全37件 (37件中 1-37件目)
1

「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。「困るわね、さっさとしてくれないと。」「申し訳ありません・・」「謝るのならだれにも出来るわ。大事なのは成果をいかに出せるかという事よ。」「はい・・」「それと、もう土方さんに絡むのはお止めなさい。あなたと彼女とでは、“格”が違うのよ。」「でも・・」「まだわからないの?あなたって本当に馬鹿ね!」 秀子の容赦ない罵詈雑言の鞭を受け、千代は堪らず両手で顔を覆って泣き出した。「すぐに泣くんだから、この役立たずが!」 秀子はそう叫んで千代を睨みつけ、その場から去っていった。 呆然とした千代が暫くその場に立ち尽くしていると、突然大広間の方から歓声が聞こえて来た。 何だろうと思って千代がそちらの方を見ると、そこには歳三と千景の姿があった。 歳三は、美しい真紅のドレスを着ており、それが彼女の美しく白い肌に映えていた。 金髪紅眼の千景と並んで立つと、まるで一幅の絵画のように美しい。(本当に、お似合いの二人だわ・・) 千代はその場から、誰にも知られずに風間邸を後にした。「婚約おめでとう、土方さん。」「ありがとうございます、先生・・」 風間家のパーティーに出席していた歳三を待ち受けていたものは、千景の爆弾発言だった。「今宵、貴様らに集まって貰ったのは他でもない、俺とここに居る土方美貴嬢との婚約を発表する為だ。」「はぁ!?」 まさしく、“寝耳に水”だった。「まぁ、それはおめでとうございます!」「どうか、お幸せに!」「おいてめぇ、どういう事だ?俺は・・」「貴様と結婚する為には、外堀を埋める事が一番であろう?」「てめぇ・・」“再会”した千景は、傲慢な性格に加え、策士となっていった。「“あの時”、お前は俺から逃げたが、今度は逃がさんぞ。」 千景はそう言いながら歳三を自分の方へと抱き寄せると、口元に不敵な笑みを閃かせた。(畜生、やられた!) こんな状況だと、断るのが無理だという事に気づいた。 このまま、どうするべきか―そんな事を歳三が考えている間にも、事態は歳三にとって不利な状況へと追い込まれている事に気づかなかった。「お嬢様、風間家から結納品が届いておりますよ!」「わかった・・」(こうなりゃ、腹をくくるしかねぇな。) 風間家から届いた結納品は、どれも見事なものばかりだった。 中でも一番美しいのは、一流の職人の手によって作られた純白の西洋風の花嫁衣装、ウェディングドレスだった。「まぁ、随分とハイカラなものになったもんだねぇ、花嫁衣装も。まぁ美貴さんなら、白無垢もこのドレスも似合いそうだ。」 そう言いながら歳三を見つめた“女狐”の目は、冷たい光を湛えていた。「良い旦那をつかまえたわねぇ、あんた。」「は?何の事でしょうか?」「風間家といやぁ、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの資産家だ。一体どんな手管を使って若様を落としたんだい?」 その言葉を聞いた時、歳三の顔は怒りで赤くなったが、彼女の挑発に乗っていけないと思い、彼は深呼吸した後、“女狐”にこう尋ねた。「こちらこそ逆に聞きたいですね。妻子持ちの男をどうやって落としたのかを。」「・・生意気な口を利くようになったね。仮にも、あたしはあんたの・・」「“母親”ではありませんよ、あなたは単なる居候ですよ。」「何だって!?」「勉強の邪魔です、出て行ってくださいな。」「ふん、偉そうに!」 長野から東京へと戻った刑事は、土方信子に会いに行き、例の話について尋ねてみた。 あの“蔵”で、もう一人女が首を吊って死んでいたのだった。「その女の名は?」「確か、浅野千代って言いましたかねぇ。」 信子はそう言うと、古びたアルバムを刑事に見せた。「この人が、私達の曾祖母です。弟と瓜二つでしょう?」 結婚式でウェディングドレスに身を包んでいる女性は、まさに土方と同じ顔をしていて、その写真を見た刑事は、謎の寒気に襲われた。(何だ、今のは!?)にほんブログ村
2023年04月30日
コメント(0)

「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。話は、明治の末頃にまで遡る。 その家の蔵には、気が触れた女が監禁されていた。 そこは所謂、“座敷牢”だった。 女は恐らく、統合失調症だったのであろう、見えない“敵”と毎日戦っていたと、その頃に勤めていた女中がそう日記に残していた。 女はやがて死んだ―蔵の梁で首を吊ったのだった。 その頃から、女の姿を女中達が見て怯えるようになった。 そして、蔵の中に入ったり、近づいたりするだけで気が触れたり、謎の高熱を出して寝込んだりするなどの怪現象が続出した。 お祓いなどをしてみたが、全く効果はなかった。 そして遂に、“呪い”の死者が出た。 死んだのは大助という少年で、例の蔵に入った後、失踪して箱根山中で遺体が発見された。 女中が大助の殺害を仄めかすかのような遺書を残し、蔵の梁で首を吊った。 事件の真相は、未だにわかっていない。「その蔵を、見せて頂けないでしょうか?」「それは出来ません。」「そうですか。」 あの蔵にはまだ何か隠された秘密がある―そうにらんだ刑事は、蔵に監禁された女性の事を詳しく調べ始めた。「お嬢様、おはようございます。」「あぁ、おはよう・・」 風間家のパーティー当日の朝、ときは妙に張り切っていた。「今日はパーティーまでに色々と準備をしませんと!」「準備って何の準備だ?」「色々ですわ!」「へぇ・・」 朝食の後、歳三はときと共にまた百貨店へと向かった。「これから夏に向けて、色々と新しいお洋服などを買いましょう!」「そんなに買わなくてもいいだろう・・」「いいえ、いけません!」「わ、わかったよ・・」 ときと共に夏物のワンピースや靴などを買って帰宅した歳三は、玄関先で君菊と会った。「またお会いしましたね。」「どうも・・」「まぁ君菊様、もう帰られるのですか?」「えぇ、他に仕事がありますので。」「お気をつけてお帰り下さいませ。」「はい。」 君菊が帰った後、歳三が自室に入ると、そこには君菊が手掛けた真紅のドレスがハンガーに掛けられていた。「これは、美しいですわ!」「そうだな・・」 そのドレスは、歳三の白い肌によく映えていた。 そして、その日の夜。「お嬢様、お気をつけて行ってらっしゃいませ!」「あぁ、行って来る!」 風間家のパーティーには、政財界の名士などが集まる華やかなものだった。「千代様、あなたもいらしていたのですね!」「当たり前でしょう、何て言ったって風間家のパーティーですもの!」 そう言って瞳をキラキラさせながら風間邸のパーティーに取り巻きと共に出席した千代は、一人の娘とぶつかった。「ちょっと、何処を見ているのよ!」「す、すいません・・」 ぶつかった娘は、分厚い度のある眼鏡をかけ、所々ほつれたおさげ姿の、地味な女中だった。「こんな子に構う必要はありませんわ、行きましょう。」「そうね。あなた、邪魔だから退いてくれる?」「はい・・」 娘は俯いたまま、千代達に道を譲った。「あら浅野さん、あなたとこんな所で会うなんて・・」「先生・・」「ちょっとあなたとお話ししたいのだけれど、いいかしら?」「はい・・」 千代は、少し怯えたような顔をしながら、秀子と共に人気のない場所へと向かった。「あの件は、進んでいるのでしょうね?」「いいえ、まだです。」にほんブログ村
2023年04月30日
コメント(0)

「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。 歳三が、英二、もとい原田と共に出かけた先は、銀座の百貨店だった。「どうして、こんな所に?」「来週末、風間家のパーティーに招待されただろう?色々とドレスを選んでやるよ。」「ドレスなんて、別にいいって。」「ときがそんな事を聞いたら怒り狂うぞ。“お嬢様の美しさを引き立てるドレスを是非選んでくださいませ”って頼まれたんだよ。」「お前ぇも、大変だな。」「まぁな。」「なぁ原田、俺ぁまだこの世界に生きている実感がねぇんだが・・」「そうか。まぁ、俺もあんたと同じだよ。上野の戦で死んだあと、この時代に生まれちまったんだ。まさか、土方さんとは兄妹になるなんて、思いもしなかったぜ。」「俺もだ。」「さてと、まずはドレスを選びに行くとするか。」 原田はそう言うと、歳三を慣れた手つきでエスコートした。 婦人服売り場には、美しいワンピースやドレスなどが飾られていた。「いらっしゃいませ。」「妹の美しさを引き立てるようなドレスが欲しいんだが・・」「まぁ、暫くお待ちくださいませ。担当の者を呼んで参ります。」 そう言って店員は、売り場の奥へと消えていった。「お待たせ致しました。」 数分後、二人の前に現れたのは、洋装姿の店員だった。「わたくしは、この百貨店の専属デザイナーの、君菊と申します。」「済まねぇが、あんたにお任せした方が良さそうだ。」「まぁ、嬉しいですわ。ではお客様、どうぞこちらへ。」「は、はぁ・・」 デザイナーの君菊と共に奥の部屋に入った歳三は、そこにも美しいドレスが並べられている事に気づいた。「お客様は肌がお美しいので、真紅のドレスが似合いますわね。」「そ、そうか。」「お好きな色は何がございますか?」「赤かな。」「まぁ、それは良うございますわ。お客様の誕生石は?」「エメラルドだ。」「まぁ、ではお客様の美しさを引き立てるドレスをお作り致しますわね。」「頼む。」 君菊と共にドレスの生地を選んだり、装身具を選んだりなどしていたら、あっという間に時間が経ってしまった。「出来るだけ早く仕上げますわ。」「宜しく頼む。」 百貨店を原田と共に出た歳三は、帰りに洋食屋で夕食を取って帰宅した。「お帰りなさいませ。」「ただいま。疲れたからもう寝る。」「お休みなさいませ。」―ピッ、ピッ 規則的な機械音が、“彼”が生きている事を知らせてくれる。「まだ、意識は回復しないのですか?」「はい。脈拍や呼吸は安定しています。」「そうですか・・」 集中治療室の前で看護師とやりとりをしていた刑事は、そっとその中に居る男の姿を見た。 彼は数日前、国道沿いのコンビニの駐車場で意識不明の状態で運ばれた。 病院へ搬送された時、彼はうわごとのようにある言葉を呟いた。“蔵・・”と。 幸い、男の身元はすぐに判明した。 男の名は、土方歳三。 東京の出身で、現場にあるコンビニの近くには、彼の母の実家があった。「遺品整理、ですか」「えぇ。といいますのも、大奥様の十三回忌の前に、遺品整理をするようにと、信子様が歳三様にお命じになられたのです。」「つかぬ事をお聞きいたしますが、その屋敷には蔵はありますか?」「はい、ございますよ。ですが、あそこは呪われているんです。」「呪われている?」「あの蔵に近づいたり、入った者は呪われたんです。」にほんブログ村
2023年04月30日
コメント(0)

