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2024年08月20日
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カテゴリ: 音楽祭


前回 ​に続いてバイロイトの備忘録。

 バイロイトの祝祭劇場についてはいろんな話も聞いていましたし、いろいろ書かれてる方もおられるようなのですが、どうもピンと来なかったのですよね。「オケピットに蓋が被さっていて、客席から見えない」だの「でも音は聞こえる」「くぐもっている」「不思議だ」などなどなどなど.....
 今回行ったのは「たまたま買えたチケット」でした。なので、事実上選んでません。その時買えるチケットで一番安い所を買ったまで。結果、どちらも200ユーロ台、と結構高いチケット。それでもバイロイトでは多分中くらいだろうと思うのですが。で、それはどんなところかというと、パルジファルは、Logeの3列目、一番中央に近い端。トリスタンは平土間の一番後ろの方の列、右側。で、どんな塩梅だったか。

 まず、祝祭劇場に入ってみて、特に平土間側に入った二日目に思ったのは、「あ、結構狭いんだ」ということ。この劇場の構造は、平土間が一番前からずっと上がってきて、平土間後ろ(Parkettという表記でしたが)のチョイ上にLogeがあり、よく知りませんがその上にバルコンなのかガレリーなのか、2階・3階席に相当するエリアがある、という構造。で、その平土間の一番後ろあたりはどのくらいの感覚かというと、舞台との距離感(高さも含めて)だと、新国立劇場の2階席1番前くらいじゃないかと思います。それより少し近いかも。つまり、高さ方向も奥行きも、新国立劇場より全然小さいのだと思います。
 これは凄く大事なことで、つまり、バイロイトって、今の大劇場、例えば新国立劇場だけでなく、東京文化会館、或いはウィーンの国立歌劇場やバイエルン、コヴェント・ガーデンやメトなんかより小さい空間なんですね。だから、「バイロイトで歌った」=大音声で爆発的に歌える、ということではないんですね。聞く方は無意識にそういうイメージを持ってしまうのかも知れないし、ヘルデン・テノールみたいな言い方をする通りヒロイックに響く人をイメージするのかも知れないけれど、多分実際にはそこまで大音声で歌うことが身上ではないのではないかと。言い換えると、声のでかいやつを据えればそれでいいというものでもないのだろうと。これはちょっと考えないといけないことなのかも知れません。まぁ、なんとなくそんな認識はあったにせよ、改めてこうやって聞くと、なるほどと思うことは多々ありました。

 で、この劇場の構造ですが、これも「他に類を見ない」的なことを書かれる方は居られるのですが、多分本当に独特なのは、ピットに蓋がされていて客席から見えない、というくらいかと。平土間がずっと迫り上がっていく、というのは、言えば現代のホールでは普通の構造ですし、ここまで迫り上がるのは珍しいけれど類例はあって、馴染みのあるところでは神奈川県立音楽堂。あそこはそもそも平土間しかないけれど、平土間がずっと一番後ろまで迫り上がってる形式で、あそこの一番後ろはビルでいうと概ね3階よりやや低いくらい。バイロイトも高低差は多分同じくらいかもう少し低いくらいなので、そこまで珍しくはないです。無論バイロイトの方がオリジナルですし、劇場としてのサイズはもっと大きいですけどね。
 で、ピットに蓋がされている、の方。どういう構造か遠目にしか見えてないのでやっぱりよく分かりませんが、結論から言うと、普通の劇場とそれほど変わらないイメージです。ただ、日本も含めて大抵の劇場と違う響き方かな、と思うのは、音が直接突き刺さってくる感じがない、ということ。これ、オケの良し悪しもあるのでしょうが、刺々しくはないのですね。といって格別くぐもった音でもなさそう。多分ピット奥の金管とかはワンクッション入るのでしょう。で、確かに、この響き方だと、歌手の声はオケを超えて届かないと、というのがあまりないので、届きやすいでしょうね。ワーグナーというのはもっとインティメイトな音楽を志向していた、という説を聞いたことはありますが、なるほどと思わなくもないです。
 で、実際それでどんな感じに聞こえるの?というと、難しいですが、まぁ、「聞きやすい」といっていいのかなと。なんだそれ、って感じですが、尖って聞こえず、声は前述の通り聞きやすいし、全体に無理無理大音声でがなるという感じではないんですよね。これは勿論この日の演奏がそうだったから、ということなのかも知れませんが、それで十分聞こえる、ということでもあるのだと思います。因みにパルジファルはパブロ・エラス=カサド、トリスタンはセミョン・ビシュコフの指揮。多分この辺は誰がどうこうではないんだと思うんですけどね。ついでに言うと外題役のテノールはどちらもアンドレアス・シャーガー。どちらも、です。つまり、連夜の登板。そんなこと出来るの?と思ってしまうんだけれど、歌ってましたね。どちらもちゃんとしてました。これも、バイロイトだから出来るんじゃないかなとちょっと思います。メトじゃ無理だろう....みたいな。

