実験をする前に、必ず結果の予想を立てさせて、
できるだけ討論が起きるように、私は努力しています。
しかし、これまた、極力、答えを誘導しないように、注意をしています。
なぜでしょう?
自分で考える力を育てたいから、が主な理由ですが、
討論すると、実は、半数以上の確率で、
間違った方向に全体が流れていきます。
先日も、体重計に乗ったときの重さの問題で、
体重計の上で、踏ん張った時の方が重くなる、という予想に
多くの子がどんどん引きずられていきました。
また、虫眼鏡の実験でも、外の景色を集めて、映し出すことができるか?
という問題に、木や建物は光を出していない、という意見に
どんどん影響されていきます。
その間、私は、議論を活発にすることには、努力しますが、
間違った考え方や、幼稚な意見を、指摘することも、誘導することもありません。
ですから、一見、講師としての仕事を放棄しているように
見えるかもしれません。
確かに、実験内容そのものが複雑だったり、
問題構造が難しかったりすれば、
誤解が無いように、説明する必要はあります。
でも、そうでない限り、
いや、そういう、どうにでも解釈できる実験自体、
良い科学実験ではありませんから、出しちゃいけないんで、
答え一発、実験結果が、何を言わんとしているのか、はっきりしているもので
あるべきで、そうである限り、
予想で、なんぼ間違っても、かえって効果的と言えると思います。
実は、なぜ、多くの場合、間違った方向に議論が流れるかというと、
自分の考えに自信がないからです。
根拠の無いまま、それまでの授業の流れから言うと
こっちの方かなあ、と空気を読んで、手をあげる子が多いんですね。
(それ自体も、悪いことでもありませんが)
そこに、強烈な論理をもった意見が飛び出してくると、
足元がぐらつきだして、予想をもっていかれちゃうのです。
だから、間違った考え方を吹き込まれるというよりも、
自分自身の本当の考え方をあぶりだされるのだと思います。
ここで、もし、ですが、
私は極力していないわけですが、
自由な討論をさせないで、
先生が解説をしながら、
「みなさん、どっちでしょう?」
と聞いたら、ほとんどの子が、正しい予想に手をあげることでしょう。
そして、それを見て、授業成果が上がったと
先生および、教育関係者は喜ぶっでしょう。
しかし、それでは、子どもたちに潜む、
「でも、本当はこういうことは、ありえないんじゃないか」
「常識的にこうだよ」 「ほんとうかなあ」
という心の奥の声は、押しつぶされていっちゃうんですね。
これは、表立っては、誰もが気付かないうちに行われる圧殺です。
子どもたちさえ、気づかないことが多いと思います。
が、心の奥では、こういう押しつけに反発が生まれ、
それが積み重なって、理科嫌い、勉強嫌いになっていくのだと
私は思います。
議論は、どんなに間違ってもいいのです。
かえって、大勢の子が間違えば間違うほど、
感動的な実験になります。
(いつまでも、間違ってばかりいるのは、問題ですが)
じゃあ、講師の役割って、なんだろう?
それは、面白い問題、考えるだけで、ワクワクする問題を
もってくることです。
そして、それを一目瞭然に判明させる実験を用意することです。
実は、それさえできれば、80%は、もう勝利したようなもんなんです。
しかし、これが、なかなか教師一人で、用意できるもんじゃありません。
多くの方々との連携や、仮説実験授業の授業書を使わなければ
思いつきで、成果を上げることは、と~っても困難です。
もちろん、世にある、マジックショー的な演出効果の高い
科学実験は、それはそれで面白いでしょう。
しかし、それが、自分の 認識を変革してくれる
深い感動を与えてくれるでしょうか?
良い問題とは、必ず、哲学と結びついています。
常識的なものの見方をゆさぶって、
原理原則にもとづく、論理と激しくぶつかるところから、
自分のこの世界を見る眼鏡の変更を迫られるプレッシャーを
感じるものです。
だから、講師の仕事は、自分で問題や実験をつくるということは、
半分以上あきらめて、 (いや、ほとんどあきらめて)
世の良い問題をあつめることに、注力すべきだと思います。
そして、もっと現場の講師にとって大切なことは、
生徒の様子を良く見ることです。
一人、ひとり、今日の様子は違うわけです。
家庭でお父さんお母さんが、夫婦喧嘩したかもしれませんし、
友達同士、気まずい関係になってるかもしれません。
体調が良くないかもしれませんし、
反対に絶好調かもしれません。
そこのところを読み取るのは、現場の担任の先生にしかできません。
それらを考慮しながら、予想の討論をすすめていくのです。
だから、一発講師で、ぽっと来た私が、その微妙な関係をつかむのは
困難です。
しかし、それでも、この子は、影響力ありそうだ、とか、
こういう目立たない子が発言したら、面白いだろうなあ。とか
いつも、授業に参加しないあの子は、実は、どういう考えしてるだろうか、とか
そんなことを、あれこれ、あれこれ考えています。
あとは、勝手に、感動してくれます。
決して「感動しろよ!」と言って感動させるもんじゃありませんから。
(あったりまえですね)
夏休み終了直前
いやあ、忙しいです。
私の黄金の時の、このパソコンに向かっている時間も、
ここ数日、とれませんでした。
特に、雑用で時間が奪われるのが、苦痛です。
でも、その間、私のアタマは、別の空想でぼ~っとしてますから
それなりに楽しめますが。
みなさん、インフルエンザに気をつけましょうね。
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