「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。土方様、少しよろしいかしら?」「何だ?」 歳三がいつものように女学校の教室にある自分の席で弁当を食べていると、そこへ千代とその数人の取り巻きがやって来た。「あなた、節操ないわね。風間家の若様と伊庭家の若様を二人共誑かすなんて。」「は?」「そうよ、嫁入り前の娘が・・」「人にモテない僻みかよ、下らねぇ。」」「な、何ですって~!」「千代様!」 これ以上千代達と話したくなかったので、歳三は教室から出て図書室へと向かった。(へぇ、面白そうな本があるなぁ。) 歳三がそう思いながら本棚の中にある一冊の本には、『赤と黒』と金字で印刷されていた。「あら土方さん、来ていたのね。」「吉野先生・・」「その様子だと、またあの子達から逃げて来たのでしょう?」「えぇ、まぁ・・」 吉野はどうやら、千代達の事を良く思っていないようだ。「先生は、あいつらの事を知っているんですか?」「えぇ。千代さん・・浅野さんは土方さんが自分より優秀な事を妬んでいるから、あなたに絡んでいるのよ。放っておけばいいわ。」「は、はぁ・・」「じゃぁ、わたしはこれで失礼するわ。」 吉野はそう言って歳三に微笑んだが、その目の奥は笑っていなかった。(あの人、どうも苦手なんだよな。) 放課後、図書室で借りて来た本を歳三が読んでいると、そこへ斎藤がやって来た。「お嬢様、お迎えに上がりました。」「兄貴は?」「英二様なら、“野暮用がある”とおっしゃって、今日はお嬢様をお迎えに上がれないと・・」「そうか・・それじゃ、行こうぜ。」「はい。」 教室を出た歳三が斎藤と共に廊下を歩いていると、音楽室の方から吉野の怒鳴り声が聞こえて来た。「一体いつまで待たせるつもりなの!?」「申し訳ありません・・」「あなたにはがっかりだわ!」 そっと少し開いた扉の隙間から音楽室の中を覗くと、そこには吉野から怒鳴られている千代の姿があった。(あの人とあいつの関係がわからねぇな・・) 斎藤と共に帰宅し、自室で読書をしていた歳三だったが、音楽室で覗き見た光景が忘れられず、集中できなかった。 歳三は本を閉じて、眠った。「奥様、お電話です。」「えぇ、わかったわ。」 歳三の担任・吉野秀子は、事務作業をする手を休めた後、電話の受話器を取った。『久しいな、秀子。』「あら、あなたがわたくしに電話して下さるなんて珍しい事。何かご用かしら?」『とぼけるのはやめろ。“例の件”について何か掴んでいるのだろう?』「まぁ、落ち着いて下さいな。そのことについては明後日、お話致しますわ。」『・・わかった。』「では、良い夢を。」 そう言った秀子は、口端を歪めて笑った。(これからね・・)「お嬢様、起きて下さい!」「どうした?」「今日は色々と用事が立て込んでおりますよ!」「折角の日曜日の朝くらい、ゆっくりさせてくれよ。」「いけません、さぁ起きて下さいませ!」「わかったよ・・」 歳三は欠伸を噛み殺しながら、ベッドから出た。「起きたな、美貴。さぁ、行こうか?」 居間に歳三が入ると、原田が彼女に笑顔を浮かべてそう言った。「わかりました、お兄様。」「お気をつけて行ってらっしゃいませ。」にほんブログ村
2023年04月30日
コメント(0)

「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。「随分と、手荒い歓迎だな。」「人ん家に勝手に入って来た後の言い訳がそれか?もう一度痛い目に遭いてぇようだな?」「気が強い所は、昔と変わっておらぬな。」「うるせぇな!」「その様子だと、また振られてしまったようですね?」「ったく、よせって俺が言っているのによぉ、“あいつが女である事をこの目で確かめぬと納得がいかん!”とか言って・・」「それで、返り討ちに遭ったという訳ですか。」「あぁ。」「自業自得ですね。」「うるさいぞ、お前達。」「お黙りなさい、風間。大体あなたは自己中心的過ぎます。この前、わたしがクッキーを焼いた時、あなた全部食べていましたね。」「フン、あれは俺の為に焼いてくれたのだろう、天霧?」「いいえ、違います。あのクッキーは慈善バザー用に奥様から頼まれて焼いたものです。」「何だと・・」「千景、入るわよ!」「は、母上・・」 千景が恐る恐る背後を振り返ると、そこには鬼のような形相を浮かべた母が仁王立ちしていた。「天霧の代わりに、あなたが慈善バザー用のクッキーを焼きなさい!」「ご冗談でしょう、母上?」「いいえ、わたくしは本気ですよ。明朝までに、クッキーを200個作りなさい!」「何と・・」「いいわね!」「天霧・・」「そんなお顔をなさっても駄目です。手伝いますが、途中までです。」「つくづくお前ぇは、こいつには弱ぇよなぁ?」「“手間がかかる子”ほど、放っておけないというでしょう?」「まぁ、そうだな。」 千景は天霧達と協力して明朝までに何とか200個のクッキーを作った。「疲れた・・」「お部屋でゆっくり休んで下さいね。」「わかった・・」 フラフラとした足取りで寝室へと向かう千景を、天霧は笑顔で見送った。「さてと、俺も休むとするか。」「そうですね。」 天霧と不知火がそんな話をしている頃、土方家では八郎がまだ家に帰りたくないと駄々をこねて歳三を困らせていた。「嫌だ、まだ帰りたくない!」「八郎、お願いだから離れてくれ・・」「やだぁ!」「困りましたわね、もうすぐ美枝様がいらっしゃるというのに・・」 ときがそう言って溜息を吐いていると、そこへ藤田五郎もとい、斎藤一がやって来た。「どうかなさったのですか、副・・お嬢様?」「あ・・」 斎藤の顔を見た八郎が、一瞬怯えたような表情をした。「彼と、少しの間お話ししてもよろしいでしょうか?」「あぁ、構わねぇが・・」 斎藤はそう言うと、八郎を中庭へと連れて行った。「いい加減、“演技”をするのは止めたらどうだ?」「ふぅん、君って、“昔”から鋭いよね。」 そう言って斎藤と対峙した八郎は、翡翠の瞳で彼を睨んだ。「あんたがポロで怪我をしたのは事実だが、その怪我は軽いもので後遺症もなかったと、あんたのカルテも書いてあった。それなのになぜ、あんな事をしている?」「トシさんの気がひけるから。トシさんはいつも、“あの人”の事ばかり見ていたから、僕が“演技”をすればトシさんが僕の事を見てくれるかなぁって。」「副長は、俺がお守りする。」「言っておくけど、トシさんは誰にも渡さないよ。“今度こそ”、トシさんを僕のものにするんだ。」(恐ろしい奴だ・・)「八郎、何処だ~?」「トシさ~ん!」 斎藤に背を向けた八郎は、再び“演技”を始めた。 歳三を、自分のものにする為に。にほんブログ村
2023年04月30日
コメント(0)

「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。「やっと会えた、トシさん!」 そう言った青年は、突然歳三に抱きつき、暫く歳三から離れようとしなかった。「まぁ八郎さん、みっともない真似はおよしなさい!」 奥の部屋の襖が開き、慌てて青年の母親と思しき女性がやって来た。「お嬢様、大丈夫ですか?」「あぁ。」「申し訳ございません、お嬢様。うちの八郎がとんだご無礼を・・」「いや、俺は大丈夫だから謝らなくていい。」「八郎さん、帰りますよ。」「嫌だ~!トシさんとずっと一緒に居る。」「わがままを言ってはなりませんよ!」 歳三にしがみついて離れようとしない八郎に苛立った女性は、そう叫んだ後八郎の頬を平手で叩いた。「うわぁぁ~、トシさん!」「美枝様、今日は八郎さんとこちらでお預かり致しますから、先にお帰りになってくださいな。」「でも、奥様に何とお伝えすれば・・」「それはわたくしの方からお伝え致しますわ。」「では、八郎様の事を宜しくお願い致します。」 ときに美枝と呼ばれた女性はそう言って歳三に向かって頭を下げると、土方家を後にした。「わぁい、トシさんと今日は一緒に居られるね!」「八郎様、お部屋で休みましょうね。」「うん!」 年の割に幼い子供のような言動をする八郎に、歳三は違和感を抱いた。「なぁとき、ひとつ聞いてもいいか?」「何でしょうか、お嬢様?」「昼間俺に抱きついて来たのは誰だ?やけに俺に懐いていたような・・」「あの方は、伊庭八郎様とおっしゃって、伊庭子爵家のお坊ちゃまですよ。眉目秀麗、頭脳明晰な方で、乗馬がお好きな方でしたが、数年前ポロの試合中に酷い怪我をされて、あのように・・」「そうか。とき、あいつは随分と俺に懐いているようだが・・」「八郎様は、昔近所の子供達からいじめられていたところをお嬢様に助けられたとかで・・」「へぇ・・」「それよりも、今週末風間邸で行われる夜会が楽しみですわね。」「風間家だと?」「いけませんわ、お嬢様。急に動かれては・・」「済まねぇ。」「奥様は、風間家の若様がお嬢様の事をお気に召していらっしゃると聞き、とても嬉しそうでしたわ。」「へぇ・・」「大方、あの女狐は財産目当てでお嬢様を風間家へ嫁がせて厄介払いさせたのでしょう。まぁ、あの女狐は金が全てですものね。」「なぁとき、あの人は“旦那様の後妻”だと言ったが、俺とは血が繋がっていないのか?」「えぇ。凛子様・・お嬢様のお母様はお嬢様をお産みあそばされた時に産褥熱でお亡くなりになられて、旦那様があの女狐をこの家に入れたのが、お嬢様が三歳の時でございました。その時あの女は、匡坊ちゃまをその腕に抱いていたのです!」「じゃぁ匡と俺は腹違いの姉弟という事か?」「えぇ、そうなりますわね。」(何だか、とんでもねぇ家に生まれちまったな・・) 湯船に浸かりながら、歳三はそう思った後深い溜息を吐いた。(箱館で死んだと思ったら、まさか女に転生していたなんてな・・これからどうなるんだか。) 風呂から上がった歳三が脱衣所で濡れた髪を拭いていると外が急に騒がしくなった。「いけません、お嬢様はまだ・・」「ええい、そこをどけ!」 脱衣所の扉が勢いよく開き、金髪紅眼の少年―風間千景が入って来た。「漸く会えたな、我妻よ!」「さっさと出て行け、この変態!」 歳三は千景にそう怒鳴ると、彼の顔面に己の拳をめり込ませた。にほんブログ村
2023年04月30日
コメント(0)

