音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2014年08月01日
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テーマ: 洋楽(3388)




 あのシンディ・ローパー(Cyndi Lauper)がブルース曲のアルバムを制作すると聞いて、正直なところ、いったい何事か?、はたまたどんな作品に仕上がるのか?と発売前にはいろんな想像が頭の中を駆け巡った。結局、作品に仕上がってリリースされた盤を聴いた後の感想としては、意外なことに、よくも悪くも驚きはなかった。

 メンフィス録音とのことだが、実際、演奏もさほど“もろブルース”ではない。いや、細部や各々のフレーズはブルースなのだが、上記のシンディのヴォーカルが加わると、トータルではやはり“べったりブルース”という感じはしない。想像するに、演奏する側もこの企画の主旨をよく理解していたのだろう。シンディは既成のブルースの形に合わせてアルバムを作ろうとしているのではなく、彼女にしかできない方法でそれらの題材を歌おうとしていた。演奏者もそのことをよくわかっていて、無理やりシンディを自分たちの側に引き込もうとはしていないように感じられる。

 今から思えば、過去にもこうしたシンディのアプローチはあった。少なくとも、大ヒットアルバムとなった 『トゥルー・カラーズ』 収録の「アイコ・アイコ」はそうだったと筆者は感じている。ドクター・ジョンの解釈でよく知られるこの曲だが、シンディは“歩み寄る”というよりは“自分の側に引き込む”形で見事な解釈を提示していた。もちろん、自分側に引き寄せるといっても、その“自分側”にはその対象となる音楽もバックグラウンドとして含まれているということになるのだろうけれど、でもやはり最終的にはそれらも含めて“自分側”のものにしてしまう。いや、シンディだからこそ、見事にできてしまう、と言った方がいいかもしれない。

 本盤では、しかもそれをアラン・トゥーサンやB・B・キングらを相手にそれをやっているのだから、やっぱりシンディはただ者ではないといったところか。実際、本盤を巡るシンディの発言として、これら愛してやまない曲を録音することは何年も前から考えていて、メンフィスで実際に時間を過ごした結果、“(生まれ育った)ニューヨークのクイーンズとメンフィスはそんなに離れていない”ことがわかったと述べている。これらの発言はまさしく上で述べた“自分の側に引き込んで”しまう、シンディならではという感じがする。

 注目曲としては、アラン・トゥーサンおよびB・B・キングの豪華共演による3.「アーリー・イン・ザ・モーニン(Early in the Mornin’)」。シンディを含めこれら3人の芸風はまちまちな感じだが、不思議とこの曲の元にまとまっている。クリーム(E・クラプトン)で有名なロバート・ジョンソンの11.「クロスロード(Crossroads)」は、5.「ハウ・ブルー・キャン・ユー・ゲット(How Blue You Can Get)」と並んで、“ブルースの天才少年”(といっても既にこの時点で29歳だけれど)、ジョニー・ラングとの共演。この「クロスロード」においても、もろブルースのジョニー・ラングと、自分流シンディの不思議な融合が展開される。さらに、少し異色のナンバーとしてぜひ触れておきたいのが、9.「ダウン・ソー・ロウ(Down So Low)」。ブルースの影響を強く受けた白人女性シンガー、トレイシー・ネルソンの曲で、シンディにはこういう音楽もルーツになっているのかと、その消化ぶりに妙に納得させられたりする。

 本アルバムには、賛否両論いろんな意見があったみたいだけれど、リリースから数か月で60万枚の売り上げを記録したという。グラミーにもノミネートされ、140本を超えるツアーも行い、シンディの健在ぶりを印象づけることになった。




[収録曲]


2. Shattered Dreams (feat. Allen Toussaint)
3. Early in the Morning (feat. Allen Toussaint & B.B. King)
4. Romance In the Dark
5. How Blue Can You Get (feat. Jonny Lang)
6. Down Don t Bother Me (feat. Charlie Musselwhite)
7. Don't Cry No More
8. Rollin and Tumblin (feat. Kenny Brown and Ann Peebles)
9. Down So Low
10. Mother Earth (feat. Allen Toussaint)
11. Crossroads (feat. Jonny Lang)
12. Wild Women Don't Have the Blues*

 *12.と13.は日本盤ボーナストラック。

2010年リリース。






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Last updated  2014年08月01日 06時33分28秒
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