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2012.01.20
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全部で何回あったか、結構長く続いていたこの講座も、あと3回を以て振り出しに戻ると云うことだ。いろいろな絵画を見せて貰った。本物を観るようにはいかないがその絵画の時代背景や画家の生い立ちなどを知ることで、絵画に対する関心や理解力が増すと考えられる。

鑑賞眼というものは、講義を聴いたからと云って上がるものでもないかも知れないが、その絵に対する画家の思い入れや、表現の方法などについて少し理解が出来るまでになったかと感じている。
講師も残りをどの画家にするか迷ったと云われていたが、今日はパウル・クレーについてだった。

今日は、連れ合いが、買い物が長引いたというので、出だし少し遅れて入ってきたが、私は、やはり1番乗りで座って待っていた。

パウル・クレーは、1879年スイスのベルン近郊に生まれたスイス人画家である。父は音楽教師、母も音楽学校で声楽を学ぶという音楽一家であった。スイス人には芸術家は少ないと講師が紹介したようになるほど、あまり名前を思い出さない。行ったことはないが、スイスの山岳風景を絵にした人は多くいたであろうにと思うが、山は写真の対象であっても絵画の対象には成らないのかも知れないと勝手に想像した。

スイスは美しい国で平和の象徴と感じるが、ウェストファリア条約で1648年に完全独立するまで、鳩時計を造っただけだと揶揄される位芸術には縁遠い国のようだ。
クレーは、才気煥発、知性的で、多才であったという。11歳では既にヴァイオリンで、オーケストラの1員となるほどの腕前だったようだ。ピアニストの妻と結婚し、幼少から日記を克明に書くという習慣を持っていたので、クレーのことは、良くその内面まで知れているという。

ミュンヘンでの勉強に飽きたらず、1年足らずで、北のアテネと呼ばれたイタリアのルートヴィヒに学んだという。


最初は「毛皮を着た少年」で非対称な顔とそう言われれば、毛皮かと思うようなものを纏っている歪な正面の顔である。
以下の作品も、私が感想を述べるようなものはなく、講師も特別何かコメントすると行ったことも少なかった。

「畑の中の黄色い家」はペンを多用して、色彩を緑、白、赤で畑を描きわけ、左の上部に黄色で、マッチ箱のような家を描いた作品である。クレーの絵は小さなものが多く幅20cmと言ったものやそれより未だ小さなものもあると云うことだ。

ここで、クレーに影響を与えたというロベール・ドローネの作品「窓、同時的、都市」と言う作品の紹介があった。クレーに似たというか、その逆なのであろうが、四角い区画の枠内にもう1つの四角い枠があり、それを窓と見なしているのか、真ん中にそう言われればエッフェル塔が見えるといった絵である。
パリ生まれの抽象画家と云うことで、それ以上は特に感じるものはなかった。

「カイルーアン(旅立ち)」はアラブの春が最初に吹き荒れた、北アフリカのチュニジアの都市カイルーアンの夜明けを描いたものである。7世紀に建設された古い街であり。講師が同時に街の屋根をモスクのドームと共に写した写真で紹介していたが、内部は、装飾が美しい霊廟であり、グランド・モスクは640年に建てられたアフリカ最古のものという。
クレーはここに来て感動を受けた事が容易に解るほど、モスクの色彩豊かなモザイクタイルはイスラム教独特の風情で、クレーの絵にも多大な影響を与えたのではないかと思われる。

「カイルーアンの城門の前で」も上と同様の風景を描いたものだが、モスクのドームが何となく印象的である。この日描く作品として、青騎士のメンバーであったアウグスト・マッケの「カイルーアン3」が紹介されたが、27歳で早世したマッケの絵も、写真で見るルーアン風景を良く表現していると感じた。
私には、こういった絵自身よりも、その実際の情景を見る方に心が動いているように感じる。
西洋的な美を見せられ続けたから、イスラム社会の、独特の風景は、一寸表現するには、言葉が足りないのだ。

「ニーセン山」はベルン近くの故郷の思い出の中の山の絵である。この絵のように正三角錐のような山のようだ。クレーはこの山を薄青い色でのっぺりと描いている。この絵は灰色の空に星や月が黒く描かれた、夜の風景だが、何故か地面は明るく、暖色になっている。