「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。「土方さんが事故に遭われたと聞いて、わたくし達心配しておりましたのよ。」 女学生達の中から、リーダー格と思しき一人の少女がそう言いながら歳三の前に立った。「あぁ、それはありがとう。」「ま、まぁ・・」「行きましょう、皆さん。授業に遅れてしまうわ。」「そうね。」 歳三の反応に対し、女学生達は少し拍子抜けしたような顔をした後、校舎の中へと逃げていった。(何だ、あいつら?) 歳三がそう思いながら校舎の中に入ると、突然彼は背後から誰かに肩を叩かれた。「土方さん、もう元気になったのね、良かったわ。」(え、誰?) 歳三が振り向くと、そこには見知らぬ女性が立っていた。「あ、あのぅ・・」「あぁ、事故の所為で混乱しているのね。わたしはあなたの担任の、吉野よ。」「吉野・・先生・・」「その様子だと、教室の場所がわからないみたいだから、先生と一緒に行きましょう。」「は、はい・・」 こうして歳三は、女性と共に教室へと向かった。「土方さん!」「もう大丈夫なのね!?」「良かったわ、大した事なくて!」 教室に入ると、歳三の方へ十人位の女学生達が駆け寄って来た。(何だ、こいつら?)「皆さん、そんな事をして土方さんを困らせては駄目よ?」「はぁ~い!」「皆さん、土方さんに会えて興奮してしまったみたいね。」(何だか、わからねぇな、この人・・) そんな事を思いながら、歳三は自分の席に着いた。(一体何がどうなっているんだかわからねぇが・・まぁ、慣れるしかねぇか。) 昼休み、歳三が弁当箱の蓋を開けると、中には美味しそうな卵焼きと沢庵、そして白米の上に焼き鮭が載っていた。「頂きま~す!」 そう言って歳三が、胸の前で手を合わせた後、焼き鮭ご飯を美味そうに頬張った。 沢庵を食べ終え、空になった弁当箱の蓋を閉めていると、そこへ今朝自分に声を掛けて来た女学生がやって来た。「土方さん、ちょっとよろしいかしら?」「あぁ、いいが・・」 彼女と共に教室から出た歳三の姿を、心配そうに見つめている一人の娘が居た。「貴女、一体どういうつもりなの?」「は?」「今朝、英二様と一緒にお車でここにいらしたでしょう?」「あぁ、それがどうした?」「いくらお兄様でも、年頃の男女が一台の車の中に居るなんて、嫌らしい!」「はぁ?そんな事を言うだけの為に俺をここへ呼び出したっていうのか?」「そうよ!」「はっ、下らねぇな。」「な、何ですって?」 面倒臭ぇ事になったな、と歳三は目の前に立っている女学生の姿を見て思った。 こういう時に相手を刺激してはいけないと思ったのだが、つい歳三はこんな事を彼女に言ってしまった。「ただ兄貴に車で学校まで送って貰っただけだ。あんたには関係の無い事だろう?」「何ですってぇ~!」「千代様、落ち着いて下さい!」「千代様!」「あなたは、わたくしが英二様をお慕い申し上げている事を知りながら、そんな事を~!」 そうヒステリックに叫んだ女学生が気絶するのを見た歳三は、その場を後にした。「ただいま・・」「お嬢様、お帰りなさいませ。」「誰が来ているのか?」「えぇ、それが・・」 玄関ホールに見慣れない革靴が置かれているのを見た歳三がときにそう尋ねると、客間から一人の青年が丁度出て来る所だった。「トシさ~ん!」 青年はそう叫ぶと、歳三に抱きついた。にほんブログ村
2023年04月30日
コメント(0)

「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。 一体ここは何処なのか―ふとそう思った歳三は、ときにこう尋ねた。「今、何年なんだ?」「まぁお嬢様、おかしな事をおっしゃいますね。今は大正十年(1920)五月ですよ。」「そ、そうか・・」「姉さん、一体どうしてしまったんだい?まだぼけるには早いよ。」「あ、あぁ・・」(こいつ、誰だっけ?)「え~と・・」「まぁ匡坊ちゃま、そんな事をおっしゃって。」 歳三が目の前に座っている青年の名を思い出そうとしていると、すかさずその様子を見ていたときが助け舟を出した。「もうすぐ姉さんの誕生日だね。そろそろお嫁に行く年じゃないの?」「そうか?」「まぁ、姉さんは美人だから、引く手あまただろうね。」「そ、そうか・・」「お嬢様、どうぞ。」 ときはそう言うと、歳三の前に沢庵を置いた。「ありがとう・・」「いいえ。」 沢庵を箸で一つ摘まむと、それを美味そうに齧った。「姉さんは、本当に沢庵が好きなんだなぁ・・」「あ~、美味ぇ。」「まだご飯がありますから、松前漬けもどうぞ。」「あぁ、頼む。」 朝食の後、歳三が自室に戻って寝間着からときが用意してくれた着物と袴に着替えていると、丁度そこへ一人の下男が中庭の掃除をするのが窓から見えた。(斎藤・・) 無言で箒を持って中庭に散らばっている落ち葉を集めているのは、間違いなく自分のかつての部下であった斎藤一だった。 彼に声をかけようかどうか歳三が迷っていると、やがて彼は何処かへ行ってしまった。「お嬢様?」「彼は・・」「あぁ、あの子ですか?あの子は藤田五郎といって、会津から来たうちの家の書生ですよ。」「彼と話したい。」「わかりました。」「今日はすぐに帰る。行って来ます。」「行ってらっしゃいませ。」 風呂敷包みを持って歳三が玄関ホールから一歩外へと出た時、一台の車が歳三の前に停まり、中から洋装姿の青年が出て来た。「美貴、今から学校か?」「は、はい・・」(こいつ、誰だ?) 赤髪といい、金色の瞳といい、青年はあの槍使いに似ていた。「まぁ、英二坊ちゃま!こちらにおいでになるなんてお珍しい!」「とき、久しぶりだな。大陸での仕事が一段落着いたから、久しぶりに日本へ帰る事にしたんだ。」「まぁ、そうなのですか。」「美貴とは久しぶりに会えたから、こいつを学校に送っていくついでに話でもしようかなと思ってな。」「お兄様・・」「さぁ、行こうか。グズグズすると、学校に遅れるぞ。」「えぇ、わかったわ。」 歳三が青年と共に彼の車に乗り込むと、彼はじっと歳三の顔を見た後、こう言った。「また会えたな、“土方さん”。」「原田・・」「まさか、あんたの“兄”として転生するなんて、思いもしなかったぜ。」「なぁ原田、うちに居る藤田って書生はもしかして・・斎藤なのか?」「あぁ。でも土方さん、あいつには余り近づかない方がいいぜ。」「どうしてだ?」「まぁ、色々とあいつの実家が複雑な事情を抱えているみたいなんだ・・」「複雑な事情?」「まぁ、その事については後で話す。」「わかった。」「学校、頑張って来いよ。」「あぁ。行って来る。」 女学校の前で車から降りた歳三の元に、数人の女学生達がやって来た。(何だ、こいつら?)「土方さん、ご機嫌よう。」にほんブログ村
2023年04月30日
コメント(0)

