全35件 (35件中 1-35件目)
1
今回も、前回と同じく、4年前の6月に撮影した虫を紹介する。 虫屋の大敵、ヒメマルカツオブシムシ(Anthrenus verbasci)である。この虫、この辺りでは春に咲くハルジオン等の花に良く見られるが、今日紹介するのはイタリアンパセリの花に来たものである。ヒメマルカツオブシムシ(Anthrenus verbasci)イタリアンパセリの花の上に16頭も居る(写真クリックで拡大表示)(2012/06/08) 前年に植えたイタリアンパセリが年を越して開花し、それに集っていた。もう紹介済みだと思っていたのだが(実は別のWeblogであった)、余りに沢山来ているので、つい写真を撮ってしまった。上の写真中に16頭も居る。ヒメマルカツオブシムシ.触角がぼけている(写真クリックで拡大表示)(2012/06/08) 体長は2.5mm前後、色や触角の形状は異なるが、体の輪郭はルリマルノミハムシに似ている。ルリマルノミハムシの方が少し大きい。 保育社の「原色日本甲虫図鑑III」に拠れば、体長は2.0から3.2mm、個体差が大きい。これは、一枚目の写真を見ても良く分かる。この手の虫は、餌が少なくても途中で死なないで何とか成虫になる様で、それで幼虫時の栄養状態によって大きさに大差が出る。ヒメマルカツオブシムシ.色がかなり違う(写真クリックで拡大表示)(2012/06/08) カツオブシムシ科(Dermestidae)、マルカツオブシムシ属(Anthrenus)に属す。上科については、上記図鑑ではカツオブシムシ上科(Dermestoidea)となっているが、どうも現在ではナガシンクイムシ上科(Bostrichoidea)に入れるのが普通らしい。この上科には、以前紹介した我が家の大害虫ジンサンシバンムシが属すシバンムシ科(Anobiidae)、乾燥標本を食害するその名もヒョウホンムシ科等、乾燥動植物や木材の大害虫がゴロゴロしている。横から見たヒメマルカツオブシムシ(写真クリックで拡大表示)(2012/06/08) この手の屋内害虫に付いては、別のWeblogで少し詳しく書いたので、興味のある方は此方をどうぞ。
2016.07.07
コメント(2)
4年以上掲載をサボっていたが、ネタが切れて掲載出来なくなった訳ではない。「写真倉庫」の中には、出番を待っている写真が山ほど詰まっているのである。今日はその中から、ほぼ丁度4年前の2012年6月23日に撮影した、キスジトラカミキリ(Cyrtoclytus caproides)を紹介する。 体長は約17mm、トラカミキリとしては中位の大きさである。キスジトラカミキリ(Cyrtoclytus caproides)(写真クリックで拡大表示)(2012/06/23) 我が家のクチナシの上に留まっていた。実は、我が家だけでなく、この辺りでキスジトラカミキリを見たのはこれが初めてだと思う。これまで我が家で記録のあるトラカミキリと云えば、タケトラとエグリトラ位なもので、トラカミキリ類の記録は少ない。しかも、エグリトラは、子供の頃はかなり普通であったが、私がこの家に戻ってきてからは一度も見ていない。斜め上から見たキスジトラカミキリ(写真クリックで拡大表示)(2012/06/23) 尤も、我が家から2町ほど北へ行った角にあるクワの木に、トラカミキリとしては大型のトラフカミキリ(只の「トラカミキリ」とも呼ばれる、クワの害虫として有名)が毎年発生していたり、家にブドウ棚の有る同じ町内に住む友人は、毎年庭でブドウトラカミキリ(葡萄の害虫だが、かなりの美形)を採集していた。 また、トラカミキリではないが、かつて方々に植えられていたイチジクの木には、シロスジカミキリ、ゴマダラカミキリ、キボシカミキリ、クワカミキリ等がよく見られた(何れのカミキリも広食性だが、イチジクをかなり好む)。特定の樹種のある所に行けばそれなりのカミキリムシが居る様である。しかし、我が家にはそれらの「特定の樹種」がない。横から見たキスジトラカミキリ(写真クリックで拡大表示)(2012/06/23) 調べて見ると、キスジトラカミキリの幼虫は、特定の樹種ではなく、ケヤキ、サクラ、カキ、コナラ、カバノキ類等、様々な樹種の伐採木を食すとのこと。庭の広かった改築前の家では、毎年2回植木の手入れをして、切った枝は風呂の燃料として庭の隅に束ねて山積みにしていた。そこから発生する可能性もあったと思うが、見た記憶はない。或いは、只忘れているだけなのかも知れないし、枝の太さがカミキリの好みでなかった可能性も高い(これが重要)。反対側(写真クリックで拡大表示)(2012/06/23) トラカミキリ類は、カミキリムシとしては触角が短く、動作も機敏で、一種独特の余りカミキリムシらしくない雰囲気を持つ。黒っぽい体に黄色の横縞が有る種が多いので「虎」カミキリなのであろう。一見似た様な種類が多いが、良く見ると、それぞれの種で模様が結構違うので、一般に判別は容易である。キスジトラカミキリの顔(写真クリックで拡大表示)(2012/06/23) トラカミキリ類は、模様がある種のハチ類に多少似ているので、よくハチを擬態していると言われる。しかし、子供の頃にハチばかり採集していた私には、ハチに似ているとは思えない。 擬態と言うのは、その捕食者をかなり擬人化した解釈であり、全部を否定はしないが、かなり怪しい概念だと思う。人間から見て似ていると感じられるだけで、捕食者と人間では、見える光の波長も違うであろうし、どの様に見えているのか分からないではないか。
2016.06.29
コメント(0)
このWeblogは「我が家の庭の・・・」なのだが、今日は「我が家」の生き物を紹介する。ジンサンシバンムシ(Stegobium paniceum)、屋内害虫の1種で、保育社の甲虫図鑑には「乾燥貯蔵動植物質の世界的大害虫」と書かれている。 シバンムシ科(Anobiidae)シバンムシ亜科(Anobiinae)に属す、体長1.7~3.0mm(同図鑑に拠る)の小さな甲虫である。世界中に分布する大害虫であるにも拘わらず、Web上に精緻な写真がない様なので、掲載することにした。ジンサンシバンムシ.この個体の体長は約2.7mm写真は何れもコントラストをやや強くしてある冷蔵庫で充分冷やしてから撮影(写真クリックで拡大表示)(2011/08/10) 此奴、実際に大変な害虫で、我が家に於ける被害は、金額的にも相当な額に達するであろう。 兎に角、食物スペクトルが広く何でも喰う。退治しようにも発生源を突き止めるのが容易でないのである。また、我が家の様に外国の食料サンプルを沢山貯蔵してある所では、複数個所から発生しているのが普通らしく、大発生している場所を見つけて退治しても、他の場所でも発生しているから、未だに根絶出来ない。全く困った虫である。 因みに、かなり以前に東南アジアから買って来た干メンにコクゾウムシの1種が付いていて、かなり我が家で繁殖したことがあるが、これは穀類かその加工品しか食害しないので、簡単に退治することが出来た。ジンサンシバンムシの腹側.常温に戻って暴れているところ図鑑に拠れば、「前胸腹板突起は短く三角形」とある矢印の部分が前胸腹板突起で確かに短く三角形(写真クリックで拡大表示)(2011/08/10) ソモソモ、このジンサンシバンムシが我が家に入って来たのは、今から20年程前のこと、ある大先輩に頼んでカルカッタから買って来て頂いたアサフェティダ(asafoetida、assafoetida、asafetida)と云う1種の香辛料に卵が付いていたのである。 アサフェティダは、Ferula assafoetidaを主とするセリ科植物の根元から採ったヤニ(樹脂)で、硫黄を思わせる強い異臭を持つが、インドやその近くの国では、これを野菜、特に豆のカレーに極く少量入れるのである。純粋なものは非常に高価で、インドでは固まりではなく、細粉にし乳糖か何かで10倍位?に薄めて缶入にしたものが一般的である。最近はInternetでも売られているが、これも同様であろう。 記憶に拠れば、頂いたのは7×3×2cm位の純粋なヤニの固まり、恐らく1000ルピー(1ルピーで野菜カレーが腹一杯食える)以上はしたと思われる。これを2つに割り、一つを砕いて料理用とし、こんな大きな固まりは珍しいので、残りの半分をサンプルとして保存して置いたのである。このサンプルの方からシバンムシが発生した。サンプルは結果的に穴だらけの火山岩の様になってしまった。少し斜め前から撮ったジンサンシバンムシ(写真クリックで拡大表示)(2011/08/10) 我が家で被害にあっているのは主に干メン類(蕎麦、うどん、素麺、スパゲッティ、米から作った干メン等)である。今まで30kg位は処分したと思う。しかし、記憶に拠れば、紫菜(支那式の岩海苔の干物)、干し椎茸、ダール(印度式の干豆、レンズ豆、ヒヨコ豆等)、小麦粉、東南アジアの黒砂糖と椰子砂糖、その他「こんな物も喰うのか!!」と驚く様なものまで食害された。正に、「乾燥貯蔵動植物質の世界的大害虫」なのである。 更に始末が悪いのは、成虫はかなり厚いプラスティックの袋でも食い破り、卵を産むのである。メン類などは、相当シッカリした容器に入れておかないと、未開封でもやられてしまう。正面から見たジンサンシバンムシ.やや警戒中この方向から見ると、触角先端3節は単純な[細長い球桿状]でない(写真クリックで拡大表示)(2011/08/10) 九州大学の日本産昆虫目録に拠ると、ジンサンシバンムシは1属1種だが、一見よく似た種に、やはりに世界的に分布する乾燥動植物質の大害虫であるタバコシバンムシがある。セスジシバンムシ亜科に属すので少し縁遠いが、体の外観はよく似ている。しかし、触角の先端3節が、ジンサンシバンでは写真の様に細長い球桿状であるが、タバコシバンでは鋸歯状なので容易に区別が付く。尤も、3mm程度の虫の触角を調べるのは一般的には一寸難しいかも? 尚、ジンサンシバンムシの「ジンサン」とは朝鮮人参の人参(ginseng)のことである。私は朝鮮語を解しないので分からないが、ginsengの本当の発音はジンセンよりはジンサンに近いのかも知れない。北京官話の「eng」は、日本人にはエンよりはアンに近く感じられる。図鑑には「各上翅は11本の点刻を含んだ細条溝をもつ」とあるが、勘定するとチャンと11本ある(写真クリックで拡大表示)(2011/08/10) 今日はジンサンシバンムシの被害についてばかり書いて、形態的特徴の方は本文中には殆ど書かなかった。代わりに写真の下に形態学的な説明を少し入れて置いた。
2011.08.11
コメント(5)
東日本大震災から2ヶ月近く経った。我が家や我が身には何らの被害もなかったが、「新たな事象」が出来して、Weblogを書く時間的余裕が無くなってしまった。しかし、止めるつもりは無いし、写真もある程度は撮っているので、丁度、一区切り付いたところでもあり、ほぼ2ヶ月ぶりに更新をすることにした。クリスマスローズの葉に留まるイタドリハムシ体長は7.5mmとハムシとしては大きい(写真クリックで拡大表示)(2011/04/15) 4月の中旬に撮ったイタドリハムシ(Gallerucida bifasciata)である。ハムシ科(Chrysomelidae)ヒゲナガハムシ亜科(Galerucinae)に属す。属名はGallerucidaで「l」が2文字だが、亜科名はGalerucinaeで1文字。何処でどうなったのかは知らないが、屹度、何か曰くがあるのだろう。 ヒゲナガハムシ亜科はかなり大きな亜科で、日本産は約100種。我が家はハムシ科の虫が少ない(今日のイタドリハムシで漸く10種)のだが、この亜科のハムシはこれまでにウリハムシ、クロウリハムシ、ウリハムシモドキ、ヨツボシハムシを紹介している。今回で合計5種となり、我が家のハムシ科昆虫の1/2を占めることになる。触角の大きなギザギザが印象的前胸背左側に丸い凹みが見える鞘翅以外は脚も含めて真っ黒(写真クリックで拡大表示)(2011/04/15) 写真で示した個体の体長は約7.5mm、横幅もあるので、かなり大きなハムシと云う印象を与える。実際、ハムシ科の中では大型の方に属し、保育社の甲虫図鑑を観ると7.5~9.5mmとあるから、この個体はイタドリハムシとしては小さめと言える。 因みに、最大級のハムシとしてはオオルリハムシが有名で、同図鑑に拠れば11~15mmとある。正面から見たイタドリハムシ.ディフューザーを使わなかったのでストロボの反射で些か見苦しい写真になっている(写真クリックで拡大表示)(2011/04/15) 図鑑を見ると、触角が長く体全体が丸味を帯びて色は赤(橙)と黒、と云うハムシにはかなりの種類がある。しかし、こんなに大きくなるハムシはイタドリハムシだけらしい。 鞘翅以外は総て真っ黒だが、翅の模様には変化が多いとのこと。しかし、翅端近くにある錨の様な形をした黒紋には変化が少ない様である(3つに分離することはある)。イタドリハムシの顔.ハムシとしては比較的凶暴さを感じさせない(写真クリックで拡大表示)(2011/04/15) 他の特徴としては、前胸背に2個1対の凹みがある。写真からは分かり難いが、2番目の写真の前胸背左側(写真では上側)に微かに丸い凹みが認められる。種名のbifasciataは<2つ凹み>ではなく<2つの帯>の意だが、fasciaには他の意味もあるので、このハムシの構造と如何なる関係にあるのかは良く分からない。 図鑑には、「中・後脛節末端には顕著な1小突起を有する」と書いてある。しかし、今日の写真では何れも焦点を外れており、よく確認出来ない。葉の先端に来たイタドリハムシ.飛んで逃げるかと思ったが、その後も数時間同じ場所に居た(写真クリックで拡大表示)(2011/04/15) このイタドリハムシ、我が家ではクリスマスローズの葉に留まっていた。言う迄もないことだが、クリスマスローズが食草なのではない。食草は、名前にある通り、イタドリやスイバ等のタデ科植物とのこと。クリスマスローズは我が家に数10株生えているが、キンポウゲ科の毒草のせいか、この葉を食べる虫を見たことは一度もない(明確な食痕も見たことがない)。オマケにもう1枚(写真クリックで拡大表示)(2011/04/15) 前回以来、ほぼ2ヶ月ぶりの更新になってしまった。この次は何時になるか分からないが、気分転換に、時々は更新するつもりで居る。