 で、座席の話。「バイロイトは拷問」みたいな話も聞くのですが、こと座席に関する限り、そんなことはないんじゃないかなという。

 で、そんな席なので、右隣は誰もいなくて空いてるんですね。かつ、椅子は結構広いので、幅方向は余裕。前方向も別に苦しくないし、後ろはいないし、という事で、非常に快適な観劇環境でした。暑いですけどね。でも、これだけ余裕があると、あまり蒸さないし、ハンカチで扇ぐくらいは楽勝なので、快適とは言わないまでも覚悟していたよりは楽だったかなと。
 2日目は平土間の一番後ろの方、右側。今回は件の硬い椅子の筈なのですが.....
 これも、言うほど辛くないんですよね、実は。率直に言うと、東京文化会館とかNHKホールの椅子よりだいぶ良いと思います。

 日本人って、あまりキチンと椅子の座り方を教わってないんじゃないかという気がするのですよね。よくコンサートとかでも浅く座ってる人っているじゃないですか。で、ああいう座り方って、確かに疲れたりお尻が痛くなったりするんですよね。でも、そもそも日本の椅子って、そういう意味で、座面が小さいんですよ。
 椅子っていうのは、本来は深く腰掛けなきゃいけない。深く腰掛けることで、お尻でなくて太腿全体で体重を支える。こういう座り方すると痛くなりにくい。ベストは、膝裏まで座面が来て、背中が背もたれにフィットすると、一番楽なんだと思います。ここまでいくと体格の問題、それが自分に合うか、というのはあるんですが、それにしても日本のホールの椅子は小さい。
 で、バイロイトですが、まず、平土間の椅子は、多分全部そうなのだろうと思いますが、跳ね上げ式です。その座面は確かに硬い。ちょっとモケットが貼ってあるけれど、クッション性はほぼ感じないです。でも、座面が大きいんですね。奥行きがある。幅もあるし。だから、私の場合、ちゃんと深く腰掛ければほぼ膝裏までサポートしてくれる。だから痛くなりにくい。ちゃんと分散してくれるんです。これが前述のような日本のホールだと、そうはいかない。新国とかサントリーとかでもダメですね。日本でこのくらいの座面があるのは、国際フォーラムのホールAくらいじゃないかなと。ホールCも結構座面はゆったりですけど。あと、座面が前側に傾いていないのもいいですね。当然ずり落ちることもない。
 一方、背もたれはただの板なので、痛いといえば痛いですが、これもそれほどではない。1幕で1時間半くらいですしね。むしろ体重をちゃんと支えてくれる方が有難いし、向こうの体格のいい、特に手足の長い人はともかく、170cmで90kgくらいの短足体型の私に言わせれば、これで痛い痛い言うのは座り方が悪いんじゃないかなと思うんですが。
 もう一つ。この座席には肘掛けがないんです。これ、多分、人を出来るだけ効率的に入れるためだとは思うんですが、確かに肘掛けっていらないんですよ。あると使うものだと勘違いして無駄な争いが起こる。でも、肘掛けがなければ自然と手を前に置くなりするので、別に問題ないんです。むしろ横方向にスペースも出来るし。

 勿論、覚悟して行ってるから、思いの外、ってことはあると思うんですけどね。でも、皆が拷問拷問って言うほど酷くもあるまい?とは思ってしまいました。まぁ、指環見てないですからね。黄昏の1幕とか見るとまた違うのかも知れませんが。





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最終更新日  2024年08月20日 01時44分13秒
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