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2006年07月20日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: Essay


 海の近くだから、少し潮の香りがした。
 そういえばこの間は、無数のクラゲが水玉模様のように浮かんでいた。
 しばし足を止めて、まん丸に膨らんだり閉じたりする様を飽かず眺めていたっけ。

 唐突に、懐かしい匂いが鼻腔をくすぐった。
 どこかざらっぽくて、母の記憶に繋がる匂いだ。
 なんだっけ、この匂い。
 辺りをきょろきょろと見回すと、民家の庭に無花果の木が枝葉を広げていた。
 ああ。だから母を思い出したのか。


 実家には、三本の無花果の木があった。
 新築したときに、父の友人から「甘い無花果だから実がなると楽しいよ」と贈られたもの。
 その実は、本当に甘くて美味しかった。
 どこで食べた無花果より美味しかった。
 大きく実が熟れた頃、蟻やスズメバチやヒヨドリがやって来て、良い所を持っていってしまう。
 だから、母はその前にもいでおいてくれた。
 「ケイちゃん。無花果あるよ」
 そういって、一番美味しいところを食べさせてくれたものだ。
 三本の無花果が一斉に実をつけ始めると、とても家族では食べ切れなかった。
 近所に配ったり、残ったところを母はひがなジャム作りに勤しんでいた。

 実家の無花果の木は、いつしか枯れ絶えてしまったらしい。

 そう思った途端に、無性に食べたくなった。
 そうだ。
 今日は無花果を買って帰ろう。






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最終更新日  2006年07月21日 00時08分07秒 コメント(3) | コメントを書く
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