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2012.01.23
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カテゴリ: カテゴリ未分類
この映画を実際に観たのは2日前の20日である。
連れ合いが何となく教えてくれたのだが、それまでは全く気づかなかった。題名から想像すると、2重の悪魔といった感じであり、副題に-ある影武者の物語-とあったから、何かサスペンスのような、フィクションを想像していたのである。

ところが良く聞いてみて、パンフレットを手に取ると、現実の手記に基づいたものであって、イラクを長年にわたって支配してきた独裁者で、イラク戦争の当事者のサダム・フセインの長男である、「狂気の申し子(ブラック・プリンス)」と呼ばれたウダイ・フセインの悪行を映画化したものである事が解った。父親のサダム・フセインは2006年にアメリカ軍によって捉えられ「人道に対する罪」で処刑された事は記憶に新しい。
中東のまさに火薬庫のようなところに生まれ、独裁者の息子として育った男は一体どういう生活をしていたのか、またバグダッドという街はどのような街なのか、非常に興味があった。早速見に行こうと出掛けたわけだ。

ウダイ・フセインの想像を絶する悪行と、そのウダイに酷似しているからと言って、無理矢理影武者にされた男、ラティフ・ヤヒア(この映画の原作者)の物語である。
映画の中に出てくるサダム・フセインは、その息子と比較すると穏健で、分別があるように描かれているし、常識的でさえあるように見える。

サダム・フセインは強引にクウェートに侵攻したことやクルド人に対する化学兵器攻撃、イスラム教シーア派住民ら148人を殺害した件などで、血塗られた独裁者と呼ばれ、最後は、絞首刑で処刑されているのだが、そのサダム・フセインさえもが、分別ある人物のような姿で描かれているから如何に、ウダイ・フセインが非道で、悪魔的だったかと言うことが想像される。
映画の中で、父親サダム・フセインが「子供の時に頃に殺しておけば良かった」というセリフを吐くほどだから、影武者にされたラティフ・ヤヒアが如何に苦汁をなめたかを物語っている。

しかし、冷静に考えれば、親のDNAを引き、親自身が、非道を行って来たのであり、その息子が、無軌道を通り越した、無慈悲な所業であったのは、ある意味では、当然なのかも知れないと感じた。


そして、ラティフ・ヤヒアは「デビルズ・ダブル」の原作(即ち自己の体験記録)を表すに当たって、実際にはもっと惨たらしいことが行われたと云い、その部分を映画化するにはあまりにおぞましいと表現しているのである。映画で、ウダイ・フセインとラティフ・ヤヒアを演じるのはドミニク・クーパーの1人2役で、真逆の性格を良く演じ分けている。

物語の端緒は、ラティフ・ヤヒアとウダイ・フセインとは高校時代の同級生であり、顔がよく似ていたことから物語は始まる。超進学校である高校にウダイ・フセインがいたのは偶然ではなく、親の威光によるコネ入学である。ウダイ・フセインが首席で卒業したと言うのも、悪い点を付けた教師は、拷問に掛けられるといったら、その他のことも類推できようというものだ。
皇太子様のご学友というわけにはいかなかったのは、ラティフ・ヤヒアがウダイ・フセインと酷似していたことだ。ウダイ・フセインの影武者(危険なところに出ないために)になることを強いられ、もし拒むと、1週間にわたる拷問が続き、さらには家族に危害を加えると脅され、屈服させられていくのだ。

やがてやむなく影武者を演じさせられるのだが、整形手術で付け歯などを行い、若干の背の低さは、靴の底を高くすることで補い、ウダイの執事や取り巻き連中によってウダイの所作や、癖、等あらゆる面で徹底的にウダイのコピーとして仕上げられていくのである。サダム・フセインからも、2人の息子(ウダイの他に、クサイが居た)が3人になったと言わしめるまでにその仕草は似てきたのである。

