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2011年12月29日
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承前)

(3)原子力発電所事故の原因と対策、および稼働状況

1)事故調査・検証委員会の中間報告書

 政府が5月24日に事故調査・検証委員会の組成を決定し、6月7日に第1回委員会が開催され、以降、東電社員や政府関係者456人から約900時間かけ聞き取り、12月26日に中間報告書が第6回委員会で公表された。委員会委員長は東大名誉教授の「失敗学」で著名な畑村洋太郎氏、委員には放射線の専門家や検事、裁判官、弁護士の他、作家の柳田邦男氏がいる。
 中間報告書で指摘した4つの問題点は以下のとおりである。

a)事前の過酷事故対策
・設計基準を超えるシビアアクシデント(過酷事故)において津波のリスクが十分認識されていなかった。
・全電源喪失や緊急時対応が不十分だった。
・地震や津波など複合災害を想定していなかった。


・1号機の非常用復水器が機能不全に陥っているのを運転員が気づかなかった。
・3号機で消防車などを使う代替注水への必要性や緊急性の認識が欠如していた。

c)政府の事故対応
・国民への放射能の影響の説明や海外への情報提供がわかりにくかったり、遅れたりした。
・新しい原子力安全規制帰還は独立性と専門知識、最新地検の情報収集が求められる。

d)被害拡大防止
・原子力発電所から5キロ先の事故対応拠点「オフサイトセンター」が機能しなかった。
・緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)を住民避難に役立てられなかった。

2)各論での対策の検討および実施

 これら問題点を受けて、今後、対策を議論していくことになると思われるが、津波対策については、12月26日の原子力安全委員会の小委員会で、起こりうる最大規模の「基準津波」を設定し、この津波で施設が浸水しないよう求める改定案をまとめている。
 また、11月1日には、国の防災指針の見直しを検討してきた原子力安全委員会の作業部会が1日、原発事故に備えて重点的に対策を取る範囲を拡大し、原発から約30キロの範囲とすることとした。現在、国の防災指針では、原発から半径8キロから10キロ圏内を原子力災害の際に重点的に対策を取る範囲として指定している。1日の作業部会では、この範囲を原発から約30キロまで拡大する方針で合意。この区域では、重大事故に備えて住民の避難場所の確保やモニタリング体制などをあらかじめ整備しておくこととされている。 原発から半径5キロ圏内は、重大事故の際に放射性物質が放出される前に直ちに住民に避難を求める区域として新たに設定。さらに、放射性物質の拡散による被ばくを防ぐため、原発から半径50キロ圏内は屋内退避や安定ヨウ素剤の服用などの対策を取るべきとの考えを示している。


 対象地域は従来、「防災対策重点地域(EPZ)」と呼ばれたが、国際原子力機関(IAEA)が提唱する「UPZ(緊急防護措置計画範囲)」に変更する。
防災指針で「屋内退避や避難の必要はない」とされ、避難計画が未整備だったEPZ外では、国や東電との連絡がつかないまま自治体が独自の判断で避難指示を出したり、避難先が確保できなくなったりする事態が生じた。
 重大事故が発生した場合に住民が直ちに避難する準備を整える範囲「PAZ」を原発から半径5キロとした。さらに、甲状腺がんを防ぐため、50キロ圏内を屋内退避や安定ヨウ素剤服用の準備をする範囲「PPZ」と定めた。

3)原子力発電所の稼働状況

 また、現在、国内の原子力発電が、90%近く止まっている。全57基の内、稼働中は7基のみ。玄海原発4号機の停止によって、国内の原発は90%近くが止まるという異例の状態で本格的な冬を迎えた。

一方、運転の再開に向けては、再開の判断の前提となる安全評価「ストレステスト」が、定期検査で止まっている各地の原発で実施され、これまでに北海道電力、関西電力、四国電力、それに九州電力の8基のテストの結果が、国の原子力安全・保安院に提出済。しかし、原子力安全・保安院の審査が終わったケースは1つもない。また、運転再開のためには、地元の自治体の了解が必要であるが、自治体の多くは、再開に慎重な姿勢を崩していない。運転を続ける国内の6基も、来年1月以降、春までに順次、定期検査で停止する見通しで、運転を再開する原発がなければ国内のすべての原発が止まることになる。

 原子力発電所を止めることにより、火力の燃料費が嵩む状況となっている。東電だけではなく、他の電力会社においても、電気料金の値上げの動きが強まると予想される。

(4)東京電力のゆくえ

 事故により、東京電力の企業経営は危機的な状況を迎えている。短期的な破綻を避けるのと、長期的な課題となる廃炉を実現するために、国有化は避けられない状況となっている。事故を起こした福島第一原子力発電所の廃炉費用がかさみ、このままでは東電の借金が資産を上回る債務超過に陥る。

 東電は事故の賠償支払いのために、賠償支払いを支援する原子力損害賠償支援機構から約8,900億円、政府から事故の1,200億円の補償金を受け取ることが決まっているが、これらは、燃料費や廃炉の費用には使えない。廃炉費用や、原子力発電のかわりに増えている火力発電の燃料費を賄うために、政府は支援策をまとめた。その骨子は、以下のとおり。

