翠 の 風

翠 の 風

2006年10月28日
XML
テーマ: お勧めの本(7899)
カテゴリ: 今日読み終えた本
「脳死臓器移植は正しいか 」池田清彦


著者:池田清彦
発行:角川ソフィア文庫
頁数:205
読みやすさ:3/5
おすすめ度:2/5

 脳死臓器移植に真っ向から反対する内容の本で、信念を持って理論を
展開しているのでなかなかに説得力がありました。
 脳死での臓器移植を前提にしたドナーやレシピエントになる生き方を完


 最近は脳死臓器移植に対しはっきりと拒否の姿勢を示していない人は同
意したものとする、いわゆる「みなし」という発想が一部にあるそうで、それ
はそれでちょっとイヤな感じがします。
 脳死という状態は理屈の上でわかっていたとしても、家族などが現実に
そういう状況になり、心臓が動いて体も温かい状態で「ご臨終です」といわ
れて納得できるかどうかは正直自信はありません。でも納得できない時は
拒否すればよいわけで、その辺の歯止めだけはしっかりと規定する必要が
あるでしょう。意思表示のない人を「みなし」という扱いにして勝手に臓器を
抜き取られる、というようなシステムだけは避けなければならないと思いま
す。つまり、ドナーカードなどでの自分自身の意志や家族の意思が確認で
きない場合はやらないという線だけは必要かなと思います。

 一方、著者自身本文中で胎児(人工妊娠中絶)との比較を試みています
が、やや迷路に入り込んだ感があって、「生と死の境目」という問題の根深
さを感じました。さらに元監察医の上野正彦先生の本などを読んでいると、
遺産相続などで死亡時間がカギを握る例などもあるそうですから、死亡と
いう基準にダブルスタンダードがあることは別の意味で問題があるのかもし


 全体の印象として、脳死臓器移植に携わる人への金儲け批判や、システ
ム全体への”ペテン”呼ばわりなど、扇情的な言葉で批判をくり返す論調は
ややしんどい印象がありました。
 確かにシステムがうまく機能しない例があったり、借金の形に・・なんて事
件もあったり、完全ではありませんが、だからやめてしまえ、というのは少し
乱暴な感じがします。
 またレシピエントとして人が「死ぬのを待つ」状況や、ドナー登録をして
「いいことをした」などという自己満足に浸るのはどうかと思うところもあり
ますが、そのような生き方を「下品」とまで断ずる感覚には少し違和感を
覚えました。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2006年10月28日 12時11分46秒
コメント(6) | コメントを書く
[今日読み終えた本] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:「脳死臓器移植は正しいか」(10/28)  
蒼空77  さん
お久しぶりです~!
今回の本はキツそうですね。
私は「みなし」に入いるのかも・・・

先日、全顔の皮膚移植のことがニュースにありましたが
臓器移植よりもショックを受けました。

ところで、そちらは秋を感じてますか?^^
(2006年10月28日 14時40分50秒)

Re[1]:「脳死臓器移植は正しいか」(10/28)  
Pesca  さん
蒼空77さん
>私は「みなし」に入いるのかも・・・
臓器提供するにしろしないにしろ、意思表示はしとく必要があるのかもしれませんね。
うかうかしてたら内臓取られますよ。

>ところで、そちらは秋を感じてますか?^^
日中は暑いのでそんな感じしませんが、朝晩はさすがに寒さを感じるようになってきましたね。
あ~、つぎの壁紙どーしよー?

(2006年10月28日 23時28分46秒)

こんばんは。難しいですね、、、  
武勇でん  さん
>今日の新聞でも「脳死移植」の日本の実態を大きくとりあげていましたね。9年間で脳死判定50件。

この日本の現状をしっかり理解しないとなんのための「意思表示カード」をもっているのか、全く意味をもたなくなりますね。個人的にはこの著者は偏屈だと思います。(著者が移植を待つ立場であれば、患者さんの気持ちを害する文章なんて書けませんからね、、)
 結局,意思表示カードって、本人が死んだ後では、遺族の意思が尊重されてしまうので、あまり意味をなさないのが現状。この10月は「臓器移植月間」だったことすら、知らない人、多いと思います、、。

 この「意思表示カード」はすでに1億枚以上が配布されていますが、携帯率が10%ですからね、、。お国柄、死体にメスを入れたくないという考えもあるのでしょう。

 ちなみに私はドナー登録していますが、自己満足もないし、死んでしまえば何も残らない事を知っていますから、告別式で燃やされる前に、使える内蔵やら皮膚やらは移植にどうぞって感じです。(問題は家族がOKするかですが、、)
 あとは個人個人の気持ちの問題でしょうね。 (2006年10月29日 22時04分14秒)

おはようございます、  
京師美佳  さん
う~ん。
ちょうど役所でドナーカードをもらってきて、
どこに○をつけようかと悩んでいるとことでした
家族のことを思うと、
なかなか○をつけれませんでしたが、
逆に家族に決断させないですむので、
やはり○をつけて所持しておこうと思いました。 (2006年10月30日 09時02分11秒)

Re:こんばんは。難しいですね、、、(10/28)  
Pesca  さん
武勇でんさん
ありがとうございます
確かに偏屈な著者だとは思いますが、あまり急がない方がいいのかな、とも思います。
本人も家族も十分に納得できない状態で”みなし”でやられるようなことがあれば、必ず遺恨が残りますし、そのことが逆に移植医療そのものにブレーキをかける恐れもあるかもしれません。
 最大限自由意志を尊重し「疑わしきはやらない」というスタンスが国民全体の安心を担保していくような気がします。
 「急がば回れ」ということですか!?

(2006年10月31日 22時49分13秒)

Re:おはようございます、(10/28)  
Pesca  さん
京師美佳さん
現在では本人が○つけてても、家族が反対すれば実施されないと思うのですが・・・
カードを持つ段階で家族とある程度話し合うことが必要なのかもしれませんね。

(2006年10月31日 22時51分26秒)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: