音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2009年08月08日
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 1984年の大ヒットアルバム 『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』 はブルース・スプリングスティーンを一躍時代の寵児へと押し上げた。従来のスプリングスティーンのロックサウンドをベースにしながらも、MTV時代に相応しいポップな味付けが効き、シングルカットは次々とヒット。実に12曲中7曲がシングルとしてビルボードにトップ10入りするという“お化けアルバム”だった。折りしも、レーガンの大統領選キャンペーンでは、スプリンスティーンがアメリカン・ドリームの具現者として、若者の星に祭り上げられた。表題曲「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」そのものの内容に関係なく、"俺はU.S.A.で生まれた"というコーラス部分だけが政治の場で利用され、曲解され、一人歩きした。けれど、そのサウンドから受けるイメージと異なり、この曲の内容は、重く暗い。ベトナム戦争から帰還したアメリカ兵を歌ったもので暗いメッセージだった。

 この曲そのものの歴史というか由来からしてメッセージ色が強い。実は「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」はこのアルバムのために書かれた曲ではなかった。1981年、つまりもう一作前のアルバム『ネブラスカ』を作った時の曲だ。『ネブラスカ』は、彼の作品の中ではあまりメジャーではないが、通好みというかミュージシャン好みの1枚で、全編アコースティックな自宅録音というアルバム。アメリカに生きる個々の“生”を生々しく歌った楽曲が並ぶアルバムだ。要するに、「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」も、本来はそんな曲の一つだった。

 本来の「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」が一般に日の目を浴びるのは、長い年月が経ってからだった。過去の秘蔵テープ集大成の4枚組『トラックス』(1998年)とそこからベスト選曲した『18トラックス』(1999年)の発売によって正式なアルバムに収められた。スプリングスティーンが伝えたかった本当のメッセージは、こちらのヴァージョンを聴く方がよく伝わってくる。深刻に暗い苦悩の歌である。収録アルバムは特段おすすめではないが(『トラックス』は4枚組でマニア向けだし、『18トラックス』は安易な編集盤ぽくて全体の統一性はない)、それでもなお、「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」だけは聴く価値がある。



[収録アルバム]

Bruce Springsteen / TRACKS (1998)
Bruce Springsteen / 18 Tracks (1999)





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Last updated  2010年07月08日 17時14分12秒
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