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素材は、ヨシュケイ様からお借りしました。「薄桜鬼」「火宵の月」の二次創作小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは関係ありません。土方さんが両性具有です、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。歳三が周囲を見渡すと、まさに大蛇が牙を剥き自分に襲い掛かろうとしているところだった。 歳三は隠し持っていた懐剣で大蛇の首を切り落とした。“おのれ・・” 大蛇はそう呟き息絶えた後、灰となって消えた。「一体、何があったの!?」「大蛇が、わたくしの局に・・」「まぁ、大変!怪我は無い!?」「はい。」(妙だな・・大蛇の気配をまだ感じる・・)「そうか。あの鬼の子が・・」 闇の中で、男はそう呟くと傷ついた大蛇を慰めた。「ほぅ、美しい顔をしているではないか。」 男は、水鏡に映し出された歳三の顔を見た後、そう言って笑った。「あ~、疲れた。」 大蛇騒ぎから一夜明け、歳三は女房達から根掘り葉掘り大蛇の事を尋ねられて疲れ果てていた。『歳三様・・』「梅、あなたにお客様よ。」「わたくしに、ですか?」「えぇ。」 歳三が衣擦れの音を立てながら渡殿へと出ると、そこには有匡の姿があった。「土御門殿、お久しぶりです。」「実は、土方殿にお話ししたい事がありまして・・」「まぁ、それならば中へどうぞ。」「はい。」 歳三は、有匡から思わぬ事を聞いた。 それは、右大臣家の二の姫・柚奈についての事だった。 柚奈は、大蛇に喰われる前に見知らぬ男と逢引きをしていたという。「その相手は?」「それが、金髪紅眼の男だとか。」「金髪紅眼の男、ねぇ・・」「土方殿、どうされたのですか?」「いえ、少し思い出した事があって・・」 歳三はそう思うと、幼い頃の事を思い出した。 それは、まだ歳三が土方家に引き取られる前の事だった。 歳三が良く遊んでいた裏山を歩いていると、そこへ一人の少年が現れた。 金色の髪に、血のように紅い瞳を持ったその少年は、じっと歳三を見た後、こう言った。「貴様、気に入ったぞ。将来、嫁に来い。」 少年は口元に不敵な笑みを浮かべた後、歳三の唇を塞いだ。「てめぇ、何しやがる!」 歳三はそう叫ぶと、少年の顔を平手打ちして裏山から去っていった。「昔、その男に会ったような気がする・・」「そうですか。柚奈殿は、貴殿を誘き出す囮だったのかもしれませんね。」「囮?」「その男の真の狙いは、貴殿なのかもしれません。」「もうしそうだとしたら・・」「警戒を怠らぬようにしなければなりませんね。」「ええ・・」「梅様、頭中将様がお見えです。」「頭中将様が?」 頭中将は確か、藤壺女御の義兄にあたる人物だが、その彼が一体自分に何の用があるのだろうか。「では、わたくしはこれにて。」 局から辞した有匡と入れ違いに、若草色の直衣を纏った青年が入って来た。「頭中将様、お初にお目にかかります、梅と申します。」「そなたか、麗しの鬼姫とやらは。」 頭中将―藤原元高は、そう言った後徐に御簾を捲ろうとしたので、歳三が慌てて彼を止めた。「なりません、そのような事をなさっては!」「良いではないか。」「良くありません!」「鬼姫よ、一度でも良いからその顔を拝ませておくれ!」「なりませぬ!」「おやおや、誰かと思ったら頭中将様ではありませぬか?」 渡殿から少し澄ましたかのような声が聞こえ、一人の男が元高の前に現れた。 彼の名は、橘良政、頭中将の政敵である。「橘殿、貴殿も鬼姫に会いに?」「いいえ、わたしはそのような不粋な事は致しません。」「そうか。」 頭中将はそう言うと、良政を見た。