2011.05.05
コメント(6)
先日、我が西洋長屋の入り口にある門を開けた時、その扉の下に何かサツキの枯葉の様なものが落ちているのに気がついた。しかし、良く見てみると、枯葉ではなく、コメツキムシであった。丁度、買物の帰りであったので、一先ず掌の中に確保し、荷物と一緒に室内に持ち帰った。越冬から目覚めたサビキコリ.胸背に1対の突起がある白く光っているのはストロボの反射による(写真クリックで拡大表示)(2011/02/26) 体長は13mm強、良く見てみると、サビキコリ(Agrypnus binodulus)の様である。コメツキムシ科(Elateridae)は九州大学の日本産昆虫目録に拠ると651種も記録されている大きなグループだが、今日のコメツキムシの様な胸背や鞘翅に光沢がないのは、サビキコリ亜科(Pyrophorinae;九大目録ではPyrophotinaeとなっているが、これはmisspelling)サビキコリ族(Agrypnini)と思ってマズ間違いないので、検索は容易である。サビキコリの腹面.前胸腹板に触角を収める溝がある中胸後側板は中脚の基部に達している(写真クリックで拡大表示)(2011/02/26) サビキコリ族には、前胸腹板に触角を収める深い溝がある。上の写真で、眼の下から後方に伸びている黒~赤の凹みがそれである。サビキコリ族から属への検索表を辿ると、「中胸後側板は中基節溝に達する→4mm以上→小楯板は単純で隆起線を欠く」で、サビキコリ属(Agrypnus)に落ちる。 サビキコリ属は、九大目録を見ると33種も載っているが、その多くは南方系で、東京都本土部昆虫目録を見ると6種しか記録されていない。この6種の内、ハマベオオヒメサビキコリを除いた5種は保育社の甲虫図鑑に記載があり、体長が10mmを越えるのは、サビキコリ、ムナビロサビキコリ、ホソサビキコリの3種だけである。横から見たサビキコリ.眼は大きいが半分以上隠れている(写真クリックで拡大表示)(2011/02/26) この3種の区別は外見から容易で、サビキコリは全体にゴツく、学名の種名(binodulus)に示される様に、胸背に突起状の隆起が2個(1対)ある。これに対し、ホソサビキコリは全体的に細長く胸背は平滑、ムナビロでは胸背が僅かに隆起するが、サビキコリとは異なり前胸背板は前方にかなり拡がる。 これらから、今日のコメツキムシはサビキコリであるとして問題無いであろう。また、サビキコリは成虫越冬することが知られており、今頃出現しても些かもおかしくない。前から見ても中胸背の突起が明らか(写真クリックで拡大表示)(2011/02/26) 尚、ハマベオオヒメサビキコリに付いては良く分からないが、京都府のレッドデータブックに「要注目種」として載っており、「体長7.5~12.5mm.扁平幅広、黒褐色で触角と脚部は多少とも赤褐色で、前胸背後角又は全身が希に赤褐色の個体もある.ヒメサビキコリ( A. scrofa(Candeze))に体長・体色・外形共に良く似ているが、下翅が常に退化縮小している」、「主として外洋性海浜地区に生息し、分布も局所的である」、「これまでの記録では4~8月に亘って採集されている」とのことなので、今日のコメツキムシである可能性はないであろう。斜めから見たサビキコリ.小楯板に隆起線はない(写真クリックで拡大表示)(2011/02/26) このコメツキムシ君、玄関のスレートの上に居たのだが、スレートではストロボの反射があるので撮影は無理、何処で撮影したらよいものか? 土の上に移して少し撮ってみたが、土の上では横からや前から撮る時にかなり無理な姿勢を強いられる。其処で、径10cm位の石の上に載せて撮影することにした。 コメツキムシだから仰向けにしておくとやがてモソモソ動き出し、パチンと撥ね跳ぶ。しかし、普通に腹ばいにして置いたら、何時まで経っても動き出さない。所謂「死んだ真似」の様だが、表では寒いのかも知れない。そこで石ごと暖かい部屋の中に入れて撮ることにした。頭部を超接写.表面が茶色っぽく見えるのは土が付いているからではなく褐色をした鱗片で覆われている為であることが分かる複眼は胸部からの黄色い毛で被われている(写真クリックで拡大表示)(2011/02/26) 待つこと暫し、やがて脚を伸ばし始めたので、急いで撮影したのが今日の写真。最後の頭部の写真を撮った後は、コソコソと歩き始めた。結構速い。径10cmの石では直ぐに縁に達して、下に降りてしまう。冷蔵庫で冷やして動きを止める手もあるが、既に一通り写真を撮った後なので、撮影は終わりにして、庭に逃がしてやることにした。土の上に置いたら、もう「死んだ真似」はせず、極く普通に歩いて行った。
2011.03.02
コメント(10)
1月も既に8日、しめ飾りも外して、もう正月気分は終わった。元旦か今日まで毎日殆ど晴天であったが、我が家の庭は虫の気配極めて乏しく、新年に撮った虫の写真を新年の第1回目に掲載することは出来そうにない。・・・と云うことで、今年の第1回目は、仕方なく、旧年中に撮った小甲虫を紹介することにした。 ベランダに置いてある椅子の直ぐ近くに、水遣りとタバコの火消し用を兼ねて、満々と水を湛えたバケツが置いてある。その水面に体長1cm程のゴミムシの様な虫が浮いていた。まだ、落ちたばかりらしく盛んに蠢いている。ゴミムシの仲間は矢鱈に種類が多く、しかも、写真からは判別の困難な種類が多い。実は、その前にもあるゴミムシをシッカリ撮ったのだが、未だに名前が分からずお蔵入りになっている。そんな訳で、撮る気はしないのだが、死んでは可哀想なので、一応、掬い上げてデュランタの鉢の上に移してやった。ヒゲブトハムシダマシ.かつてはヒゲブトゴミムシダマシと呼ばれていた(写真クリックで拡大表示)(2010/12/28) 土の上をヨタヨタ歩く虫を良く見てみると、ゴミムシの類ではなく、ヒゲブトハムシダマシ(Luprops orientalis)であった。 此の虫は、以前、もう一つのWeblogの方に掲載したことがあるので、直ぐにそれと分かったのである。ゴミムシの様に大顎が発達して居らず、また、小腮鬚はある種のテントウムシの様な斧型をしている。「ヒゲブト」と名前にある通り、触角が太い。 同じハムシダマシ科(Lagriidae)に属す何も形容の付かない只のハムシダマシは、ずっと以前に紹介済みだが、この種は全身毛むくじゃらで細長く、今日のヒゲブトとは大分趣が異なる。図鑑の写真と九州大学の目録を対照すると、ハムシダマシの様な細長いのはハムシダマシ亜科、ヒゲブトハムシダマシの様なズングリ型はチビヒサゴゴミムシダマシ亜科(Adeliinae)に属す様である。大顎は未発達で、小腮鬚はある種のテントウムシに似て斧型(写真クリックで拡大表示)(2010/12/28) ハムシダマシ科なのにチビヒサゴゴミムシダマシ亜科と云うのは奇妙な話である。これは、この亜科がかつてはゴミムシダマシ科に属していたことに因り、このヒゲブトハムシダマシも以前はヒゲブトゴミムシダマシと呼ばれていたのである。 今はハムシダマシ科になったのだから、亜科名もチビヒサゴハムシダマシ亜科と改名すべきなのであろう。しかし、九州大学の目録ではハムシダマシ科のチビヒサゴゴミムシダマシ亜科とされているせいか、何処のサイトも「チビヒサゴゴミムシダマシ亜科」としており、「チビヒサゴハムシダマシ亜科」で検索しても有意なヒットは一つも無い。 九大目録では、同亜科に属す種の和名も全て○○○ゴミムシダマシ(このヒゲブトハムシダマシもヒゲブトゴミムシダマシ)となっている。科や亜科の変更に伴う和名の混乱は屡々見られることだが、一般の誤解を生じ易いので、速やかに和名を統一して頂きたいものである(研究者は日常的に学名を使用しているので、和名には余り興味がなく、それがこう云う事態を招く)。
2011.01.08
コメント(4)
1週間ほど前のことになるが、見慣れないハムシが庭に逗留していた。クロウリハムシよりも二回り位小さく、チョコマカと良く歩き回る。その上、かなり敏感なので、中々写真を撮る機会がない。 それでも、先日、何とか撮れた。しかし、出来映えは余り芳しくない。些か不本意な品質なのだが、もう何処かへ行ってしまったのか最近は見かけないし、我が家の庭ではハムシの記録が少ないので、敢えて掲載することにした。ヨツボシハムシ.体長は5mm強前胸背に1横溝が認められるチョコマカと良く歩き回る(写真クリックで拡大表示)(2010/05/22) 頭部胸部は赤褐色、鞘翅は白地に黒斑が4つと非常に特徴的なので、今回は検索表は用いずに、いきなり保育社の甲虫図鑑で絵合わせをしてみた。・・・ところが、どうした訳か見付からない。これは何としたことか。ヒョッとすると、最近我国に入って来た外来種? 結局、検索表を引くことになってしまった。概略を書くと、頭部は正常、口器は頭部の先端に位置する→触角の基部は相互に近く位置し、頭部の前半部に位置する→後肢腿節は一般に肥大しない、と云うことでヒゲナガハムシ亜科(Galerucinae)に落ちた。 しかし、ヒゲナガハムシ亜科は甲虫図鑑に77種(九大目録では95種)も載っているにも拘わらず、族や属への検索表はない。結局、また絵合わせに戻ることになる。前胸背板の前・後縁は縁取りを欠く中・後胸は黒色、腹部は黄褐色(写真クリックで拡大表示)(2010/05/22) 普通の図鑑の図版は標本を撮影したものである。標本は変色することが多い。これは図鑑の図版を見るときに注意しなければならないことの一つで、白は往々にして黄色になる。そこで、淡い色の違いは無視して、背中に4紋黒斑のあるハムシをヒゲナガハムシ亜科の中で探してみた。 直ぐにヨツボシハムシが見付かった。写真では白い鞘翅の地色が、図版では頭部胸部と余り違わない黄褐色になっている。しかも、頭部胸部が下側に曲がっているのか、相当な猪首である。見かけはかなり異なる。本当にヨツボシハムシであろうか。鞘翅は焦点を外れているが、まァ、ご愛敬と云うことで・・・(写真クリックで拡大表示)(2010/05/22) そこで画像を探してみた。ヨツボシハムシはかなり普通種らしく、写真は沢山あった。何れも今日の写真の虫とソックリである。しかし、Web上の情報は、以前掲載した「”ニセ”アシナガキンバエ」の様に、時として殆ど全部が誤っている場合もある。其処で、もう一度図鑑に戻って記載を読んでみた。「5.0-5.7mm.頭部・前胸腹面・腹部は黄褐色.中・後胸は黒色・個体によっては、上翅の黒紋は相接する.前胸背板は1横溝を有し、前・後縁は縁取りを欠く.(中略)中・後肢脛節末端に1小突起を有し(後略)」とある。前胸背板の1横溝は1番目や4番目の写真で明らかである。また、4番目の写真原画を拡大すると、脛節末端の小突起が辛うじて見える。 図鑑に載っていない種の可能性も論理的にはある。しかし、まァ、甲虫図鑑に載っていない様な珍種はこの辺りに居ないだろうから、ヨツボシハムシ(Paridea quadriplagiata)として問題ないであろう。原画を拡大すると中肢脛節末端に1小突起が見える前胸背に1横溝が認められる(写真クリックで拡大表示)(2010/05/22) 日本産ハムシ科(Chrysomelidae)には16亜科700種以上が棲息するが、これまでに紹介したのは、ヒゲナガハムシ亜科(ウリハムシ、クロウリハムシ、ウリハムシモドキ)、ノミハムシ亜科(ルリマルノミハムシ、テントウノミハムシの1種)、クビボソハムシ亜科(キバラルリクビボソハムシ、キベリクビボソハムシ、アカクビボソハムシ)に今日のヨツボシハムシを入れて、3亜科9種、全体の僅か1.3%に過ぎない。しかし、我が家のカミキリムシ科はもっと少ない。日本産約900種の内、これまで紹介したのはタケトラカミキリ、ルリカミキリ、キクスイカミキリの3種で、全体のたった0.3%!! ハムシもカミキリムシも植食性である。種類数が少ないのは、そのまま我が家の植物相が貧弱であることを示しているのだろう。今の家を売り払って、自然の豊かな田舎に引っ越せば、もっと色々な虫を紹介できるのだが・・・。
2010.05.26
コメント(4)
