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2012.01.08
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辛酸を極めた2011年も終わり、問題が解決したというわけではないし、時の流れは継続しているわけだが、年頭には、何かしら希望を持って歩いていこうという気にさせてくれる。
人知を凌ぐ存在、神の存在にまつわる諸形態について日経十選のシリーズに「幻獣」というタイトルでの実在しない神話上の動物を取り扱ったときがあった。国立民族博物館名誉教授の立川武蔵さんが選んだ「幻獣」を振り返ってみた。(殆どは、立川さんが書かれたとおりである)

最初の幻獣は「蛇をくわえるキールティムカ」(ネパール)である。
 屋根の上の鬼瓦の鬼や名古屋城の金の鯱は、シリア、インドなどから伝わってきた神話上の幻獣なのだという。彼らは仏教やヒンズー教が始まる以前から、人類の精神史の基層に生き続けてきたというのだ。
鬼と鯱は全く別のものだと思うのだが、このルーツは、同じ仲間かも知れないという点が先ず驚きだ。

ここに紹介されたキールティムカはネパールにあるもののようだが、大きく口を開けた鬼面が両手に蛇を持って、その真ん中にかぶりついている彫刻である。様々な形で彫られているようで、半円形の形や、長方形の中に彫り込まれているものもある。
 ふさふさとしたたて髪、大きな丸い両目、横に開かれた□、むき出しになった歯。ものすごい形相である。獅子の顔のようだが、角があるから獅子ではない。鬼のようなイメージを受けるのだが、当時インド・ネパールに鬼という概念が存在したかどうか知らない。顔だけが見えて、胴体は見えないのである。

ドアの上部に置かれていたりするので、多分に魔除け的な意味を持っていたのだろう。

 紹介された写真は、大村次郷さんの撮ったもので、カトマンズでは寺院入り口の上部に掲げられている。これは「トーラナ」と呼ばれ、日本の鳥居と起源が同じで、上の部分が半円となり、それは宇宙を意味し、キールティムカは凄い形相で下界を睥睨していると言うことのようだ。幻獣がくわえる蛇は、宇宙創造の際に混沌とした世界を取り囲む原初の蛇ウロボロスということである。

こういった一見怖い顔をした、日本では鬼と呼ばれるものが、聖獣と呼ばれる所以は何なのだろうか。

次は、「無常大鬼」であり、チベット自治区にあるという。
これはキールティムカ(ほまれの顔)が亀の姿をした身体から顔を出し、足が書き加えられた、仏画である。この幻獣は中国や日本で「無常大鬼」と呼ばれたと言うが、日本では未だ見たことがない。
 この「キールティムカ」の胴の丸い部分は5分割されており、天、人、動物、餓鬼、地獄の五道あるいは阿修羅を含む六道の輪廻の輪であるのだそうだ。

 キールティムカの源泉の1つに現在きな臭い、シリア出土の儀礼用容器である獅子が鉢形の容器の縁をくわえ、両手で丸い鉢をつかんでいる形状の物があるという。香油入れに使われたと考えられるこの容器は紀元前9、8世紀のもので、30点以上発見されているとか。

第3は「蛇を産むマカラ」である。
マカラはサンスクリット語であり、モデルはワニのようだが、口はワニよりも短く、胴はクジラに似て、尾の形は魚といったやはり幻獣である口から蛇を産み出している。同じサンスクリットの「クムピーラ」もマカラを意味すると言うことでクムピーラが金比羅に訛ったという。
 この幻獣の起源は古代オリエント十二宮の一つ、山羊座(キャプリコーン)と関係があり山羊座のヤギは下半身が魚であるため、インドではマカラ宮(魔羯宮)となったと考えられる。
 マカラはその大きな口からは蛇だけでなく神々や動物を産む。しばしば花房を口から出しているが、それは世界を意味している。


之が、日本などでは、名古屋城の鯱となる鴟尾に通じるわけである。水や海に棲むマカラがなぜ屋根の上にまで上がってしまったのかと言う点では、おそらく後世、東アジアにおいてこの聖獣の像は「雨ごい」に使われたと同時に、火事からその建物を守る「火伏せ」の役目を課せられるようになったからであろうとされる。

第4は「マカラ」(ネパール)である。
こちらが大きな幻獣マカラの口から大きな動物が顔を出しその動物の口から魚が顔を出しているという構造だ。カトマンズには元は大きな湖であったとされ、その水が全てを産んだという水の想像力と神格化を現したもののようだ。
日本の神社の境内で龍の口から水が流れ出てその水で手を清めたり口をすすいだりするのは、そう言った意味である。

