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2009.07.14
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カテゴリ: 昆虫(その他)


 かなり以前から、庭を漂う微小な羽虫類が気になっている。一見したところでは、埃と大した差がない様な連中で、虫に興味のない方の目には映ることも無いと思われる存在である。この類の羽虫、完全な空中静止は殆どしないが、何かあるとかなりの速度で飛んで逃げるので、浮遊中は何らかの作戦行動を執っているものと思われる。飛んでいるときの直径は2~3mm、色は様々で、虫の正体としてはアブラムシの有翅虫、アザミウマ、コナジラミ、小型の蚊やハエ、微小な寄生蜂等が考えられる。しかし、全く意外な虫が浮遊している可能性もある。

 以前掲載した「 ショウジョウバエの1種 」等もこの仲間に入る。これは完全な空中静止をするので何とか撮影できたが、その他の羽虫は、空中静止はせずに少しずつ動き、しかも此方が近づけばその分だけ遠のくので、どうしても撮影することが出来ない。そこで、飛翔中の写真は諦め、捕まえて正体だけでも確認することにした。

 先ず最初に捕まえた虫が下の写真。意外にもチャタテムシの1種であった。片手で握る様にして捕まえたので、掌を閉じるときに指の関節内側で挟まれてしまい、既に御臨終であった。


ウスイロチャタテ科の1種?1
手で捕まえたチャタテムシ.指の関節に挟まれて御臨終

(2009/07/04)



 体長1.5mm、翅端まで2.3mmと相当に小さい。私の手の指は成年男子としては平均的な大きさなので、上の様な写真を載せれば、虫の小ささが実感出来るであろう。飛んでいるときの直径は2.5mm位、オボロな輪郭を持つ茶色の玉の様であった。

ウスイロチャタテ科の1種?2
上の部分拡大.前翅と後翅がずれており翅脈が見やすい

後翅のR脈とM脈は1横脈で結合しているのが分かる

(2009/07/04)



 下の写真はやはり手で捕まえたチャタテムシである。最初の写真と同一種と思われる。御臨終とはなっていない様だが、触角の片側が折れている。やはり、手で捕まえるのはダメで、捕虫網を使う必要があることを実感した。

 さて、このチャタテムシ、何科のチャタテムシであろうか。一見して、以前紹介した 月桂樹の葉裏に居たチャタテムシ とよく似ている。月桂樹の葉裏は吸汁性昆虫の排泄物等で汚れていて、翅脈相が良く分からなかったが、今回は下地や周囲が綺麗だから、翅脈がハッキリと見える。これならば、何とか科まで落ちるかも知れない。

ウスイロチャタテ科の1種?3
別の個体. 月桂樹の葉裏にいたチャタテムシ とよく似ている

(2009/07/04)



 しかし、チャタテムシ目の検索は、何れの検索表でも先ず触角の節数から始まる。その後も顕微鏡で見なければ分からない様な微小な構造の差異が問題となるので、幾ら翅脈が良く見えていても、等倍接写程度の写真では検索表を冒頭から引くことは出来ない。

 其処で便法を使うことになる。先ず、写真のチャタテムシの前翅翅脈をよ~く見て、北隆館の圖鑑に載っているチャタテムシに同じ様な翅脈相を持つ種が無いかを調べる。・・・有った。マドチャタテ科のヒメマドチャタテとウスイロチャタテ科のクリイロチャタテが同じ様な前翅翅脈を持つ。後者の解説を読むと、クリイロチャタテは後翅の径(R)脈が中(M)脈と1横脈で結合していることでヒメマドチャタテと区別出来る、とある。ヒメマドチャタテでは径脈と中脈は直接接している。

 2番目の写真を見ると、写真の虫では明らかに径脈と中脈は1横脈で結合している。この違いが科の違いなのかは分からないが、どうもこの虫はウスイロチャタテ科に属すらしい(ウスイロチャタテ科は以前はマドチャタテ科に含まれていた)。

ウスイロチャタテ科の1種?4
横から(2009/07/04)



 実は、チャタテムシに関しては「日本産チャタテムシ目の目録と検索表」と言う文献がInternetで入手出来る。珍しく日本語の文献である。しかし、残念ながらこの検索表では、最初の方で「爪の先端近くに歯を持つ」と言う顕微鏡的な特徴の有無により、マドチャタテ科の属す系列とウスイロチャタテ科の属す系列の2つに分かれてしまうので、この両者を直接比較することが出来ない。

