音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2012年11月09日
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テーマ: 洋楽(3566)




 レナード・コーエンは1934年生まれ。シンガーとしてのデビューは1968年だった(ちなみに、それ以前からも詩人として活動していた)ので、音楽キャリアとしては“遅咲き”なわけだが、少しずつリリースを重ね、本作がスタジオ盤としては11枚目。リリースが2004年10月だから、ちょうどコーエンが70歳になった頃に出たアルバムということになる。

 ますますドスが効いたコーエンのヴォーカルがまず耳につく。そのヴォーカルは、2.「ビコーズ・オブ」、5.「モーニング・グローリー」、11.「トゥ・ア・ティーチャー」あたりに顕著なように、“歌っている”というよりは“つぶやいている”ようだ。7.「ヴィラネル・フォー・アワ・タイム」なんかはもはや音楽をバックにした詩の朗読と化している。

 だからといって全編重苦しいかというと、そういう訳でもない。その主たる理由は、曲によってプロデュースを共演者に任せてしまっている点にあるように思う。特にシャロン・ロビンソンがいい味を出している。彼女はこのアルバムの時点で既に25年ほどコーエンとのコラボ歴を持っていて、1.「ゴー・ノー・モア・ア・ロービング」や8.「ゼア・フォー・ユー」の、コーエンの静かなヴォーカルを生かしながらも、曲として優しいトーンを保っているのはお見事。

 同じように、女性ヴォーカルが入っているという点では、4.「アンダートウ」、10.「ナイチンゲール」が耳につく。これらはアンジャニ・トーマスというハワイ出身のアーティストで、彼女も1980年代からコーエンのサポートをしてきた人物である。シャロンに比べアンジャニの方はよりメロウなアレンジで、暗いコーエンのアルバムにも彼女の参加で明るさがうまく入り、調和している感じがする。

 なお、そのアンジャニがプロデュースした曲の中には、6.「オン・ザット・デイ」というのもある。この沈んだトーンの短い曲(2分余り)は、2001年のニューヨークのテロ(「9・11」)を歌ったものということだが、筆者には含みのある詞がいまだに謎。

 ともあれ、70歳にもなって、普通の人なら過去の遺産を再生することしかできないだろうに、この人はすごい。詩人として捜索を続け、ヴォーカルの“生々しさ”という点では、前作(『テン・ニュー・ソングズ』)の先を行っている。創作意欲の強さゆえになせるわざだろうか。日本では“万年マイナー・アーティスト”みたいに扱われてしまっているが、欧米では本盤は相応のセールスも挙げた。出身国のカナダではアルバム・チャート5位まで上昇し、米国でもコーエンの作品としては69年の『ソングス・フロム・ア・ルーム(ひとり、部屋に歌う)』につぐチャート成績を残したという。あと、余談ながら、ジャケットおよび歌詞カードの各所に配されている絵(線画)もコーエン自身の作品。老いてもなお衰えぬ創作意欲はこういうところにも出ているということか。




[収録曲]

1. Go No More A-Roving

3. The Letters
4. Undertow
5. Morning Glory
6. On That Day
7. Villanelle for Our Time
8. There for You
9. Dear Heather
10. Nightingale
11. To a Teacher
12. The Faith
Live Track: Tennessee Waltz







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Last updated  2012年11月09日 22時50分27秒
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