「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。「は、遺品整理?」『そうよ。今、仕事で大阪に居るから、今日がその日だって事をすっかり忘れていたのよ。じゃぁ、そういう事だから!』「おい、姉貴!」 待てって、と電話の相手にそう告げようとした男は、既にその音がダイヤルトーンへと変わった事に気づき、舌打ちした。(ったく、何かと俺をこき使いやがって・・) 男―土方歳三は、舌打ちしてスマートフォンを助手席へと放り投げた。 その日、歳三は会社の上司から、“研修施設の下見”を命じられ、人里離れた山中を車で彷徨っていた。 大学時代に苛酷な就職活動を乗り越え、中堅としてそれなりの地位を会社から与えられ、それなりにやり甲斐のある仕事をしている、つもりだった。 東日本大震災の時、歳三は度重なる残業の所為で身体を壊し、入院した。 それが原因なのかどうかはわからないが、彼は退院後、本社から地方の支社への転勤命令が出た。 当時結婚していた妻は、署名・捺印済みの離婚届を置いて出て行ってしまった。 それ以来、彼女とは会っていない。 新しい会社での仕事は、今までのものとは違い、退屈な雑用ばかりだった。「ったく、一体何処なんだよ。」 歳三はそう言って時折舌打ちしながら、只管車のハンドルを握ってカーナビの頼りにならない指示に従った結果、何とか山から下りて、国道沿いの道に出ることが出来た。(ふぅ、助かったぜ。) 歳三がそう思いながら国道沿いのコンビニの駐車場で一服していると、厄介な上司からラインが来た。『研修は中止になりました。』(最初からそう言えよ!) 今日はとことんついていない―歳三がそんな事を思いながらコンビニでのトイレ休憩を済ませて車に戻ろうとした時、一人の老婆が車の前に立っている事に気づいた。「誰だ、あんた?」「お嬢様、探しましたよ。さぁ、帰りましょう。」「おい・・」 歳三は有無を言わさず自分の手を握る老婆から逃げようとしたが、枯れ枝のような彼女の手はビクともしなかった。「サァ、“参りましょう”。」 意識を失う前、何処かで箏の音を歳三は聞いたような気がした。 その後、鋭い痛みが右脇腹に走った。(あぁ、俺は・・) あの時、死んだのだった。―・・嬢様 何処からか、誰かが自分を呼ぶ声が聞こえる。(誰だ?) 歳三が寝返りを打っていると、誰かが自分を揺り起こす気配がした。「起きて下さい、お嬢様!早くしないと学校に遅れてしまいますよ!」「え・・」 歳三が目を覚ますと、そこは寝台の上だった。「まだ寝かせてくれよ。」「いけません。」 歳三の前に仁王立ちしていた女中頭のときは、そう叫ぶとシーツを乱暴に引き剥がした。「何だよ、もう・・」 欠伸を噛み殺しながら歳三が鏡台の前に座ると、そこには十代の少女となった己の姿が映っていた。「さ、支度致しませんと、遅れてしまいますよ!」 ときはそう言いながら、歳三の黒髪に櫛を入れ、素早くそれをマガレイトに結い上げた。「あら、まだ着替えていないのねぇ。」「お母様・・」「さっさと支度を済ませて降りて来な。こっちは暇じゃないんだ。」 突然部屋に入って来た女はそう言って歳三を睨みつけると、部屋から出て行った。「誰だ、あの女?」「旦那様の後妻ですよ。薄気味悪い女狐ですよ。」にほんブログ村
2023年04月30日
コメント(0)

「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。 何処からか、寂し気な、“何か”の音がする。 その音にまるで惹き寄せられるかのように、少年は音が聞こえて来る方へと向かった。 音が聞こえて来たのは、あの蔵だった。“おいで”と、蔵の中から誰かが呼んでいるかのような気がして、少年はそっと蔵の扉を開けようとした時―「まぁ坊ちゃま、いけませんよ、こんな所まで来ては!」 少年の小さな手が蔵の扉に届こうとした時、彼が居なくなった事に気づいた女中頭がそう叫びながら彼の元へと駆け寄った。「人の声がする。」「人の声ですか?」「うん、あの中から聞こえて来た。」「わたくしには、何も聞こえて来ませんよ。」「でも・・」「さぁ、こんな所に居てはいけません。戻りましょう。」「うん・・」 少年は彼女に手をひかれながら、蔵を後にした。“命拾いしたわね。”と、クスクスと笑う“声”が闇に包まれて消えていった。「なぁ、本当にあそこから声が聞こえて来たのか?」「そうだよ・・」 数日後、少年は、従弟の大助と共にあの蔵の前に立っていた。「なぁ、中に入ってみようぜ。」「え?」「今日は、お祖母様達は夕方まで出かけて帰って来ないからいいだろう?」「でも・・」「何だよ、つまんねぇの。もういいよ、俺一人で入るから。」 大助はそう言うと、蔵の扉に手を掛けた。 すると、それは難なく開いた。 大助が中へと入ろうとした瞬間、黒い“何か”に全身を覆われ、煙のようにその姿が掻き消えてしまった。「ひぃっ!」 少年は悲鳴を上げ、助けを呼びに蔵から離れ、母屋へと向かった。 大助は、その日から永遠に姿を消した。 それが、最初に起きた異変だった。 大助が失踪して一月も経たない内に、彼の母親に仕えていた女中の一人が死んだ。“わたしが、坊ちゃんを殺しました”という遺書を残して。 警察がその遺書に書かれている内容通りに箱根山中を捜索すると、大助の遺体が発見された。「大助、どうしてこんな・・」「奥様、お気を確かに!」「奥様!」 大助の母・千代は気が触れてしまった。「僕の所為だ、僕が・・」「坊ちゃまの所為ではありませんよ。」「でも・・」「言いつけを守らなかった大助様が悪いのです。ですから坊ちゃまは、何も気にせずお休みになって下さいませ。」「うん、わかったよ・・」 女中頭の子守唄を聞きながら、少年は徐々に眠りの世界の住人となっていった。 だが彼は、自分を寝かしつけている女中頭の名を呼ぼうとした時、声が出なかった。「サァ坊ちゃま、ゆっくりと“お休みなさい”。」 最期に少年が見たのは、女中頭の不気味な笑みだった。 闇の中から、何処か淋し気で不気味な箏の音が響き、消えていった。 それから、約100年もの歳月が経った、ある日の事―にほんブログ村
2023年04月30日
コメント(0)
![]()
トリカブトの栞を巡るミステリー。前作と同様、読み応えがありました。
2023年04月29日
コメント(0)
![]()
これほど、読者を引き込ませるミステリーはありませんでした。
2023年04月29日
コメント(0)
![]()
芦川さんみたいな女性は嫌いです。八方美人というか…職場の人間関係について、色々と考えさせられる作品でした。
2023年04月29日
コメント(0)

「天上の愛 地上の恋」二次創作小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが嫌いな方はご覧にならないでください。 時計がカチカチと時を刻む音が、寝室内に響いた。何度寝返りを打っても、アルフレートは目が冴えてしまって眠れなかった。隣で寝ているルドルフは、安らかな寝息を立てて眠っている。同じ寝台で眠ることになった時、一瞬二人の間に気まずい空気が流れたが、ルドルフは横になるなり目を閉じてしまった。(わたしは一体何を考えているんだろう?) アルフレートは、ルドルフを起こさぬようにそっと寝台から降り、浴室へと入った。洗面台の前に置かれているグラスに水を注ぎ、それを一気に飲み干した。ここに泊まりたいと言い出したのは自分なのに、妙にルドルフを意識してしまっている事にアルフレートは気づいた。これからどうすればいいのだろう―そんな事を思いながらアルフレートが浴室から出て来ると、寝台の前でルドルフが彼を待っていた。「起きていらっしゃったのですか?」「ああ、お前の様子が気になってな。」「ルドルフ様、あの・・」ルドルフは、何かを自分に言おうとしたアルフレートの唇に人差し指を押し当てた。「アルフレート、お前はこれからどうしたい?」「そ、それは・・」「わたしに抱かれたいのかと、聞いている。」「ルドルフ様・・」アルフレートはルドルフの言葉を聞いて赤面した後、静かに頷いた。ルドルフはアルフレートの手を取ると、彼を寝台の上に寝かせた。「優しくするから、大丈夫だ。」「ルドルフ様・・」ゆっくりと、ルドルフの唇が己のそれと重なるのを感じたアルフレートは、静かに目を閉じた。ルドルフの唇はアルフレートの首筋を強く吸い上げると、胸や腹を首筋と同じように強く吸い上げ、紅い痕をつけた。ルドルフの手が、アルフレートの下腹に触れると、彼は微かに身を震わせた。「あ、やめ・・ルド・・」自分の股間に顔を埋めたルドルフを見たアルフレートは、慌てて彼を退かそうとしたが、遅かった。アルフレートはルドルフから与えられる快感に身を震わせながら、彼から芳しい薔薇の香水が漂ってくることに気づいた。「声を・・出せ。」荒い息を吐きながら、ルドルフがゆっくりと顔を上げ、蒼い瞳でアルフレートを見つめた。「ここにはお前とわたし、二人だけだ。誰かに遠慮することもないだろう?」「ルドルフ様・・」「足を、開け。」アルフレートがゆっくりと足を開くと、ルドルフが自分の中に入ってくるのがわかった。「辛くないか?」「いいえ・・」痛みに顔を顰(しか)めながらも、アルフレートはルドルフとひとつになれた喜びで胸が一杯になった。「アルフレート・・」「ルドルフ様・・」互いに手を握り合い、アルフレートはルドルフの腕の中で意識を手放した。にほんブログ村
2023年04月27日
コメント(0)

「天上の愛 地上の恋」二次創作小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが嫌いな方はご覧にならないでください。 アルフレートの涙を見たルドルフは、それまで彼を抱きたいという激しい衝動がスッと消えてゆくのを感じ、彼の上から退いた。「ルドルフ様?」「済まない、乱暴な事をして・・」「いいえ、わたしの方こそ、取り乱してしまって申し訳ありません。」アルフレートはそう言うと、ハンカチで涙を拭った。「お前の気持ちなど考えずに、強引な事をしてしまった。もう帰ってもいいぞ。」「いいえ、今夜はこちらで泊まらせて頂きます。」アルフレートの言葉に、ルドルフは驚きで目を丸くした。「さっき、わたしに酷いことをされたのに、ここで泊まるだと?本気で言っているのか?」「ええ。ルドルフ様がもしお嫌でなければ、ですが。」アルフレートは上目遣いにルドルフを見つめると、彼は頬を赤く染め、こう言った。「好きにしろ・・」「有難うございます。」「シャワーを浴びるから、暫くここで待っていろ。」「はい・・」 ルドルフが浴室へと入ってゆくのを見たアルフレートは、寝台の端に腰掛けた後、溜息を吐いた。 冷水を頭から浴びながら、ルドルフは先ほどの行動が余りにも軽率過ぎた事を反省して溜息を吐いた。(わたしは、一体何をやっているんだ・・あんな事をするなんて。)浴室の壁を拳で叩き、ルドルフは溜息を吐いた。あのパーティーでアルフレートに一目惚れし、彼を自分のものにしたいと思ったことは確かだ。だが、性急すぎた。急ぐことはない、少しずつ互いの距離を縮めればいいのだ―そう思いながら、ルドルフはシャワーを浴び終え、浴室から出た。すると、そこにはタオルを持ったアルフレートがドアの前で待っていた。「お前、何をしている?」「お身体を、拭こうと思いまして・・」「そんな事は自分でする。」「ですが、一晩お世話になるので何か貴方様のお役に立ちたいのです。」「やめろ、そんな顔で言われると、変な気を起こすだろうが。」 ルドルフはアルフレートの手から乱暴にタオルを取ると、それを腰に巻き付けた。「それでは、失礼いたします。」アルフレートは顔を赤く染めながら、慌てて浴室から出て行った。(まったく、調子が狂うな・・) 浴室から出たアルフレートは、ルドルフの裸を思い出してしまい、再び赤面した。同性の裸を見て恥ずかしがるなんて、自分は頭がおかしいとしか思えない。「アルフレート、もういいぞ。」「はい・・」 ルドルフがドライヤーで髪を乾かしているのを見たアルフレートは、なるべく彼の方を見ないように浴室の中に入った。にほんブログ村
2023年04月27日
コメント(0)

