デパートの食品売り場。
エスカレーター横のベンチに腰掛けていたら、80過ぎのおばあさんが話しかけてきた。
背筋もピンとしてとても元気で、悪いところは何処にもないという。
結婚して60年。夫婦とも健在で、持ち家を二軒建てた、子供たちもそうだと自慢する。
小さい時から、大人になったら家の一軒ぐらいは持つのが甲斐性だと親からさんざん言われていて、子供の時からそれが目標だったという。
学歴なんか関係ない、気持ちがあれば出来るものだと、実感を込めて。そして、家というのは女が建てるもので、女がしっかりしていないと家なんか建たないと言う。
御主人は一つの会社に50年間務め、三度の大きな事故に遭うも幸い大した怪我もせず永らえてきて、80の後半の今も元気だと言う。
何かに守られているという思いが自然にわいてきて、西国三十三所の巡礼を満願成就したという。子供も同じ様に四国八十八個所をすべて回ったのだという。
そんな話を15分足らずの間に、一方的に話続けた。自慢したいのか、ただ聴いてほしいだけなのか分からない。
「幸せだねぇ!」と口を挟めばそれには答えず、揚げ句に「いい方だろう?」と言うのにはまいった。これ以上は無いじゃないですか。
「今の目標は?」と聞くと、主人が元気でいてくれる事、それだけを願っているとのこと。
日本の経済を支えてきた、至極まっとうな日本人の姿がそこにあった。
贅沢をせず堅実に生きる事が人生だと信じて、がむしゃらに生きてきた姿には誇りと自負が漲っていた。
私には少々耳が痛い話でもあった。
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