《櫻井ジャーナル》

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2020.12.12
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 ​ アメリカ軍は12月10日に2機のB-52爆撃機をペルシャ湾の上空を飛行させ、イランを挑発 ​したと伝えられている。その際、サウジアラビア、バーレーン、カタールからの航空機が合流したという。ドナルド・トランプ政権がアフガニスタンからアメリカ軍の一部を撤退させると発表した数日後の​ 11月21日、そのアメリカ軍はB-52を中東へ派遣 ​していた。

 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると、1991年に国防次官だったネオコンのポール・ウォルフォウィッツはイラク、シリア、イランを殲滅すると語っていた(​ 3月 ​、​ 10月 ​)が、ネオコンは1980年代からこの3カ国の殲滅を考えていた。

 まずイラクのサダム・フセイン政権を倒してイスラエルの影響下にある体制を樹立、シリアとイランを分断した上で両国を破壊するという手順を考えていた。フセインはCIAの手先としてイラクで台頭、独裁的な力を得ていたのだが、ネオコンは好ましい人物でないと考えたわけである。1996年にイスラエルの首相に就任したベンヤミン・ネタニヤフに対し、ネオコンはこの戦略を売り込む。

 ネオコンはフセイン体制を倒し、フセイン自身を殺害することに成功したが、親イスラエル体制を樹立することはできず、親イラン派の政権が誕生した。2006年5月から14年9月まで首相を務めたノウリ・アル・マリキもそうしたひとりで、彼はダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)の創設でバラク・オバマが重要な役割を果たしたとイラクの地方局で2019年2月24日に語っている。

 オバマ大統領は2010年8月にPSD-11を出し、ムスリム同胞団を手先に使って中東から北アフリカにかけての地域を制圧しようと計画した。これにはサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)も参加して「アラブの春」が始まる。

 2011年春にはムスリム同胞団やサラフィ主義者を利用してリビアやシリアに対する侵略戦争をアメリカなどは開始、10月にはリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制は崩壊、カダフィは惨殺された。

 そしてオバマ政権は戦力をシリアへ集中させるが、こうしたオバマ政権の戦術は危険だと警告したのがアメリカ軍の情報機関DIA。その時のDIA局長がマイケル・フリン中将である。

 オバマはシリアでアメリカが支援している相手は「穏健派」だと宣伝していたが、​ DIAが提出した報告書 ​には、シリアで政府軍と戦っている武装勢力の中心がサラフィ主義者やムスリム同胞団だと正しく指摘されていた。つまり「穏健派」ではない。アル・カイダ系とされるアル・ヌスラ(AQIと実態は同じだと指摘されていた)の存在も記述されていたが、アル・ヌスラの主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団だ。こうした実態は常識だったと言えるだろう。

 マリキによると、2013年に反シリア政府軍の部隊がシリアとイラクの国境沿いに集結していることを示す航空写真などの情報をアメリカ側は示していたという。当然のことながら、アメリカの軍や情報機関は武装集団の動きを監視していたわけだ。

 マリキ政権はアメリカ政府に対して航空機の提供などを要請するが、反応は鈍かった。そこで2013年6月にロシアへ支援を要請して受け入れられる。数日のうちに5機のSu-25近接航空支援機がイラクへ運び込まれたという。

 2014年、DIAの警告が現実になる。サラフィ主義者が軍事行動を起こしたのだ。その武装集団がダーイッシュ。その年の1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言され、6月にはモスルが制圧された。その際にトヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」を連ねてパレード、その様子は撮影され、世界に配信された。

 ジハード傭兵の動きをアメリカの情報機関や軍は衛星や航空機による偵察、通信傍受、古典的な人間による情報収集などでダーイッシュの動きを把握していたはずで、ダーイッシュのパレードは絶好の攻撃目標。ところがアメリカ軍は動かなかった。ジハード傭兵の危険性を警告していたフリンはその年に退役へ追い込まれている。その間、2014年3月にマリキ首相はサウジアラビアやカタールが反政府勢力へ資金を提供していると批判していた。

 2014年4月に行われた議会選挙ではそのマリキを党首とする法治国家連合が勝利した。通常ならマリキが首相を続けたはずだったが、フアード・マアスーム大統領はハイダル・アル・アバディを指名。アメリカ政府の意向だと言われている。アメリカ政府はイギリスのマンチェスター大学で博士号を取得したアバディをコントロールできる人物だと見ていたのだろうが、その政権もアメリカの完全な傀儡にはならなかった。

 建国の前から「ユダヤ人の国」に賛成していたサウジアラビアの支配者はともかく、イスラム世界をアメリカが完全に屈服させることは難しい状況。中東全域を「石器時代」にしようとすることになるのだろう。






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最終更新日  2020.12.12 02:21:55


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