「天上の愛 地上の恋」二次創作小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが嫌いな方はご覧にならないでください。「何だお前は!」「そのような物を振り回されては、他の方のご迷惑になりますよ?」「うるさい、お前には関係のないことだろう、引っ込んでいろ!」 激昂するヴィルヘルムに対して、アルフレートは冷静沈着な態度で彼を説得し始めた。 傍から見れば、アルフレートの行為は自殺行為だと捉えられているようで、ルドルフから少し離れたところで固まっている数人の令嬢達が、扇子の陰で何やらひそひそと囁き合っていた。「アルフレート、そいつは放っておけ!」 ルドルフがそうアルフレートに声を掛けた時、彼の背後に立ったヴィルヘルムが手に持っていたナイフをアルフレートの頭上に振り翳そうとしていた。「危ない!」ルドルフはアルフレートを助けようと彼の方へと駆け寄ったが、大理石の床にはヴィルヘルムが気絶して倒れていた。「お前、こいつに何をした?」「余りにも諦めが悪いお方なので、少し眠って頂きました。お騒がせしてしまって申し訳ございません。」アルフレートはそう言ってルドルフに頭を下げると、周囲の招待客達に向かって救急車を呼ぶように指示した。「わたしの質問に答えろ、アルフレート。お前は、こいつに一体何をしたんだ?」「ナイフで襲って来たあの方に、技をかけただけです。」「技?」「実は、合気道を最近習い初めまして・・護身術として会得しようと思って、技を実際かけたことがなかったのですが、あの方に腕を掴まれたので、咄嗟に身体が動いてしまいました。」ルドルフが自分の言葉を聞いて怪訝そうな表情を浮かべているのを見たアルフレートは、そう言ってルドルフの方を見ると、彼は突然大声で笑い出した。「ルドルフ様?」「虫を殺さぬような顔をしながら、お前は案外逞(たくま)しいのだな?」「お褒めに預かり、恐縮です。」「もう疲れたから、部屋に戻る。アルフレート、ついて来い。」「はい・・」 周囲の招待客達は、ヴィルヘルムが起こした騒ぎに混乱し、ルドルフがアルフレートと共に大広間から姿を消したことに気づかなかった。「ルドルフ様、わたしもう帰ります。」「今夜は泊まっていけ。そのつもりで来たのだろう?」「いえ、そんなつもりでは・・」「お前、まさかわたしがこのまま大人しくお前を帰すと思ってパーティーに来たのか?だとしたら、甘いな。」 ルドルフはそう言って笑うと、アルフレートの手を掴んで彼を寝室へと連れて行った。 天蓋付きの寝台の上に押し倒されたアルフレートは、彼がこれから自分に何をしようとしているのかを解り、ルドルフから逃げ出そうと激しくもがいた。「暴れても無駄だ。ここには誰も来ない。」「やめてください、こんな事は!」アルフレートはそう言うと、ルドルフを突き飛ばし、乱れた衣服を整えて寝室から出ようとした、 だが彼は再び、ルドルフによって寝台の上に押し倒されてしまった。「何故だ、何故わたしの気持ちが解らないんだ、アルフレート!」「ルドルフ様・・」 アルフレートの、宝石のように美しい翠の瞳から、一筋の涙が流れ、彼の白皙を濡らした。にほんブログ村
2023年04月27日
コメント(0)

「天上の愛 地上の恋」二次創作小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが嫌いな方はご覧にならないでください。“ルドルフ様は君のような人間には相応しくない” トイレで、金髪緑眼の青年から言われた言葉が、アルフレートの胸に棘のように突き刺さり、ルドルフや彼の家族と話している間も、その言葉は頭の中からすぐに消えてくれない。「アルフレート、どうした?」「いえ、何でもありません。」「ちょっとこっちに来い。」ルドルフはそう言うと、アルフレートを人気のない庭へと連れ出した。「お前、何か隠しているだろう?」「いいえ。」「嘘を吐くな。お前は嘘を吐く時、必ず目を逸らす。トイレで、何かあったのだろう?まぁ、簡単に想像はつくが・・」ルドルフはそう言うと、溜息を吐いた。 以前から、ハプスブルク財閥の御曹司である自分に媚を売る連中が星の数のように居るが、その中の一人が、アルフレートに対して余計な事を吹き込んだようだ。「大方そいつは、お前がわたしには相応しくないと言ったのだろう?」「はい・・」「そんな雑音は無視しろ。お前にそんな事を言った奴は、お前をやっかんでいるだけだ。」「ですが・・」「そんな下らない事でいつまでもウジウジと悩むな、イライラする!」ルドルフは突然そう叫ぶと、アルフレートに向かって人差し指を突きつけた。「もうこれ以上、お前の愚痴に付き合うのは真っ平御免だ!」「申し訳ございません・・」「何も悪いことをしていないのに謝るな。」アルフレートが少しバツの悪そうな顔をしながら俯いた時、ロシェクが何やら慌てた様子で二人の元へと駆け寄って来た。「ルドルフ様、至急大広間にお戻りください!」「どうした、ロシェク?一体何があった?」「実は、どうしてもルドルフ様に会わせろとおっしゃる方がいらっしゃって、皆困っているのです。」「わかった。アルフレート、お前もわたしと一緒に来い。」「は、はい・・」 ルドルフとアルフレートが大広間に戻ると、そこには意味不明な言葉で使用人達に怒鳴り散らしている一人の青年の姿があった。「早くルドルフを呼べ、モタモタするな!」猛禽にも似た鋭い眼光を放ちながら周囲を睥睨している青年の正体を、ルドルフは知っていた。「おや、貴方がこのような所にいらっしゃるとはお珍しい。わたしに何かご用ですか、ヴィルヘルム殿?」「ルドルフ、お前・・」 ルドルフの方を見た青年―ヴィルヘルムは、怒りに滾った目で彼を睨みつけた。「よくそんな涼しい顔をしていられるな!お前の所為で、俺は・・」「ああ、この前の話か?このような場所で、昔の事を蒸し返すなど、往生際が悪いですね。」「この野郎、言わせておけばっ!」 飄々(ひょうひょう)とした態度を取っているルドルフに対して激昂したヴィルヘルムは、近くに置いてあった果物ナイフを掴み、それを滅茶苦茶に振り回した。 周囲の招待客達が悲鳴を上げて逃げ惑う中、アルフレートだけが一人ヴィルヘルムへと駆け寄っていった。「アルフレート、下がれ!」「ここはわたしにお任せください、ルドルフ様。」 そう言ったアルフレートの声は、凛としたものだった。にほんブログ村
2023年04月27日
コメント(0)

「天上の愛 地上の恋」二次創作小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが嫌いな方はご覧にならないでください。通常、ワルツは男女一組のペアで踊るものである。なので、男同士で踊るルドルフとアルフレートの姿はやけに目立った。―あの方、先程ルドルフ様と手を繋いでいらした・・―どちらのご令息なのかしら?―まるで天使様のようだわ。 踊りの輪の中から漏れ聞こえる令嬢達の囁きが、否応なくアルフレートの耳に入った。だが、自分と踊っているルドルフは、そのような囁きを完全に無視してアルフレートと踊っている。「あの、ルドルフ様・・」「周りの目など気にするな。」「はい・・」自分よりも3歳年下のルドルフに、すっかりアルフレートは主導権を握られてしまっている。「ルドルフ様にも困ったものですな。いくら仲が良いご友人とはいえ、男同士でワルツを踊るなど、前代未聞です。」二人のワルツを見ていたフランツの秘書・アルブレヒトはそう言って溜息を吐いた。「今夜は無礼講だ、あれくらい大目に見てやれ。」フランツはそう言うと、シャンデリアの輝きの下、ワルツを踊るルドルフとアルフレートを見た。 何故か、アルフレートと踊っているルドルフの口元には、柔らかな笑みが浮かんでいるように見えた。それは、自分達家族の前では決して見せない、リラックスした表情だった。(まさか、あいつに限ってそんな事はない・・)「会長?」「いや、何でもない・・」「会長、クレメンス様がご到着されました。」「わかった。」ワルツを踊り終えたアルフレートがルドルフの顔を見ると、彼は満面の笑みを浮かべていた。「ルドルフ様、少しお手洗いに行って参ります。」「わかった、すぐに戻ってこい。」アルフレートが用を足してトイレから出ようとした時、燕尾服姿の青年が彼に近づいて来た。「君、やけにルドルフ様と親しいようだね?」ルドルフと身長は同じくらいの、金髪に緑の瞳をした青年は、そう言って敵意を含んだ視線をアルフレートに送って来た。「貴方は、どちら様ですか?」「僕はヨハネス。言っておくけれど、ルドルフ様は君のような人間には相応しくない。だから、今の内に身を引いた方が、君の為だよ?」青年はアルフレートにそんな言葉を吐き、彼の肩を軽く叩くと、トイレから出て行った。「アルフレート、ここに居たのか、探したぞ。」「申し訳ございません、少し迷ってしまって・・」トイレから戻って来たアルフレートが少し浮かない顔をしている事に、ルドルフは気づいた。「もしかして、何か嫌な事でも言われたのか?」「いいえ、そのような事はありません。」「そうか。何かあったら、わたしに相談しろ、いいな?」「はい・・」ルドルフに心配を掛けさせたくなくて、アルフレートは咄嗟に嘘を吐いて誤魔化した。その嘘が、すぐにルドルフに見破られていることを、気づきもせずに。にほんブログ村
2023年04月27日
コメント(0)