 そこで外国のサイトでチャタテムシ目の写真を調べてみる。・・・すると、写真のチャタテムシに翅脈相や外観が似ているのはやはりウスイロチャタテ科以外にはない。かなりいい加減だが、以下は、写真のチャタテムシはウスイロチャタテ科に属す、と言うことで話を進める。

ウスイロチャタテ科の1種?5
前から.やはり漫画的な顔

(2009/07/04)



 前述のチャタテムシの文献を見ると、ウスイロチャタテ科には Ectopsocopsis 属と Ectopsocus 属の2属しかない。しかも前者はクリイロチャタテ( E. cryptomeriae )1種だけである。この種は翅が赤紫色で、明らかに写真のチャタテムシとは異なる。従って、写真の虫は Ectopsocus 属に所属すると考えられる。そこで、次は検索表内の Ectopsocus 属を辿ることと相成る。しかし、此処でもやはり顕微鏡的な特徴の有無が問題となり、此処に載せた写真からの判断は困難である。

 外国のサイトを見る限り Ectopsocus briggsi と言うのが非常によく似ている。殆ど瓜二つと言う感じがする。東京都本土部昆虫目録を見てみると、この種は皇居で記録があるから、この辺りに居てもおかしくはない。しかし、外見が似ているからと言うだけで種を決めるのは些か無謀に過ぎる。 Ectopsocus 属は、九大の目録では4種だが、先の文献(此方の方が新しい)には未記載種を含めて8種が載っている。外見のソックリな種が他に居てもおかしくはないのである。

 そこで此処では、 Ectopsocus 属の1種とした。本当は、ウスイロチャタテ科と言うのも余り確証が無いのだが・・・。

ウスイロチャタテ科の1種?6
オマケにもう1枚、斜めから

(2009/07/04)



 それにしても、チャタテムシが空中を浮遊するとは知らなかった。「庭を漂う微小な羽虫」、これは思ったよりも面白そうである。







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最終更新日  2009.07.16 09:00:26
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7月14日と言うことで  
snowrun29  さん
前回にアップされたチャタテムシも拝見して参りましたが
それは昨年の7月14日でした。
今日はパリ祭の日ですね?
あのマンガチックな愛嬌ある顔はこの辺りを生き生きと動いてるって事ですねv
(1年中、どう動いてるのかは?ですが)

お茶を点てる音に似た音を出すのでこの名前。
体長1・5mm…
ウスイロ、クリイロ、、
うちにもこれが空中浮揚しているんでしょうか
世界はほんまに広いです。 (2009.07.14 13:39:59)

ウスイロチャタテ科  
るる555  さん
http://bugguide.net/node/view/176415/bgpage
Ectoppsscus briggsi この虫君にたどり着くことが凄いです!そっくりですね~
空中の虫を捕獲するとき 素手で捕まえることも
ハエで試すとわかりますが 難しいです。動体視力も凄いです! (2009.07.14 18:40:37)

Re:パリ祭?!  
marinesnow2525  さん
あらホントだ!去年も7/14でしたね^^

去年同じころ、うちの月桂樹にもたくさんいました。
今年はあまり気にならないけれど、どうかな?
また見てみます。

といってもここまではっきりと見分けられませんが(^^;

(2009.07.14 23:30:17)

Re:7月14日と言うことで(07/14)  
snowrun29さん
>前回にアップされたチャタテムシも拝見して参りましたが
>それは昨年の7月14日でした。
>今日はパリ祭の日ですね?
-----
 全く気が付きませんでした。但し、掲載日は同じでも、撮影日は違います。

>あのマンガチックな愛嬌ある顔はこの辺りを生き生きと動いてるって事ですねv
-----
 こんなに、目の前を浮遊しているとは思っても見ませんでした。

>体長1・5mm…
>ウスイロ、クリイロ、、
>うちにもこれが空中浮揚しているんでしょうか
-----
 何分にも小さいですから、網で捕獲して確かめないと・・・。
(2009.07.15 06:27:57)

Re:ウスイロチャタテ科(07/14)  
るる555さん
>http://bugguide.net/node/view/176415/bgpage
>Ectoppsscus briggsi この虫君にたどり着くことが凄いです!そっくりですね~
-----
 EctoppsscusではなくEctopsocusです。虫を調べるときは、科名や属名をラテン名で画像検索すると外国のサイトが出て来て分かる場合が屡々あります。