もう5月も下旬に入ってしまった。連休中に撮影してまだ紹介していない虫が何種か有るので、時期遅れにならない様に急いで掲載することにしたい。 アカクビボソハムシ(Lema diversa)、ハムシ科(Chrysomelidae)クビボソハムシ亜科(Criocerinae)に属す、体長6mm程度(図鑑では5.5~6.2mm)の中型のハムシである。アカクビボソハムシ.体長は6mm程度「首」(前胸)は明確に括れる(写真クリックで拡大表示)(2010/05/02) このハムシ、今まで我が家で見たことがない。しかし、今年は4月からチョクチョク出没していた。かなり敏感なハムシで、何時も近づくだけで逃げられてしまい、中々写真が撮れない。今日の写真も、正面からの撮影したものを除いて、非常に不安定な姿勢で撮影したので、焦点が少しずれていたりするのだが、まァ、御勘弁願いたい。横から見たアカクビボソハムシ.少し後ピンだが御勘弁を(写真クリックで拡大表示)(2010/05/02) この様な「首」(前胸)が細く、全体的にも細長いハムシは、先ずネクイハムシ亜科かクビボソハムシ亜科に属すと思って良い(他亜科にも多少あるが・・・)。前者は後者よりも触角の基部が接近しており、触角は糸状で細長い。また、後者では前胸背板が中央部で明確に括れる。複眼の基部が隆起している(写真クリックで拡大表示)(2010/05/02) アカクビボソハムシは鞘翅斑紋の変異が極端なハムシで、真っ黒に近い個体から、黒斑を全く欠くものまである。Webを参照すると、カワリクビボソハムシと云う和名もある様だが、「カワリ」は「変わり」で、斑紋の変化が多いことから来ているのかも知れない。 しかし、頭部や胸部の色に変異はない。また、脚は全て黒色である。正面から見たアカクビボソハムシクビボソハムシらしい険悪な顔(写真クリックで拡大表示)(2010/04/25) 保育社の甲虫図鑑に拠れば、食草はツユクサとのこと。我が家にはツユクサが沢山生えているので、それを目当てにやって来た可能性が大である。 クビボソハムシ亜科の昆虫は、一部を除いて、単子葉植物を食草とする。以前紹介した、キバラルリクビボソハムシも寄主はツユクサであった。ツユクサを食草とするクビボソハムシには、他にも数種ある。何故、こうもツユクサに集中するのか些か不可思議ではある。オマケにもう1枚(写真クリックで拡大表示)(2010/05/02) 最近は漸く暖かくなって来た。植物もその成長速度を急に増した様に見える。庭を飛び交う虫の数もかなり増えてきた。やっと人の住む環境になったと、ご満悦の今日この頃である。
2010.05.21
コメント(2)
一昨日、ベランダの椅子で一服していると、何か覚束ない飛び方をする5mm位の黒い虫が目の前にやって来た。殆ど空中を漂っている、と云う感じである。何時もの癖でつい左手が出て、隣の人の財布・・・ではなく、虫を捕まえてしまった。 何と、コガネムシの1種であった。恐らくハナムグリの類であろうが、見たこともない小ささ!! 最近は新顔の虫がよく現れる。これは大変結構なことである。掌で捕まえたヒラタハナムグリ.体長5mm程度と小さい(写真クリックで拡大表示)(2010/05/16) さて、撮影を終わってデータをコムピュータに移そうとしたら、アリャ、知らない間に記録形式がjpg形式のBasic size(2896×1944)に変更されている。バッテリーを交換した時に何か妙なことが起こったのだろうか? 何時もはRaw形式(3872×2592)だから、画面の大きさが約1/2になってしまった。 ・・・と云う訳で、今日の写真が画質が良くないが(最大幅750ピクセル)、何卒御寛恕被下度候。小さくてもコガネムシはゴツゴツしていてカッコイイ鞘翅の上側は名前の通り真っ平ら(写真クリックで拡大表示)(2010/05/16) 保育社の甲虫図鑑で調べると、どうやらヒラタハナムグリ(Nipponovalgus angusticollis)らしい。コガネムシ科(Scarabaeidae)ヒラタハナムグリ亜科(Valginae)に属す。体長4~7mm、発生は4~8月、殆ど日本全土に分布するが、トカラ列島には別亜種を産するとのこと。 胸背、鞘翅、腹部の上側、或いは、写真の解像力が低くて良く見えないが、脚にも、爬虫類の様な鱗片がある。Raw形式で保存していれば、その部分だけ拡大出来たのだが、残念至極。正面から見ると平らなことが良く分かる一見眼の様に見えるのは触角(写真クリックで拡大表示)(2010/05/16) 名前の「ヒラタ」は、鞘翅の上側が平らなことから来ているらしい。写真を見ると、確かに「平ら」である。 図鑑の解説には、前胸背板の2縦隆条は前半のみ顕著でわずかに湾曲、と書いてある。背面と正面からの2枚の写真を頭の中で合成すると、あまり明瞭ではないが、それらしきものが認められる。 また、前脛節の外歯は5~7とある。下の写真では6本認められるから、この点でも問題ない。前脛節の外歯は6本認められる(写真クリックで拡大表示)(2010/05/16) このハナムグリ、所謂死んだ真似をする。実際はショックで気絶するのだそうだが、下はその最中の写真。ユスリカやチャタテムシ等は、手で捕まえた時に指に挟まれて潰れてしまうことが多いが、甲虫は頑丈な外骨格を持つからその程度は屁のカッパ、全く問題ない。だから死ぬことなど考えられない。 今日は残念ながら、真横から撮った写真がない。と云うのは、このハナムグリ、撮影中にいきなり飛んで逃げてしまったからである。普通のコガネムシやカブトムシは、先ずおもむろに?鞘翅を拡げてから、後翅を延ばして飛ぶ。しかし、ハナムグリ類は鞘翅を殆ど畳んだまま後翅を延ばして飛ぶことが出来る。だから、一瞬の内に逃げられてしまうのである。「死んだ真似」を演じているヒラタハナムグリ(写真クリックで拡大表示)(2010/05/16) これまで紹介した「庭を漂う微小な羽虫」には、今日のヒラタハナムグリの他にも、「ハネカクシの1種」、「デオケシキスイ亜科の1種」等、結構甲虫が多い。勿論、数の上から云えば、アブラムシの有翅虫やコナジラミ、ユスリカなどが多いのだが、これらは浮遊しているところを捕まえても種類が分かる可能性が殆ど無いので無視されているのである。 実は、前から知っていたのだが、野村周平他:「皇居における空中浮遊性甲虫の多様性と動態-2004年度地上FITによる調査」(2006)と云う論文がある。FITとは「Flight Intercept Trap」の略で、垂直に設置したシートの下に固定液のトレイを置いたものである。シートに衝突した虫が固定液に落ちて其処に溜まる仕掛けである。これの論文に拠ると、何と、総計63科、393種もの「空中浮遊性甲虫」が皇居で記録されている。 このWeblogで言うところの「浮遊」とは、普通の移動の為の飛翔ではなく、何らかの目的があってゆっくり飛んでいる、空中を漂っている状態を指している。この装置では「浮遊」ではなく「飛翔」している甲虫も捕まってしまう筈だから、此処で言う「庭を漂う微小な羽虫」には入らない種類が沢山入っていると思う。それにしても393種とは大変な数である。一番多いのはハネカクシ科で76種、次がゾウムシ科52種・・・、「庭を漂う微小な羽虫」シリーズをやっていれば、ネタ不足に陥る心配は無用かも知れない。
2010.05.18
コメント(4)
「楽天ブログ」のアクセス記録は極く簡単なものだが、もう一つのWeblogをやっているココログでは、実に様々なアクセス情報を得ることが出来る。例えば、閲覧者がどの様なキーワードで検索して来たかが分かるし、その統計も様々に表示出来る。 此処1週間、或いは、1ヶ月間で、昆虫の種名として最も頻度の高い検索ワードを調べてみると、何と、今日の主人公キクスイカミキリ(Phytoecia rufiventris)であった。今は、キクスイカミキリの季節なのである。キクスイカミキリ.体長9mmと小型(写真クリックで拡大表示)(2010/05/09) 体長は9mm(図鑑では6~9mm)のかなり小さいカミキリムシである。ほぼ毎年今頃、我が家の庭に出没するのだが、結構敏感な虫で直ぐ逃げるし、留まるのは葉っぱの裏側であったりして、今までチャンとした写真が撮れなかった。今回は産卵で疲労困憊していたのか、逃げもせず、充分に撮ることが出来た。横から見ると、腹部の先半分位は橙色(写真クリックで拡大表示)(2010/05/09) 上から見ると全体に黒っぽく、胸部背面や腿節(特に前肢)に赤い斑がある。図鑑に拠れば、これらの色彩には変化が多いとのこと。鞘翅は少し白っぽく見えるが、これは白い毛が密生している為で、下地は黒い。横から見ると、腹部の先半分位は、やや淡い橙色をしている。正面から見たキクスイカミキリ.触角第1節が太い(写真クリックで拡大表示)(2010/05/09) キクスイカミキリは、カミキリムシ科(Cerambycidae)フトカミキリ亜科(Lamiinae)トホシカミキリ族(Saperdini)に属す。このトホシカミキリ族は大きな族で、九州大学の日本産昆虫目録をみると70種もある。体長20mm以下(多くは10mm前後)の細めの小さなカミキリムシで、ハンノアオカミキリの様な緑色の金属光沢を持つ種も多いが、リンゴカミキリやこのキクスイカミキリに似た比較的地味な種類も多い。前の写真の部分拡大.カミキリムシらしく大顎が頑丈そう(写真クリックで拡大表示)(2010/05/09) 以前紹介した、やはり小型のルリカミキリは、族は異なるが亜科までは同じである。ルリカミキリでは複眼が上下に分かれていたので、このキクスイカミキリではどうだか見てみた。下の写真でお分かりの様に、触角の基部をグルリと取り巻いていてはいるが、分離はしていなかった。複眼は触角の根元をグルリと取り巻いている(写真クリックでピクセル等倍)(2010/05/10) 何故、このカミキリがほぼ毎年我が家の庭に現れるとと言うと、それは菊が植えてあるからである。キクスイカミキリは、菊の大害虫なのである。菊の園芸種(在来品種)や野草ではヨモギがよくやられているが、今回は「北米原産シオンの1種(紫花)」(通称友禅菊)に来ていた。害虫としてのキクスイカミキリは、また別に紹介しよう。
2010.05.13
コメント(4)
今日はバッチイ虫を紹介しよう。これまでも双翅目では衛生昆虫の範疇に入る虫(ツヤホソバエ類、オオチョウバエ等)を何種か掲載したが、今日のは甲虫、不潔な甲虫と言えば、真っ先に思い浮かべるのがコガネムシ科の食糞群、即ち、センチコガネ、マグソコガネ、ダイコクコガネ等の、所謂糞虫の類である。 今日紹介するのは、その内のダイコクコガネ亜科(Scarabaeinae)に属すコブマルエンマコガネ(Onthophagus atripennis)。体長は7mm前後(図鑑では5~9mm)と普通のコガネムシよりは小さいが、糞虫としては大きい方である。コブマルエンマコガネ(雄).頭部の先端は上向きのヘラ状胸背にはやや複雑は凹凸がある(写真クリックで拡大表示)(2009/08/28) どうもこの連中は苦手である。雌雄で形態が違うし、雄にある突起の形は体の大きさ(幼虫時代の栄養の多寡)で相当に変化する。これはクワガタやカブトムシでも同じだが、多くは1cmに満たない小さい種類なのでずっと分かり難い。 実は、糞虫類の種類を詳しく調べるのはこれが始めてである。まず、保育社の甲虫図鑑にあるコガネムシ科の検索表を使って、亜科を調べる。触角は8節か9節なので、11節のセンチコガネ亜科ではない。また、第8節が杯状ではないのでアツバコガネ亜科でもない。残るはマグソコガネ亜科かダイコクコガネ亜科となる。検索表に拠れば、前者では尾節板(お尻の先端)は一般に上翅(鞘翅)に被われて見えず、後脛節の端棘は2本、後者では尾節板は上翅より露出し、後脛節の端棘は1本、とある。写真を見ると、お尻の先端が見える。また、後脛節端には長い棘が1本と短い突起が1つ認められ、この状態が「端棘が1本」と言えるのか些か自信がないが、図鑑の図版を見るとダイコクコガネ亜科の虫の後脛節端と同じ形をしている。従って、写真の虫はダイコクコガネ亜科に属すと考えて問題ないであろう。後脛節端には長い棘が1本と短い突起がある見難いが複眼の間に1対の突起があるお尻の先が鞘翅からはみ出している胸背の点刻はかなり疎で浅い(写真クリックで拡大表示)(2009/08/28) 次は属の検索である。後付節の基節(第1節)は第2節より遙かに長いのでダイコクコガネ族(Coprini)となり、前胸背板の後縁に沿う溝がなく、後縁は上反しないので、エンマコガネ属(Onthophagus)かコエンマコガネ属(Caccobius)と言うことになる。この2者は前脛節端の形で区別され、先端が内縁と鋭角をなして斜めに裁断されていればエンマコガネ属、ほぼ直角であればコエンマコガネ属である。しかし、これは写真からは一寸分かり難い。こうなると、この2属に属す虫の写真をInternetで探して比較することになる。撮影したのは何分にも都内の住宅地だから、珍種は居ない、と言う想定である。幸いなことに、東京都本土部昆虫目録にはエンマコガネ属は7種、コエンマコガネ属は1種しか記録されていない(九大の日本産昆虫目録では前者が29種、後者が5種)。頭部中央には明確な横隆条があり、やや弧状をなす鞘翅の間室は平坦で、毛が2列ずつある(写真クリックで拡大表示)(2009/08/28) この糞虫の特徴として注目したのは、先ず頭部先端が上向きにヘラ状になっていることである。何処となく茶道に使う灰匙を思い浮かべさせる。また、胸背の中央に縦の窪みがあり、その左右には隆起があって、更にその外側に若干の窪みが認められる(下の写真)。 これらを目当てにして探し当てたのがコブマルエンマコガネの雄であった。図鑑に戻ってその記載を読むと、「頭部中央の横隆条は♂では明瞭でやや弧状、♀では直線状、後方の横隆条は両複眼間にあり、やや湾曲し小さい2角状.前胸背板[胸背]の点刻は小円形で疎、側方のものは毛をともなう.上翅の間室[鞘翅の溝と溝との間の部分]は平坦、毛をともなう微小点刻をほぼ2列に並べる」とある([]内は用語説明)。一応、これらの特徴と一致する様である。また、日本各地に普通、都市でもよく見られる種類とのことなので、コブマルエンマコガネで間違い無いであろう。胸背中央に窪みがあり、その左右は隆起し、更にその外側は少し窪む頭部中央の横隆条が良く見え、触角は8節か9節であるのが分かる(写真クリックで拡大表示)(2009/08/28) 頭部先端がヘラ状になることや胸背のデコボコは雄の特徴であり、雌ではヘラ状のものが頭部の辺縁全体に拡がって庇状となり、胸背にデコボコは無い。これらはInternet上の写真やその解説からの情報である。保育社の甲虫図鑑には雌雄双方の写真が載せられているが、小さくてよく分からないし、解説にはこれらのことが全く書かれていない。もう少し解説を詳細にして貰わないと、同定に不安が残る。活字だけのページを増やすのは図版を増やすのよりはずっと安いと思うので、出来るだけ解説を詳しく書いて欲しいものである。 尚、このコブマルエンマコガネは獣糞や腐肉の他、場合によっては腐ったキノコなども食べるそうである。この種が都会の中で生き残っているのは、やはり普通の糞虫よりも食物スペクトルが広いからなのであろう。