「天上の愛 地上の恋」二次創作小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが嫌いな方はご覧にならないでください。 着替えを終えたルドルフとアルフレートが化粧室から出ると、既にパーティーは始まっており、会場となっている大広間から音楽と招待客達の笑いさざめく声が聞こえてきた。「わたし、やはり帰ります。」「どうした、怖気づいたのか?」ルドルフの問いに、アルフレートは静かに頷いた。「わたしは、貴方とは釣り合いません。」「馬鹿な事を言うな。堂々と胸を張ってわたしの隣に居ればいい。」ルドルフは自分に背を向けて外から出ようとするアルフレートの手を掴むと、大広間へと入っていった。 すると、今まで談笑していた招待客達が一斉に黙り込み、彼らの方を見た。―ルドルフ様よ―いつ見てもお美しいわね。―隣に居らっしゃる方も、素敵ね・・ 自分を値踏みするかのような視線が、四方八方から送られ、アルフレートは思わず俯きそうになったが、それをルドルフが許さなかった。「アルフレート、来てくれたのだね?」「はい。フランツ会長、本日はパーティーにご招待いただいて有難うございます。」 フランツ=カール=ヨーゼフは、黒い燕尾服を纏い、アスコットタイを締めたアルフレートに微笑んだ。「良く似合っているじゃないか、アルフレート。」「有難うございます。何だかこういう場には、不慣れでして・・」「大丈夫だ、わたしがついている。」ルドルフはそう言うと、アルフレートの手を握った。「ルドルフ様・・」「父上、少し彼と話しがしたいのですが、宜しいですか?」「わかった。すぐに戻って来るんだぞ。」 フランツの元を離れたルドルフは、アルフレートを連れて人気のない中庭の噴水の前でアルフレートに跪(ひざまず)いた。「アルフレート、ここで君に改めて交際を申し込む。」「わたしは、貴方に相応しいような人間ではありません。」「そんな事を、誰が決めた?わたしは、お前が欲しいんだ。」ルドルフはそう言うと立ち上がり、アルフレートの唇を塞いだ。「本当に、わたしでいいのですか?」「いいに決まっているじゃないか。」「もう戻りましょう、ここは冷えます。」「ああ。」 ルドルフとアルフレートが手を繋いだ姿で大広間に入ってくると、近くに居た令嬢達が二人に訝し気な視線を送った。「ルドルフ様、手を・・」「あんなもの、気にするな。見せつけておけばいい。」ルドルフはそう言って、嬉しそうに笑った。その時、楽団がヨハン=シュトラウスの『春の声』を演奏し、シャンパンやワイングラス片手に談笑していた招待客達は、次々と踊りの輪へと加わった。「アルフレート、わたし達も踊らないか?」「え?」アルフレートは、あっという間にルドルフと共に踊りの輪へと加わってしまった。「あの、ルドルフ様。」「心配するな、わたしがリードする。」ルドルフは躊躇(ためら)うアルフレートの手を握り、ワルツのステップを踏み始めた。にほんブログ村
2023年04月27日
コメント(0)

「天上の愛 地上の恋」二次創作小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが嫌いな方はご覧にならないでください。 その日の夜、アルフレートはルドルフと共にハプスブルク財閥創立30周年パーティーに出席する為、初めて彼の実家を訪れた。(これが、ルドルフ様のご実家・・) ウィーン市内の中心部に威厳を放ちながら建っている白亜の宮殿が、ハプスブルク財閥の一族が代々住んでいる邸宅であった。「何を驚いている、ただの家だ。」「ですが・・」「アルフレート、わたしが金持ちだと知って、わたしと付き合ってくれないのか?」ルドルフはそう言うと、蒼い双眸でアルフレートを見つめた。「それは・・」「話はパーティーの後でしよう。」ルドルフは先にリムジンから降り、アルフレートに向かって手を差し伸べた。「お兄様、お帰りなさい!」 アルフレートとルドルフが邸宅の中へと入ると、長い黒髪の少女が元気よく彼らの方へ駆け寄って来た。「アルフレート、紹介しよう。わたしの妹の、マリア=ヴァレリーだ。」「初めまして、ヴァレリー様。」アルフレートがルドルフの妹・マリア=ヴァレリーに挨拶すると、彼女はじっとアルフレートの顔を覗き込んだ。「貴方は、天使なの?」「いいえ、天使ではありませんよ。」「アルフレート、わたしと一緒に遊んで!」「ヴァレリー、済まないがそれはまた今度にしてもらえるか?」ルドルフはアルフレートに抱きつこうとしたヴァレリーに対してそう牽制すると、彼の手を取って自分の部屋へと連れていった。「何よ、お兄様の意地悪~!」ヴァレリーの怒声を背に受けながら、ルドルフはドアを閉めた。「あの、ルドルフ様?」「やっと二人きりになれたな。」ルドルフはそう言うと、アルフレートを壁際に追い詰めた。「あの、わたしやっぱり帰ります。」「駄目だ、わたしがいいと言うまでここから出ることは許さないぞ。」「そんな、横暴すぎます!」アルフレートがルドルフに抗議すると、彼はアルフレートの唇を塞いだ。アルフレートはルドルフを押し退けようとしたが、ルドルフに抱き締められているので身動きが出来なかった。「ルドルフ様、ロシェクです。そろそろパーティーのお時間です。」「わかった、すぐ行くと伝えろ。」「かしこまりました。」 老執事の足音が廊下から遠ざかるのを聞いたルドルフは、漸くアルフレートから離れた。「アルフレート、そろそろパーティーが始まる。身支度をしておけ。」「え?」「まさか、そんな服でパーティーに出るつもりじゃないだろうな?」「そのつもりですが、何か問題でも?」(こいつは、わざとなのか、それとも天然なのか?)「わたしについて来い。」 アルフレートはルドルフに連れられ、邸内にある化粧室へと向かった。「例のものを。」「かしこまりました。」ルドルフが化粧室のスタッフにそう命じると、彼は黒の燕尾服とアスコットタイをクローゼットから取り出し、ルドルフに手渡した。「部屋へ戻る時間がないから、ここで着替えるぞ。」突然服を脱ぎ出したルドルフを見たアルフレートは赤面しながら両手で顔を覆った。「男同士だ、何もそんなに恥ずかしがることはないだろう?」(この人は・・わたしをからかうのが楽しくて仕方がないんだ。)にほんブログ村
2023年04月27日
コメント(0)

「天上の愛 地上の恋」二次創作小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが嫌いな方はご覧にならないでください。「やぁアルフレート、また会えたな。」「貴方は、一体こんな所で何をされているのですか?」アルフレートはそう言うと、周囲の好奇の視線を感じながらルドルフの方へと向かった。「君に正式に交際を申し込もうと思ってね。」「お断りした筈でしょう?」「わたしは、一度欲しいと思ったものはどんな手段を使っても手に入れる性格でね。」ルドルフは宝石のような蒼い双眸でアルフレートを見つめた後、彼を抱き寄せた。「やめてください!」「初心だな、君は。まぁ、その方が落とし甲斐があっていい・・」「ふざけないでください!」アルフレートが声を荒げてルドルフを睨みつけた時、彼の背後から車のクラクションが鳴った。驚いたアルフレートがルドルフから離れると、車の中から黒服のボディーガードを従えた一人の男性が二人の前に現れた。「ロシェクから家に帰っていないと聞いて、ここに来てみれば・・ルドルフ、お前は一体何をしている?」男は獲物を狙う鷹のような鋭い視線を、ルドルフにそう言って向けた。「父上、出張中でこちらにはいらっしゃらないかと思いました。」「仕事を早く切り上げてお前の様子を見ようと思ってな。その青年は誰だ?」「彼はわたしの友人で、アルフレート=フェリックスと申す者です。アルフレート、紹介しよう。わたしの父の、フランツ=カール=ヨーゼフだ。」「初めまして・・アルフレート=フェリックスです。」(フランツ=カール=ヨーゼフって・・確か、欧州を代表する財閥の会長だったような気が・・)「アルフレート、ルドルフとは一体どのような関係なんだい?」「そ、それは・・」 欧州を代表する財閥の会長相手に、“お宅の息子さんに交際を迫られています”とは、決して口が裂けてもアルフレートは言えなかった。「数日前のパーティーで彼と出会いました。今日は彼と親睦を深める為に父上が主催するパーティーに彼を誘おうとしたのですが、断られてしまいました。」ルドルフは少し残念そうな顔をしながら、チラリと横目でアルフレートを見た。「アルフレート、ルドルフと是非仲良くしてくれ。」「はい・・」「ルドルフ、わたしは一旦社に戻るが、見張りはつけなくてもよさそうだな。」フランツが去った後、アルフレートは笑いを堪えているルドルフを見て、怒りが沸いた。「貴方はわたしをからかっていらっしゃるのですね!?」「ああ、そうだが?」「貴方とはもう話したくありません、これで失礼いたします。」 アルフレートがそう言ってルドルフに背を向けようとすると、ルドルフが突然彼の腕を掴んだ。「今夜のパーティーには来てくれるんだろう?」「いいえ。」「そうか、残念だな・・父上はきっと、君が来るのを楽しみにしているのに。」「では、わたしにどうしろとおっしゃるのですか?」アルフレートがルドルフにそう尋ねると、彼はアルフレートの耳元でこう囁いた。「わたしと一緒にパーティーに来てくれたらいい。ただそれだけだ。」 その日の夜、アルフレートはルドルフと共に彼の実家であるハプスブルク財閥創業30周年を祝うパーティーに出席することになった。にほんブログ村
2023年04月27日
コメント(0)

