はないちもんめ
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故郷の私の父が今年80歳になった。兄弟4人で2万円ずつ出し合い、旅行券を贈った。父ばかりでなく、母もすごく喜んでくれた。娘や息子たちがみんなでプレゼントしてくれたことがうれしかったようだ。田舎から、月に何度も届く小包にいつも感謝しているが、甘えるばかりで言うほどの贈り物は出来ていないように思う。 それでも、上洛した時には、京都の名所の数々を連れて歩いた。南座に連れて行ったり、天の橋立に行ったり、寺社、仏閣を60代70代前半まではいろいろ歩き回ることも、日頃の農作業に比べれば大丈夫と健脚を見せてくれていた。 そんな、元気な姿を年に1~2回見るだけで離れていても、見守られているという実感があって安心していた。でも、去年あたりから上洛するだけで精一杯のように、体力が落ちてきたのが目に見えて解る。 そうなると、離れて暮らす実家から出た私や姉はいつも何か不安で落ち着かない。 離れた土地に嫁いだことが後悔さえされる。そうなってみると、やはり故郷というものは、場所ではなくて、父や母の笑顔、懐なのかと思えてくる。 しわくちゃの笑顔や、「おぉ、きたか?元気か?」の声が涙が出るほどうれしい。 主人の父は2年前に亡くなり、今はいない。最近、父と最後に撮った写真を引き伸ばしたら、すごく主人が喜んだ。 主人にとったら、故郷の片方がもう逢いたくても逢えない。心にぽっかり穴が空いているようだ。と、いつか主人が言っていた。もっと甘えておけば良かった。安心させようと思って「大丈夫だ、頑張っている」とばかり言っていたように思うと、洩らす。 「実家に一緒に暮らす兄たちは不満や愚痴をよく言っていたけれど、俺は、もっとよく頑張ったな、すごいぞとか、もっと褒めて欲しかったんだと思う。でも実家に帰った時は兄家族の手前、親父も俺の事を思っていても直接褒められなかったんだろう。だから、自分の兄弟との旅行の時には気兼ねなく褒めていたのだろう。おじさん、おばさんは逢うと頑張っているな。と言ってくれたのはそういうことだろう。でも、親父が亡くなってこの頃、兄貴がようやく俺の頑張っている事を認めるようになってきたと感じる。もっと、早く親父が元気なうちに話しとけば良かった。」 ・・・と、写真を見ながら呟いた。84歳で亡くなった父と主人の関係、、、来年春、社会人となって、家を出て行くうちの長男、次男主人も、私も実家から遠いことをこの頃後悔している。家から巣立っていく息子たちに寂しさを訴えているのは私より主人の方なのだ。
2005.09.07
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