ウダイ・フセインの悪行は数え上げるのもおぞましいが、コカインの常習などは、当たり前のことで、中には、披露宴中の花嫁をレイプし、花嫁を自殺に追い込み、全てを金で解決しようとすることや、自分の誕生日パーティーに呼んだ客を全員全裸で踊らせるなど、異常行動には枚挙に暇がない。

そう言ったウダイの悪行の数々に立ち会うはめになり、悪いことの尻ぬぐいをさせられるようになる。
その代わりというか、影武者として居る間は、ウダイの暮らす大豪邸で共に過ごし、反対に許可無く外出することは許されなかった。
ウダイはまた、異常な性欲の持ち主で、イラクの女子学生たちを拉致し、犯す常習犯だったことも描かれている。さらには、父サダム・フセインが信頼していた腹心を殴死させているが、懲罰と言ったものはささやかなものだった。

1993年のドーハでは、サッカー日本代表チームとロスタイムで引き分けたイラク代表チームを「負けたら全員ムチ打ち」と脅していたことは有名である。そんなウダイであったから、サダム・フセインから後継者として認められなかった。
ウダイを異常な暴力と狂気に走らせたのは、後継者と認められなかったからなのか、そこのところは語られていないが、原作のラティフは、ウダイをして、生まれつきの悪、天性のサディストであると称している。

あのイラクで、宮殿の中で、ウダイと暮らした4年間に、ラティフは1度も安穏を感じたことが無く、何時も家族が殺されるのではないかという危機感を持っていた。高級外車は全てベンツ、女性はよりどりみどり、但しそれは、ウダイに従順であればこそであり、一旦意に染まぬと激しい体罰が待っていたというし、家族への波及は免れがたかったようだ。


この映画には、ふんだんに実際の湾岸戦争時の実写が取り込まれている。米軍のステルス戦闘機が飛び、トマホークが飛行する場面もその1つである。

ラティフが、叛旗を翻し、一転してウダイを殺そうとしたのは、父親の言葉であった。ラティフが逃亡中に、父親が、ウダイに拘束されたが、その時父親がラティフと交わした言葉は、ウダイを殺れと言う言葉だった。意を決してラティフが、電話口に出たウダイに言い放ったのは「Go to Hell」であった。

そして、いつものようにウダイが女学生を軟派しているところに、忍び寄った、ラティフは、その股間に銃撃を打ち込むのだった。このシーンは、おそらく脚色があるようだ。

イラク戦争でアメリカ軍によってバグダッドが占拠された後、ウダイは弟クサイと郊外の隠れ家に潜伏していたという、そして、この隠れ家はイラク人によって通報され、米軍の急襲を受けて2人とも射殺されたということだ。ラティフは、自分の手で、ウダイを殺せなかったことが心残りだと云っているのだが、その点では辻褄が合わない。

どんな独裁者も影武者はいるというのだ、映画でも、サダム・フセインが自分の影武者とテニスをしているところが映し出されている。ヒトラーやムッソリーニ、金正日などにも影武者はいるとのことだ。

映画で演じられたラティフは、ほぼ納得いく表現だとラティフ自身が云っているが、サディスティックな場面は実際の10~20%しか放映されていないのだそうだ。もし之を忠実に公開していたら、観客は5分以内に退場していただろうと語っている。

ラティフは今海外亡命中だが、いずれの国からも国籍を取得していない。西洋に行けば、本当の民主主義を享受できるかと思ったが、どの国も皆、青い眼をしたフセインばかりだと述懐していることだ。

アラブの春で、独裁政権が次々崩壊している。現在最もきな臭いのは、シリアではないだろうか、シリアで起きたデモ以来今日まで、日に日に死亡者数は増え、5000人は下らないと言う報道もなされている。何枚もの舌を持つ西洋諸国家、そして、力なく犠牲になり続ける貧しい国民。それは、独裁国家ばかりではなく、民主主義国家と言われる国でもその薄っぺらなベールを剥がせば、同じではないかと思うことである。





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Last updated  2012.01.26 13:47:32
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