そのデュラン・デュランが人気絶頂の1985年、二つのサイド・プロジェクトが展開された。一つはアンディ・テイラーとジョン・テイラーが尊敬するロバート・パーマーに声をかけて実現したロック・バンド、パワー・ステーション(The Power Station)。もう一つは、サイモン・ル・ボン、ニック・ローズ、ロジャー・テイラーによるアーケイディア(Arcadia)である。前者がデュラン・デュランとは異なるロック志向のプロジェクトであったのに対し、後者はデュラン・デュランのサウンドを踏襲し、多彩なゲストを迎えてアルバム制作を行った。
本盤『情熱の赤い薔薇(So Red The Rose)』は、そのアーケイディアが残した唯一のアルバムである。バンド名は、17世紀フランスの画家ニコラ・プーサンの代表作『アルカディアの牧人たち』にインスパイアされた名称という(アルカディア=楽園、理想郷の英語読みがアーケイディア)。デュラン・デュランと比べて少々シュールでアヴァンギャルドな作りで、ジャケットも趣味が分かれそうな個性的な絵が採用されている。余談ながら、このジャケット・デザインは輸入盤、国内盤、再発盤など少しづつ違うそうでジャケットデザインの人物の顔のホクロの有無、アルバムタイトルが絵の中に含まれているのとそうでないのがあるようだ。