《櫻井ジャーナル》

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2011.08.30
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 リビアの内戦はNATOと反政府派との連合軍が勝利を手中にしたと見られているが、早くも「カダフィ後」をめぐる対立も表面化してきた。フランスやイギリスが軍事介入した「本音」と「建前」の矛盾が吹き出し始めたと言えるかもしれない。

 本音の核心部分には利権がある。リビアの石油だけでなく、アフリカ中南部の資源も争いの種になっている。「民主化運動の勝利」などという宣伝とは全く違う現実がそこにはある。

最近になって明らかにされた国連の計画 によると、6カ月から9カ月の間に選挙を実施することになっていて、リビアと国連安全保障理事会の承認を条件に200名の非武装軍事オブザーバーと190名の警察官を国連が派遣するなど、国連が中心になって新体制へ移行するシナリオ。治安を維持する責任をNATO軍は果たすともしている。

 しかし、すんなりと新しい体制に移行すると考えるのは楽観的すぎる。リビアの反政府軍は貧弱で「寄り合い所帯」。反政府軍がアフリカ中南部出身者を敵視していることも問題を複雑にしている。

 本ブログでは何度も書いているが、フランスやイギリスがムアンマル・アル・カダフィ政権を嫌った大きな理由のひとつは、アフリカ中南部を欧米から自立させようとしていたことにある。そこに中国が食い込んできたこともあり、欧米の巨大資本は危機感を持っていたはずだ。

 国民評議会はカダフィ政権がアフリカ諸国から傭兵を雇っているという話を宣伝、それを「西側」のメディアは垂れ流していたが、今のところこれは「未確認情報」にすぎない。トリポリ攻防戦の頃から反政府軍はアフリカ中南部の出身者を無差別に拘束、殺害しはじめている。

 傭兵だという理由らしいが、その大半は普通の労働者だと言われている。AU(アフリカ連合)のジャン・イング委員長によると、 仕事を求めてリビアへ渡った労働者はここ数年で数万人 になるとしている。こうした人びとが殺されつつあると懸念されているのだ。こうした殺戮を問題にして、AUは国民評議会を暫定政権と認めない方針のようである。

別のシナリオ も存在する。反政府勢力とNATOが作成したリビア支配プランが8月上旬に露見したものだが、それによると、ムアンマル・アル・カダフィの治安機関をそのまま使うことになっていた。カダフィ派から反カダフィ派へ乗り換えさせるため、裏取引きがあったようだ。イラクでの経験も反映されているのだろう。要するに、戦後、アメリカが日本で戦前の支配システムを残したのと似ている。

 そのプランによると、カダフィ政権で治安機関に所属する約800名を秘密裏に懐柔、カダフィ軍の内部にも反政府派の支持者は3255名いるとしている。また、新体制に移行した後、カダフィ政権の警官約5000名を雇うとしている。この主張にどれだけ信憑性があるのかは不明だが、そうした動きがあることは確かなようで、 それに対する反発 も出始めている。

 西側メディアの宣伝とは違って反政府派は貧弱で、6月頃までの「革命軍」は1000名程度の規模にすぎず、NATOが傭兵を集めて形を作ったわけである。カタールやアラブ首長国連邦で雇われたほか、チュニジアの失業者やカダフィ体制に不満を持つリビア人、あるいはコロンビアで死の部隊に所属して人間も含まれている。体制転覆の主役はイギリスを中心としたNATO軍だ

 8月上旬にリークされた文書によると、NATOと反政府勢力の計画では、首都や主要施設の警備やカダフィ政権幹部の逮捕を目的として1万から1万5000名の兵士をアラブ首長国連邦が提供することになっていた。反政府勢力は貧弱なうえ内部に対立の芽が存在、しかもアル・カイダを抱え込んでいる。湾岸の独裁産油国に頼るか、さもなければNATO軍に地上軍を派遣してもらうしかないのだろう。





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最終更新日  2011.08.31 00:59:55


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