新生のらくろ君Aの館

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2012.02.12
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カテゴリ: カテゴリ未分類
第三十一段
【本文】
雪のおもしろう降りたりし朝(あした)、人のがり言ふべき事ありて、文をやるとて、雪のこと何とも言はざりし返事(かへりこと)に、「この雪いかゞ見ると一筆のたまはせぬほどの、ひがひがしからん人の仰せらるゝ事、聞き入るべきかは。返す返す口をしき御心なり」と言ひたりしこそ、をかしかりしか。
今は亡き人なれば、かばかりのことも忘れがたし。

【訳文】
 雪が趣のあるさまに降っていた朝、ある人のもとへ、言ってやらなくてはならぬ用事があって、手紙をやろうとして、雪のことを何とも書かずにやった、その便りの返事に、「わたくしに、この雪を見てどう感ずるかと一筆もおっしゃらないくらいの、心のひねくれている方のお命じになる事をどうして承知することができますか。重ね重ね情けない、あなたのお気持ちです」と書いてあったのは、実に面白いことであった。
 今はこの世にない人なので、これくらいのことも忘れがたい。

【注釈】
・がり:(人の)居るところ


第三十二段
【本文】
 九月(ながづき)廿日の比(ころ)、ある人に誘はれたてまつりて、明けるまで月見ありく事侍(はんべ)しに、思し出づる所ありて、案内させて、入り給ひぬ。荒れたる庭の露しげきに、わざとならぬ匂ひ、しめやかにうち薫(かを)りて、忍びたるけはひ、いとものあはれなり。
よきほどにて出で給ひぬれど、なほ、事ざまの優(いう)に覚えて、物の隠れよりしばし見ゐたるに、妻戸を今少し押し開けて、月見るけしきなり。やがてかけこもらましかば、口をしからまし。跡まで見る人ありとは、いかでか知らん。かやうの事は、ただ、朝夕の心づかひによるべし。
その人、ほどなく失せにけりしと聞き侍りし。

【訳文】
 九月二十日ごろ、ある方のお誘いをこうむって、夜の明けるまで、月を見て歩きまわったことがございましたが、その途中で、その方が思い出された所があって、そこへ行き、私に家の中の様子をうかがわせてから、室内にお入りになった。外で待っていると、荒れ果てて、露がいっぱいおりている庭に、わざわざ焚いたのではない香の匂いが、しつとりと薫っていて、耳に止まらぬほど低く話している声に、とても、何かしみじみとした情趣が感ぜられる。
 適当な時間がたって、その方は女の室からお出になってしまわれたのであるが、自分は、この家に住む女の様子が優雅なものと思われて、物かげからしばらく見ていたところ、女は、送り出した妻戸をもう少し押し開いて、月を眺める様子である。人を送り出すとすぐさま、戸を閉じて掛け金をかけ、中にひき籠ってしまったら、残念なことであろう。人の去った後の自分の様子までも見ている人があるとは、どうして知ろう。こういうようなことは、ただ、日常の心がけによるものであろう。
 その女の方は、まもなくなくなってしまったと聞きました。

【注釈】
・事ざま:この家に住む人の様子


第三十三段
【本文】
 今の内裏作り出されて、有職の人々に見せられけるに、いづくも難なしとて、既に遷幸(せんかう)の日近く成りけるに、玄輝門院御覧じて、「閑院殿の櫛形の穴は、丸く、縁もなくてぞありし」と仰せられける、いみじかりけり。
これは、葉(えふ)の入りて、木にて縁をしたりければ、あやまりにて、なほされにけり。

【訳文】

 この、新造の内裏の櫛形の穴は、昔のに比べると、切り込みの部分があって、木で縁がしてあったので、まちがいということで昔の通りにお直しになった。

【注釈】
・今の内裏:当時の皇居
・有職:公家の様々な先例慣習を明らかにし、究めること
・葉(えふ)の入りて:完全な半円形でなく切り込みがあること

第三十四段
【本文】
 甲香(かひかう)は、ほら貝のやうなるが、小さくて、口のほどの細長にさし出でたる貝の蓋なり。
 武蔵国金沢といふ浦にありしを、所の者は、「へなだりと申し侍る」とぞ言ひし。

【訳文】
 甲香というものは、ほら貝のような形の貝で、それより小さくて、口のあたりが細長く突き出ている貝のふたの事である。
 武蔵の国の金沢という浦にあったのを、その土地の者は、「へなだりと申します」と言った。

【注釈】
・甲香: 長螺(ながにし)という貝のヘタ。 香料と混ぜ 合わせて煉香(ねりこう)を作る。

第三十五段
【本文】
 手のわろき人の、はゞからず、文書き散らすは、よし。見ぐるしとて、人に書かするは、うるさし。

【訳文】
 文字を書くの下手な人が、遠慮なく手紙をどんどん書くのは、良いものだ。これに反して書く文字が
 みっともないと思って、他人に書かせるのは、いやみなものだ。

【注釈】
・手のわろき:字の下手な
・うるさし:わざとらしく、いやみなもの


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今日は、夕刻から太郎君と一緒に、連れ合いの庭の倉庫エオ整理した。2つあるスティール製の小屋には、旧い本も入っていた、いずれも、もはやそのものを見ることもないだろうということで廃却することにした。
外国古典文学や値段の張りそうな図鑑などもあったが、当時残しておきたいという心境も分かったが、廃却して、2つの倉庫を1つにまとめることに決まった。

その当時は必要かと思うものでも、跡から振り返ってみると、案外見ないものだと感じた。
太郎君一家と夕食を共にして、帰宅した。

このような場合兼好法師なら難と日記に書き付けるだろうかなどと思った。





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Last updated  2012.02.13 10:21:25
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