「天上の愛 地上の恋」二次創作小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが嫌いな方はご覧にならないでください。「ん・・」 アルフレートが目を覚ますと、そこは会社の会議室ではなく、ルドルフがアルフレートとの逢引用に借りたマンションの一室だった。「アルフレート。」「ルドルフ様、どうしてわたしはここに?」「会議室で気絶したお前を、ここまで運んできた。」 浴室から出て来たルドルフは、上半身裸で腰にバスタオルを巻いたままの姿でそう言うと、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出した。「ルドルフ様、そんなお姿では風邪をひきます。」「何だアルフレート、わたしの裸に見惚れているのか?」「そ、そんなつもりでは・・」アルフレートが頬を赤く染めてルドルフにそっぽを向いた時、突然玄関のチャイムが鳴った。「誰だ、こんな時間に?」ルドルフは寝室からガウンを羽織ると、そう言ってインターフォンの画面を覗き込んだ。そこには、自分の妻であるシュティファニーがエントランスの前に立っていた。『あなた、居るんでしょう、開けなさいよ!』「ルドルフ様・・」こちらへと近寄ってこようとするアルフレートに、ルドルフは唇の前で人差し指を立てた。「シュティファニー、よくここがわかったな?」『わたくしが何も知らないとでも思っているの?あなたがここで愛人とセックスしているのを知っているのよ!』「離婚したいなら、すればいいだろう。」ルドルフはそう言うと、インターフォンの画面を切った。「宜しいのですか、奥様を放っておいても?」「別にいいさ。あいつとは親同士が決めて結婚した、ただそれだけの事だ。本当に愛しているのはお前だけだ、アルフレート。」「ルドルフ様・・」 ルドルフの腕に抱かれ、アルフレートは彼と初めて会った時のことを思い出していた。アルフレートとルドルフが会ったのは、ルドルフが所属する乗馬クラブと、アルフレートが所属する水球クラブとの合同パーティーだった。 当時アルフレートは22歳、ルドルフは19歳だった。「アルフレート、あいつさっきからお前の事を見てばかりいるぞ。」「え?」 友人からそう言われたアルフレートがルドルフの方を見ると、彼は蒼い瞳で自分の事をじっと見ていた。その瞳の強さに、アルフレートは一瞬たじろいだ。「あの、何かわたしに用ですか?」「君、名前は?」「アルフレート=フェリックスと申します。あなたは?」「ルドルフ=フランツ=カール=ヨーゼフだ。アルフレート、向こうで話さないか?」「はい・・」アルフレートがルドルフと人気の少ない森の中に彼と共に入ると、突然ルドルフはアルフレートの身体を木に押し付けると、彼の唇を塞いだ。「いきなり、何をするんですか!」「君の事が好きだからに決まっているからだろう?」ルドルフから突然そう告白され、アルフレートは驚きのあまり絶句した。「ご冗談をおっしゃらないでください。」「冗談じゃない、本気だ。アルフレート、わたしと付き合ってくれないか?」「お断り致します。」アルフレートはそう言うと、ルドルフに背を向けて歩き出した。それが、二人の最悪な出逢いだった。 パーティーから数日後、学生寮の前に薔薇の花束を抱えたルドルフが現れた。にほんブログ村
2023年04月27日
コメント(0)

「天上の愛 地上の恋」二次創作小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが嫌いな方はご覧にならないでください。「おはよう、アルフレート。」「おはようございます、ルドルフ様。」 ウィーン市内にあるハプスブルク建設本社ビルの中にあるオフィスで、アルフレート=フェリックスは、上司であり恋人であるルドルフ=フランツ=カール=ヨーゼフにそう挨拶すると、彼の前を通り過ぎようとした。「今日は、残業だ。お前とわたしの二人きりだけで。」ルドルフはそう言ってアルフレートに耳打ちすると、自分のデスクへと戻った。「アルフレート、まだ残っているのかい?」「うん・・明日までに終わらせたくて。」「余り無理するなよ。」「わかった、テオドール、お疲れさん。」「お疲れ。」同僚で友人のテオドールが出て行くと、アルフレートは溜息を吐いてモニターの方へと向き直った。「まだ残業しているのか?」「ルドルフ様・・」突然誰かに抱きつかれ、アルフレートが背後を振り向くと、そこには自分に笑顔を浮かべているルドルフが立っていた。「こんな時間まで残っていて大丈夫なのでしょうか?」「何を言っている、お前とわたしの二人で残業しようとさっき言っただろう?」ルドルフはそう言うと、口端を上げて笑った後、アルフレートの唇を塞いだ。「駄目です、こんな所で。」「キスだけで感じているのに?」ルドルフの指先が、アルフレートの下肢へと伸びた。「あっ」敏感な部分を触られ、アルフレートは思わず声を出してしまった。ルドルフはにやりと笑った後、アルフレートのズボンのジッパーを下ろし、彼のものを口に含んだ。「やめてください・・」「感じている癖に。」ルドルフはそう言うと、再びアルフレートのものを咥え、激しくそれを吸い上げた。「あぁ~!」アルフレートは白い喉を仰け反らしながらそう嬌声を上げると、ルドルフの口の中に欲望を迸らせた。「随分と溜まっていたんだな。」「ルドルフ様・・」熱で潤んだ翡翠の瞳で自分を見つめるアルフレートの黒髪を、ルドルフは優しく梳いた。そして、そっとアルフレートの左頬についた傷を撫でた。「お前には、済まない事をしたな・・」「昔の事はいいのです。ルドルフ様、抱いてください。」「ここじゃ狭いから、場所を変えようか。」 ルドルフがそう言ってアルフレートを連れて行ったのは、全面ガラス張りの会議室だった。「こんな所じゃ、恥ずかしいです。」「別に誰も見ていないからいいだろう?」ルドルフはアルフレートの華奢な身体をガラスに押し付けると、自分のもので彼の濡れた蕾を奥まで貫いた。「駄目、こんなの・・」「そう言っている癖に、感じているじゃないか?」「言わないで・・」ガラスの向こうには、美しいウィーンの街が広がっている。夜はこの通りは人気がないとはいえ、こんな姿を誰かに見られる可能性は高い。そんな危機感と快感がないまぜになって、アルフレートはいつしか興奮していた。「アルフレート・・」「ルドルフ様・・」 ルドルフの左手の薬指に光る指輪を、アルフレートは見ないふりをして彼の手を握った。にほんブログ村
2023年04月27日
コメント(0)

甘辛くて美味しかったです。
2023年04月25日
コメント(0)
![]()
育休中でありながらも事件解決に奔走する刑事。抱っこ紐で赤ちゃん抱いて、着替えやミルク、オムツなどが入ったトートバッグを持って捜査に行くという、これまで考えられなかった斬新なスタイルでしたね。何というか、育児するのに性別は関係ないというメッセージが作品から伝わってきますね。
2023年04月22日
コメント(0)

カヌレットというか、カヌレット風のグミで美味しかったです。
2023年04月20日
コメント(0)

ハーゲンダッツの新作アイス。ラズベリーとマカデミアンナッツとの相性が良かったし、ラズベリーソースの酸味とチョコレートの甘味との相性が抜群でした。
2023年04月14日
コメント(0)

前にバニラ味を食べましたが、チョコ味も美味しいですね。
2023年04月13日
コメント(0)

画像は湯弐様からお借りしました。「FLESH&BLOOD」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。「カイト、話したい事とは何だ?」「これを、子供達に渡して。」 海斗はそう言うと、ジェフリーにある物を手渡した。 それは、海斗がつけたジェフリーとユーリアの育児日記だった。「俺はあと、どの位生きられるのかがわからないから・・」「そんな事を言うな。」 ジェフリーはそう言うと、海斗を抱き締めた。「あのね、ジェフリー、皆で行きたい事があるんだ。」「わかった。」 週末、海斗達は海辺でのピクニックを楽しんだ。「カイト、寒くはないか?」「ううん、平気・・」 海斗はそう言った後、激しく咳込んだ。「お母様?」「ユーリア、大丈夫だからね。」 不安そうに自分を見つめる娘の頭を海斗は優しく撫でた。 それから、海斗は体調を許す限り、週末になると家族と出かけた。「ねぇお父様、お母様、良くなるよね?」「あぁ・・」 幼い子供達を安心させる為に、ジェフリーは嘘を吐いた。 だが、その事に気づいた海斗達は、子供達を寝室に呼んだ。「あのね、今日は二人に話しておきたい事があるの。」「話しておきたい事って?」「お母様の病気は、もう治らない。残念だけれど、あなた達と居られる時間は、そんなに長くないの。」「嫌だよ、そんなの!」「お母様は、あなた達を遺して逝くのが辛い。でも、その日が来るまで、お母様はあなた達と一緒に楽しい思い出を作りたいの。」「お母様・・」 子供達と話をした後、海斗はジェフリーを自分の寝室に呼んだ。「ジェフリー、子供達に嘘を吐かないで。あの子達は俺達が思っているよりも、色々と考えているから。」「わかった・・」 海斗の病状は、日に日に悪化していった。「先生、俺はあとどの位生きられますか?」「長くて一年、短くても半年でしょう。」「そうですか・・」 医師から余命宣告をされ、海斗は子供達と共に過ごす時間を増やした。「お母様、今日は勿忘草を摘んで来たよ!」「ありがとう。」「お母様は、わたしの事を忘れないでいてくれる?」「忘れないよ。だからユーリアも、俺の事を忘れないでいてくれる?」「うん、忘れないよ!」「ありがとう。」 クリスマス・シーズンを迎え、海斗はもう寝台から起き上がれない程、弱っていた。「お父様、サンタさん、うちにも来てくれるかなぁ?」「あぁ、きっと来るさ。」 クリスマス=イヴ、ロンドンは大雪に見舞われた。「うわぁ、雪だ!」「二人共、気をつけろよ!」ナイジェルがジェフリーとユーリアを連れ、凍ったテムズ川でスケートを楽しんでいると、ジェフリーが何処か暗い表情を浮かべながら彼らの元へとやって来た。「ナイジェル、カイトが・・」 ナイジェル達が屋敷に戻ると、海斗は寝室で苦しそうに息を吐いていた。「お母様!」「ユーリア、お兄様と仲良くね。ジェフリー、ユーリアを頼むわね。」「うん・・」「二人共、わたしを忘れないで。」 家族に静かに見送られ、海斗は息を引き取った。(カイト、子供達の事は俺に任せて、安らかに眠ってくれ・・) 毎年春になると、子供達は海斗の墓に勿忘草を供えた。 ジェフリーは、生涯独身を貫き、子供達を育て上げた。 幾度も季節が巡り、ジェフリーは病に倒れ、最期の時を迎えようとしていた。「お父様、しっかりして!」「カイト、迎えに来てくれたのか・・」 ジェフリーはそう言ってユーリアとジェフリーに優しく微笑むと、静かに息を引き取った。「お父様も、逝ってしまわれたわね・・」「あぁ・・」 父を見送った後、ユーリアとジェフリーは父の葬儀を終え、彼の遺品を整理した。 二人は父の遺品の中からアルバムを取り出し、それを開いた。 すると、そこには新婚時代から海斗が亡くなるまでの膨大な家族写真と、ジェフリーと海斗の書き込みがあった。「二人共、幸せそう・・」「そうだな・・」 アルバムの最後のページには、こう書かれてあった。『わたしを忘れないで』「何でだろう、涙が・・」「なぁ、ユーリア、この屋敷はどうする?」「残しましょう。」 二人を、忘れない為に――FIN-にほんブログ村
2023年04月11日
コメント(0)