2009.09.05
コメント(8)
今日は「庭を漂う微小な羽虫」の第4回目である。 前回(3回目)は、ケシキスイ科デオケシキスイ亜科の虫をハネカクシと間違えたりしたが、今回は本物のハネカクシである。体長は1.7mm、等倍接写としては限界的な大きさで、今日の写真は何れもピクセル等倍である。当然、画質が悪いが、何卒御勘弁頂きたい。空中を浮遊していたハネカクシの1種.体長1.7mm背景の桃色のは私の掌.ピクセル等倍(以下同じ)(2009/09/01) 肉眼で見た感じは、第1回目のチャタテムシに似ており、直径2mm位の霞んだ玉の様に見えた。これもまた、左手で掬って捕まえた。やはり手で直接捕まえるのは虫体を傷つける様で、触角の片側が無くなっている。しかし、この程度に小さい虫を、径36cmの汚れたネットで採ると、大きな網の中の何処に虫が居るのか分からなくなり、ボヤボヤしている間に逃げられてしまうことが多い。それで、ついつい手で掬ってしまうのである。 触角は片一方になってしまったが、まだチャンと生きていて、逃げ出しそうな雰囲気であった。そこでコールド・スプレーを掛けたのだが、やや掛け過ぎだったらしく、始めは動いていたが、やがて動かなくなってしまった。どうもコールド・スプレーの使い方がまだ分かっていない様である。虫君には気の毒なことをしてしまった。腹側にも点刻がある.腹部には毛が多い(2009/09/01) 始めは左手にくっ付いたままのを撮ったのだが、まだ早朝で頭がシッカリしていないせいか、中々焦点が合わない。年を取ると、こうだから困る。そこで、白い紙を持って来てその上に虫を置いて撮影した。左手が空けば、テーブルの上にその肘を乗せてカメラを固定出来るので、焦点合わせがずっと楽になる。背側から見たハネカクシの1種.如何にもハネカクシらしい形小さな鞘翅(前翅)の中に後翅が畳まれている(2009/09/01) ハネカクシ科は鞘翅目(甲虫)に属すが、腹部の大半が鞘翅からはみ出していているし、細長いし、余り甲虫とは思えない変な虫である。大きさは1.0mm~20mmとかなりの幅があり、九州大学の日本産昆虫目録では1023種、しかし、実際にはその2倍近くが棲息しているらしい。 保育社の甲虫図鑑には、その内の363種が載っている。図鑑の性質上、余り小さい虫は載って居らず、2mmに満たない種類はほんの数種だけである。その中ではチビニセユミセミゾハネカクシ(Carpelimus exiguus、体長1.5~1.8mm)が一番似ているが、斑紋も無く特徴に乏しいので、そうだと決めつけることは出来ない。亜科への検索表も手元に無いので、此処では単に「ハネカクシの1種」としておく。横から見るとかなり反り返っている(2009/09/01) 楽天ブログでは、一つの記事に複数のカテゴリーを指定することが出来ない(ココログやウェブリブログでは可能)のは困ったものである。当Weblogは昆虫の分類学的なグループ名をカテゴリーとしているので、「庭を漂う微小な羽虫」などと言うカテゴリーは作れない。其処で、以下の様な索引を付けておくことにした。 「庭を漂う微小な羽虫」の記事索引: 1.ウスイロチャタテ科の1種(Ectopsocus sp.)?:チャタテムシ科 2.ヒラタアブラムシ亜科の1種(有翅形) :アブラムシ科 3.デオケシキスイ亜科の1種 :ケシキスイ科
2009.09.02
コメント(6)
今日は、「庭を漂う微小な羽虫」の第3段である。 一昨日の夕方、もう少し暗くなってきたとき、妙な言い方だが、今までの羽虫よりも「核」のある虫がフワリフワリと漂っていた。これは一寸違うぞと言う感じがして、殆ど瞬間的に左手が動き、虫を掬ってしまった。これまでの虫とは異なり、左の掌に何かがぶつかる軽いが明らかな衝撃を感じた。 手を開いてみると、まだ動いている。逃げられるといけないので手を閉じ、コールド・スプレーを指の間から噴霧して低温で動けなくしてから(三枝先生に教えて頂いた方法)、マクロレンズで覗いてみた。前翅が短く腹がはみ出している。一見したところハネカクシに似ている。 しかし、まだコールド・スプレーのかけ方が足りないらしく、今にも飛び立ちそう。其処で、もう一度手を閉じて今度はしっかりスプレーをかけた。しかし、手を開いてみると、虫が居ない。スプレーの勢いで、指の隙間から何処かへ吹っ飛んでしまったらしい。全く何をやっているのだ・・・。そんな訳で、今日の写真は1枚だけである。デオケシキスイ亜科の1種.体長2.1mm、ハネカクシと間違えた(写真クリックで拡大表示)(2009/07/) しかし、この虫、本当にハネカクシか? 体長2.1mmと小さいのは良いとして(1mm位の種類もある)、先ず触角がおかしい。先端3節が膨らんで丸くなっているし、第1節と思われる部分も肥大してな変な格好になっている。それに、妙に円らな可愛い眼をしている。こんなハネカクシは見たことがない。 鞘翅(前翅)が短く見えるのは翅がカメラの方向に立っているからで、本当は腹部を隠すだけの長さがあるではないか。しかし、鞘翅の先端は切り取った様な形になっており、これで腹部全体を被うことが出来るとは考えられない。 ハネカクシ科の近縁にアリヅカムシ科と言うのがある(ハネカクシ科に入れる場合もある)。この科の連中も前翅が短く腹がはみ出している。体長は4mm以下(多くは2mm前後)と微小で、図鑑を見ると、触角や頭部の形は写真の虫とよく似ている。しかし、アリヅカムシの胸部は何れも丸く、頭部と余り変わらないほど小さく纏まっており、写真の虫の様に横に拡がって翼状になっているものはない。 よく調べてみると、ハネカクシの近縁以外にもケシキスイ科のデオケシキスイ亜科に四角い前翅を持ち腹部が露出される種類があることが分かった。デオケシキスイとは、「出尾芥子木吸」の意らしい。しかも、この科の仲間は何れも触角の先端3節が球桿となり、頭部の構造もソックリである。 図鑑を見ると、その中でもヘリグロデオキスイと言うのがよく似ており、特に腹部が上に曲がった所がソックリである。しかし、色は口の周りを除いてもっと濃く、特に、鞘翅は「ヘリグロ」の名の通り周囲が黒っぽい。まァ、何分にも小さいし、鞘翅を立てた状態の写真しか無い。デオケシキスイ亜科に属すことは間違いないと思うので、此処では単にデオケシキスイ亜科(Carpophilinae)の1種としておく。 実は、ケシキスイ科の虫を見るのは、今回が初めてである。しかし、それ程珍しい虫ではない様で、九州大学の日本産昆虫目録には161種が登録されている。保育社の甲虫図鑑に拠ると、大きな種(18mm)もあるが、多くは5mm以下、1mmのものもあるとのこと。小さいので余り目に付かないのであろう。食性は多様らしく、花、樹液、落果、キノコ、朽ち木、貯穀、腐肉などに見られる、と書かれている。しかし、こう言う虫が、我が家の庭を浮遊しているとは夢にも思わなかった。 追記:当初、この虫の正体が良く分からず、本稿の表題を「ハネカクシ科の1種(?)」としていた。しかし、投稿の翌日にケシキスイ科デオケシキスイ亜科の虫であることが判明し、それに従って、表題と本文を書き改めた。
2009.08.28
コメント(7)
先日、ベランダの椅子で一服していると、横に生えているクチナシの葉裏に体長3mm位の黒っぽい虫が居るのに気が付いた。以前紹介したハリブトシリアゲアリかと思ったが、腹の辺りが少し膨れている。どうも別の虫らしい。 早速、マクロレンズで覗いてみると、甲虫の1種であった。見たことのない虫、何となく、ゴミムシ的な体形をしている。 こう言う小さい甲虫は種の判別が難しい。しかし、鞘翅に明らかな模様があるから、何とかなるであろう。 ヒロオビジョウカイモドキ(雌).体長は3.5mm雄の触角第1節と第2節は長く異常に膨らむ(写真クリックで拡大表示)(2009/08/06) データをコムピュータに移し拡大してみると、口は咀嚼型の様で少なくとも大顎は発達していない。ゴミムシ(オサムシ科)の類ではない。こうなると、もう何科か分からない。図鑑を端から見てゆくことになる。 と言っても、カミキリムシ、テントウムシ、コガネムシ、タマムシ、ゾウムシ・・・等、明らかに該当しない科が多いから、それ程時間は掛からない。直ぐにジョウカイモドキ科オビジョウカイモドキ属(Intybia)の1種であることが分かった。ジョウカイモドキ科・・・今まで見たことのない虫である。体長は3.5mm。 横から見るとかなり毛が生えている(写真クリックで拡大表示)(2009/08/06) ジョウカイモドキとは、ジョウカイボンに似ているから付いた名前と思う。このジョウカイボン(例えばセボシジョウカイ)と言うのは、カミキリムシに似た触角の長い細長い虫である(ジョウカイボンは鞘翅が柔らかいので、カミキリムシとの区別は容易)。そのジョウカイボンに似ていると言うのだが、図鑑を見ると、その多くはジョウカイボンとは余り、と言うより、殆ど似ていない。特にこのオビジョウカイモドキ類は、ジョウカイボンとはゼンゼン似ていない。全く、紛らわしい名前を付けるものである。 日本産オビジョウカイモドキ属は7種の様で、その内本州に棲息するのは5種、しかし、ヒロオビジョウカイモドキ以外は皆かなりの珍種らしい。我が家は、東京都内のかなり大きな商店街から僅か150mの距離にある。珍種が居るとは考え難い。消去法により、自動的にこの虫はヒロオビジョウカイモドキ(Intybia historio = Laius historio)と相成った(九州大学の目録には、Intybia属は無く、全てLaius属となっている)。胸部は腹部に較べて厚みがない.設定を間違えて撮ったので解像力が低く、虫体を小さくしてある(写真クリックで拡大表示)(2009/08/06) このオビジョウカイモドキ属(Intybia)、並びに、その近縁であるイソジョウカイモドキ属(Laius)では、雄の触角第1節と第2節が長く異常に膨らんで面白い形になる。しかし、写真の個体は残念ながら雌、その部分が一寸膨らんでいるだけである。 ジョウカイモドキの仲間には、花に集まる種類が多いらしい。「花粉などを食す」と書いてあるサイトもあるが、保育社の甲虫図鑑には「成虫、幼虫ともに肉食性」と書いてある。このヒロオビジョウカイモドキはどうかと言うと、明らかに捕食性と思われる。テントウムシと同じ様に、葉を一枚いちまい調べながら、忙しく走り回っている。徘徊型捕食性の典型的行動である。正面から見たヒロオビジョウカイモドキ.口は咀嚼型の様に見える(写真クリックで拡大表示)(2009/08/06) 賢明な読者は気付かれたかも知れないが、このヒロオビジョウカイモドキも先日のウスグモスズ、ヒメテントウの1種(コクロヒメテントウ?)も、皆クチナシの葉裏に居た虫である。しかも、同じ日(2009/08/06)。 2年前までは、オオスカシバの幼虫を駆除する為に屡々アース・ジェットをクチナシの株全体に噴霧していた。しかし、こうするとクチナシに居る虫が全滅してしまう。そこで、昨年からは出来るだけ殺虫剤を使わない様にしている。御蔭で、この3種以外にもハリブトシリアゲアリやクロヒラタヨコバイ等を撮ることが出来た。クチナシもハギに似て、色々な虫が様々な物語を繰り広げている舞台の様である。
2009.08.11
コメント(10)
