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2009.11.16
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カテゴリ: 日本を旅する

前回このブログで、サギ(鷺)のことを記したところであるが、この秋の動物に纏わる思い出としては、奈良公園の鹿のことも忘れるわけにはなるまい。その思い出と共に、ひとときの心の癒しに浸ってみたい。

奈良公園の鹿は、春日大社の神の使い。実際、春日大社の参道でも、灯篭に描かれた鹿を見るのである(右写真)。そして、多くの鹿たちが、春日大社の参道、森の中、さらには興福寺、東大寺、と至るまで、そこを訪れる観光客と一体となって、共存しているのである。その光景は、まさに平和そのものである。

その奈良の鹿については、私が昨年来、読み続けている、宣教師ルイス・フロイスの著『日本史』の中にも述べられているのだが、今から400年以上も昔の戦乱の時代にあっても、鹿が大事にされていて、興味深い。それは、次のような文章で紹介されている。

「この寺(大仏殿)の全域、および半里離れた奈良の全市には、鹿と鳩が驚くほど多くいます。私は幾度か、それらが民家に入って行くのを見ましたが、誰もそれを妨げはしませんでした。なぜならばそれらの鳩や鹿は、往昔、この寺院(大仏殿)に奉献されたもので、それらを殺すことに対しては死罪が科せられているのです。」

さて、その奈良を今年訪れたのは、10年ぶりのこと。10年前、奈良公園の鹿についての思い出と言えば、当時、春日大社で見た、"鹿の角きり行事"。周りを囲まれた角きり場で、勢子と呼ばれる男たちが、鹿を追い込み、投げ縄が角を捉える、そして数人で鹿を押さえつけ、角を切りおとす。そんな光景を観客席から見ていた。その印象が強かっただけに、公園内や寺社で、鹿と戯れたりした記憶は全くない。

そして、10年ぶりに訪れた奈良公園。その日、自転車に乗って、春日大社の参道に入ると、至るところで目にするのが、鹿せんべいを売る露店である。一束10枚ほどで、150円で売られており、それが人気となっている。鹿と触れ合うには、一番手っ取り早く、それがまた楽しい。しかし、それは一方の鹿にとっても同じことで、一番手っ取り早く、安易にありつける餌なのである。

そのことを証明するのは、その露店の傍らに、鹿たちが集まっている、その光景である(下左)。その目的は一目瞭然、鹿せんべいを買う人を待っているのである。そして、いざ、鹿せんべいを買うとどうなるかというと、見てのとおり「鹿せんべい、くれよぉ~」と、寄ってたかってくる(下中)。自転車を押す手も、一挙に押し寄せる鹿の波に、おぼつかない。そして、一通り、鹿せんべいを食べさせても、「まだあるんだろう。あることを知ってるんだぞ。」と、後をついてくる(下右)。

奈良公園の鹿たち1

最初、1枚ずつあげていたのだが、それではあっと言う間に無くなってしまうので、途中から半分、あるいはさらに半分にと小刻みにして、鹿に与える。春日大社の参道、また奈良公園を東大寺へと自転車をこぎ、そして自転車を降りて歩くと、至る所に鹿がいるので(下写真)、つい鹿せんべいを差し出したくなるのである。

奈良公園の鹿たち4

しかし、一旦、気を許して、鹿せんべいをあげたものなら、なかなかその1回で満足しないのが、鹿たちである(下写真)。それをわざと無視していると、頭や鼻の甲を、しきりに足や尻にこすりつけてくるので、可愛い。中にはズボンに噛み付いてくる鹿もいる(もっとも噛み付くのは、ズボンの布だけなので、痛くない)。「あるんだろう。知ってるんだぞ。早く出せよ。」と、せんべいを隠したズボンのボケットのあたりを、しきりに探るのである。

奈良公園の鹿たち2

その日、鹿せんべいを買ったのは、3回。それは癖になるほどに楽しく、また癒される時間であった。そして、そんな思い出を強く残したまま、再び奈良を訪れることになったのが、ちょうど"鹿の角きり行事"が行われていた、10月11日のことだった。その日、10年ぶりにその行事を見る時間はなかったのであるが、奈良公園の鹿だけには会っておきたいと、春日大社の参道へと再び足を運んだのである。

早速、鹿せんべいを購入すると、鹿に近づいていくのだが、この日は様子が違っていた。鹿せんべいを売る露店には、それを買う観光客を待つ鹿たちはない。そればかりか、出会う鹿たちも、まるで怖がっているかのように、せんべいを差し出してもなかなか食べてくれない。さらには、その匂いをかいだだけで、ソッポを向く鹿もいる。それは、まるで、「また鹿せんべいか?」と言われているかのようでもある。

奈良公園の鹿たち3

全く予期しなかったことに、この日は、せんべいを食べてくれる鹿と出会うことに苦労したのである。漸く、せんべいを食べてくれる鹿も、恐る恐るという感じである。近づかずに、手を伸ばしたところで、漸く口にするとすぐに遠ざかったりと、前回の人懐っこさが嘘のような反応ぶりであった(上写真)。

一体どうしたというのだろうか。あまりの違いに、面食らった格好である。この日、"鹿のつのきり"のために、捕まえらえれ、追いかけられ、あるいは実際に角を切られたりして、怖い思いでもしたのだろうか。あるいは仲間の悲鳴に、臆病になってしまったのだろうか。そんな思いをして、この日、30分ほど歩くと、奈良公園を後にしたのであった。

帰路、タクシーに乗った私達は、運転手にそのことを話すのだが、そこで運転手が話すには、「きっと鹿せんべいでお腹いっぱいになって、もう入らないんじゃないのかな。」と。確かに、前回訪れたのが午前中だったのに対して、その日は午後も3時を回ったころ。きっと、そういうことだったのだろうか。。。

事実は鹿のみぞ知る。しかし、鹿と鹿せんべい。それは、大いに心癒される、奈良公園での秋の時間を演出してくれたのである。






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Last updated  2009.11.26 00:16:18 コメント(2) | コメントを書く


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