《櫻井ジャーナル》

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2015.10.03
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 ロシア軍がIS(イラクとレバントのイスラム首長国。ISISやダーイシュとも表記)の拠点空爆を続け、ロシア国防省はラッカ近くにあったISの司令部や地下倉庫を破壊したと説明している。そのラッカでISは、それまで強制だった金曜日の礼拝を中止した。

 この攻撃をシリア政府だけでなく、イラクやイランの政府、さらにクルド勢力も歓迎しているが、シリアの体制転覆を目指している国々は不快感を隠していない。アメリカ政府はロシアがIS以外の勢力を攻撃、市民に犠牲者が出ていると非難、その主張を西側メディアは必死に宣伝、日本では「革新政党」もそれを垂れ流している。「アメリカ政府の仰せの通り」ということであり、日本がアメリカの戦争マシーンに組み込まれるのを本気で阻止しようとしてきたとは思えない。

 2011年3月にバシャール・アル・アサド体制の打倒を目指す軍事作戦を始めたのはアメリカ、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、カタール、ヨルダンといった国々で、今回の攻撃を非難する「アラブ諸国」が存在するのは当然。中東のメディアとして有名なアル・ジャジーラはカタールの国策メディアである。

 アル・ジャジーラは「アラブの春」で体制転覆を目指す勢力を支援していたが、このプロジェクトにはカタールも深く関与、そのプロパガンダを展開してきた。シリアでもこのメディアはフランス24と同じように、アサド政権が暴力的に参加者を弾圧していると伝えていたが、その当時、 シリア駐在のフランス大使だったエリック・シュバリエは報道内容を否定 していた。同国外務省の調査団が調べたところ、実際は限られた抗議活動があっただけで、すぐに平穏な状況になったことが判明したというのだ。

 この報告を読んで怒ったのがアラン・ジュッペ外相。EUへの加盟支援を餌にトルコをリビアやシリアに対する軍事作戦へ引き込んだのはこのジュッペで、シリアとイラクにクルド国を作るというプランを持っていたという。ジュッペは調査団の報告を無視、シリアのフランス大使館へ電話して「流血の弾圧」があったと報告するように命じた。

 このフランスより前からシリアでの工作準備を始めていたのがイギリス。1988年から93年にかけてのフランス外相、ロラン・デュマによると、2009年にイギリスを訪問した際、イギリス政府の高官からシリアで工作の準備をしていると告げられたという。デュマは政府から離れているとしてイギリス政府高官の話に乗らなかったというが、その後フランス政府は誘いに乗ったということだろう。

 その2年前、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは アメリカ、イスラエル、サウジアラビアがシリアとイランの2カ国とレバノンのヒズボラをターゲットにした秘密工作を開始 したとニューヨーカー誌で書いている。その中でサウジアラビアがムスリム同胞団やサラフ主義者と緊密な関係にあるとする情報を紹介、サウジアラビアだけでなくアメリカも反シリア政府派を支援しているとしている。



 そのソ連軍と戦わせるためにブレジンスキーが編成したのがイスラム武装勢力。資金はサウジアラビアが出し、兵器の提供や戦闘員の訓練はアメリカの情報機関や軍が担当していた。これにイスラエルが協力している。その関係の一端は「イラン・コントラ事件」という形で発覚した。

 こうした CIAの訓練を受けた戦闘員、いわゆる「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイルが「アル・カイダ」 だとロビン・クック元英外相は明らかにしている。アル・カイダはアラビア語で「ベース」を意味し、「データベース」の訳語としても使われる。

 この構図は 1992年に作成されたDPGの草案 、いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」で再浮上、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されてから本格的に動き始めた。攻撃から間もなく、 ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺では攻撃予定国リストが作成され、そこにはイラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンの名前が載っていた

 ネオコンはすぐにイラクを攻撃したかったようだが、統合参謀本部などの抵抗があり、開戦は2003年にずれ込む。そして2004年に「イラクのアル・カイダ(AQI)」が組織され、この戦闘集団が中心になって06年にはISIが編成され、今ではISと呼ばれている。シリアではアル・ヌスラというアル・カイダ系の武装集団が活動していることになっているが、この名称はAQIがシリアで活動するときに使っていたともDIAは説明している。

 2012年8月にアメリカの軍事情報機関、 DIAが作成した文書 によると、サラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQI(アル・カイダ系武装集団)がシリアにおける反乱の主力だとし、反シリア政府軍を西側(アメリカ/NATO)、湾岸諸国、そしてトルコが支援しているとも書いている。「穏健派」などはアメリカの好戦派が作り上げた幻影だということだ。

 こうした支援活動によって東部シリアにサラフ主義者の国ができる可能性があるとDIAは警告しているが、アメリカ政府は方針を変えなかった。それはバラク・オバマ政権の決断だったと報告書を作成した当時にDIA長官だった マイケル・フリン中将 は語っている。

アメリカが武器を提供、軍事訓練した戦闘員が武器を携えて「過激派」へ「投降」 することになっている。最近もそうしたことがあった。

 シリアのアサド政権を倒すために雇い、武器を提供し、訓練してきた戦闘員をロシアは攻撃している。それにアメリカ政府が文句を言うのは当然だが、アメリカ好戦派の命令で成立させた「安全保障関連法」に反対だという人たちがアメリカ政府に同調するのは滑稽だ。その「反対」も本気ではないのかもしれない。





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最終更新日  2015.10.04 00:59:00


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