《櫻井ジャーナル》

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2016.04.25
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カテゴリ: カテゴリ未分類
バラク・オバマ米大統領は4月24日、イギリスのBBCに対し、シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すことは間違いかもしれないと語った 250名の特殊部隊をシリアへ派遣して300人体制にすると発表 、増派は戦闘をエスカレートさせるものだとする批判を呼び起こした。

 シリア政府が支援を要請した相手はロシアであり、アメリカ軍がシリアへ入ることは侵略行為。しかもアメリカ政府はこれまでサウジアラビア、トルコ、イスラエルなどと同じようにアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を手先として利用、中東や北アフリカで殺戮と破壊を繰り返している。それだけでなく、ウクライナではネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)を使ったクーデターで合法政権を倒し、そのクーデターに反発する東部や南部を攻撃し、ロシア語系住民を虐殺してきた。「民族浄化」だ。こうした侵略行為の傭兵はカフカスや中国の新疆ウイグル自治区からも参加している。最近では南アメリカで自立した体制の転覆を目指している。

 アル・カイダ系武装集団がNATOと連合していることは、本ブログで何度も指摘しているように、リビアのムアンマル・アル・カダフィ政権が倒された時、明確になった。シリアでも同じ構図がある。違いと言えば、傭兵集団の一部が「ダーイッシュ」という新しいタグを付けていること位だろう。

 こうしたことは半ば常識。例えば、 ジョー・バイデン米副大統領 は2014年10月2日、ハーバード大学でシリアにおける「戦いは長くかつ困難なものとなる。この問題を作り出したのは中東におけるアメリカの同盟国、すなわちトルコ、サウジアラビア、UAEだ」と述べ、あまりにも多くの戦闘員に国境通過を許してしまい、いたずらにISを増強させてしまったことをトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は後悔していたと語っている。

 2013年9月、駐米イスラエル大使だった マイケル・オーレンはシリアのアサド体制よりアル・カイダの方がましだと語っている が、その イスラエルの情報機関幹部もアル・カイダ系武装集団がトルコを拠点にしているとしている

 アメリカ軍の情報機関 DIA は2012年8月に作成した報告書で、反シリア政府軍の主力はサラフ主義者/ワッハーブ派、ムスリム同胞団、そしてAQI(アル・カイダ系武装集団。実態はアル・ヌスラと同じだとされている)であり、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているとしている。

 つまり、シリアで政府軍と戦っている集団の中に「穏健派」は存在せず、アメリカ政府が「穏健派」を支援しつづければ、シリア東部にサラフ主義/ワッハーブ派の支配地ができると警告している。2012年から14年までDIA局長を務めた マイケル・フリン中将はアル・ジャジーラのに対し、ダーイッシュの勢力が拡大したのはバラク・オバマ政権が決めた政策によると主張 したが、それにはそうした事情があった。

 また、ムスリム同胞団はワッハーブ派の強い影響を受けている集団で、アル・カイダ系武装集団の主力はサウジアラビアの国境であるワッハーブ派の信徒。サウジアラビアとは「サウド家のアラビア」を意味、このサウド家はワッハーブ派の武装集団を使って支配を確立させた。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン政権もサウジアラビアの影響下にある。

 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュが2007年3月5日付けニューヨーカー誌で、 アメリカ、サウジアラビア、イスラエルの3カ国がシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始 したと書いている。その手先がワッハーブ派の武装集団。

 この構図は今でも生きているが、アメリカ支配層の内部で対立が生じている兆候も見られる。侵略戦争を扇動してきたのはネオコン/シオニストで、1992年にDPGの草稿という形で世界制覇計画、いわゆる「 ウォルフォウィッツ・ドクトリン 」を作成している。

 1991年12月にソ連が消滅してアメリカが「唯一の超大国」になったと認識した彼らは旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジアなどがソ連のようなライバルに成長することを防ぎ、膨大な資源を抱える西南アジアを支配しようと考えたのだ。

 この時点でロシアを中心とするソ連を屈服させたと認識していたが、ロシアが世界支配の鍵を握る国だとイギリス支配層の一部は20世紀の初頭から考えている。1904年にハルフォード・マッキンダーが発表した「ハートランド理論」が戦略の基本だ。



 アメリカの支配層は「ハートランド」を征服、世界支配をほぼ実現したはずだったが、21世紀に入ってウラジミル・プーチンがロシアを再独立させ、彼らの野望は大きく揺らぐことになる。それを修復しようと必死になっているのが現在だが、ウォルフォウィッツ・ドクトリンを諦めるべきだと考える人がアメリカ支配層の内部にも現れたように見える。その対立がオバマ大統領の支離滅裂な発言につながっているのだろう。





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最終更新日  2016.04.26 03:34:28


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