1)政府が、原子力損害賠償支援機構を通じて、東電に1兆円規模を出資。東電の財務を改善すると共に、3分の2以上の株式を持って経営権を握る。

2)東電の主な取引銀行が1兆円規模を追加融資

3)2012年10月に電気料金を最大10%値上げ

4)2013年度以降に原子力発電所再稼働を目指す。

 これら支援の前提として、東電は政府へ事業計画を提出しており、年度内に5,900億円近いリストラを実行する約束となっている。リストラ策には、資産売却、経費削減、OBを含む企業年金の利率引き下げなどを盛り込んだ。また、対応改善や合理化の「アクションプラン」を年末までに策定するとして、そのひとつとして、火力発電所新規建設を見送り、および既設設備の売却を視野にいれている。アクションプランの緊急特別事業計画で「10年間で2兆6455億円超」コスト削減額を盛り込む。

 東電は、2012年3月期連結決算で純損益が6千億円の赤字になる見通し、一方、万が一の時に使える資本金などの「純資産」は2012年3月末で7千億円の見通し。このまま支援がなければ、廃炉費用などにより、2013年3月期にも債務超過になる恐れがあるため、政府は新たな資金支援が必要と判断した。

 また、東電は12月22日に、企業向け電気料金を2012年4月から値上げし、家庭向け料金も、2012年の早い時期に国へ値上げを申請する方針を発表。家庭用については国の認可がいる。標準的な値上げ幅を約2割弱で検討。火力発電の燃料費が経営を圧迫しており、燃料費増加分の約8千億円を値上げで吸収する意図がある。政府内では「安易な値上げは認めない」としている。しかしながら、政府の支援骨子においては、電気料金を最大10%値上げとしている。あきらかに二枚舌である。ちなみに、確実な賠償額を、10月29日段階で、1兆109億800万円と計算。

 さらに、政府の第三者委員会の試算では、福島第一原子力発電所1~4号機の廃炉費用は、1兆1510億円。これには5,6号機は含まれない。原子炉内の状況によっては、さらに額が膨らむ。15兆円とする民間シンクタンクの試算もある。炉の中が分かっていない以上、確実性の高い見積は難。

 現段階において、東電国有化の調整が始まっているものの、東電は、政府に経営権を握られることに直結する出資に難色を示している。政府は、経営権を握ることによって、発送電分離を含む東電改革を通し、電力体制の改革に切り込む目論見がある。嫌がる東電であるが、支援なしでは債務超過に陥る。着地点がどこになるのか、今後、注目すべきところである。

 政府も支援骨子で認めているが、東電を企業として存続させるためには、やはり、原子力発電を稼働させなければならないという立場に立っていることがわかる。火力の燃料費が嵩むのである。他の言い方をすれば、原子力を止めるのであれば、電気料金の値上げが必須となる。 それを認めれば、脱原発は成立する。しかし、企業も国民も受け入れるわけもない。そこで、ひとつの方策として考えられるのが、地域独占による高コスト構造を改善することである。電気料金は下がるのではないかという発想へ至る。そのためには、発送電分離をして、低圧も自由化させようということになる。ただ、低圧の自由化については、2000年ぐらいに議論されていたが、その当時、アメリカでカリフォルニア大停電が発生したことにより、議論は収束へ至ったという経緯もある。
 また、東電を潰すという大胆な意見もある。しかし、東電を潰すとなると、東電株を大量に保有している銀行が黙ってはいないであろう。各行とも大打撃を受け、日本経済にも悪影響を及ぼしかねない。東電の扱いについては、影響が大きいだけあって慎重な対応が求められるが、同時に、今後の体制にも関わることになるので大胆さも求められている。

(5)まとめ

 今後の福島第一原子力発電所の後処理については、非常に長期間かかることが明らかになった。原子力発電所の廃炉については、2050年までには完了させるとして、そのための費用は1兆~15兆。汚染土壌の最終処分は2045年までに完了させるとして、中間処理上の建設費だけでも数兆円。また、除染については、2012年から始めるとして、費用は不明。損害賠償費用、現在確定しているだけでも、約1兆円。なにも生産性のないものにこれだけの莫大の費用と時間をかけなければならない状況となっている。

 高齢世代の過信によって、過酷で危険なものを若者世代が相続させられたのである。もっと、優しい言い方をすれば、現在世代の過信によって、過酷で危険なものを未来世代が相続させられたのである。まだ、生まれていない子供たちに、このような負担を押し付けてよいのであろうか。3・11以降、原子力発電所が事故を起こすものとなった今、また、別の場所で、数十年単位での近い将来、原子力発電所の事故が起こりえる。我々の子孫に、重荷を負わせてはならない。このことをしかと胸に刻んで、除染の対策と脱原子力依存を確かなものとして進めていく必要がある。

前回論考(8・29)

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最終更新日  2011年12月30日 08時34分45秒
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