音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2010年08月10日
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有名曲を含めども聴きどころは他のところにある1枚


 シカゴ(Chicago)は60年代末にデビューした、その名のとおりシカゴ発のロック・グループで、ブラス・セクションを積極的に取り入れたスタイルから“ブラス・ロック”の代表的バンドとして知られる。70年代前半から中盤にかけて成功を収めた後、いくぶん低迷期を迎え、その後、80年代にラヴ・バラード路線で再び一世を風靡した。

 本盤『ラヴ・ミー・トゥモロウ(Chicago 16)』は、そうしたラヴ・バラード路線の嚆矢とされ、良くも悪くもシカゴがアダルト系バラード・バンドとしての道を切り開いたヒット作というのが一般的認識である。初めてデビッド・フォスターをプロデューサーに迎えて制作されたこのアルバム自体は全米9位を記録し、前作の散々なセールス記録を回復した。また、本盤からのシングルとして、 「素直になれなくて(Hard To Say I’m Sorry)」 が全米1位に輝いた(同じく10. 「ラヴ・ミー・トゥモロウ」 もシングル・カットされている)。

 さて、そのシングル「素直になれなくて」に如実に表れているのだが、意外にも本作の聴きどころはシカゴの伝統的な部分にあると筆者には思われる。実はアルバムに収録されている「素直になれなくて」には続きがあり、「ゲット・アウェイ」という曲と一続きで1曲を構成している(5.「素直になれなくて/ゲット・アウェイ」)。そしてこの後半部分(「ゲット・アウェイ」)は、以前からのシカゴ的ブラス・サウンド志向の曲なのである。

 これで何が言いたいかはお分かりであろう。本盤の聴きどころは新たな指向として登場してきたバラード系ではなく、シカゴが70年代を通してやってきたブラス・サウンドの洗練にあった。そういう観点からすると、本盤の聴きどころは、3.「バッド・アドヴァイス」や、上述の5.に含まれる「ゲット・アウェイ」ということになる。またアルバム後半(LPのB面)の曲の多くも、それほどブラス・セクションの派手さはないが、曲調としてはシカゴ初期の楽曲に似たものもあって、やはり従来路線の延長線にあると言えるように思う。

 本作のアルバム・ジャケットはルーペで何かを拡大している図である(ジャケット写真は こちら )。それは、コンピューターのチップを虫眼鏡を通して見たというもので、プロデューサーのデヴィッド・フォスターを起用したことによる音の洗練・近代化を含意していたらしい。しかし、その“音の洗練”は、バラード路線への変化とイコールではなかった。実際のところ、この後のシカゴは確かにアダルト向けの楽曲作りに一層の力を注ぐわけだけれども、本作の段階ではブラス・ロックと呼ばれた要素もまだまだ強く、メンバーの変更や新プロデューサーの起用という変化の中で従来のサウンドを変えるのではなく、それを洗練させ、極めていこうという意図が感じられる。つまるところ、このアルバムは新たなシカゴの第一歩というよりは、過渡期的な性格といった方が正確だろう。この時期のシカゴのイメージがシングル「素直になれなくて」だという人は、ぜひこのアルバムも試してもらいたい。そして、本作でのシカゴのブラスが耳についたなら、過去作をさかのぼってみてほしい。






1. What You're Missing
2. Waiting for You to Decide
3. Bad Advice"
4. Chains
5. Hard to Say I'm Sorry/Get Away
6. Follow Me
7. Sonny Think Twice
8. What Can I Say
9. Rescue You
10. Love Me Tomorrow

1982年リリース。





ラヴ・ミー・トゥモロウ(シカゴ16) [ シカゴ ]




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