数日前の早朝、新聞を取りに行くとき、中庭のスレートの上にコフキコガネらしき甲虫が仰向けにひっくり返っているのを見付けた。今時、良くあることである。もう御臨終と思って気にも留めなかったのだが、新聞を持って戻る時、良く見てみると少し動いている。まだ生きていたのである。 触角先端の片状部が短いのでこれは雌。雄はこの片状部が雌の3倍位あってカッコイイのだが、何れにせよコフキコガネはまだ掲載していない。早速カメラを持って来て写真を撮ることにした。しかし、スレートの上にひっくり返っているのでは絵にならない。そこで、適当な葉の上に乗せてみたが、葉表は爪が引っ掛かり難いらしく直ぐに葉裏に行ってしまう。しかし、葉裏は好きではない様でまた表の方に上がろうとする。葉っぱの裏から表に上がろうとするコフキコガネ体毛は頭部を除いて白っぽい写真クリックで拡大表示(2009/07/26) どうも葉っぱの上は好きではないらしい。そこで、シッカリ掴まれそうなハナモモの幹に移してやった。今まで、余り元気そうに見えなかったのだが、樹皮に爪をかけた途端、急に元気よく歩き出した。ハナモモの幹を歩くコフキコガネ.体毛は白っぽい写真クリックで拡大表示(2009/07/26) 元気よく歩き出しただけではない。やがて、上翅を拡げて飛んでいってしまった。これまでの経験からしても、コガネムシの類は一見死にかかっている様でも、暫くすると急に元気になったりする。死にかかっている様に見えるときは、寝ているか、或いは、寝呆けているのだろうか。鞘翅を拡げて飛び立たんとするコフキコガネこの後、元気よく飛んで行った写真クリックで拡大表示(2009/07/26) さて、コフキコガネと書いたが、これにはオオコフキコガネと言う類似種があり、この辺り(東京都世田谷区西部)にも棲息しているらしい。保育社の甲虫図鑑に載っている検索表では、両者の違いは先ず体毛で分けられる。前者では「体毛は黄褐色、時にやや白っぽい黄褐色」、後者では「灰白色、またはやや黄色みを帯びた灰白色」である。しかし、実際問題として「やや白っぽい黄褐色」と「やや黄色を帯びた灰白色」でどの程度違うのか??一昨年撮ったコフキコガネ.体毛は黄褐色に見える写真クリックで拡大表示(2007/08/17) 実は、一昨年にもコフキコガネと思われる雌の個体を撮ってある。鞘翅が少し欠けて居たので掲載しなかったのだが、それと比較してみよう(上の写真)。体毛はかなり剥げているが、1~3番目の写真に写っている個体よりもずっと黄褐色を帯びている。この一昨年の個体がコフキコガネならば、最初の個体はオオコフキコガネなのであろうか。最初の個体の顔.触角が短いが愛嬌は満点.体毛は白い写真クリックで拡大表示(2009/07/26) しかし、顔の辺りを撮った写真を見ると、今年の個体(上)でも、一昨年の個体(下)でも、殆ど体毛の色は違わない。淡褐色の被写体は、色温度を低く設定して現像すれば灰色になり、高くして現像すれば黄褐色になる。また、色補正で青を強くすれば灰色になり、弱くすれば黄褐色になる。・・・と言うことで、体毛の色で両者の違いを判断するのは、実物ならば兎も角、写真からはかなり難しい様である。 それならば、色の違い以外に、この両者にどの様な違いがあるのか? 保育社の昆虫図鑑甲虫編に拠ると、コフキコガネ雌では頭楯両側縁は前方に向かい明らかに狭くなるのに対し、オオコフキコガネ雌では殆ど平行とある。頭楯と言うのは、この場合、頭部背側の先端部、上や下の写真では、丁度カッパのお皿の様に見える部分である(尚、頭楯の形は雄と雌で異なるので注意)。一昨年に撮った個体.今年撮った個体と体毛の色に違いは認め難い愛嬌の度合いもまた優劣付け難し写真クリックで拡大表示(2007/08/17) 狭くなるか平行か。文意の違いは明瞭だが、側縁と前縁の境は丸味を帯びて曲がっているのだから、写真からの判断は是亦中々難しい。実際、背面から撮った2番目や4番目の写真を眺めてもハッキリしない。しかし、斜め横から撮った最初の写真や、最後の2枚の写真を見ると、側縁は前方に向かってほぼ一定の角度を保って次第に狭くなっていると判断出来る。・・・と言うことでこの2個体は共にコフキコガネ(Melolontha japonica)と相成った。 ところで、コフキコガネの幼虫も勿論ネキリムシである。我が家の灌木を枯らした犯人の一人?ではないだろうか。・・・しかし、調べてみると、コフキコガネの幼虫は、マメコガネや先日掲載したセマダラコガネと同じく草本類の根を好み、時にゴルフ場の芝に被害を齎すことはあっても、普通の植物に大きな被害を与えることは無い様である。また、成虫の方も木の葉を食べることは食べるが、余程の数が集まらない限り問題になることはないらしい。 これまで、アオドウガネやマメコガネは見付け次第捕殺していたが、コフキコガネはその愛嬌に免じて時に釈放していた。大した害が無いのなら、これからは、コフキコガネはみな逃がしてやることにしよう。
2009.07.29
コメント(8)
今日は、我が家では余り評判の芳しくないコガネムシの類を紹介する。セマダラコガネ(Blitopertha orientalis)、背中に斑模様のある体長1cm前後の比較的小さなコガネムシである。 何故評判が芳しくないかと言えば、コガネムシの幼虫は所謂ネキリムシで、我が家ではこのネキリムシで枯れたと思われる灌木がこれまでに10数本に及ぶからである。木が急に萎れだし、水をやっても全く効果は無く、そのまま枯れてしまう。アジサイの様に叢生するものでは、部分的に枯れて行き、やがて全滅する。初めは、何か病気にでも罹って枯れるのかと思っていたが、ある時、オルトラン粒剤を撒いてみたところ、萎れが途中で止まり、残りは生き延びることが出来た。その後、同じ様な症状が出た場合、何れもオルトラン粒剤で助かっているので、これは、どうやらネキリムシの仕業であろう、と判断したのである。セマダラコガネ.背中の斑紋は白~黒の変異が大きい写真の個体の斑紋は中間的(2009/07/01) この辺りにいるコガネムシ(スジコガネ亜科、コフキコガネ亜科)と言えば、このセマダラコガネの他にアオドウガネ、マメコガネ、ビロウドコガネ、コフキコガネが居る位なもので種類は非常に少ない。尤も、基本的に見付け次第捕殺してしまうので、キチンと形態を観察していないし(マメコガネを除いて類似種が居る)、余り興味のあるグループではないので関心が薄く、コガネムシ、ドウガネブイブイ、クロコガネ等も居た様な気もするが、記憶が定かでない。なお、ハナムグリやカナブンはハナムグリ亜科に属し、その幼虫は、カブトムシと同じで腐植を餌とし、生きた植物の根を食べることはない。上向きの姿勢を取ることが多い(2009/07/01) コガネムシ類は、幼虫が植物の根を食害するだけでなく、成虫も葉を食害するものが多い。我が家の近くに並木として植えられたサクラの若木があるが、昨年は何故かその1本にアオドウガネが集まり、殆ど丸坊主にしてしまった。 マメコガネは1916年にアメリカ合衆国で日本からの帰化が確認され、Japanese beetleと名付けられた。この虫は新天地で急速に分布を拡大し、多くの有用植物の葉を食害して甚大な被害を与えた。それは、大東亜戦争時に反日宣伝に使われたくらい酷いものであったと言う。触角や口の周りには細かい毛が生えてる(2009/07/01) このセマダラコガネ(米国では、oriental beetle、或いは、Asiatic beetleと呼ばれている)はどうかと言うと、幼虫は多くは草本植物の根を食べるとのこと。最近は、ゴルフ場の芝に被害を与えるのでかなりの問題になっている様だが、まァ、私としては、ゴルフ場なんぞはどうなっても宜しい。しかし、我が家にあった「祖先伝来」のフウチソウ(戦前からあったらしい)を枯らした犯人は、このセマダラコガネである可能性が高い(マメコガネも容疑者候補、共犯かも知れない)。 成虫はどうかと言うと、何故か、日本国内では成虫の食性に関してキチンと書いたサイトが見つからない。そこで、外国のサイトを参照すると、バラやタチアオイ、ペチュニア等の花を多少食害することがあるらしい。しかし、「Adults feed very little」とか「adult beetles apparently do little feeding」と書かれて居り、花卉以外への被害は殆ど問題にならない様である。害虫ではあるが中々愛嬌がある(2009/07/01) ・・・と言う訳で、写真のセマダラコガネ君、我が家ではフウチソウを枯らした犯人として「かなり黒に近い灰色」と見なされているが、コフキコガネと同様触角が大きく(雌では小さい)、中々愛嬌のある虫ではある。後脚を突っ張るマメコガネと異なり、1~4番目の写真の様に少し上向きで遠くを眺める様な姿勢をとることが多い。この格好をしているときに、真っ正面、少し下側から撮ると面白い写真が撮れるのだが、残念ながら障害物があって、斜め前からしか撮れなかった。 何とか真っ正面から撮れないかと思って枝を動かしたりしていたら、セマダラ君、警戒してマメコガネの様に葉っぱに這いつくばってしまった。仕方なく、その姿勢を真ん前から撮ったのが下の写真。何だか、複眼や口の周りがハッキリしないが、別にボケている訳ではない。細かい毛があって、輪郭が不明瞭になっているらしい。真っ正面からみたセマダラコガネ(2009/07/01) 梅雨も明け、此処3日程、真夏の太陽が照りつけている。この分では、我が家の庭はいずれ「夏枯れ」状態になるものと予想される。しかし、6月下旬以降に撮った写真がまだかなりある。ネタ切れの心配は、暫くの間は無用と思われる。
2009.07.16
コメント(10)
最近、もう一つのWeblogの為に、1kmほど北にある世田谷区の家庭菜園に時々出かける。やはり、菜園は菜園、住宅地や草原では見かけない農業上の害虫が居る。その中で最も典型的な農業害虫だと思ったのが、ウリハムシである。ニガウリを除くウリ科作物には集っているが、その他の野菜には全く付いていない。かなり敏感なハムシなので、人が近づくと直ぐに飛んで別の作物に移ることがあるが、やがて本来のウリ科作物に戻る。 そのウリハムシが、何故か我が家の庭に現れ、一泊してまた何処かへ去っていった。ウリハムシ.色は違うが同属のクロウリハムシに体形はそっくり(2008/09/06) 同属のクロウリハムシや別属だが姿が似ているウリハムシモドキなどはかなり広範囲の植物を食べる。しかし、このウリハムシはウリ科専門の様である。我が家には、ウリ科植物は雑草を含めても1種も生えていない。何故やって来たのか知るよしもないが、まァ、生き物のすること、時として意外な行動を取ることもあるのだろう。ウリ科の大害虫だが、我が家にウリ科植物は無い腹が大きいので雌であろう(2008/09/06) 写真で見ると少し茶色っぽいが、肉眼では真っ赤に近く見える。ウリハムシモドキと較べるとずっと色鮮やかで、綺麗と言えば綺麗である。ハムシを前から見ると同じ様な顔をしているのが多い(2008/09/06) しかし、どうも我が家に現れるハムシは同じ様な形のものが多くて面白くない。ハムシ科には10以上の亜科があり、日本には700種以上が棲息するが、これまでに掲載したのは、ヒゲナガハムシ亜科(ウリハムシ、クロウリハムシ、ウリハムシモドキ)、ノミハムシ亜科(ルリマルノミハムシ、テントウノミハムシ)、クビボソハムシ亜科(キバラルリクビボソハムシ、キベリクビボソハムシ)の3亜科7種に過ぎない。ハムシ科の中にはトゲハムシ亜科、コブハムシ亜科(ムシクソハムシ)、カメノコハムシ亜科の様な変わった連中も居る。もう少し変わったハムシが現れないものであろうか。ハムシでもやはり斜め前からが一番写りがよい(2008/09/06) すっかりグチになってしまったが、無い物ねだりをしても仕方がない。その内、ハッとする様なハムシの現れることを期待して、地道に庭の偵察をするしかないであろう。
2008.09.21
コメント(19)
今日はまた、我が家の嫌われ者、コガネムシの類である。 我が家にやってくるコガネムシの仲間で、小型の種類と言えば、ハナムグリ類を除くと、マメコガネとビロウドコガネの類くらいなものである。しかし、何時も見付け次第駆除しているので、種類を調べたことがない。 マメコガネ属(Popillia)は日本全国に3種しか居らず、しかも、マメコガネ以外の2種は沖縄周辺の島嶼部にのみ産するので、この辺り(東京都世田谷区)に居るのはマメコガネだけである。そこで、ビロウドコガネも、まァ、似た様なもので1種だけかと思っていたら、大間違い、類似種が沢山ある。 ビロウドコガネ属(Maladera)は、九大の目録で22種、保育社の「原色日本甲虫図鑑第3巻」には11種が載っていて、しかも、その内の6~7種は黒っぽい色をしており非常によく似ている。この内本州に産するのは、九大の目録でも図鑑でも4種。さて、写真のコガネムシはその何れであろうか?ホトトギスの葉に留まったビロウドコガネ(2008/09/01) 保育社の図鑑に拠ると、ビロウドコガネは「触角は10節、前脛節は3外歯をそなえるが、第3歯は鈍い。頭楯は密に点刻されるが横じわ状とならない」とある。触角が何節あるかは、原画を拡大しても分からないし、前脛節の外歯も良く見えない。頭楯は点刻されている様に見え、横じわが認められないのは確かである。しかし、これだけでビロウドコガネとするには、幾ら何でも証拠不足と言わねばなるまい。悪いヤツだが眼と触角は可愛い(2008/09/01) 其処で、他の3種を見てみよう。ヒメビロウドコガネは「前胸背版の前縁が中央にも直立した縁毛をそなえる」とあるが、どの写真を見ても前縁中央に縁毛が無いのは明らかなので、ヒメではない。 オオビロウドコガネは「・・・後脛節の外端刺は第1付節よりも長い」とある。横から見た写真で分かるとおり、後脛節の外端刺は第1付節の半分位しかないので、これも違う。 残るはマルガタビロウドコガネだが、これは「頭楯はしわ状に点刻される。後腿節は・・・前縁は細かい鋸歯状となる」とある。頭楯に皺は認められないし、2番目、3番目の写真の原画を拡大しても、後腿節の前縁は滑らかである。従って、マルガタではない。前から撮ろうとしたが枝が邪魔して駄目腹部が随分赤いのは意外であった(2008/09/01) ・・・と言うことで、消去法により、このコガネムシの名前はビロウドコガネと相成った。もう少し変な種類の方が面白かったのだが、残念!!