「いつか夜のほの暗さから浮かび上がり・・・」は薄青い色の帯で上下に分けられた部分に四角い枡を千鳥格子のように配し、その中に文字を埋め込んで詩を書いている。文字の一つ一つに色彩を与えて、全体で絵画という範疇に押し込んだような作品である。私は、この絵から、イスラム教の寺院にある抽象化した文字で囲まれた壁面を思い出した。
この頃からクレーの生活の豊かになり始め、パリに於ける画商ボラールの存在のように、ミュンヘンの画商コルツを通じて絵が売れるようになったとのことである。

「世捨て人の庵」はいろいろな夢の集合体のような絵で、次々と湧き出る印象をそのまま画面に落としていったという感じ時の作品である。絵のどの部分が何を表しているのかは解らないが、全体の底流には、第1次世界大戦で友人であったフランツ・マルクも失い、科学技術によって人々は殺されていったのだという思いが込められているという。

「鷲とともに」はドイツの国章をモチーフに描かれたものだが、真ん中の大きな目のようなものが何であるのか、定説もなく、意味不明の絵である。

「ラクダ(リズム・森の風景)」は以前十選でも出てきたような気がするが、クレーが幼少から音楽を手掛けていたこともあり、この絵は全体が楽譜のように構成されている。真ん中に描かれたラクダは、牛かと見まがうが、チュニジアで見たラクダを連想しつつ描いたであろうこの絵のラクダは、音楽が奏でられる中ゆっくりと歩を進めているといった感じである。


ここで参照のためカンジンスキーの「黄-赤-青」の作品が紹介された。カンジンスキーの絵のような切れがないのだが、しかし不思議な動きを感じさせるこの絵をどう見て良いのか解らない。

「コミック・ファンタジー・オペラ風『船乗り』から、戦闘場面」は一口で云ってユーモラスなのだが、何をイメージして描いているのか解らない。ヤリを持った船乗りは覚束ないが、深海魚であろうか、ウツボの変形したような魚がユニークである。

「セネキオ(野菊)」は之もまたファンタジーである。まあるい顔はクレーがよく使う手法のようだ。この顔の両目がアンバランスなのは、毛皮を着た少年よりは少しましだが、一体何処を、また何を見ているのであろうか。

「つぶやき機」は機械に支配される人間。ブラックユーモア的な絵であるが、まぁ、解説無しには理解しがたく、訴えることが伝わらない。

「黄金の魚」は真ん中のピラルクのような魚の黄金色が極めて印象的である。回りの魚はそれぞれの方向を向き、王様のような魚から距離を置こうとしているように見える。之は押し寄せるファシズムの大きな力から逃げまどう人達を表しているのかも知れない。釣り好きだったクレーは、海を上から眺めるのではなく、水族館で見るように海を輪切りにしたイメージと重ねてカンバスに写し取ったのであろう。

「大通りと脇道」は遠近法的技法を用いて、古代から現代に続く道程を現したものなのか、砂漠の広がりを現したものなのか、上部に水平に走る水色の線は、ナイル川の流れを擬したものであろうかという感じである。

「オルフェウスの庭」はギリシャ神話に出てくる題材であり、妻ハディスを冥界から救うために出掛けたが、振り返ってはいけないという禁を破り永遠に妻を失うというもので、絵はモザイク調だが、真ん中のクロスのある部分が、冥界への戸口であろうか。この参照として、モローの楯に生首を載せた「オルフェウス」の紹介があり、更にルドンが描いた竪琴と共に横たわる「オルフェウス」の参照もされたが、画家によって、かくも違うものかと感心する。

「パルナッソス山へ」は細かいタイル張りのような三角の山に朱の太陽が出ている絵である。音楽の練習曲のように段階的に何枚も書いていた。美しいとは感じるが、銭湯の壁画を思い出してしまった。

「古絵文書」はデュッセルドルフの教授を解任され、ナチスに銀行口座を凍結され、更に皮膚硬化症にかかった時期だという。作品は、マヤ文明をモチーフとし、表面描写に凝った絵だという。

「美しき女教師(ピーターマイヤー時代の亡霊)」はウィーン郊外の居酒屋で、盆を持つウエイトレスを描いたものだと云うが、理解不能である。

「死と灰」はクレーの最後の自画像だと云うが、あまりに抽象的で、この絵が不吉、不安をかき立たせるという以外に私には他の意味は感じられない。大戦が連続する世相をこういった形で表現し、せめてもの抵抗感を示しているのであろうか。





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Last updated  2012.01.24 11:58:26 コメントを書く


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