「わたしは、貴殿の義妹に会いに来たのです・・“例の件”で。」「“例の件”だと?」 御簾を隔てていても、頭中将と良政との間に険悪な空気が流れている事に歳三は気づいた。(“例の件”って、何だ?) 歳三が二人の話に耳を傾けようと少し耳を傾けようと身を乗り出した時、その弾みで懐剣が渡殿の方へと転がってしまった。「おや、これは・・」「わたくしの物です、どうか返して下さいませ。」 歳三はそう御簾の中から頭中将に声を掛けたが、彼は懐剣を握り、じっとその柄に刻まれた家紋を見つめていた。「あの・・」「この紋・・見覚えがありますぞ。」「おや、貴殿もですか?わたしもです。」(不味い・・)「貴様ら、ここで何をしている?」「と、東宮様・・」 御簾の向こうからでもわかる程の、鮮やかな紅の衣を纏った男は、頭中将から懐剣を奪い取った。「これは・・」「東宮様も、この紋に見覚えが?」「あぁ。」 男はそう言った後、勢いよく御簾を捲り上げた。「きゃぁぁ~!」 突然御簾を捲られ、女房達は悲鳴を上げながら、扇で顔を隠して逃げ惑った。「また会えたな、我妻よ。」「てめぇ、もしかして、あの時の・・」 歳三がそう言って金髪紅眼の男を睨むと、彼は歳三の唇を塞いだ。「何しやがる!」 小気味の良い音が、夏空に響いた。「東宮様、そのお顔はどうされたのです?」「何でもないです。」「また、土方家の姫にちょっかいを出したのでしょう?」 顔を赤く腫らした男―東宮・千景に、天霧はそう言って溜息を吐いた。「まぁ、土方家に姫君など居たのかしら?」「ふふ、それが居たのだ。」 千景は、そう言って嬉しそうな顔を祖母である皇太后に向けたが、彼女は少し呆れた顔をしていた。「東宮様、少し大人しくなったと思ったら、また問題を起こしてわたしを困らせて・・」「皇太后様・・」「お祖母様、俺は土方家の姫を妻として迎えます。」「ならば、文を土方家の姫に贈りなさい。いいですが、くれぐれも問題を起こさぬようにするのですよ。」「わかりました・・」 こうして、千景は歳三に求婚の文を贈る事になった。 しかし、待てど暮らせど歳三からの返事はなかった。「一体、どうしたというのだ?」「愛想を尽かされてしまったのでは?」「うるさい、黙れ。」「失礼致します、東宮様。土方家から文が届きました。」「寄越せ!」 女房から土方家から届いた文をひったくると、千景はそれに目を通した。 そこには、明日の夜に管弦の宴を開くので是非来て欲しいという旨が書かれていた。「義父上、お呼びでしょうか?」「歳三、お前東宮様に見初められたようだな?」「一方的に向こうが迫っているだけです。」「どうでもいい。管弦の宴には、お前も出席してくれ。女装して、な。」「義父上・・」「お前の意思など、関係ない。東宮妃になること、それがこの家の為にお前が出来る、唯一の事だ。」「はい・・」(どいつもこいつも、勝手な事を言いやがって・・) 歳三は溜息を吐くと、気を紛らわす為に和琴を弾いた。 その音色に導かれるかのように、八郎が歳三の前に現れた。「トシさん、久しぶり!」「八郎、どうした?」「トシさんに呼ばれたような気がしたから、来ちゃった!」 八郎はそう言って屈託の無い笑みを浮かべた。にほんブログ村
2023年10月29日