2008.09.04
コメント(10)
このところよく雨が降る。一昨日の晩から翌日の朝にかけては特に酷く、我が家の「簡易雨量計」(只の円筒形のゴミ箱)に18cmも雨水が溜まっていた。昨日の夕方から今日の朝も、5~6cm溜まった。 大雨が降ると虫達は何処かに避難してしまうのか、陽が射して来ても暫くは姿を見せない。しかし、今日の早朝、日本シャクナゲの葉上に緑色のコガネムシの類が居るのを見付けた。雨の降っている間も此処に居たらしく水滴だらけ。 バッタ、トンボの他に、このコガネムシの類も実は苦手である。我が家の「大害虫」ネキリムシの親だから、普段は見付け次第あの世に行って貰うことになっているので観察する機会がないし、また、基本的に余り興味を感じない虫なのである。しかし、今は、ネタ切れに近い状態、一応写真を撮ることにした。 この辺りにいる緑色のコガネムシの類には、大きく分けてカナブン属、コガネムシ属、サクラコガネ属(Anomala=スジコガネ属:ドウガネブイブイ類)など何通りかの候補がある。図鑑を引っ張り出して調べてみると、此奴はどうやらアオドウガネの様である。アオドウガネ.幼虫はネキリムシ、成虫は我が家ではクリやコナラの葉を食害する(2008/08/31) カナブン類は樹液に集まり、体が平たく、背側から見ると輪郭が角ばっているので直ぐに分かる。小楯板の形も独特である。コガネムシとドウガネブイブイの仲間は形がよく似ていており、樹液には集まらず、木の葉っぱを食べる点でも共通している。図鑑の検索表に拠れば、両者の決定的な形態的相違は、コガネムシ属には前胸腹板に突起があり、サクラコガネ属には無いことなのだが、写真からは腹側にある腹板はよく見えない。鞘翅の下から長毛が沢山出ている(2008/08/31) しかし、この際、全体的なコガネムシ属とサクラコガネ属の区別をする必要はない。この辺りに居るのはコガネムシ、ドウガネブイブイ、アオドウガネの3種であろう。これらの区別が付けばよい。 ドウガネブイブイやアオドウガネには、腹節の両側に長い毛の束があるが、コガネムシではこれが明確でない。写真には鞘翅の下から長毛が沢山出ているのが見えるから、これはドウガネブイブイの仲間である。水滴だらけのアオドウガネ.元気がない(2008/08/31) ドウガネブイブイは普通は銅色をしているが緑色の個体もある。これとアオドウガネは、図鑑の検索表に拠れば、上翅(鞘翅)の側縁隆起が前者では第2腹節中央より後には達しないことで区別できる。2番目の写真で明らかな様に、側縁の隆起は翅端にまで達している。・・・と言うことで、これはアオドウガネである。目出度しメデタシ。アオドウガネの顔.複眼が白っぽい.白内障??(2008/08/31) 何分にもアオドウガネは我が家の「大害虫」である。撮影が終わり次第あの世へ行って貰うつもりだったのだが、このアオドウガネ、写真でも感じられる様に、まるで元気がない。一寸触ったら下の草むらの中に落ちて、ヨタヨタ歩いている。 どうやらもう寿命が無い様である。わざわざ殺すこともあるまい。その儘放って置くことにした。
2008.08.31
コメント(15)
我が家の庭は、相変わらず「夏枯れ」状態である。其処でまたゾロ昨年の写真を引っ張り出すことになる。ヒメトラハナムグリ、この辺り(東京都世田谷区)では珍しい方に入る虫である。 珍しい方に入るのに何故掲載しなかったのか、些か不可解である。もっと良い写真を撮るまで待とうと思っていたのかも知れない。ニワナナカマドにやって来たヒメトラハナムグリ(2007/06/09) 昨年の6月上旬、ニワナナカマドの花が満開のときに我が家にやって来た。一昨年は見ていないし、今年も見ていないから、数年に一度の来訪なのかも知れない。花の中を花粉まみれになって歩くヒメトラ(2007/06/09) この辺りに棲息するハナムグリとしては、他にシロテンハナムグリと既に掲載済みのコアオハナムグリが居る。シロテンハナムグリは、名前は「ハナムグリ」でも、花にやって来たのを見たことが無い。昔は、町の奥の方に沢山生えているクヌギの樹液などに、オオスズメバチやクワガタ類と一緒に集っていたが、今はどうなっているのだろうか? 非常に敏感な甲虫で、クワガタを落とす為にクヌギの幹を蹴ると、クワガタやカナブンは落ちて来るが、シロテンは落下の途中で翅を開いて飛んで逃げてしまう。花の中に潜ってしまうので写真が撮り難い(2007/06/09) このヒメトラハナムグリも敏感で、刺激しない様に注意して撮らないと、直ぐに逃げられてしまう。飛ぶときはかなりの羽音を立てるし、黒と茶色の段々模様だから、ハチと間違える人が居るらしい。 それ故、ハチに擬態しているという人も居る。しかし、ハチと昔から仲の良い私には、これをハチと間違えることなど考えられない。「擬人的解釈」と思う所以である。花粉で本来の模様がよく見えない(2007/06/09) しかし、毎日暑い。暑さには東南アジアで慣れているはずなのだが、最近は暑期(3~5月)に行くことが少ないので、体が鈍ったのかも知れない。少し、炎天下でも歩いて体を鍛え直すか!!
2008.08.07
コメント(10)
今日は夏らしい虫を紹介する。タケトラカミキリ、昔からこの辺りにいるトラカミキリの1種である。 トラカミキリ類はカミキリムシとしては動作が敏捷で刺激にも敏感、気を付けないと直ぐに飛んで逃げられてしまう。飛び方も素早いので、このタケトラカミキリの様に黄色と黒の模様の場合は、ハチと見間違える人がかなり居る。体長は10~15mmだから、大きさも普通のハチの範囲に入る。それ故、ハチに擬態しているとされるが、人間の目で見て解釈した「擬態」なんぞ、果たして虫にとって意味があるのか、怪しいものである。タケトラカミキリ.触角はカミキリムシとしては長くないトラカミキリの仲間は全てこう言う形をしている(2008/05/03) タケトラカミキリを見るのは久しぶりである。しかし、今年は出るだろう、と思っていた。何故かというと、その徴候があったからである。 このカミキリムシ、名前が示すように、竹を食害する。生の竹ではなく、竹竿や竹垣などの竹の枯れ材にやって来る。昨年の晩春に、台風でハナモモの木が傾いてしまったので、植木屋さんを呼んで支えを作ってもらった。この支えの一部に竹を使ってあるのだが、今年の春、その竹に穴が開いて粉が吹き出しているのを見付けた。犯人はほぼ間違いなくタケトラである。黄色と黒のトラ模様をした種類が多いのでトラカミキリの名がある(2008/05/03) タケトラカミキリに因る竹の被害はかなりのもので、昔の我が家にあった竹垣は2年もするとボロボロになり、3年ごとに作り直さなければならなかった。余りに経費がかかるので、竹から金網に換えてしまった位である。こう言う這いつくばった様な格好をすることが多い(2008/07/03) 日本には、トラカミキリの仲間が80種以上棲息するが、この辺りにいるトラカミキリは、タケトラの他にエグリトラ、ヨツスジトラ、ブドウトラ位なもので、かなり少ない。この内、エグリトラとヨツスジトラは種々の広葉樹に寄生するが、タケトラとブドウトラは、それぞれタケとブドウにしか付かない。ブドウトラの場合は、生きているブドウの枝に入り込み、枝を枯らすので、ブドウの害虫として有名である。真っ正面から見たタケトラカミキリ余り凶暴な顔はしていない(2008/07/03) 以前にも書いたが、姿の良い虫は得をする。カミキリムシはカッコイイ。特にトラカミキリは、精悍な感じのする虫でもあり、何とも言い難い魅力がある。私は特にカミキリムシが好きな訳ではないが、タケトラが我が家の竹に甚大な被害を与えていても、どうも殺す気にはなれない。ストロボの光を嫌って這い回るタケトラカミキリ(2008/07/03) これで、このWeblogで紹介したカミキリムシは、ルリカミキリに続いてやっと2種になった。日本全国には約800種位のカミキリムシが棲息するそうある。幾ら都内の住宅地とはいえ、その1/400とは何とも情けない。 多くのカミキリムシは、タケトラやブドウトラの様に宿主が限定されている。適切な時期にその宿主の元で頑張っていれば、もっと多くのカミキリムシを見付けることが出来るのだが、我が家に植えてある植物の種類は余りにも少ない。
2008.07.24
コメント(14)
このWeblogでは余り甲虫を紹介していない。勘定してみると、全部でたったの13種、「原色日本甲虫図鑑」に拠れば、日本では今のところ約8,800種が記録されていると言うから、甲虫全体の約1/700でしかない。 しかし、ゴミムシ類はよく見かけるが、どうせ種類が分からないだろうから撮る気がしないし、コガネムシ類は結構居るのだが、ネキリムシの被害を可能な限り少なくする為に見付け次第あの世へ行って貰っているので、写真を撮る機会がないし・・・。 それは兎も角、不思議なのは、カミキリムシがこれまで1回も登場していないことである。昔は、ゴマダラカミキリ(以下長くなるので「カミキリ」を省く)、ノコギリ、シロスジ、タケトラ、エグリトラ、キクスイ、リンゴなどは普通に居たし、ヤマ、ヒゲナガ、キボシ、ミドリなども時々現れたと記憶している。名前の分からないサビカミキリ類を庭で見付けたことも何度かある。今日紹介するルリカミキリも、極く普通のカミキリであった。何故、こうもカミキリムシが少なくなったのであろうか。ハナカイドウの中肋を囓っているルリカミキリ.高い所に居るのを300mm望遠と外付けストロボで撮影、こう言う撮り方もある(2008/05/25) カミキリムシは、何れも幼虫が植物組織に穴を空けるので、基本的に害虫である。しかし、中には腐りかけた木しか食べない種類もあるので、森林の掃除役として役に立っている場合もある。 成虫はどうかと言うと、これも葉や果実を食害したり、産卵の為に木に大きな傷を付けたりする。まぁ、一言で言えば、ロクでもない虫と言える。このルリカミキリもナシ、カマツカ、カナメモチ等、各種バラ科の木を食害する害虫である。上の写真は、ハナカイドウの中肋を囓っているところ。何れ、何処かに産卵するつもりであろう。ハナカイドウの下にあるシャクナゲの葉上で寝ているルリカミキリ(2008/05/25) しかし、姿が美しかったり魅力的であったりすると特をするのは人間だけではない様で、カミキリムシは子供ばかりでなく大人にも人気がある。私の様な貧乏人には手が出せないほど高価なカミキリ専門の図鑑が出版されている位である。 このルリカミキリも、大切なハナカイドウに悪さをしにやって来てのだが、カナブンとは待遇が大いに異なり、あの世に送られることもない。シャクナゲの葉裏に逃げたのをひっくり返して撮影(2008/05/25) 最初の写真以外は、夕方になって殆ど寝ているところを撮ったものである。正面から見ると(下の写真)、何か不始末をしでかした会社の役員が、報道陣の前で謝罪している様な格好である。しかし、このカミキリ、チャンと前を見ている。と言うのは、複眼が触角の上下に分かれていて、2対4個あるからである。触角の間に見える1対の小さな黒斑も複眼の一部なのである。謝罪している役員も、屹度、心の眼で前方の報道陣の反応を窺っているに違いない。正面から見たルリカミキリ.「ゴメンナサイ」的姿勢(2008/05/25) 複眼が2対4個ある昆虫は、甲虫類には珍しくない。ミズスマシ科全種(水中と陸用の2対)、カミキリムシの一部、センチコガネの一部、キクイムシ科のPolygraphus(ヨツメキクイムシ?)属、タマガムシ等が2対の複眼を持つ。しかし、触角により2分されるのはカミキリムシだけの様である。
