音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

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2012年11月23日
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80年代バラード路線の頂点作


 息の長いバンドは、しばしばその長いキャリアの中で作風も変わっていったりする。メンバーがすっかり入れ替わって方向性が変わってしまう(あるいは別のバンドと化していく)こともままある。フリートウッド・マックやジェファーソン・エアプレーン/スターシップ(参考過去記事 (1) (2) )なんかはその好例で、そもそも別バンドという方が適切なくらい、歴史の中で変容していった。

 そこまで劇的ではないにせよ、シカゴ(Chicago)もまた大きく作風を変えたバンドの一つである。シカゴは、1982年発表の 『シカゴ16』 でデビッド・フォスターをプロデューサーに迎え、「素直になれなくて(Hard To Say I’m Sorry)」のシングル・ヒットで、70年代のブラス・ロックというイメージとは異なるバンド像を定着させた。以降、90年代にかけてシカゴはこの路線を高めていった。そんな中、80年代半ばにピーター・セテラの脱退という事態が起こる。歌を聴かせる点にも重点があるバラード路線という状況で、リード・ヴォーカリストの交代は一大事だっただろう。ソロ活動を開始したピーター・セテラに代えて1985年、ジェイソン・シェフが加入する。

 この交代が功を奏した結果、本作『シカゴ18』は成功した。新加入のジェイソン・シェフ(当時、若干24才)は大きく見れば前任のセテラに近いタイプのヴォーカリスト。前任者との比較なしで見ても、実によいヴォーカリスト(かつベーシスト、ソングライター)だった。

 これを受けてバンド自体も、不安はあったのかもしれないけれど、やる気満々だった。1.「ナイアガラ・フォールス」からして意気込みのある。同じくバンドの意気込みが強く感じられるのは4.「長い夜(25 or 6 to 4)」。言わずもがな、シカゴの第2弾アルバム(『シカゴと23の誓い』、1970年)に収録され、彼らにとって最初のTop 5入りしたシングルヒット曲である。これを大胆にリメイクし、(70年代のファン受けするかどうかはともかく)奥行きのあるサウンドに仕立てた。手薄だったギターに関して、スティーヴ・ルカサーや マイケル・ランドウ といった大物ギタリストのサポートを加えているのも、不安と同時に意気込みの裏返しでもあったのだろう。

「スティウ・ラヴ・ミー(Will You Still Love Me?)」 と3.「フェイスフル(If She Would Have Been Faithful)」が傑出している。前者は全米3位、後者は17位のシングル・ヒットとなった。さらに、アルバム後半の収録曲で、バラード路線という意味で興味深いのは、8.「ふたりの絆(Nothing’s Gonna Stop Us Now)」と9.「アイ・ビリーヴ」。これらの曲だけ単独で聴くと、ただのバラード路線の曲と思われるかもしれないが、本盤の中では、クレジットされていない小品(「フリー・フライト(Free Flight)」、筆者の手持ちの盤ではTrack 8の中に組み込まれて前奏となっている)が配されている。“ブラス・ロック”と称されていた頃を思い起こさせるブラスの前奏があって、その後にいかにもバラード路線の曲が続く。70年代に積み上げてきたバンドの遺産を否定するのではなく、その上に積み重ねられたバラード路線なのだという意気が伝わってくるというと言い過ぎだろうか。

 個人的に何度も繰り返し繰り返し聴いたアルバムという理由もあるが、いま思い返してみれば、80年代シカゴのバラード路線の頂点作といってもいい。他の作品にも代表曲(「素直になれなくて」、「ルック・アウェイ」など)はあるが、アルバムとしての出来を考えた時、これが最高作といってもよいのではないかと思う。



[収録曲]

1. Niagara Falls
2. Forever
3. If She Would Have Been Faithful...
4. 25 or 6 to 4
5. Will You Still Love Me?
6. Over and Over
7. It's Alright

9. I Believe
10. One More Day

1986年リリース。





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Last updated  2012年11月23日 10時42分38秒
コメント(2) | コメントを書く


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Re:シカゴ 『シカゴ18(Chicago 18)』(11/23)  
Voyager6434  さん
こんばんは☆

MTV全盛期でしたね~
そういうのも追い風になったと思います


2000年に入って CHICAGOとEARTH WIND & FIREが
ジョイント・コンサートを演ったのをDVDで観たことがあるのですが
多分2004年「ライヴ・アット・ザ・グリーク・シアター」と思います

良くも悪くも
過去の作品を 2つのバンドが力を合わせて再現しようとした
ステージに見えました

思うにこの2つのバンドは、2000年に入って 進化 よりも
遺産としてのバンドの 再現 を目指したのかもしれませんね


応援ポチです☆☆

(2012年11月25日 00時52分37秒)

Re[1]:シカゴ 『シカゴ18(Chicago 18)』(11/23)  
andale  さん
Voyager6434さん

コメント&応援、いつもありがとうございます。

遺産としてのバンドと言えば、筆頭はストーンズにヴェンチャーズでしょうか。メンバーを基本的に変えずに続けていくのも、メンバーがすっかり入れ替わってしまうのもありということでしょうね。

シカゴは「遺産化」する前にもう一花咲かせてほしかったですが、もう遅いのでしょうかね(苦笑)。
(2012年11月26日 05時54分01秒)

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