できることも限られている。

「教師でもなるか」
会社を辞めて教師になる。
よくあるパターンだった。
当時の教員採用試験はなかなか合格できなかったけれども、
会社務めが嫌になると、
教員になろうかと考える人は多かった。

ところがぼくは、
教職の免許をもっていない(工業高校だけはあったが)。
「通信教育で教職免許をとろう」

送られてくる教材を読んで、
レポートをがんばって書いた。

夏休み。
ちょうど今ごろ、
スクーリングと言って、

1ヶ月ほど大学に通った。

仲良くなった男が明治大学出身で東京には詳しかった。
「飲みに行こうか」
誘われるままに新宿に出かけていった。
歌舞伎町の入り口あたりだったか。

当時、ぼくは東京にあこがれていた。
華やかな世界で生きたかった。
面接のときに、
「東京で営業がしたい」と強く主張したのだけれども、
配属されたのは、
まわりは山と川と海という、
今なら大歓迎なのだが、
自然に囲まれた大きな工場だった。
退屈な毎日だった。

だから、
たとえ1ヶ月でも東京で暮らせたというのは、
これも願望がなかったひとつかもしれない。

知り合いは、
地下に広いフロアのあるパブに連れて行ってくれた。
たまたま開店して何年目かのキャンペーンをやっていた。

いろいろなサービスがあって、
その一つがタロット占いだった。

ぼくは占いにはあまり興味はなかったし、
タロット占いがどういうものかも知らなかった。

入店したときに整理券を渡された。
順番がくると小さなブースに案内される。

薄暗い中に若い男性が黒いマントをはおって座っていた。
小さなテーブルがあって、
ぼくは占い師に向かい合うように座った。

少し雑談をしたあと、
「何か占ってほしいことありますか?」みたいなことを言われた。
「将来、ぼくは何をやったらいいんでしょうね」
そのころ、教職免許はとるつもりだったが、
教師になることにあまり魅力を感じてなかった。
地味だから。
もっと派手な世界でバリバリ働きたいというのが27歳の野望だった。

カードを選ばされた。

1枚だったか何枚だったか、選んだカードに意味があるようだ。
彼はカードを見ながら言った。
ぼくの人生がカチャカチャと音を立てて、
ある方向に動き出した瞬間だった。

「あなたには文才があります」
えっ!
思ってもみなかった展開ではないか。
文才があるなんて言われたことなどない。

「それも」
「それも・・・」

自分で言うのも恥ずかしいような言葉が、
彼の口から発せられたのだ。

「ただの文才ではありません。
夏目漱石に匹敵するだけの才能があります」

どういうつもりでそんなことを言ったのだろうか。
本当にそんなことがカードから読み解けたのだろうか。

舞い上がった舞い上がった。
普段、「占いなんて」とバカにしていたのに、
いいことを言われると、
占いさまさまになってしまう。

ああ、愚かなり。
だけど、
その愚かさが、
文章を書く道へと導いてくれるのだから、
願望を叶えるには、
賢いばかりがいいわけではない。

それにしても、
「文才があります」だけではあそこまで飛び上がりたくなるような気持にはなれなかった。
「夏目漱石のような」が効いた。

あの占い師はその後どうなっただろうか。
人の心を動かせるツボを心得ていた。
詐欺師になっても成功したかもしれない。

ただ、占い師の言葉をそのまま信じてがんばるほど、
ぼくはお人好しではない。
「夏目漱石のような才能」と言われてその気になれるほど能天気でもなかった。

しかし、
意識の中に文才、夏目漱石がはまり込んだのは間違いない。
名古屋に帰ってしばらくしてから、
新聞の片隅にあった「シナリオ教室」の宣伝が目に止まり、
通い始めた。

なかなか文才は芽生えなかったけれども、
同郷の先輩との再会があって、
その人が大手出版社の編集者で、
ぼくが「シナリオ教室に通っている」と漏らしたことから、
東京でフリーライターになる道が拓けたのだ。

フリーライター生活は、
最初は何度書き直しを命じられるなど四苦八苦の日々だったけれども、
いじけてくじけて逃げ出すようなことはしなかった。
与えられた仕事を決められた日までに仕上げれば良くて、
やった分だけ給料になるというスタイルはぼくの好みだったのだと思う。

継続は力なり。
よくわかる。よく続けたものだ。
結果的に30冊ほど出版することができたのだから、
ライターとしては大成功だっただろう。

うち2冊は10万部くらい売れた。
講演にもよく呼ばれた。

「先生、先生」なんて言われて、
著書にサインなんかして、
かっこいい人生じゃないか。

占い師のひと言から、
自分の願望を超えた世界がどんどん広がっていったのだ。

残念ながら夏目漱石ほどの文才はいまだに発揮できてないけれども、
まだあきらめる必要はない。

地味でいいので、
書き残したいことがある。

それが今の願望。

夏目漱石のような文才を、
最後の最後に爆発させないと。












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Last updated  2026年08月07日 17時24分58秒
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