2008.06.29
コメント(11)
テントウムシは、丸くて小さくて、チョコチョコ歩く可愛い虫である。しかし、捕食者から見ると、苦くて不味い「食えない虫」らしい。鳥やトカゲなどもテントウムシは食べないと聞いている。 そのせいか、世の中にはテントウムシに擬態する連中が色々いる(本当に擬態なのかは此処では論じない)。昆虫ばかりでなく、クモ類にもツシマトリノフンダマシとかサカグチトリノフンダマシの様な、テントウムシに擬態したものが居ると言うのだから一寸驚く。 無論、昆虫綱にはよく似たのがゴマンとは言わないが沢山居る。分類学的にかなり離れたところでは、キボシマルウンカと言うウンカの仲間とか、ゴキブリの中にもテントウムシにソックリなのが居るそうである。テントウムシが属す鞘翅目には、テントウムシダマシ科の様な科のレベルで似たようなグループがあるし、テントウミジンムシ(ミジンムシ科)、テントウノミハムシ(ハムシ科)、テントウゴミムシダマシ(ゴミムシダマシ科)の仲間もテントウムシと間違え易い。その他にも、小型のヒメテントウ類に類似する甲虫は色々な科に存在する。テントウノミハムシの1種.触角が長い(2007/10/19) 今日、紹介するのはその中のテントウノミハムシの1種である。ブルーベリーの葉裏に止まっているのを見たときは、てっきりテントウムシだと思った。しかし、マクロレンズで覗いてみると、触角が違う。テントウムシの触角は何れも短くて「先太り」である。この虫の触角は糸状で長い。一寸触ったら、ピンッと跳ねて何処かへ行ってしまった。ノミハムシの仲間であった。横から見ると頭の形はテントウムシ的でない(2007/10/19) 大きさと鞘翅の模様は、ヒメアカホシテントウにソックリ、全く良く真似たものである。しかし、良く見ると、触角ばかりでなく、頭部と胸部の形がテントウムシとは明らかに異なる。この程度では、テントウムシを見慣れた人間には簡単に見破られてしまう。斜めから見ると如何にもハムシ的(2007/10/19) テントウノミハムシ属(Argopistes)には、只のテントウノミハムシ、ヘリグロテントウノミハムシ、ヒメテントウノミハムシ等、互いによく似た4種があるとのこと。残念ながら、この写真だけでは種の判別は無理である。「テントウノミハムシの1種」とする他ない。
2007.10.21
コメント(8)
そろそろ秋の野菊の季節である。前から我が家にある「北米原産シオンの1種」も蕾を沢山付けているが、その前から新参者の友禅菊の類が咲いている。 友禅菊等と言うと如何にも日本のキクの様に感じられる。しかし、実際は主に北米原産のある種の宿根シオン(Aster属)に付けられた総称である。既にベニシジミのところで少し写っているが、今のところ花としては余り大したことがないので紹介はしない。今日の主人公は、その友禅菊にやって来たコアオハナムグリである。友禅菊に頭を突っ込むコアオハナムグリ(2007/09/22) ハナムグリと言う虫は、始終頭を花の中に突っ込んでいるので、よい写真が撮り難い。虫と雖もやはり頭が写らないと写真にならないが、ハナムグリの場合は、背中、酷い場合はお尻しか見えないことが多い。撮る方としてはイライラするのだが、それでいて、一寸チョッカイを出すと、直ぐに飛んで逃げてしまう。モデルとしての才能を甚だ欠いた虫である。葉にしがみつくコアオハナムグリ(2007/09/22) このハナムグリも筒状花の中に頭をつっ込んでいたが、暫くすると何故か花から下の方へ移動し、葉っぱにしがみついて動かなくなった。ハナムグリの顔を撮るには絶好の機会である。コアオハナムグリの胸部と頭部(2007/09/22) 撮った写真を見てみると、随分変な顔をしている。普通のカナブンとは全然違う。何か猿かカッパを思わせる顔。考えてみれば、普通ハナムグリは全身花粉にまみれていてチャンと見たことがない。「すっぴん」の顔を見たのは初めてである。ハナムグリ君の変な顔(2007/09/22) 何枚か撮った後、もう少し別の角度から撮ってみようと思って、一寸手を出した。やはり無謀であった。ハナムグリ君、立ち所に羽音を立てて何処かへ飛んで行ってしまった。
2007.09.24
コメント(6)
最近は、どうも小さな甲虫を紹介することが多い。今日も甲虫のウリハムシモドキ。以前ハムシダマシを紹介したが、ウリハムシモドキはウリ・ハムシモドキではなくウリハムシ・モドキで、ハムシの仲間である。ハムシダマシは居ても、ハムシモドキと言う虫は居ない。 既に掲載済みのキバラルリクビボソハムシやキベリクビボソハムシに比して、鞘翅がペラペラな感じで些か重厚さに欠ける。しかし、ハムシ全体を眺めると、こう言う感じのハムシの方が一般的かも知れない。クリスマスローズの葉先で身繕いするウリハムシモドキ(2007/07/05) このウリハムシモドキ、クリスマスローズの葉の先で、時々身繕いをしながら、動物園の熊さんの如く同じ所を行ったり来たりしていた。動作が敏捷な割には、葉っぱを手で掴んで向きを変えたりしても逃げようとはせず、チャンとモデルになってくれた。斜め上から見たウリハムシモドキ.頭の後半が黒いのがこのハムシの特徴(2007/07/05) 食草はマメ科植物の他、非常に広い範囲の植物を食べると言う。我が家では一体何を食べているのかは分からない。近くにクローバーを被覆植物とした空き地があり、先日、管理業者がそのクローバーを全部刈ってしまったので、或いは、そこから御飯を探しにやって来たのかも知れない。クリスマスローズは毒草だから、幾ら広食性のウリハムシモドキも食べないだろう。真っ正面から見たウリハムシモドキ.仁義を切っている様にも見える(2007/07/05) これまでに紹介したハムシはこのウリハムシモドキで5種類になる。これが今のところ我が家で見られるハムシの総てある。今後新たに見つかる種類もあろうが、5種というのは如何にも少ない。「東京都本土部昆虫目録」のハムシ科には270種もの記録があり、その2パーセントにも達しない。 我が家の庭の生物多様性が如何に貧しいかを証明している様で、何とも寂しい気分になる。
2007.07.11
コメント(2)
今日はゾウムシの1種を紹介する。体長4.0mm、小さなゾウムシである。 残念ながら、種名は分からない。眼から黒いスジが下方に垂れるという特徴を目安にInternetの図鑑等で探して見たが、該当するものが見当たらない。触角が長いので、多分、ソウムシ科のクチブトゾウムシの仲間と思うが、これも定かではない。ゾウムシの1種.触角が長い(2007/06/15) このゾウムシ、かなり以前から我が家の庭の彼方此方で見かける。都内の住宅地に棲んでいるのだからごく普通の種類と思うが、それでも分からないところを見ると、ゾウムシの種類は随分と多いらしい。「東京都本土部昆虫目録」のゾウムシ科を参照すると、実に167種もの記録がある。手元にある文献やInternetに出ているゾウムシ科の昆虫は全国で精々数10種だから、これではやはり無理と言うものであろう。ゾウムシの1種.上の写真と同じ種と思われる(2007/07/05) 一般にゾウムシは動作が鈍く、形勢不利と見ると隠遁の術を使ってポトリと草むらの中に落ち、行方知れずになってしまう。 しかし、動きが鈍い一方で、信じ難い程の「忍耐力」を持っている。例えば、オオスズメバチなど如何にも強そうだが、4塩化炭素の毒瓶に入れると殆ど瞬間的に倒れ、1分も経たない内に完全に死んでしまう。代謝が早いからである。 ところが、ゾウムシはその同じ毒瓶の中で30分位経ってもまだ死なない。動きが止まったので漸く死んだかと思って毒瓶から取り出すと、暫くしてからまた動き出したりする。全く信じがたい連中である。上の写真のゾウムシを背側から見たもの(2007/07/05) 大学院時代に昆虫学のN教授の講義で聞いた話だが、ある種のゾウムシは走査電子顕微鏡の鏡筒に入れ、減圧して検鏡していてもまだ動いているそうである。電子顕微鏡鏡筒内の真空度は宇宙空間よりはずっと低いが、10のマイナス8乗Pa程度の高真空である。その中でもまだ死なないで動いていると言うのは、スゴイとしか言い様がない。 宇宙ステーションは高度400km付近の「低空」を飛行し、真空度はこれよりかなり低い10のマイナス5乗Pa程度でしかないとのこと。とすると、ゾウムシは、宇宙服(虫用?)無しでステーション外に出、30分程度経ってから戻って来ても死なないで済む可能性が高い。もしこれが出来れば、ギネスブック登録のレベルを遙かに超えた地球生物としての「偉業」である。誰か、実験してみるAstronautは居ないか!!
