Fastest Lap

Fastest Lap

February 1, 2010
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カテゴリ: Engineering
まず結論から言うとサーキットを攻略するための純然たるスポーツカーとしての資質やパフォーマンスではGT-Rのほうが1世代ぐらい先を行っています。
しかし、公道におけるパフォーマンスではそこまでの差はありません。それでもGT-Rのほうが0.5世代ぐらいはR8よりも進化したポイントにいそうです。
IMG_0613.jpg

ただ、クルマの評価は必ずしも走りだけで決定されるものではありません。人間の五感に入力されてくる幾つものフィーリングの一つ一つを伝えるクオリティがアヴェレージの高いドライヴァーに伝達する情報量と、標準的なドライヴァーに伝える情報量は大きく変わりますし、そこで伝えられてくる情報のクオリティさえもドライヴァーのレヴェルが変われば変わってしまいます。

このことからも当然、乗った人間のアヴェレージによって評価が変わることもありますし、単に好みの問題も含んでいることさえあります。
ドライヴァーのセンシング能力は一様ではなく千差万別。この「人それぞれ・・」というポイントに作用するエンジン音の伝え方や聞かせ方、あるいは多くの振動や揺れなどのフィーリングの伝え方であったり、数値とは無縁のエモーショナルな部分の表現力が国産メーカーは未だ開発途上にあります。

この点においてR8はGT-Rより表現力が豊かで密度があります。
決してパフォーマンス的にR8はGT-Rよりも優れているわけではありません。むしろ、マシンの挙動を極限状態に追い込む作業をすればするほどGT-Rの懐の深さには驚かされます。それに比べR8の引き出しはGT-Rほど多くはなくカウンター・アクションも限定されます。マシンのポテンシャルやパフォーマンスとしてはどんな場合もGT-Rのほうが上を行っているといっても過言ではありません。

そんな中、R8のほうが優れている点はドライヴァーにその情報を伝える際の挙動がとってもマイルドであることと、その挙動が的確で解りやすいことが挙げられます。
少なくとも異母兄弟的な位置にあるランボルギーニ・ガヤルドよりも限界付近を引き出しながら乗り続けるアタックラップにチャレンジする際に911GT3よりも格段に乗りやすいことは明らかで、ガヤルドでさえもこの安定感と安心感は備えていません。

言い換えればランボはドライヴァーに抜きん出たドライヴィング・スキルとセンスを要求してくるので、ドライヴァーがこれを満たしていない場合、平凡な走りしかできないルックスだけがスーパースポーツのGTカーになってしまいます。

とはいえ、現在のスーパースポーツの傾向はみな同じ。お金があっても壊したくなければドライヴァーに最低限の努力を求めたかつてのスーパースポーツとは違い、現在は購入できるクラスにいるリッチなドライヴァーであれば大変な思いをしなくても気軽に乗ることができるように作られています。
これも至極当然のことで、安全に乗るためにドライヴァーに多くのスキルやセンス、テクニックを求めるクルマでは売れるはずもなく会社の経営は一気に傾いてしまいますし、公道を走る危険性ばかりが上昇してしまいます。
この部分に狙いを定めたのがランボルギーニの4WD化であり、異母兄弟R8の誕生であり、国内ではスカイラインGT-Rを祖とするNISSAN GT-Rです。このジャンルやセグメントには対象車がありそうでなかったのが現状です。
ここから少しばかりGT-Rに関する記述とNSXに関する記述が増えますがお付き合いください。
NSXは国産初のスポーツカーとして未踏の領域、そして独峰へと挑んできました。
NSXはポルシェに肉薄し、フェラーリを超え、そしてヴァージョンアップを果たすうちについにスポーツカーの指標であるポルシェを超えて見せました。
しかしながら、ポルシェを超えたものの、安全かつ安定した走りでポルシェを蹴散らすようなマシンではなく、どちらかといえば古典的な尖がったリアル・スポーツでした。
そこに4WDの安定感をも取り込んで、かつての悪路走破用のイメージが強い4WDをブレイクスルーすべく登場したのがスカイラインGT-Rです。
確かにポルシェ959やランチア・デルタの2番煎じと言ってしまえばそれまでですが画期的だったのは可変する前後の駆動配分。当時は50:50とか40:60とかの固定。それを電子制御で段階的にコントロールすることでリジッドな4WDからFRに近づけることまでやってのけました。
このアテーサ・システムは新世代4WDの代名詞にもなり、後に日本から発するセリカやランエボ、インプレッサなどの4WDスポーツ・ブームの火付け役を担ったことも事実です。


どちらが良いのかという判断は馬鹿げています。
どちらを支持するかはドライヴァーの好みによる部分が大きいこと。
さらにドライヴァーのスキルによって幅広く対応してくれる両者はこれからのスーパースポーツの先鋭的な位置に到達していますので、両者とも簡単にライヴァルに道を譲らなければならないような状況には陥りません。

それは例え、メルセデスAMGであろうとBMWアルピナであろうとフェラーリであろうとポルシェであろうとです。
直線番長的な勝負だけならこの2台を撃墜するクルマは少なくありませんがいろんな状況や路面コンディションでの勝負になればこの両者は共に譲らない戦いを見せます。

その結末を決するのはドライヴァーの技量とか、マシン性能とかではなく、単純な勝負の綾や運によって決定されるあっけない幕切れであるかもしれません。



~続く~





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Last updated  February 3, 2010 01:57:23 AM
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