HANNAのファンタジー気分

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May 29, 2007
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テーマ: お勧めの本(7415)


 このような、典型的なキャラクターとストーリーの、原点ともいうべきケルトの伝説的騎士団「フィアンナ」のチーフ、フィン・マックールは、ケルトの神話伝説を扱った本を読むと、よく出てきます(井村君江 『ケルトの神話』 、B・エヴスリン 『フィン・マックールの冒険』 、小辻梅子訳編 『ケルト幻想民話集』 などなど)。
 ☆若きフィンが、ターラの王宮に現れる妖怪を退治して、フィアンナ騎士団のチーフの座をかちとった話。
 ☆フィンの最愛の妻が妖精(?)の杖の一振りで牝鹿になって消えてしまう話。
 ☆フィンの息子オシーンが、妖精の娘に誘われて、海の向こうの常世の国に行ってしまう話。彼が帰ってきた時、何百年もの年月が過ぎ去り、彼は老人になっていました(「浦島太郎」とおんなじです)。
 ☆フィンの後妻となるべきグラーニャが、彼の部下ディアルマッドと駆け落ちしてしまう話。



 すばらしい騎士団のすばらしい統率者と言われながら、実際の活躍ぶりはそれほど有名でない英雄といえば、イギリスのアーサー王がいますね。フィンも、個人の強さというより統率者としてのすばらしさが表立ち、また女性をめぐって部下と三角関係になるあたりも、アーサー王とよく似ている気がします。

 とにかく、彼自身の活躍がもっと知りたいなあ、と思ったら、ローズマリー・サトクリフの再話 『黄金の騎士フィン・マックール』 がおすすめです。魔法や不思議な話もたっぷりありますが、どのエピソードも、フィンと部下たちのヒロイックな騎士道精神が主軸にあって、骨太な英雄物語となっています。
 特に、魔法で動けなくなったフィンと側近を守って勇士たちが戦い抜く「ナナカマドの木の宿」や、フィンの最期をえがいた「ガヴラの戦い」は、勇壮で読みごたえ抜群。

 「ガヴラの戦い」でフィンは倒されます。魔法や不思議や妖怪がたくさん出てきますが、最後には人間たちの戦いで壮烈な討ち死にするのです。強大な力と自由を誇り、人々の尊敬の的であるフィアンナ騎士団ではありますが、アイルランドを統括するのはやはりターラの上王でした。王と対立し分裂した時、騎士団は本来の姿を失い、騎士団どうしの戦いのうちに滅びていくのです。魔法にも妖精にも屈したことのないフィンは、騎士どうしの三角関係に翻弄され、騎士どうしの争いに敗れるのでした。

 剣と魔法だけのふわふわした異世界・古代ものではなく、現代の現実といかにかけはなれた舞台であっても、そこに生きる人々の人間模様がしっかり描かれていること。それが良いファンタジーの条件の一つだと思います。世の中が変わっても、人の心の本質的な部分って、変わらないということでしょうね。





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Last updated  May 29, 2007 10:53:09 PM
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