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新商品が社会に広がるのは、斬新で魅力的な機能を備えていて、それが消費者の心を引き付けてヒットするからだと一般には思われている。
しかし、商品が広く社会に定着するまでには、それだけに留まらず、三つの段階を経るものである。
具体的事例を紹介しつつ説明してみよう。
〔第一段階〕新捜能の開発
新商品と呼ぶにふさわしい商品は、当然のことながら斬新な機能を備えて社会に登場する。手紙に対する電話、馬車に対する自動車、最近ではパソコンなど、いずれも圧倒的かつ画期的な機能を備えている。消費者は、そのハイテクに圧倒されて、少々高価でも、少々使いにくくてもそれを手に入れようとする。
だから、重いのをあえて持ち歩いたりすることが、むしろ自慢になり、誇りとなる。
〔第二段階〕周辺機能の開発
新機能だけで売れていた新商品も、第二段階に入ると、次は周辺機能や条件の改善で競争するようになる。
消費者の注文も贅沢になって、高価であるよりは廉価であることを、使いにくいよりは使いやすいことを望むようになる。故障ももちろん少ないほうがよい。生産者は、これに応じるために、低価格で故障の少ない、さらにはさまざまな付属機能を備えた商品の開発を迫られる。少し前の家電製品、最近のパソコンや携帯電話がわかりやすい例だろう。そしてこれは、日本が得意な段階である。
〔第三段階〕周辺との調和、人間性の追求
商品が永く市場に定着するためには、第二段階まででは、まだ不充分である。最終的に考慮されねばならないのは、 社会との調和や人間性の尊重である。これは、商品開発におけるヒューマン・タッチの追求と言い換えてもよい。 日本の家電製品が世界に先がけて小型化に成功したのは、狭い住宅事情との調和という問題があったからである。
性能を下げても排ガスをクリーンにした自動車が、求められ開発される過程がこれである。日本には過密、過大都市があるからそうなる。カーナビ の開発と普及が世界一であるのも同じ理由である。驚異的なスピードを誇るコンコルドが結局 16 機で製造停止となったのは、それが耐えがたい騒音を地上の都市に残すからであり、一万トンタンカーが開発されないのは、その母港を造るためには容認することのできない自然破壊が伴うからである。
さて、生産者側は、周辺環境との調和を図るための研究開発に対してはどうしても腰が重いそれよりも、第二段階の機能に合った環境を有する市場のほうを、国内外に求めがちである。
しかし、それはこれからの時代を生き抜くには、賢明な態度とは言いがたい。
特に日本は、世界でもトップクラスの社会条件と、「人に優しい技術」や環境技術をすでに持っているのだから、むしろそれを自覚して、世界にその普及を提案していくことのほうがはるかに賢明である。それがこれからの進む道である。
『すぐに未来予測ができるようになる 62 の法則』(日下公人氏著、 PHP 出版)より