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2010.05.23
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カテゴリ: カテゴリ未分類
長くなるので2回に分けて記載する。



最近文筆活動を中断していた五木氏は、先頃「親鸞」を出版されたばかりだ。いろいろなジャンルで活躍している極めて有名人であり、作家としては、直木賞を初めとして数々の賞を受賞している。

連れ合いは、大変なファンであったが、最近抹香臭くなってから、その後の本はあまり読んでいないという。しかし講演は聴きたいと言うことだ。私は、小説はあまり読まないので、逆に抹香臭くなって「親鸞」の講演だという事で聞きたいと、変な接点で一緒に聴きに行くことになった。

私は、1冊だけ「大河の一滴」を読んだことがある。氏が「二度自殺を考えたことがある」と書かれているので、共感を持った覚えがあった。

ここで、氏の紹介をしても紙面の無駄である。講演の前置きは、呉の寒々しい古い建物での講演で老人を相手の「人生の無常」について語った時に、「どうせ最後は死ぬのだから」で講演を終了し、とぼとぼと還り行く老人達の後ろ姿を見送っていると、空しい気分になったが、方や、道路向かいの近代的な建物から若い人が大勢出て来て、皆、生き生きしている。どうやら、そちらは竹村健一の講演で「やれば出来る!」であったそうだ。

講演の標題が悪かったのかと、次回の四国では同じ内容を「やって出来ないことはない」と変えたが、結果は一緒だったと笑わせた。

現代は、人間の生と死についての講演内容が多くなったという。人生を真正面から真面目に見つめると、「あーぁ」とため息が出ることが多い。
そして今何故「親鸞」か、と言うことについては、昔から変わっていないと言うことである。

教員の子として生まれ、朝鮮に渡り、終戦を平壌で迎えたという。敗戦時に、軍の高官や、上級官吏は、いち早く情報を得、帰国の準備をしていたが、一般市民は、為す術もなくただ「ぼぉー」としていて、難民化していったのだそうだ。


あの、強制収容所「アウシュビッツ」でなくても、同じ経験は出来るものなのだと戦慄したというが、何故か、全てを思い出すことが出来なくてせいぜい2-3割のことしか頭に浮かばないというのだ。
嫌なことは忘れたいと、無意識に忘却していると言うことらしい。

人間は追い込まれると、生きるために何でもやってしまうものだ、という例で、考古学者の大塚初重との対談で、大塚氏は海軍時代に3度沈没を経験し、その際、生きるために上甲板に上ろうと、人が人の足にすがりつく鎖状態になった時、自分が生きるために、すがりつく同僚を蹴落としている自分が居るということを話された。

また、親友である野坂昭如は「二度と飢えた子供の顔は見たくない」というのに対し、五木は「二度と飢えた大人の顔を見たくない」と考えたのだそうだ。子供が飢えるのは、まだそこで止まるが、大人が飢えると、子供のものまで奪い取り、子供をないがしろにして生きようとする浅ましさが出てくるというからだそうだ。

現代の子供の虐待や折檻は又別の意味かも知れないが、ルーツは同じ、「自分さえ良ければいい」という霊長類の頂点であるべき人間が、動物以下の獣になっているのだということを感じてしまった。

戦後の帰還時の思いが尾を引いて、中・高生時代も心は落ち着かず、ロシア語を選択して早稲田に学ぶが、学費未納で、抹籍され(後に学費を全額納付し中退扱いになる)、就職したのだそうだ。
その後、30代を前にして、ひっそりと田舎暮らしをしようと金沢に転居したが、書いた小説が新人賞を受けるに至って、にわかに脚光を浴びたが、氏としては、真に求めることではなかったと述懐されていた。

当時の金沢大学は、旧金沢城趾内にある、環境の良いところであった。最近我々2人も青春18切符で金沢を往復したが、今は、城趾から大学も去り、集客のために城の門などを復元中であったことを思い出した。

この金沢大学の図書館に、後に真宗大谷派の宗務総長を勤め、『歎異抄講話』を表した暁烏敏(あけがらす はや)のコーナーが有るということだ。ここによく通ったと言うことで、今日の著書「親鸞」はその時から暖めていたものであろうか。
そこには、二葉亭四迷や、白隠禅師などの本があり、氏の興味は尽きないほどの場所であったようだ。
私などは興味の対象は違うけれど、図書に囲まれて内容を想像する楽しさは共有出来る気がした。ただ、内容を読み、理解し、ものに表すという点で遙かに能力の差を感じるのはやむを得ないのは残念なことである。



