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2004年10月09日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: 紫苑の日常


 どう考えても、わたしがオトナ気なかった。
 久しぶりの次女とのショッピングだったのに。
 かけもちのバイトと大学の授業の合い間に、次女がやっと作った貴重な時間だった。
 でも、それは一時間ももたないで決裂してしまった。

 秋冬のジャケットが一着欲しいと言い出したのは、ついニ、三日前ことだった。
 携帯電話料金を前月の半分以下に抑えたら、わたしが褒美に買ってあげる約束をしていたからだ。

 わたしは頭の中で、ショッピングデートの行程を考えていた。
 ワイン好きな彼女のために、まずデパートのイートインでチーズにワインを軽く一杯飲んで、それからお気に入りのブティックを数軒はしごして、それから美味しい夕食にでもありつこうか、と。


 ワインを軽く一杯の計画は流れて、いきなりブティック巡りとなった。
 わたしのアドバイスなどあまり当てにしていないのに、これはどう?とか言いながら、後をついていく。
 でも、心のどこかに計画が崩れたことに不満があったのだろうか。
 次女が欲しがった安価な手提げを、わたしは却下した。
 日頃のストレスが、高がそれくらいの消費で解消されるなら、本当は安いものだった。

 突然、次女は踵を返して駅へ歩き始めた。
 その横顔から、怒ったことが伺えた。
 すぐ、すねるんだから……。
 楽しみにしていたわたしは、それを反故にされたことが、許せなくなっていた。
 仕方なく後を追いながら、急に腹立たしさが込み上げてくる。

 電車の中でも、窓外の明かりを恨めしく眺めながら、二人でそっぽをむいていた。


「ねぇ、お鮨食べて帰ろうか?」
 一駅手前で下車すると、回転寿司ながらネタが新鮮で美味しい二人のお気に入りがあるのだ。
「いいね」
 次女の顔に、やっと笑みが戻った。


 たまには、わたしにねだって甘えたかったのだろう。
 だから、わたしがOKする範疇のものを選んで、ねだったのだ。
 それに気づいてやれなくて、わたしは変にジャケット一着とこだわっていた。
 わたしも、尋常じゃない精神状態にあったということだろう。

「さっきはごめんね」
 次女が先に謝った。
「母さんの方こそ。いつもおねだりしないんだから、あれくらい買ってあげれば良かったんだよね。どうかしてたね」

 我が家は、やっぱり家計が苦しい。
 食べて行かれない、というほどのことはないけれど。
 誰かが病に倒れたら、それはすぐ生活に忍び寄る。
 そういった危うさを抱えていた。
 互いに分かり合い、分かりすぎていた。
 たがら、たまにこういう諍いになる。
 気持ちが澱んで、出口を求めているのだ。
 長女がもう十日も寝込んでいることも、その正体が病院でもはっきり分からないという不安も、原因だったろう。

 それでも気持ちを切り替えて、急場を凌いでいかなければ行けなかった。
 誰もが分かっているので、時にはその鬱積したものを、解放したくなるのだ。
 それが、高だか三千九百円の手提げバッグ。
 次女自身もそれほど、欲しくてたまらないものではなかったはずだ。

 その手提げバッグより高い料金を支払って、わたし達は回転寿司屋を後にした。









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最終更新日  2004年10月09日 10時23分25秒 コメント(9) | コメントを書く
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