音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2012年11月06日
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 1970年代に女性ポップ・シンガーとして広い人気と名声を博したリンダ・ロンシュタット(Linda Ronstadt)。80年代に入り、彼女は新たなチャレンジを試みる。ジャズ・スタンダード曲への挑戦(三部作)、メキシカン・スタンダード(スペイン語曲)のアルバムの発表、さらには、エミルー・ハリスにドリー・パートンというカントリーの大物との共演盤といった新しいことに取り組んだ。そういう時期を経て、7年ぶりにポップ畑への回帰となったのが、この『クライ・ライク・ア・レインストーム(Cry Like A Rainstorm-Howl Like A Wind)』というアルバムだった。

 ジャケットにも“フューチャリング・アーロン・ネヴィル”と記されているように、ザ・ネヴィル・ブラザーズのアーロン・ネヴィルが複数曲(3.、4.、5.、11.)で参加し、リンダとのデュエットを聴かせている。うち、5.「ドント・ノウ・マッチ」は全米2位(アダルト・コンテンポラリー・チャートでは1位)の大ヒットとなったが、売れたのも納得の見事な歌唱と曲展開。この曲がすべてでは決してないが、このヒット曲がアルバム全体の質の高さをよく象徴しているようにすら思う。

 上で書いたような他ジャンルの挑戦後ということもあるのだろうけれど、年齢的にも40歳代前半となったリンダの貫録(もちろんいい意味で)がアルバム全体に滲み出ている。オーケストラ(ザ・スカイウォーカー交響楽団)や合唱隊(オークランド・インターフェイス・ゴスペル合唱団)を組みこんでいるのは、それまでの新たなチャレンジから得た成果の一端だろう。以前からのリンダのファンは、ポップ/ロック系に戻ってくることを待ち望む人も多かっただろうが、7年も待った甲斐があった作品に仕上がっている。他ジャンルをやったことがマイナスにはならず、明らかにプラスに作用し、ヴォーカリストとして一回りも二回りも大きくなっている。

 ちなみに4曲共演のアーロン・ネヴィルという人選に疑問を示す向きがあるけれど、筆者は案外これは意図的で、しかも結果としてよかったんじゃないかと思っていたりもする(11.は少々ご愛嬌という気もするけれど…)。リンダ・ロンシュタットの艶やかで伸びのある(しかも貫録のついてきた)ヴォーカルと、しっかりした男性ヴォーカルを並べたら、さぞかし重たいアルバムになっただろう。そうではなく、なよっとした(ファンの方、失礼!)高音域のアーロン・ネヴィルを持ってくることで、結果的にはリンダ・ロンシュタットのヴォーカルがより強調される。つまるところ、対等な共演といった感じよりも、あくまでリンダが主でアーロンはサポートだったと考えれば、この人選も納得がいくように思う。

 捨て曲ほとんどなしの好盤だが、敢えてそのリンダの歌声という基準で外せないベスト3を挙げるならば、表題曲の2.「クライ・ライク・ア・レインストーム」、6.「アディオス」、12.「グッドバイ・マイ・フレンド」。とくにこの辺りの曲を聴いていると、声質、技術、情感の表現の三点のトータルとそのバランスにおいて、リンダ・ロンシュタットを超えるヴォーカルは他に存在しないんじゃないかとすら思わされる。




[収録曲]

1. Still Within the Sound of My Voice
2. Cry Like a Rainstorm

4. I Need You
5. Don't Know Much
6. Adios
7. Trouble Again
8. I Keep it Hid
9. So Right, So Wrong
10. Shattered
11. When Something Is Wrong with My Baby
12. Goodbye My Friend

1989年リリース。







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Last updated  2012年11月06日 07時14分03秒
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