話は下北半島にある「恐山」にまで及んだ。水子をまつる賽の河原には小石が積み上げられ、空にはカラスが舞うという光景は、私も一度訪れたが、あまり長居をしたくないところだし、地獄の入口とはこんな所かと思ったりもした。

遠野辺りには昔から、「間引き」と言うことが当たり前のように行われていた。本来、間引きとは、植物を栽培する際、苗を密植した状態から、少数の苗を残して残りを抜いてしまう作業のことであるが、この場合は、生まれた子供をすぐに殺すことなのである。
21世紀になって、いわゆる先進国では、親は一般に子を守り、扶養すべきものとされ、民法でも明確な扶養の義務が記載されている。

ところが、その昔、江戸時代などでは、親が子を殺すということはそれほど珍しい事ではなく、親のために子を犠牲にするのは親の正当な権利として広く認められていた。当時の日本では生後間もない子を殺す事例が、必ずしも貧しさから起こるものだけではなく、生活水準を保つためにも行われていたようだ。またそれ以外にも、生まれてきた子供が奇形児や障害を持った子供であった場合に、産婆や母親が殺すケースもあったという。

古代中国や、キリスト教世界でも同様の行為は行われていて、私が居たサウジアラビアのようなアラブの世界では、かつては、中絶、間引きは家父長の当然の権利であり、特に女児はよく間引かれたようだ。


闘いに明け暮れた歴史を持つ、過酷な世界では、男子は戦力として有効であるが、女子は全くのお荷物的考え方である。王などは、ハーレムに多数の女性を持ち、従って、子供も多いが、他人には、女の子供が多くいることを発表することは恥だ位に思っているのだそうだ。

話は飛んだが、遠野の場合、子供に水を掛けて、布でくるみ外に放置するのだそうだ。最初は泣き声が聞こえるが、そのうち静かになり、朝にはすっかり凍てついているというのだそうだ。この場合は、主に貧困が原因であり、そのために、遠野辺りからの海外移民が多いと言うことであった。

それに引き替え、蓮如が影響を持った、北陸地方(富山・石川・福井)では、蓮如の教えで、間引きの例は少ないのだそうである。

移民先のマウイ島やブラジルなどでは、多くの卒塔婆が日本に向かって建てられているとか、といった例が紹介された。

五木氏も、平壌から引き上げる時に、他を押しのけて帰還したといった経験をしていることが、幼少の頃から心に残り、自分も人間の持つ悪の性を背負っているという後ろめたさがあったそうであるが、50歳前後から、「人間の悪」はあっても生きていて良いのだという気持ちになったそうである。

同時期に弟をガンで亡くし、鬱状態にもなったのであろうし、「大河の一滴」の自殺を考えた時は多分この時であろう。
中・高生時代は、好奇心から「隠れ念仏」に興味を持っていたこともあったという。浄土真宗が長い間弾圧されていた九州生まれの氏の経験である。

50歳になり、縁あって、龍谷大学の千葉乗隆(千葉りゅうと言われた)の講義を受けることになり、淡々とした千葉先生の生き方に共感すると共に、学生の頃は休講だと言っては喜んでいた自分が、50歳にして大学で学べる喜びを知り、講義を心待ちするようになったと言うことである。

この点は私も、非常に共感できるところである。昔は、勉強をさせられていたという意識が強く、良い点を取って皆より抜きんでるべしとか、良い大学に入るとか、就職に有利なようにとかの謂わば邪心での勉強であった気がする。それが、現在、好きなことを、好きな時に学べるという尊さは、学生時代の渦中にあっては思いもよらぬ事である。

あの、歌の「青春時代」で「青春時代が夢なんて あとからほのぼの想うもの 青春時代の真ん中は 道に迷っているばかり」といった心境であろうか。

私も海外出張で、鬱病を患ったことがある。死ななかったのは、死ぬ勇気がなかったからかも知れない。しかし、サウジアラビアに出張する時には、「行かされる」のではなく「私が行く」と気持ちを切り替えたのであるが、そうすると、今まで辛く思ったことが、どれもこれも得難い経験をさせて貰っている気がして、とても楽しく過ごすことが出来た。この時、連れ合いのメールでのサポートは大きな心の支えになった。

<続く>





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Last updated  2010.05.25 01:01:56
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