敵兵の増援により、東部戦線の膠着状態は終了した。
味方の増援が来るかどうかは、解らない。
そんな最戦前、俺の戦友たちは、1人、また1人、死んでいった。
もう敵兵が目視出来る距離にいる。
「来る、俺を殺しに多くの敵兵が」
督戦隊(とくせんたい)に、追立てられた敵兵は、
危険を顧みる事を許されないらしく、猛烈な突撃を敢行してくる。
機関銃掃射の爆音の中、隊長が叫んだ。
「来るぞ!白兵戦用意、銃剣を着けろ!」「銃剣って、マジかよ」
誰かが、泣きそうな声で呟いた。
バシン!
そんな音だったと思う。
敵兵の狙撃手が、うちの隊長を撃ち殺した。
「隊長ー!」軍曹が叫んだ。
士官学校を出たばかりの、若い将校だった。
指揮官を失った俺たちの小隊は、パニクった。「どうすんだよ!どうすんだよ!」
代わりに指揮を取るはずの軍曹もパニクっていた。
味方の戦闘車両が、火を吹いて爆発炎上した。
それを合図に俺たちは、
絶叫と共に向かってくる敵兵に向かって、乱射した。
その最中、何が起きたのか分からなかった。
銃撃と爆音に包まれていた、戦場が静まり返ったのだ。
見ると、騎馬に跨った黄金の甲冑の武者が、黄金の刀を抜き、現代戦の戦場を駆け抜けていた。
駆け抜けた後、敵兵たちは、戦意を喪失し、
ただぼんやりと立ち尽くしていた。
俺の横で、ダメ軍曹は言った。
「あれは・・・人の縁を斬る黄金の騎馬武者」「縁を斬る?」
「ああ、この辺りの都市伝説だ」
黄金の甲冑の騎馬武者は、黄金の刀を振り回しながら、俺たちの自軍の陣地を駆け抜けた。
そして今、俺はボーと立ち尽くしている。俺は周りの戦友を見渡した。
俺の記憶では、堅い絆で結ばれていたはずの戦友たちのはずだ。
それが今や、よそよそしい赤の他人に見えた。
人との縁、仲間との縁。家族との縁。
社会との縁、組織との縁。国との縁。
そう言った物に対して、繋がりを感じられない。
縁が、リセットされてしまったらしい・・・
静まり返った戦場で、俺、1人の孤立感。
これが、東部の1つの戦線で起きた小さな異変だ。
完
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