センタンのチョコバリアイス。表面のチョコクランチが美味しかったです。
2023年04月10日
コメント(0)

画像は湯弐様からお借りしました。「FLESH&BLOOD」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。海斗の呼び掛けに一切答えず、外からは尚一層激しくドアを叩く音が聞こえて来た。「奥様、どうかなさいましたか?顔色が悪いですよ?」「アデル・・」海斗はそう言った後床に倒れ込んで、意識を失った。「カイト、大丈夫か?」「ジェフリー、赤ちゃんは?」「大丈夫だ。それよりも、アデルから話は聞いたぞ、変な奴がここに来たんだってな?」「うん・・でも、誰なのかわからなかったよ。」「警察に連絡しろ、ナイジェル。何かが起きる前に、早めに対策を打っておいた方がいいだろう。」「そうだな。」ナイジェルの通報を受けたスコットランド・ヤードの刑事は、ジェフリーにある物を手渡した。それは、黒魔術に使われるような、不気味な人形だった。「これは処分してくれ。」「はい・・」海斗が倒れたという連絡を受け、リリーが駆け付けてくれた。「そんな事があったの。余り一人で出歩かないようにしないとね。」「うん・・」この出来事を機に、海斗に対する陰湿な嫌がらせが始まった。海斗の洗濯物だけが泥だらけで放置されたり、彼女の私物がなくなったりしていた。「そう・・あなたの私物がなくなるなんて、気味が悪いわね。なくなった物は、どんな物なの?」「化粧品とか、香水とか・・」「金目の物が盗まれていないところも、怪しいわね。」往診に来ていたリリーがそう言った時、外から食器が割れるような男が聞こえた。「申し訳ございません!」「アデル、怪我は無い?」「はい・・」アデルは慌てて割れた食器を片づけると、海斗とリリーに一礼して厨房へと戻っていった。「ねぇカイト、あの子・・アデルとは何処で知り合ったの?」「アデルとは、三ヶ月前に行きつけのパン屋さんで知り合いました。」「紹介状は、持っていなかったの?」「うん・・」「こんな事は余り言いたくないのだけれど、アデルの事がどうしてもひっかかるのよね。紹介状もなしにここに来るとか、少し怪しいわね。」「そうかな?」リリーとそんな話をした後、海斗はモヤモヤした思いを抱えながら寝室に入ると、寝台の近くに置いてあった宝石箱の位置が少しずれている事に気づいた。 中身を確認すると、ジェフリーが結婚式の時にプレゼントしてくれたダイヤモンドのブレスレットがなくなっている事に気づいた。(一体、誰が・・)海斗はその日、一睡も出来なかった。嫌がらせを受け、海斗は体調を崩して入院する事になった。「アデル、少し話したい事があるが、今いいか?」「はい・・」アデルがジェフリーの書斎に入ると、そこには険しい顔をしたジェフリーとナイジェル、そしてスコットランド・ヤードの刑事の姿があった。「皆さん、そんな怖い顔をされてどうなさいました?」「お前だな、カイトに嫌がらせをしていたのは?」「そんな・・何の証拠があって・・」「今朝、俺が贔屓にしている質店に、このブレスレットを売りに来た女が居たという情報が入ってな。その時、ブレスレットを売った女の似顔絵を店主が俺に渡してくれた。アデル、お前だろう?」ナイジェルにそう問い詰められたアデルは、突然大きな声で笑った。「何がおかしい?」「あ~あ、上手くやったと思ったのに。」「どうして、カイトを苦しめるような真似をしたんだ?」「只の嫉妬でやった事よ。わたしと同い年なのに、全てを手に入れた彼女が憎かったの!」刑事に連行される前、アデルはそう叫んで笑った。「そう・・アデルが・・」「カイト、家の事は俺達に任せて、お前は腹の子の事だけを考えていればいい。」「うん・・」海斗はそう言うと、下腹を擦った。「悪阻はもう治まったのか?」「うん・・でも、最近胎動が激しくなって、苦しいかな。」「余り無理をするなよ。」海斗の病室から出たジェフリーは、そこでキットに会った。「キット、こんな所で会うなんて珍しいな。」「実は、お前のお袋さんがここに来ているんだ。」「あの人が?まさか、カイトに何かするつもりじゃ・・」「それはないな。お前さんは、お袋さんを誤解しているな。どれ程お前さんとお袋さんが憎しみ合っていても、孫の存在は別物なのさ。」「そうか?」キットとジェフリーがそんな事を話し合っている頃、海斗はエセルと病室で対峙していた。「そんなに緊張しないで・・」「俺は・・」「この前会った時、あなたに酷い事を言ってしまったわね、ごめんなさい。」 エセルはそう言うと、海斗の手を握った。「元気な子を産みなさい。」「はい・・」海斗は、エセルと和解したことを、ジェフリーに話した。「そうか・・」「俺、あの人の事を誤解していた。」「キットが言った事は、間違っていないかもしれないな。」「彼は、何て言ったの?」「どんなに俺とあの人が憎しみ合っていても、孫は別だとな。」「そう・・」季節は瞬く間に過ぎ、海斗は臨月を迎えた。「そんなに動いて大丈夫なのか?」「リリーは、少しの運動なら大丈夫だって言っていたよ。」そう言いながら海斗が床を磨いていると、彼女は下腹の激痛に襲われ、その場に蹲った。「カイト、どうした!?」「産まれそう・・」「ナイジェル、ナイジェル!」 慌てたジェフリーは、ソファの角にぶつかり、右足を捻挫してしまった。「慌て過ぎよ、ジェフリー。産まれてからが大変なのに、父親のあなたがしっかりしなくてどうするの?」「済まない、リリー。」「ナイジェル、お湯を沸かして。ジェフリー、あなたは清潔なシーツを持って来て!」「わかった・・」産室となった寝室で、海斗は産みの苦しみに襲われて呻いていた。「大丈夫、ゆっくり呼吸して。」「はい・・」同じ頃、寝室の前ではジェフリーが落ち着かない様子で廊下を行ったり来たりしていた。「ジェフリー、落ち着け。」「ナイジェル・・」「あんたはこれから父親になろうとしているのに、そんな頼りない存在でどうする?」「リリーと同じ事を言うんだな。」「ジェフリー、子が産まれたら授乳以外全て赤子の世話をやれ。産後の恨みは一生ものだと思え。」「わかった。」明け方に産まれたのは、元気な男児だった。「おめでとう。」「カイト、頑張ったな。」「うん・・」海斗は息子を産んでから体調を崩し、寝たきりになってしまった。 ジェフリーとナイジェルは寝たきりの海斗の代わりに息子を育てた。「出産は何が起きるかわからないものなの。カイトの場合は難産で、出血が酷かったから身体への負担は大きかった筈。」「カイトは、あとどの位で生きられるんだ?」「それはわからないけれど、出来るだけカイトを支えてあげて。」「わかった・・」海斗は寝たきりになっても、体調が良い時は書類仕事をする傍ら、息子の育児日記をつけていた。彼女が命懸けで産んだ息子・ジェフリーは、五歳の誕生日を迎えた。「母さん、母さんが好きなラベンダー、摘んで来たよ!」「ありがとう、いい香り。」海斗がそう言ってジェフリーに微笑むと、頬を膨らませながら海斗の長女・ユーリアが部屋に入って来た。「お兄様ばかり、ずるい!」「二人共、仲良くしてね。」海斗は子供達の頭を撫でながら、あとどの位彼らの成長を見守れるのだろうかと思い始めていた。にほんブログ村
2023年04月08日
コメント(0)

このブログ、趣味として書いている好きな小説や漫画、アニメの二次小説と、一次小説と日常の愚痴やグルメ、読書記録などがメインなのですが、いつも200位のランキングくらいな感じで、わたしは全然気にしていなかったのですが、何と今日ランキングを確認していたら、13位になっていました。これは夢なのかと思い、頬をつねってみたら痛い。趣味で書いた二次小説と一次小説、そんなに面白いのかなぁ?
2023年04月05日
コメント(2)
![]()
この人の作品は社会の理不尽さや家族の絆といったものを描いて、なおかつミステリーとして読みごたえがありました。
2023年04月05日
コメント(0)

苺の酸味と甘味が口の中で広がって美味しかったです。
2023年04月05日
コメント(0)

パルムのチョコミント味。期間限定ですが、濃厚なチョコクリームとミントとの相性が抜群ですね。
2023年04月04日
コメント(0)
![]()
架空皇室もの。なんだか、面白かったです。平民出身の主人公が強気な黒髪受で好きでした。ラブラブな終わりかたで良かったです。
2023年04月03日
コメント(0)

パピコマスカット味。まあ、普通に美味しかったんですが、食べにくかったです。
2023年04月02日
コメント(0)
全37件 (37件中 1-37件目)
1
![]()
![]()