2007.07.08
コメント(0)
昨日、今日と梅雨も中休みの様である。雨の間姿を見せなかった虫達が、一斉にと言うと大袈裟だが、彼方此方に現れた。今日はその中からトウキョウヒメハンミョウを紹介する。 ハンミョウと言うと、漢方に使う有毒種のハンミョウを思い浮かべられる読者も居られるかも知れない。しかし、それはツチハンミョウ(ツチハンミョウ科)のことで、下の写真のような形をしたハンミョウ類はハンミョウ科に属し、全くの別物である。毒はない。トウキョウヒメハンミョウ(2007/07/05) このトウキョウヒメハンミョウは中々渋い色合いをしている。しかし、何の形容も付かない只のハンミョウ(ナミハンミョウ)は赤や青の極彩色をしていて、如何にも毒がありそうに見え、これが有毒種のツチハンミョウと間違われる様になった理由らしい。 ナミハンミョウは、まだ家が大きかった頃には、庭にも棲んで居たごく普通の種だったが、最近この辺りでは見たことがない。真っ正面から見たトウキョウヒメハンミョウ.大顎がストロボの反射で光っている(2007/07/05) ハンミョウ類は、幼虫、成虫共に捕食性。捕まえた昆虫や小動物を、その鋭い顎でバリバリと噛み砕いて食べてしまう。 上の写真では、丁度ストロボの光が大顎に反射しており、恰も白刃の如し。しかし、体長は僅か10mm程度と小さく、また、人に対する攻撃性は全く無いから、危ない虫ではない。横から見たトウキョウヒメハンミョウ(2007/07/05) 横から撮った写真の頭部を部分拡大してみた。未来映画に出てくる怪獣とでも言うべきか。上の写真の部分拡大.怖い顔(2007/07/05) ハンミョウは「道教え」とも呼ばれ、近づくと足許から飛び立って2~3m先に止まり、こちらが道を進むとまた飛び立つのを繰り返す。何回も繰り返す内に、道を外れて何処かへ行ってしまうが、このトウキョウヒメハンミョウの様な場合は、小さ過ぎて分かり難い。 しかし、子供の頃から虫に親しんできた者にはチャンと見える。虫好きには見えて、虫嫌いには見えない虫である。
2007.07.06
コメント(5)
ここ数日雨模様の日が続いている。庭の虫達も余り姿を見せないが、ルリマルノミハムシが1匹、ヤブミョウガの花穂の中で、雨に濡れながらジッとしているのを見付けた。 首を引っ込めているのをそのまま測ると体長3.6mm、小さなハムシである。雨の中をジッと耐えるルリマルノミハムシ.お尻の先の黄色いのはウンコ(2007/07/02) 体に付いた水滴を振り払おうともせず、無言で?ジッと耐えている。前から見ると、かなり辛そうな表情。雨の中のルリマルノミハムシ.頭にも水滴を付けている(2007/07/02) 写真を良く見てみたら、お尻の先に何か黄色いものが堆積している。ハムシ君のウンコである。花粉を食べていたらしく黄色い。 沢山溜まっているところを見ると、かなりの時間、同じ場所でジッとしていたらしい。屹度、お腹も相当空かせているに違いない。 雨が止んで暫くしてから見に行くと、もうハムシ君は居なかった。何処かのヤブミョウガの花粉でも食べ出かけたのであろう。
2007.07.04
コメント(2)
今日も、また、クビボソハムシの仲間を紹介する。キバラルリクビボソハムシ(黄腹瑠璃首細葉虫)である。先日のはキベリクビボソハムシ(黄縁首細葉虫)なので御間違えの無き様。 体長約6mm、鞘翅に隠れて見えない腹部以外は、藍色の光沢を放つ黒い小さな虫である。まァ、言ってみれば、肉眼的には余り面白味がない虫と言える。キバラルリクビボソハムシ.お尻の先に何か見えるが気にしない、気にしない(2007/06/02) 何時もツユクサの葉上にお座りしていて、キベリクビボソハムシの様に付近に散歩に出かけたりはしない。余り飛ばない種類らしく、チョッカイを出しても10cm位移動するだけ。直ぐ近くにツユクサが無いと心配なのかも知れない。ツユクサの上で「お座り」するキバラルリクビボソハムシ(2007/06/15) 先日紹介したキベリクビボソハムシは、中々愛嬌のある顔をしていて可愛かった。しかし、この似たような名前のキバラルリクビボソハムシは、愛嬌には乏しい。どちらかと言えば、凶暴な顔つき。犬ならば、噛み付かれそうである。真っ正面からみたキバラルリクビボソハムシ.顔つきは陰険、凶暴そう(2007/06/15) キバラルリクビボソハムシは、幼虫、成虫共にツユクサを食草とする。先日ツユクサを調べたら、その幼虫と思われる虫を見付けた。甲虫の幼虫としては余り見ない、一寸変わった形をしている。現在飼育中なので、その内紹介するかも知れない。
2007.06.29
コメント(2)
先日、ハムシダマシを紹介したが、今日のは本当のハムシ、キベリクビボソハムシである。 橙色のシャツに黒いチョッキを着た風で、中々洒落た色合いの虫である。しかし、個体変異が多く、全身が橙色の個体もあるとのこと。黒い部分がないと、一寸しまらないだろう。キベリクビボソハムシ.体長6mm弱(2007/06/02) ハムシとしては非常に敏感。普通のハムシは100mmレンズで接写をする程度の接近ならば大して反応しないが、このハムシは慎重に近づかないと、一瞬の内に羽を広げて飛んでいってしまう。しかし、ハエやハチの様に遠くには飛ばず近くに止まるので、何とか写真を撮ることが出来た。お座りしているキベリクビボソハムシ(2007/06/02) このハムシ、上の写真の様に「お座り」をしていることが多い。先日のゾウムシではないが、やはり何となく動物を連想させる。 真っ正面から見ると、犬が吠えている感じ。但し、先のゾウムシとは違って、仔犬が一応吠えてはいるが、実のところ遊んで欲しくて興味津々と言うところか。真っ正面から見たキベリクビボソハムシ.仔犬が吠えている様(2007/06/02) 下の写真では、馬が草を食べている風にも見える。角があるから、馬よりもアフリカの羚羊類と言うべきか。葉っぱを囓っている風に見えるが、食草ではない(2007/06/02) このキベリクビボソハムシ、幼虫、成虫共にヤマノイモの葉を食すとのこと。こちとらは、それとは知らず、庭のヤマノイモを片っ端から引っこ抜いてしまった。 ハムシ君、沢山あった筈の御飯が急に消え失せてしまって、屹度戸惑ったに違いない。
2007.06.24
コメント(2)
どうも最近は未掲載の写真が溜まってしまって、このWeblogに載せる時には些か時期遅れになることが多い。そこで今日は、撮れたてホヤホヤ?の写真を出すことにする。 今日の朝方、庭の見回りをしていると、シジミバナの新梢の先に何か丸い小さな虫が居るのに気が付いた。小型のテントウムシかと思ったが、マクロレンズで覗いて見てみると、ゾウムシの1種であった。体長約5.5mm。背側から見たスグリゾウムシ.体長約5.5mm口吻は尖っていない(2007/06/19) 調べてみると、どうもスグリゾウムシの仲間らしい。しかし、写真のゾウムシには、スグリゾウムシにある筈の鞘翅の模様や縦筋が明瞭でない。別種かも知れない。 そこで、もう一度ゾウムシを見に行く。すると、写真では認められない鞘翅の模様や縦筋がチャンと見えた。ストロボで正面から光を浴びると見えなくなってしまうらしい。スグリゾウムシとして良いだろう。斜め前から見たスグリゾウムシ(2007/06/19) 撮影中に、動作の鈍いゾウムシにも意外な表情があることに気が付いた。そこで、今日は様々な角度から撮ったゾウムシ君の写真を載せるるとにする。沢山あるので、大盤振る舞いである。葉陰に隠れるスグリゾウムシ.眼が可愛い.子象の目によく似ている(2007/06/19) 上の写真は、葉陰に隠れたつもりらしいが、叱られた犬がシッポを丸めて物陰に頭を突っ込んでいるような感じ。葉の端で辺りを眺めるスグリゾウムシ(2007/06/19) 次のは、カンガルーの顔に似ている。或いは、犬が少し高いところに座って辺りを眺めている様にも見える。真っ正面から撮ったスグリゾウムシ.体の後半は光が当たっていない(2007/06/19) 上の写真は腹部の後半に光が当たっていないので、少し変な写り方をしている。しかし、真っ正面から撮れたのはこの1枚のみなので、些か出来が悪いが載せることにした。これも、何か動物を連想させる。犬が吠えているような感じ(2007/06/19) 最後のは犬。意気地のない犬が、見知らぬ人を見付けて逃げ腰で吠えているところ。犬ならば、尻尾を股の間に挟んでいる筈である。 シジミバナを良く調べてみたら、このゾウムシが何と10匹近くも付いていた。このゾウムシ君達の処置をどうするか、只今思案中である。
2007.06.19
コメント(0)
一昨日のハムシダマシ、昨日のテントウムシに続いて、今日も甲虫の仲間を紹介する。トホシオサゾウムシである。 ゾウムシと言うのは、哺乳類のアリクイを連想させる一寸特殊な体付きをしていて、他の甲虫と見間違えることはない。 と、思っていたのだが、ゾウムシ科の他に、ミツギリゾウムシ科、ヒゲナガゾウムシ科、オサゾウムシ科があり、しかも、ゾウムシ上科ではなく、ハムシ上科に属すマメゾウムシ科などと言うのもあって結構ややこしい。このトホシオサゾウムシは、名前が示すように、ゾウムシ科ではなくオサゾウムシ科に属す。トホシオサゾウムシ.斑は10個も無い様に見える(2007/05/26) 普通のゾウムシは動作が鈍く、形勢不利と見るとポトリと草むらの中に落下して行方知れずになってしまう。しかし、このオサゾウムシは非常に敏捷で、もう一寸近づいて顔の辺りをシッカリ撮ってやろうと思ったら、あっと言う間に羽を広げて飛んで行ってしまった。ゾウムシにもこんな敏捷なヤツが居るとは一寸驚いたが、オサゾウムシ科とかクモゾウムシ亜科に属す連中は素早いのが多いらしい。トホシオサゾウムシ.吻が邪魔になって前がよく見えないに違いない(2007/05/26) このトホシオサゾウムシ、我が家では今まで見た記憶がない。しかし、今年は2回見た。検索すると幼虫の食草はツユクサとされているが、この虫が我が家に来た理由は、何となく同じツユクサ科のヤブミョウガがお目当てだからという気がしないでもない。ツユクサならば昔からあるが、ヤブミョウガが生える様になったのは最近のことであり、また、今年は特に繁茂しているからである。
2007.06.15
コメント(0)
どうも、甲虫の小さいのは苦手である。外見からは容易に区別の付かない微小なのがゴマンと居るし、名前もコメツキダマシ科とかハムシダマシ科、或いは、タマムシモドキ科、ジョウカイモドキ科等という人を馬鹿にした様な名前の科が沢山あって、しかも、実際よく似ているのだから始末に負えない。 この虫も肉眼で見たときはハムシかと思った。体長約7mm、小さな虫である。しかし、マクロレンズで覗いてみると、上翅にかなり長い毛が密生している。こんなハムシいたかいな? データをコムピュータに移して拡大する。すると殆ど全身に毛が生えていることが分かった。その為、輪郭が何となくぼやけて見える。変な虫だ。スミレの葉上に止まるハムシダマシ(雌).ほぼ全身に毛が生えている(2007/05/30) 図鑑を調べて見たが、やはりハムシ科に該当するものは居ない。それでは何か? 暫し考える。 ハムシに似ていてハムシでない。それではハムシダマシか?ハムシダマシ(雌).毛が密生して輪郭がぼやけて見える(2007/05/30) ・・・と、思ってハムシダマシを調べてみると、正にこの虫であった。しかも○○○ハムシダマシではなく、只のハムシダマシそのもの。何か、馬鹿にされた感じと言うか、よくぞ付けたと言うか・・・。ハムシダマシ(雌).雄は触角先端部の節が長い(2007/05/30) スミレの葉上に居たのでスミレが成虫の食草かと思ったが、食痕は無いから違うらしい。調べた範囲では、幼虫は腐植を食べるとのこと。成虫についてはよく分からなかった。 この虫、今まで我が家で見た記憶がない。しかし、注意して見ていると、かなり屡々庭の上を飛んでいる様である。これでまた小さな知り合いが1つ増えた。
2007.06.13
コメント(3)
先日庭に小さな甲虫が飛び回っているのを見付けた。手ではたき落してやろうと思って追いかけたが、その前にシャクヤクの葉に止まった。 近くで見てみると、体長12mm程度、余り見慣れないコメツキムシである。写真を撮り難い位置に居るので、一寸チョッカイを出したら、地面の上に落ちてしまった。裏返しになったまま、気絶していると言うか、死んだふりをしていると言うか、とにかくジッと動かない。 暫くそのままにして見ているとやがて動き出した。コメツキムシらしくピンと跳ね上がるかと思ったのだが、此奴、手足をゴソゴソやって向きを直した。余りコメツキらしくない奴!!地面を這い回るトラフコメツキ(2007/04/07) マクロレンズで覗いてみると、上翅の表面に多くの溝状の縦筋があり、体の中心線に近い部分が色濃く、また、辺縁部に3対の暗色斑がある。かなり特徴のハッキリしたコメツキである。 暫く地面の上を歩き回っていたが、やがて羽を広げて跳んで行ってしまった。飛ぶ直前のトラフコメツキ.上翅を広げ始めた。しかし、飛び出す瞬間は撮り損ねた(2007/04/07) この辺りでは春にコメツキムシを見ることはない、と言うか、記憶にないし、また、上翅に模様のあるコメツキムシも珍しい。 調べてみると、トラフコメツキと言う春にしか現れない種類と判明した。保育社の図鑑では「早春平地でみられるが多くない」と書いてある。しかし、Internetで調べてみると「普通種で個体数も多い」と言う記述もある。まァ、この辺りに居るのだから珍種ではあるまい。 後日、またこのコメツキムシを見付けた。早速捕まえて今度はスレートの上でひっくり返してやった。手足をゴソゴソやっても触れるものが無く、やがてピンと跳ね上がって向きを直した。やはり、コメツキムシである。
2007.04.19
コメント(1)
我が家に多産するグンバイムシの「悪さ」は判明したが、クロウリハムシが何処でどんな悪さをしているのか、未だに分からない。 昔からよく見るハムシで、今はデュランタ・タカラズカの花序にとまっていることが多い。花を食べているのだろうか。デュランタ・タカラズカの葉にとまるクロウリハムシ(2006/09/10) デュランタの花を食べている程度ならば、特に問題はない。どうせ輪郭の凸凹した花なので食痕があっても分かり難いし、蕾を食べられても花はいくらでも着いている。デュランタの花序にとまったクロウリハムシ(2006/09/16) 今年はサツキとサンショウの葉が外側から凸凹に食害された。今まで見たことのない食痕で犯人は不明。しかし、クロウリハムシが犯人ではないだろう。デュランタの花の上で身繕いをするクロウリハムシ(2006/09/21) インターネットで調べると、クロウリハムシはかなり悪いヤツらしく、目の敵にしている御仁も居られる様だが、我が家では今のところ明確な犯行は記録されて居らず、駆除の対象にはしていない。 虫に関しては「同じ地球の仲間同士、仲良くしよう」、と言うのが私の口癖である。
2006.09.24
コメント(1)
全35件 (35件中 1-35件目)
1