>空中の虫を捕獲するとき 素手で捕まえることも
>ハエで試すとわかりますが 難しいです。動体視力も凄いです!
-----
 何故か分かりませんが、昔から左手で虫を捕まえるのが得意なのです。ハエもよく捕まえました。若い頃は、宮本武蔵の様だと言われたこともあります。
 利き手は右手なのですが、右手では捕まえることが出来ません。不思議な話です。
(2009.07.15 06:33:14)

Re[1]:パリ祭?!(07/14)  
marinesnow2525さん
>あらホントだ!去年も7/14でしたね^^
-----
 単なる偶然ですが、撮影日は異なります。

>去年同じころ、うちの月桂樹にもたくさんいました。
>今年はあまり気にならないけれど、どうかな?
>また見てみます。
>といってもここまではっきりと見分けられませんが(^^;
-----
 チャタテムシはカビ食ですから、植物の種類とは余り関係が有りません。微小な昆虫の死骸などがあり、それに黴が生えている様な所に多い様です。
(2009.07.15 06:35:28)

Re:ウスイロチャタテ科の1種(Ectopsocus sp.)?(07/14)  
ukon6624  さん
微小なハムシ・・2枚目の触角が折れてご臨終になった写真の表情がユニークで興味をそそられました。
徹底的に検索する姿勢が凄いです。
外見が似ているだけで種を決めるのは無謀・・おっしゃるとおりですが、それでも○○に近いと決め付けるのが得意の私です・・苦笑

(2009.07.15 18:20:26)

Re:ウスイロチャタテ科の1種(Ectopsocus sp.)?(07/14)  
夢のはし  さん
ご臨終になった子のお顔が、
自ら「ご臨終です」と言っているみたいですね。
手で捕まえることが出来るなんて、
アーチャーンさん、大変な反射神経・運動神経の持ち主とお見受けします。
素晴らしいですね・・・心から尊敬してしまいます。

アーチャーンさんのプロフィール画像を初めて拝見したときから、
ずっと、ずっと思っていたのですが、
アーチャーンさんのお肌のきめ細かさには、びっくりします。
今日の、手の平のお写真もうそうです。
キメが細かくて、しかも揃っていますもの。

>オボロな輪郭を持つ茶色の玉の様であった。

その感じ、なんとなくわかります☆
それにしても、直径2.5mmとは☆
アーチャーンさんの視力のよさにも、脱帽します*^^* (2009.07.15 20:47:54)

Re[1]:ウスイロチャタテ科の1種(Ectopsocus sp.)?(07/14)  
ukon6624さん
>微小なハムシ・・2枚目の触角が折れてご臨終になった写真の表情がユニークで興味をそそられました。
-----
 如何にも「御臨終で御座います」と言う感じです。

>徹底的に検索する姿勢が凄いです。
-----
 まだ不十分ですが、まァ、ブログなので適当なところで済ませています。

>外見が似ているだけで種を決めるのは無謀・・おっしゃるとおりですが、それでも○○に近いと決め付けるのが得意の私です・・苦笑
-----
 ハエでは外見がソックリでも、科のレベルで違う場合が沢山有ります。
(2009.07.16 09:19:44)

Re[1]:ウスイロチャタテ科の1種(Ectopsocus sp.)?(07/14)  
夢のはしさん
>ご臨終になった子のお顔が、
>自ら「ご臨終です」と言っているみたいですね。
-----
 いャ、全くその通りです。

>手で捕まえることが出来るなんて、
>アーチャーンさん、大変な反射神経・運動神経の持ち主とお見受けします。
>素晴らしいですね。
-----
 上に書きましたが、何故か左手で飛ぶ虫を捕らえるのは得意なのです。利き手の右手では捕まらないのが不思議です。

>アーチャーンさんのプロフィール画像を初めて拝見したときから、
>ずっと、ずっと思っていたのですが、
>アーチャーンさんのお肌のきめ細かさには、びっくりします。
>今日の、手の平のお写真もうそうです。
>キメが細かくて、しかも揃っていますもの。
-----
 等倍接写だとみなそう見えるのではないでしょうか。

>>オボロな輪郭を持つ茶色の玉の様であった。
>その感じ、なんとなくわかります☆
>それにしても、直径2.5mmとは☆
>アーチャーンさんの視力のよさにも、脱帽します*^^*
-----
 視力は1.5を下ったことがありません。眼が良くないと、仕事も趣味も出来なくなります。
(2009.07.16 09:23:48)

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