音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2012年08月14日
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テーマ: 洋楽(3388)




 ソ連、略さずに言えば、ソビエト社会主義共和国連邦。既に歴史の教科書の1ページになってしまった国家である。中年以上の人たちにとってみれば、ソ連という国家は“現代”の一部かもしれないけれど、いまの若者や子どもたちにとっては、生まれた時からもう存在していなかったわけで、もはや“歴史”である。1985年に書記長の座に就いたゴルバチョフは改革を推し進め、一党(共産党)独裁をやめ、大統領制を導入し(ゴルバチョフ自身が最初で最後の大統領となった)、やがては東欧諸国の民主化(1989~90年)、さらにソ連邦の解体(1991年)へと進んでいく。

 この流れの中、ゴルバチョフが当初推し進めた政策が、ペレストロイカ(改革)とグラスノスチ(情報公開)だった。こういう国内情勢の中、1987年の夏、ソ連には米国からミュージシャン訪れ、ライブを敢行した。まずは、モスクワ郊外で4万人規模の平和のための大コンサート(サンタナ、ドゥービー・ブラザーズ、ジェイムズ・テイラーらが参加)が開かれた。その数週間後、続いて今度はビリー・ジョエル(Billy Joel)がモスクワで3日、レニングラードで3日の6本のライブを行い、計15万人を動員した。

 ビリー・ジョエルは前年の1986年夏にスタジオ盤としては10作目のアルバム 『ザ・ブリッジ』 を発表していた。このアルバムを引っ提げて世界ツアーを行い(日本には87年6月に来日)、そのツアーの締めくくりとしたのが本ソヴィエト公演だった。そのため、『ザ・ブリッジ』からの楽曲も収められている(6.、7.、10.)が、全体としては、それ以前のアルバムからも、彼のライブの定番曲がバランスよく収められているといった印象だ。

 内容は当時のビリー・ジョエルの迫力あるライブを無難に収めたような内容で、少し後に筆者がライブで体験したビリー・ジョエルの印象とも大差ない。なので、彼の当時のパフォーマンスが高かったと言えばそれまでだけれど、特にこの公演が抜きんでているというわけでく、当時の平均的パフォーマンスが収められていると言える。普通の(アメリカや日本で行う)公演との違いと言えば、MCの後にロシア語の通訳が入ること、いくつかのサービス曲(1.、15.、16.)が含まれているところ。

 その3曲をちょっと見ておこう。1.「オドイア」は、実は上記の6本以外に急きょ追加されたグルジアのトビリシでのテイクで、地元の合唱団との共演となるグルジア民謡である。15.「バック・イン・ザ・U.S.S.R.」は 別項 で既に取り上げたが、言わずと知れたビートルズの曲(なお、U.S.S.R.は英語でのソビエト連邦の略称で、ロシア語ではC.C.C.P.)。16.「時代は変る」は、1960年代のボブ・ディランの有名曲で、本ライブ盤では3.「オネスティ」とこの「時代は変る」の2曲だけは実際のコンサートではなく、放送用に収録された音源からのもの。

 今となってみれば、ディランの「時代は変る」を演じ、このアルバムに収めたというのは示唆的だった。当時のロシア人(ソ連人)にとってはまさしく時代の変革期。この後の数年で東欧は変貌し、ソ連は消滅し、本当に時代は大きく変わった。同時に、この当時のビリー・ジョエルは中年世代に入り(このソ連公演の時点で38歳)、“ロックンロールをやるには自分は年を取り過ぎた”という発言を何度もしていた。実際には、90年代に入ってからも『ストーム・フロント』と『リヴァ―・オブ・ドリームズ』のヒットでまだまだ花を咲かせることにはなったのだが、この時点では、自身のキャリアとしても“移りゆく時代”みたいな感傷を持っていたのだろう。だからこそ、キャリアの集大成の一つとして、“西側”の音楽の体現者という立場で、“東側”の聴衆にそれを伝えるという使命のようなものを強く感じていたんじゃないかと想像する。最高のライブ・パフォーマンスを誇りながらもなかなかライブ盤を出さなかった彼だったが(これ以前に出たライブ盤は1981年の 『ソングズ・イン・ジ・アティック』



[収録曲]

1. Odoya
2. Angry Young Man
3. Honesty
4. Goodnight Saigon
5. Stiletto
6. Big Man on Mulberry Street
7. Baby Grand
8. An Innocent Man
9. Allentown
10. A Matter of Trust

12. Sometimes a Fantasy
13. Uptown Girl
14. Big Shot
15. Back in the U.S.S.R.
16. The Times They Are A-Changin’








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Last updated  2012年08月14日 09時30分04秒
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