クラリネットの音はどこか物悲しい。
ニューオリンズ・ジャズからスウィングにかけて花形だったクラリネットは、今や凋落の一途で演奏する人もいなくなってしまった。
モダンジャズの華やかな音の饗宴について行けず、ビバップ時代に辛うじて残っていた名手も、追従するものがなくなって、とうとうクラリネットの奏者は絶えてしまった。
日本人では鈴木章治の 「すずかけの道」 の大ヒットで、クラリネトのジャズと言えばこの人の名前が浮かぶ人も多いでしょう。
また、白髪で洒脱な語り口でも人気のあった北村英冶のクラリネット・ジャズも定評があり、TVにもよく出ていました。
私の好きなジャズ・クラリネット奏者は、隠れた名手といわれる「トニー・スコット」。久し振りに聴きたくなって、LPに針を落とした。
ベニーグッドマンなどの演奏とは一線を画し、クールな音色とフレージング追っていた他の奏者とは全く違う。チャーリー・パーカーの影響を受けたヴァイタルな演奏スタイルは、例外的な稀有な存在だ。
「私にとって、チャーリー・パーカーは神のような存在です。」「私は、どこへ行っても、演奏する前にチャーリー・パーカーのことを語り、そして彼に捧げるブルースを吹きます。」
ズバリ「TONY SCOTT QUARTET」というタイトルのアルバム。
’53年の絶頂期の躍動感に溢れた演奏は、当時の最もエクサイティングなアドリブ・プレーヤーとしての真骨頂が収められている。
1921年、ニュージャージー州モリスタウン生まれ。2007年85歳で亡くなった。世界各地で活動し、日本でも多くの演奏家と共演、禅をテーマに日本の尺八演奏家、山本邦山氏と共演したレコードを出したりし、日本に住んでいた(1960年~65年)事もある。
春には聞きたいと思わないクラリネット・ジャズ。その音色は秋にこそ相応しい。
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