有名曲では、「危険な関係(Breaking Us In Two)」あたりが、ジョー・ジャクソンの美メロ曲の代表格と言えるかもしれない。けれども、筆者としては、この曲の入っているアルバム(『ナイト・アンド・デイ』、1982年作)の中に、忘れられない曲がもう一つある。それがこの「スローな曲をかけてくれ(A Slow Song)」だ。曲そのものは静かに始まり、次第に盛り上がっていくタイプの曲である。このような美しい曲を作れるというのは、ジョー・ジャクソンの才能が音の制作者(ミュージシャン、プロデュース)としての部分に限られたものではないということに他ならない。曲の作者(コンポーザー)としてもその才能は抜きんでている。
ちなみに、この曲の原題は単に「A Slow Song」なのに、何ゆえ邦題は「スローな曲をかけてくれ」なのかと思う人もいるかもしれない。だが、実際の歌詞を聴けばその疑問はすぐさま解決する。サビの詞は“Play us a slow song…”というもので、邦題はこの部分全体の翻訳である。ともあれ、作曲者としての才能とヴォーカリストとしての力量の双方が存分に発揮された、筆者の大のお気に入りの1曲。ベスト盤(そしてライブ盤)収録のライブ・ヴァージョンしか聴いたことのない方は、ぜひオリジナル(スタジオ録音ヴァージョン)の方もお試しいただきたい。
[収録アルバム]
Joe Jackson /Night and Day Joe Jackson / Stepping Out: The Very Best of Joe Jackson (1990年)←ベスト盤だけれども、こちらはライブ・バージョンのみ収録