《櫻井ジャーナル》

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2013.06.17
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 イランの大統領選挙でハサン・ロハニ元最高安全保障委員会事務局長が得票率50.7%で当選した。ロハニはハシェミ・ラフサンジャニ元大統領の側近と言われ、欧米では「改革派」、あるいは「穏健派」と呼ばれている。

 イラン支配層の内部にはアメリカの好戦派とつながっている勢力が存在している。両者を強く結びつける出来事が起こったのは1980年、アメリカ大統領選挙の最中のことだ。

 当時、イランはイスラム革命が成功した直後で、テヘランのアメリカ大使館では館員など52名が人質になっていた。この人質がいつ解放されるか、つまり選挙前に実現するのか、選挙後にずれ込むのかで選挙結果に影響が出ると考えられていた。

 結局、選挙ではロナルド・レーガンが当選するのだが、その背後では共和党による人質解放遅延工作があった可能性が高い。レーガンやジョージ・H・W・ブッシュの周辺がイスラエルのリクードと手を組み、イランと交渉していたのだ。人質が解放されたのはレーガンが大統領に就任した1981年1月20日だった。(詳しくは拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を)

 人質解放を遅らせる見返りとして、共和党側はイランへの武器供与を提示していた。後にイランへの武器密輸とニカラグアの反革命ゲリラ支援が明らかにされ、「イラン・コントラ事件」と呼ばれるようになるが、その発端は人質解放遅延工作にあったわけだ。

 この工作が行われている最中、イラクがイランを攻撃する。イラクに君臨していたサダム・フセインはCIAの手駒として権力を握った人物だ。このイラン・イラク戦争は1988年まで続き、イランとしては、アメリカやイスラエルからの武器提供を受け入れざるをえない状況だったとも言える。

 停戦後、イランでは新自由主義的、つまり強者総取りの経済が広がっていく。私有化や貿易の自由化が推進され、少数の大金持ちと多くの貧困層を生み出すことになったのだ。そして1989年に大統領となったハシェミ・ラフサンジャニは「経済改革」を実施、新たな経済エリートを生み出し、庶民は貧困化していった。

 こうしてできあがった利権集団は欧米の巨大資本と結びつき、現在に至るまで大きな力を持ち続けている。2005年の大統領選で勝利したマフムード・アフマディネジャドはこうした強者総取り経済を変えようと試み、まずパールシヤーン銀行にメスを入れようとしたのだが、成功しなかった。そうした中、イランでは不動産バブルが膨らみ、2008年に破裂している。

 欧米の政府やメディアがイランの「改革派」を支持する理由はここにある。欧米の巨大資本がイランでカネを儲ける環境が良くなる、つまりイランから富を吸い上げることが容易になるからだ。イランの新興経済エリートにしても、自分たちが豊かになれば問題はない。TPPを推進したがっている日本の「エリート」と基本的に同じだ。



 イギリスの外務省は「核開発問題」に言及したようだが、核開発はイランを攻撃するために掲げた看板にすぎない。イランでは2004年に最高指導者のアリー・ホセイニー・ハメネイが核兵器の保有を禁じるファトワ(イスラムにおける勧告で、政治的にも影響力を持つ)を出し、その後も核兵器の開発を目指していないと一貫して主張している。ロハニが核問題で方針を変えるとしたら、核開発自体を放棄すると宣言する以外にない。

 イランを先制攻撃する前に流した「大量破壊兵器」、あるいはシリアの「化学兵器」と同じで、イランの「核開発」は単なる攻撃の口実。アメリカの親イスラエル派、つまりネオコンの中心的な存在であるポール・ウォルフォウィッツは1991年、ジョージ・H・W・ブッシュ政権の国防次官だったときにイランをシリアやイラクと一緒に殲滅するというビジョンを持っていたという。これは ウェズリー・クラーク 元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官の話。

 また、2007年に調査ジャーナリストの シーモア・ハーシュ が書いたレポートによると、アメリカ(ネオコン)、イスラエル、サウジアラビアは手を組み、シリアやイランをターゲットにした秘密工作を開始している。イランにもアメリカの特殊部隊JSOCが潜入して活動中だとされている。

 イランと欧米との対立が激しくなった理由は欧米側にある。イランの「強硬姿勢」が問題なのではなく、イランを攻撃するために「強硬姿勢」を宣伝しているだけだ。ただ、ここにきて欧米支配層の中には、イスラエルと手を組んだ好戦派に危機感を持つ人たちも増えている。好戦派の足下にも火がついている。例えば、トルコでは政府への反発が強まってデモ隊と警官隊の衝突に発展、サウジアラビアではクーデター計画があったとも言われている。





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最終更新日  2013.06.17 14:04:01


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