第5は、「鴟尾としてのマカラ」(中国)だ。


第6は「ガルダ鳥」(インドネシア)だ。
日本ではガルーダと発音するが、そう聞くと、インドネシア航空の名前を思い出す。インド生まれの空想上の鳥で、「ガルダ」とは元来、言葉を運ぶ翼を意味するのだそうだ。祭官たちの詠う賛歌を神々へと運ぶ翼という意味だ。派手な彩色で、膝を折って中腰となり鋭い爪を立て、獲物の蛇を襲おうとする姿の3m近い木像なのだそうだ。色彩は、之もインドネシア航空のキャビンアテンダントの衣装と似たところがある。

とらえた蛇を両手に持って咥(くわ)える姿は獣そのものであるが、今では世界中を飛び回っている。
ガルダ鳥はヒンズー教の神ヴィシュヌの乗り物でもある。この神を肩に乗せて飛ぶ姿は彫像、浮き彫りなどにしばしば表されてきた。

第7は「守護神シャールドゥーラ」(ネパール)である。
顔は馬に似ているが、湾曲した羊のような角があるから馬ではない。背中には翼がある。後脚は馬の足としてはやけに太い。あのペガサスに角を突け、そのペガサスが輓馬になったような感じの幻獣である、尾は細く、馬ではなくライオンのようだ。何となくユーモラスだが選者は不気味さを覚えるという。とにかく奇妙な動物である。
 馬がちんちんをしている格好だが、寺院の入り口両側や神像の両脇に、入り口や神像を挟んで互いに背を向け置かれることが多く寺院や神、仏を守護する役割を課せられているのだろう。
この馬、羊、獅子、鳥が合体したような幻獣をサンスクリット語では「シャールドゥーラ」と言うようだが、この単語は獣あるいはせいぜい猛獣を意味するのであり、この奇妙な動物を的確に指し示す語ではない。

第8は「キンナラ」(ミャンマー)である。
唐草模様が火炎のように立ちあがるなか、上半身は人、下半身は烏といった者が両手を広げて踊る。その者の上着と尾は炎の色で、翼と脚は青黒い。日本の何とか草紙に出てきそうである。
 これはキンナラと呼ぶ人面鳥身の神話的存在であり、当て字だろうか、「緊那羅」とかく。「幻獣」と言うには、人間の顔をしているので気が引けるが、ケンタウロスもこの1種のようだ。これら幻獣は、何処かで繋がっているのだろう。
 紹介されている絵は、ミャンマーのパガンにあるアーナンダオゥ寺のブッダ像の背後の壁画だというが、タイなどに行けば、金で作ったキンナラ像をよく見かける。キンナラは、蛇を咥えることも、生物を口から産み続けることもなく、ただ、神や仏の近くに仕えるのみである。

第9は「グリフィン」(イラン)である。
丸い目と大きな嘴の頭は鷲か鷹部であるし、身体はライオンのようだ。但し前足は、鷲のような鋭い爪を持っている。空の覇者と地上の王とが合体したようなこの幻獣はグリフィン(グリフォン)と呼ばれる。
 紹介されている像は、イランのペルセポリスにある巨大な石柱の上に置かれたグリフィンの石像だとか。縦横それぞれ約1・5mはある大きなもので、紀元前5、4世紀の傑作である。
結構いろいろなところで活躍しているこの幻獣は、ヘロドトスの「歴史」の中にも出て来るのだそうだ。

第10は「一角獣」(フランス)である。
美術画でも見かける「ユニコーン」と呼ばれる幻獣で、馬に似た動物が剣のような1本の角を立てている。その動物は女性の膝に前脚を置いて甘えている様子はまるで子犬のようでもある。手鏡に映る自身の姿に見入る動物の表情はナルシストそのものである。
 パリのクリュニー中世博物館には「一角獣を連れた貴婦人」と名づけられた連作ダペストリー6枚がある。それぞれ「味覚」「触覚」などと呼ばれるが、写真のものは「視覚」。一角獣の近くには常に女性がいる。そそり立つ角はペニスの象徴ではなかろうか。かつてヨーロッパでは一角獣狩りが行われたが、処女のみがこの幻獣をとらえることができるといわれた。絵画の題材にもよく使われ、ユニコーンの角と称して、一角の牙を展示しているところもあるというのだ。






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Last updated  2012.01.10 22:48:44 コメントを書く


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