《櫻井ジャーナル》

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2014.03.12
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 久しぶりに日本の新聞を読んだ。原発に関しては「良いマスコミ」と「悪いマスコミ」があるかのような話になっていて、購読者の移動もあったらしいのだが、TPPも含め、国際問題では例外なしの「大本営発表」。もっとも、この「大本営」は東京でなく、ワシントンDCかエルサレムにある。ウクライナ情勢についてもそうした類いの「報道」が続いている。

 ウクライナの首都キエフでは、ネオ・ナチのメンバーが棍棒、ナイフ、チェーンなどを手に石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルを持ち出して撃っていたが、ビクトル・ヤヌコビッチ大統領と反政府派の代表は一旦、平和協定の調印にこぎ着けた。

 ところが、その直後から反ヤヌコビッチ派と警官隊(ベルクト)の双方が狙撃され、多くの死者が出て市街は火と血の海になる。この混乱の中、ヤヌコビッチ大統領はキエフを脱出、今はロシアにいるようだが、 法律的には彼がまだ正当な大統領 だ。これは本ブログで書いた通り。「西側」が支援している「暫定政権」に正当性はない。2010年の大統領選挙で選ばれたヤヌコビッチが気に入らない「西側」の支配層やウクライナのオルガルヒの代理人にすぎない。

 この「暫定政権」ができるまでの流れを振り返ると、次のようになっている。

 自分たちの意に沿わない結果の出た選挙は不正があると主張するのが「西側」、特にアメリカ。ウクライナのときもそうだったが、受け入れざるをえなくなる。「オレンジ革命」の時から「西側」の介入はあり、2004年からはネオ・ナチへの軍事訓練も始まっていたことを考えると、ヤヌコビッチ当選後、反ヤヌコビッチ派支援を強化することになった可能性が高い。

 この工作は ビクトリア・ヌランド国務次官補が昨年12月13日、工作資金として50億ドルをそうした勢力に投入していることをスピーチの中で認めている 。その際、演壇の後ろには巨大石油企業シェブロンの看板も掲げられていた。

 その一方、バルト諸国にあるNATO系の施設でネオ・ナチが軍事訓練を受けたとも言われている。2009年には リトアニアにCIAが秘密裏にふたつの尋問/拷問施設を持っていることが発覚

 第2次世界大戦の前、アメリカの国務省にはソ連を敵視するグループが存在、フランクリン・ルーズベルト大統領を中心とするニューディール派など反ナチの勢力と対立していた。反ソ連派が拠点にしていたのはドイツのベルリン、ポーランドのワルシャワ、そしてラトビアのリガ。2004年にNATOへ入ったエストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国をCIAやNATOが秘密活動の拠点にするのは、歴史的に見ると自然なことだ。

 ネオ・ナチの中には、シリアやチェチェンで実戦を経験している者も含まれている。中でも有名な人物が右派セクターを率いているひとり、アレキサンダー・ムージチコ(別名、サーシャ・ビリー)。チェチェンでロシア軍と戦い、その残虐さで有名になった。

 キエフでのクーデター後、 検察官事務所に押しかけてスタッフを罵倒、暴力を振るったり 武装解除を求めてきた暫定政権の人間を恫喝 している。そうした様子はYouTubeにアップロードされている。

 やはり右派セクターのリーダーで国家安全保障国防会議(国防省や軍を統括する)の副書記を務めるドミトロ・ヤロシュは、北カフカスにいるドッカ・ウマロフなる人物に支援を求める書き込みをしたと言われている。ヤロシュ側はこれを否定しているが、ムージチコの経歴を見ても、右派セクターがアル・カイダ(イスラム教スンニ派武装勢力)と結びついていることは確かだろう。

 ヤヌコビッチ大統領の政策に反発していたとはいうものの、EUは話し合いで解決しようとしていた。それが気に入らなかったのがネオコン(アメリカの親イスラエル派)。そうした勢力のひとり、ビクトリア・ヌランド国務次官補はジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使と電話で次期政権の閣僚人事を話し合っている際、次のように語っている:

 「あなたにも話したか、ワシントンに話しただけなのか覚えていないんだけれど、今朝、ジェフ・フェルトマンと話した際、新しい国連のヤツの名前を聞いたわ。ロバート・セリーよ。この話、今朝、あなたに書いたかしら?」

 ここに登場する「ジェフ・フェルトマン」とはジェフリー・フェルトマン国連事務次長を指している。2012年に潘基文国連事務総長がB・リン・パスコーと入れ替えたのだが、その前にはアメリカ国務省の近東担当次官補や駐レバノン大使を務めている。レバノン駐在の大使だった当時、イラン、シリア、ヒズボラを露骨に敵視していた。つまり、彼はアメリカの好戦派が送り込んだ人物だ。そのフェルトマンから聞いた情報にヌランドは喜んでいる。そして、「 EUなんかくそくらえ(F*ck the EU) 」と口にした。

 平和協定に調印した直後に狙撃が激しくなり、ヌランドが言うところのソフト路線は破綻する。狙撃したのはヤヌコビッチ大統領側によるものだと「西側」の政府やメディアは宣伝したが、2月25日にキエフ入りしたエストニアのウルマス・パエト外相は違った結論を出し、26日にEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ電話で次のように報告している:

全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある 。」としたうえで、「新連合はもはや信用できない」としている。

 この会話は、何者かが盗聴し、YouTubeにアップロードして明らかになる。なお、 この会話は本物だとパエト外相は認めている

 ところが、アシュトンは「議会を機能させなければならない」と応じ、「もし議会が機能しないなら、完全なカオスになる。」と続けている。「西側」の巨大資本とつながったオリガルヒ、オリガルヒの手先のボクサー、そしてネオ・ナチで成立している暫定政権を潰すようなことは言うなと釘を刺しているように聞こえる。有り体に言うと、ウクライナの富を盗む邪魔をするなということだ。

 現在、ウクライナの東部や南部で反キエフの動きが激しくなり、それを日本のマスコミは批判的に報じているが、反キエフの抗議活動が起こっている原因は暫定政権を作り上げたクーデターにある。そのクーデターを実行し、暫定政権で治安や軍を統括するポストを与えられたのがネオ・ナチだということを無視することは犯罪的。満州事変へ突入していった時の新聞と全く同じだ。「良いマスコミ」?そんなもの、少なくとも日本には存在しない。





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最終更新日  2014.03.13 12:40:59


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