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素材は、ヨシュケイ様からお借りしました。「薄桜鬼」「火宵の月」の二次創作小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは関係ありません。土方さんが両性具有です、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。―許しておくれ、歳三。そう言って女は、幼い自分を抱き締めて涙を流した。―奥方様、早く参りませんと・・―必ず、迎えに来るからね。(かあさま!)歳三は必死に女を追い掛けようとしたが、女は闇の中へと消えていった。「歳三様、どうされました?」「あ・・」「酷く、うなされておいででしたよ?」歳三が目を覚ますと、そこは右大臣家の一の姫・美雪の局だった。「どうして、俺はここに・・」「宴の時、突然気を失って倒れられてしまったので、わたくしが介抱いたしました。」「済まない、迷惑をかけたな。」「いいえ。それよりも土方様、少し妹の事―千鶴の事でご相談がございます。」「ご相談?」「はい、あの子は訳あってこの家に引き取られました。正確に言えば、彼女は赤子の時の我が家の前に捨てられていたのです。」「そうなのですか・・」「千鶴の事を、どうか守って頂けないでしょうか?」「美雪殿・・」「最近巷で騒がれている鬼騒ぎですが、それは千鶴の実の父親が引き起こしたものなのです。」美雪の話によると、鬼騒ぎを起こしているのは、千鶴の実父・忠道だという。「あの方は、帝を殺し、鬼が治める国を作りたいと・・」「彼は、今何処に?」「それが、わからないのです。彼は、いずれ妹を攫いに来ます。」「そうですか。では、“その日”まで千鶴殿をその鬼からお守りすればいいのですね?」「はい。歳三様、どうか妹の事をお守りくださいませ。」「わかりました。」こうして、歳三は千鶴の警護の為、右大臣家に通う事になった。「納得いかないわ!どうしてあんな子が、歳三様に目を掛けられるの?」「姫様・・」「早く鬼が来て、あの子を攫ってくれないかしら?」「ひ、ひぃぃ~!」「どうしたの、そんな大声を出して・・」柚奈の背後には、巨大な蛇が迫っていた。「誰か~!」助けを呼ぶ間もなく、柚奈は大蛇に呑み込まれてしまった。「姫様~!」翌朝、大蛇はある場所に現れた。そこは、中宮の寝所だった。「中宮様、お逃げ下さい!」「何をしておる、早く大蛇を倒さぬか!」「ひ、ひぃぃ~!」周囲に悲鳴と怒号が響き渡る中、大蛇はその牙を中宮の喉元に突き立てた。「中宮様~!」衛士達が慌てて中宮から大蛇を引き離そうとしたが、遅かった。「あぁ、何という事だ・・」衛士達がそう言いながら中宮を呑み込んだ大蛇の膨れた腹を見た後、突然大蛇が苦しみ出した。「な、何だ?」大蛇の腹は大きく裂け、その血と臓腑が周囲に飛び獲った。「ひぃぃ~!」「逃げろ!」皆が恐怖と混沌で逃げ惑う中、蛇の裂けた腹から死んだ筈の中宮が出て来た。「中宮・・様?」中宮だった“モノ”は、ゆらりと逃げ遅れた女房へと近づくと、その喉を鋭い牙で食いちぎった。「化け物・・」中宮は―否、中宮に化けた“何か”は、高らかに笑った後、闇の中へと消えていった。「歳三様、起きて下さいませ!」「どうした?」「後宮に、大蛇が現れました!中宮様が鬼になってしまいました!」「それは本当か!?」歳三が自分の局で休んでいると、そこへ何処か慌てた表情を浮かべた土方家の使用人が入って来た。歳三は欠伸を噛み殺しながら、大蛇騒ぎが起きた後宮へと向かった。「おお、土方殿!」「一体、何があったのですか?」「右大臣家の二の姫様が大蛇に喰われた後、それは中宮様を呑み込み、大蛇の腹から鬼となった中宮様が・・」公達の話を歳三が聞いていると、そこへ一人の少年がやって来た。「土方様、どうか中宮様をお助け下さいませ!」「お前は?」「中宮様の側仕えを務めている、蛍と申します。」「中宮様は今どちらに?」「中宮様は・・」蛍がそう言った時、後宮から悲鳴が聞こえて来た。「何だ、今のは!?」「失礼!」歳三が、悲鳴が聞こえた方へと向かうと、そこには中宮が一人の女房の喉に牙を立てていた。「破っ!」歳三が祭文を唱えた後、中宮に護符を放つと、彼女は悲鳴を上げて苦しみ出した。―お願い、殺して・・歳三は、中宮の声が聞こえたような気がした。彼は、腰に帯びていた太刀を抜くと、その刃で中宮の首を斬った。―ありがとう・・中宮は、その姿を灰に変えて消えていった。「何と・・」「中宮様、おいたわしや・・」「一体、大蛇は誰が・・」中宮と柚奈の事件が起き、歳三と有匡が所属する陰陽寮では、事件の捜査を行う事になった。「右大臣家の二の姫様に続き、中宮様までこのように・・」「これは鬼の仕業に違いない・・」「皆、揃ったな。」陰陽頭・安倍雅光は、歳三と有匡に後宮への潜入捜査を命じた。「何故、わたくし達なのですか?」「他の者は、女装に向かぬからな。そこでお前達には白羽の矢が立ったという訳だ。」「そうですか・・」「後宮は男子禁制故、くれぐれも正体を露見せぬよう頑張ってくれよ。」「はい・・」歳三は溜息を吐いた後、雅光の局から出た。「土方殿、厄介な仕事を押し付けられたものですな。」「ええ、しかし陰陽頭様がお決めになられた事なので、頑張るしかありませんね。」「はは、そうですね・・」こうして、歳三と有匡は後宮に潜入する事になった。歳三は中宮が居た弘徽殿の内侍司に、有匡は藤壺の薬司にそれぞれ潜入する事になった。「畜生、内袴を捌き方がわからねぇし、唐衣と裳が重くて敵わねぇや・・」『まぁまぁ歳三様、そのような事をおっしゃってはなりませぬ。』「でもなぁ・・」歳三が小鳥の式神を肩に乗せながらそんな事を話していると、向こうから衣擦れの音が聞こえて来た。見ると、渡殿の向こうから美しい衣を纏った少女がゆっくりと歳三達の元へとやって来た。「あら、あなたが今日、弘徽殿にいらっしゃった方ね。」「はい・・梅と申します。」「そう・・」少女は歳三を見ると、興味がなさそうな顔をして彼の脇を通り過ぎていった。(これから、どうなるんだろうな、俺・・)歳三がそんな事を思いながら自分に宛がわれた局の中で休んでいると、ずるずると何かが這っているかのような音が渡殿から聞こえて来た。(何だ?)にほんブログ村
2023年10月29日
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素材は、ヨシュケイ様からお借りしました。「薄桜鬼」「火宵の月」の二次創作小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは関係ありません。土方さんが両性具有です、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「だって、トシさんをお嫁さんにするって約束したんだもん!」「・・そんな約束をした覚えはねぇぞ?」「え~!」八郎はそう言うと、潤んだ瞳で歳三を見つめた。「そんな顔をするな。」「じゃぁ・・」「八郎、腹減っただろ?丁度飯の時間だから一緒に食うか?」「いいの!?」八郎は尻尾を振りながら歳三に抱き着こうとした時、烏天狗の斎藤が彼の前に降りて来た。「おう斎藤、久しぶりだな!」「お久しぶりです、土方さん!」「斎藤、斎藤じゃねぇか!今までどうしていたんだ?」「トシさん、この子誰なの!?」「あぁ、こいつは昔、怪我をしていた時、俺が世話して・・」「ひどい、僕というものがありながら浮気なんて!」「誤解するな。」「言っとくけれど、トシさんは僕のだぞ!」「久しぶりに会えたんだ、ゆっくりしていけ。」「はい。」その夜、歳三達は楽しく酒を酌み交わした。「トシさん、結婚はしたくないの?」「あぁ。義父上からは勝手に縁談を勧められているが、俺は一生独り身でいい。」「それじゃぁ・・僕のお嫁さんになってくれるって事?」「・・何でそうなる?」「土方さん、少しよろしいでしょうか?」「どうした、深刻そうな顔をして?」「実は・・」斎藤は、酒を飲みながらぽつりぽつりと彼が住む山が抱えている問題を歳三に話し始めた。かつては、“神域”とされていた烏天狗の里は、ここ数年都の貴族達が山荘を建てては連日宴を開くので、うるさくて堪らないという。「このままでは、我らの心が乱れてしまいます。実際、貴族の山荘を襲う事件が相次いで起きております。このままだと、争いが起きます・・どうすればよいのか・・」「切実な問題だな。人と妖との境界線が徐々になくなってきやがる。」「そうだね。うちの里でも斎藤君の里と同じ問題が起きているよ。」「どうにしかしねぇとな・・」歳三達は腕を組んで深い溜息を吐いた。彼らが人間達とどう共存し合えるかどうかを話し合っている頃、右大臣家では一人の姫君が和琴を奏でていた。彼女の名は、雪村千鶴といった。彼女は、訳あって右大臣家へと引き取られた、鬼の血をひく姫だった。「千鶴、入るわよ。」「姉様・・」「近々、ここで管弦の宴が開かれる事は知っているわよね?」「はい。」「その宴に、あなたも出てみない?」「でも、わたしは・・」「大丈夫、わたしの方からお父様を説得してみるわ。あなたも右大臣家の姫なのだから、公の場に出る資格はあるわ。」「えぇ・・」千鶴はそう言って、右大臣家の一の姫・美雪に向かって嬉しそうに笑った。「ねぇ、ここ最近都で鬼騒ぎがあったのですって。」「物騒ですね。」「本当に。」都では、貴族の姫君を狙った人攫いが多発していた。「うちには、厄介な居候が居るから心配ね。」「姫様、お言葉が過ぎますよ。」「あら、いいじゃないの。本当の事なのだから。」右大臣家の二の姫・柚奈はそう言うと、扇を顔の前にかざして意地の悪い笑みを浮かべた。「ねぇ、管弦の宴にはあの土方家の歳三様がいらっしゃるのでしょう?」「えぇ、何でも宴には土御門家の若様もいらっしゃるようですよ。」「楽しみだわ!」柚奈がそんな事を女房と話していると、右大臣が彼女の元へやって来た。「まぁ父様、こんな所にいらっしゃるなんてお珍しい事。」「管弦の宴の事だが、あの娘も宴に出す事に決めた。」「嫌よ!」「これはもう、決まった事なのだ。」「そう。わかりました。」柚奈はそう言いながら、千鶴を宴の席で恥をかかせてやろうと企んでいた。「美雪様、今よろしいでしょうか?」「その顔は、また西の対屋で何かあったのね?」「はい・・」柚奈の女房から、彼女のたくらみを知った美雪は、ある事を企んだ。そして、管弦の宴の夜が来た。「今宵の宴には、あの鬼姫が出るそうだ。」「あぁ、あの・・」「“鬼姫”ですと?それは興味深い話ですな。」酒を酌み交わしながらそんな事を公達達が話していると、そこへ歳三が現れた。「おや、お珍しい。あなた様がこちらにいらっしゃるなんて・・」「義父に無理矢理連れて来られましてね。」「まぁ、そうなのですか。」「道理で、右大臣家の女房達が騒いでいる訳だ。」「華やかな場所は苦手なので・・」「またまた、ご冗談を。」(早く帰りてぇな。)「おや有匡殿、どうかなさったのですか?」「いえ、あちらの方は初めて見るお顔ですね。」「あぁ、彼は土方歳三殿ですよ。何でも、半分鬼の血をひいておられるとか・・」「ほぉ・・」「どうやら、土方殿は右大臣家の姫君様方と見合いをされるそうですよ。」有匡が少し歳三に興味を持ち始めた頃、歳三は右大臣家の姫君達と見合いをしていた。見合いといっても、御簾越しに互いの顔を見るだけであった。「歳三様、半分鬼の血が流れているというのは本当ですの?」「えぇ、本当ですよ。」「まぁ、それならば“あの子”にお似合いなのかもしれませんわ。」「“あの子”?」「ほら、今池で和琴を弾いているのが、我が家の居候ですわ。」柚奈がそう言って扇で指し示した先には、池に浮かぶ船の中で和琴を弾いている真紅の唐衣を纏った一人の姫君の姿があった。頭に黄金色のかざしを挿し、目元に紅をさしたその姿は、まるで天から舞い降りて来た天女のように美しかった。「あの子がこの家に来てから、不吉な事ばかり起こるんですの。」「失礼。」「待って!」自分を慌てて引き留めようとする柚奈に背を向け、歳三は庭の方へと向かった。「おや、歳三殿は鬼姫に興味がおありのようだ。」「同族同士、惹かれ合うようなものがあるのだろう。」ヒソヒソと悪意に満ちた囁きを無視して、歳三は和琴を弾いている娘を見た。その時、雲に隠れていた月が、歳三とその姫君の姿を照らした。(やっぱり、こいつ、あの時の・・)姫君の姿と、あの時池で会った少女の姿が、歳三の中で重なって見えた。それは、彼女も同じだったようで、彼女も歳三をじっと見つめていた。『歳三・・』歳三の脳裏に、自分の名を呼ぶ“誰か”の姿が浮かんだ。それは、自分と瓜二つの顔をした女だった。にほんブログ村
2023年10月29日
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素材は、ヨシュケイ様からお借りしました。「薄桜鬼」「火宵の月」の二次創作小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは関係ありません。土方さんが両性具有です、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。漆黒の闇の中、一人の男が息を切らしながら走っていた。彼は、一夜の宿を借りる為、貴族が住んでいた屋敷で寝ていたら、“ただならぬ気配”を感じ、屋敷から出た。すると、奥から恐ろしい声が聞こえて来た。“何故わかった”堪らず男は屋敷から出て闇の中へと駆けてゆくと、背後に禍々しい気配が迫って来るのを感じた。橋の下で隠れて暫くそこで息を殺していると、橋の上から鎧がガチャガチャと鳴る音がした。“あの者はいずこへ?”「ここに、おりますよ。」男のすぐ傍で、若い男の声が聞こえて来た。その声が聞こえた途端、男の意識は途絶えた。「おい、どうした?」「申し訳ありませぬ、牛が・・」牛車が突然止まり、歳三はそっとそこから降りて牛の元へと向かった。「いけません、若様!」「大丈夫。」彼はそう言うと、牛に纏わりついている雑鬼を祓った。「歳三、勝手に何処かに行っては駄目だろう!」「申し訳ありません、“父上”・・」歳三がそう言って詫びると、義父は舌打ちして彼を睨んだ。“薄気味悪い・・鬼の子など、引き取りたくなかった。”(鬼の子、か・・)歳三は、鬼と人との間に生まれた、半妖だ。幼少の頃から父母はすでに亡く、歳三は父方の実家である土方家の養子となった。土方家は、陰陽道の大家として安倍家や土御門家にひけをとらぬほどの名門であった。義父―父方の叔父には四人の息子達が居たが、彼らは皆、“見鬼の才”がなかった。陰陽師の家の者として生まれた彼らにとってそれは、致命的なものであった。だが、養子として迎え入れた歳三にだけ、“見鬼の才”があった。漆黒の髪に雪のような白い肌、そして宝石のような美しい紫の瞳を持った歳三は、たちまち嫉妬と羨望の的となった。―気味が悪い・・―いくら学が出来てもねぇ・・使用人達は歳三を恐がり、誰一人彼に近づこうとしなかった。歳三は孤独な日々を、ネズミ達や雑鬼達と過ごした。時折横笛や箏を奏でながら、歳三は長い夜が明けるのを静かに待っていた。水干姿に髪をひと纏めにして高い位置に結んでいた歳三は、ある日夏の茹だるような暑さを凌ぐ為、近くの泉で水浴びをしていた。するとそこへ、一人の少女がやって来た。薄紅の衣を纏ったその少女は、円らな瞳で歳三を見た。その瞳の色は、美しい黄金色をしていた。「てめぇ、誰だ?」「あ・・」「姫様、どちらにいらっしゃいますか~」「姫様~!」遠くで女房達の自分を呼ぶ声が聞こえ、少女はまるで弾かれたかのように泉の前から離れていった。(何だったんだ、あいつ?)それが、小さな鬼姫との出逢いだった。「は、見合いですか?」「そうだ。お相手は右大臣家の姫君様方でな、近々そこで管弦の宴が開かれる。」「義父上、俺は・・」「お前にはそろそろ身を固めなければな。次期当主となるのだから。」「それは・・」「そなたは、この家の希望。そなたには、陰陽師としてこの家を支えて欲しいのだ。」元服を迎えた日の夜、歳三は義父に呼ばれ、彼が自分に家督を譲る気である事を知った。「随分と長い間、父上と話されていたな?」「兄上・・」「馴れ馴れしくわたしを呼ぶな、鬼の子風情が。」歳三の義兄・義成は、そう言った後冷たく歳三を睨んだ。「先程、義父上からこの家の次期当主はお前しか居ないと言われましてね。」「何だと!?」「あなた方が、陰陽師として力不足だと申し上げているのです。血など、所詮役に立たないものですね。」「おのれ・・」「良い気になるな、貴様はこの家の恥晒しだ!」「何とでもおっしゃるがいい・・負け犬の遠吠えなど、聞いても虚しいだけだ。」「兄者、あんな奴放っておきましょう。」義兄達が去った後、歳三はふと庭の方へと目をやると、藤の木の近くに幼い狐が倒れている事に気づいた。(何だ・・)歳三が狐に近づいてみると、その狐は、まだ幼い妖狐だった。癖のある栗色の毛は血に汚れ、狐は苦しそうに息をしていた。歳三は祭文を唱えながら、己の“気”を狐に当てた。すると、狐はゆっくりと翡翠の瞳を開いて歳三を見た。「良かった・・」「トシさん・・」「もう喋るな。」歳三はそう言って狐を抱えると、暫く彼を自室で匿った。「ありがとう、トシさん。この恩は、いつか必ず返すからね!」「気を付けて帰れよ。」「わかった、じゃぁね!」狐は栗色の九本の尻尾を振ると、その姿を煙のように掻き消した。「八郎、どうしたのです?大事な話とは・・」「母上、僕トシさんをお嫁さんにしたいです!」「あなたの好きなようになさい。」時が経ち、陰陽師として働いている歳三の元に、成人した狐もとい、伊庭八郎がやって来た。「トシさ~ん、迎えに来たよ!」「本当に来たのか・・」にほんブログ村
2023年10月29日
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21世紀に生きていて良かったと、読み終わって思った本でした。
2023年10月28日
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「その女、アレックス」で知られるフランス=ミステリーの鬼才が送る最新作。ページをめくる手が止まらない位面白い作品でした。
2023年10月25日
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爽香と娘・珠実の活躍が楽しめた作品でした。しかし、クズな男は最後までクズでしたね。
2023年10月25日
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関東大震災から物語が始まり、美しき諜報員・百合が、秘密を握る少年・慎太を命懸けで守りながら敵と戦う物語でした。百合が格好良くて、どうなってしまうのかと手に汗握る展開が続き、ページをめくる手が止まらない位面白かったです。映画は観ていませんが、機会が観ようと思っています。
2023年10月25日
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素材は、てんぱる様からお借りしました。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。※シエルが女装しています、苦手な方はご注意ください。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。 ヒョンジャがシエルを側室にするという話は、瞬く間に王宮内に広まった。―ねぇ、あの子よ・・―あんな子の何処がいいのかしら?―可愛い顔して、やるわね。 シエルがいつものように洗い場で洗濯をしていると、そこへ数人の女官達がやって来た。「あなたが、シエル?」「はい、そうですが・・」「わたし達と来てくれないかしら?」 女官の中で一番背が高い少女は、シエルの腕を掴んで彼を人気のない所へと連れていった。「どんな手を使って、世子様を誑し込んだのかしら?」「わ、わたしは、そんな・・」「お黙り!」 少女はそう叫ぶと、シエルを池へと突き落とした。「ちょっと、そんな事をしたら死んじゃうわ!」「構わないわよ、さぁ、行きましょう!」 少女―スヨンは取り巻き達と共に、池から去って行った。 シエルは苦しそうに喘ぎながら泳いでいたが、服が水を吸ってしまい、彼の身体は徐々に水底へと沈んでいった。「シエル!」 水面に何かが飛び込んだような音と共に、シエルは誰かにその身体を持ち上げられたような感覚がした後、意識を失った。“・・彼女は・・”“大丈夫です、気を失っているだけです。”“シエルを池に突き落としたのは、水刺間の者だな。後できつく叱らねば・・” シエルは誰かが話しているのを聞きながら静かに目を開けると、そこには心配そうに自分を見つめているセバスチャンと大妃の姿があった。「ここは・・」「あなたの部屋ですよ。あなたは池に突き落とされて・・」「僕は・・」 シエルがそう言って起き上がろうとした時、彼は痛みを感じて思わず顔を顰めた。「まだ動いてはいけませんよ。あなたは池に突き落とされた時、右足を痛めたのですから。」「そうか・・」「それにしても、驚いたぞ。そなたが男だったとは。」「大妃様、何故それを・・」「濡れた服を着替えさせた時、見てしまったのだ、そなたの裸を。」「いずれわたしからお話ししなくてはと思ったのですが、その手間が省けましたね。」セバスチャンがそう言った時、部屋に水刺間のユ尚宮が入って来た。「大妃様、この度は誠に・・」「そなたが謝るのは妾ではない。ユ尚宮、シエルを池に突き落とした者達はどうした?」「そ、それは・・」「形だけの謝罪などいらぬ、下がれ。」「はい・・」 ユ尚宮が部屋から出た後、大妃は溜息を吐いた。「ユ尚宮は部下の躾がなっておらぬ。一体どうなっているのか・・」「恐らく彼女達は世子様の発言―シエルを側室にするという話を真に受けたのでしょう。」「そうか。セバスチャン、シエルの傷が癒えるまで、シエルの世話を頼む。」「わかりました。」 こうしてシエルは足の傷が治るまで、セバスチャンの“宮殿”で療養する事になった。「シエル、あなたを池に突き落とした女官達は、あなたとは面識がないのですか?」「ない。僕が洗濯をしていたら、突然声を掛けられたんだ。」「そうですか・・」 セバスチャンはシエルに散歩に行って来るといい、水刺間へと向かった。―あの方は・・―どうして、水刺間に? 滅多に王宮内に顔を見せないセバスチャンが水刺間に現れたので、女官達は色めきたった。「あぁ、見つけましたよ。」「え?」「シエルがこの前、お世話になりましたね。」 セバスチャンはそう言ってシエルを突き落とした少女の頬を、勢いよく平手打ちした。「きゃぁっ!」 少女は、悲鳴を上げて泣き出した。「この程度で泣くなど、情けない。シエルは、あなたの所為で足を怪我しても泣かずに耐えているのですよ。」「わ、わたしは・・」「次は、ありませんよ。」 その日の夜、その少女は王宮から去っていった。「そなた、やり過ぎではないか?」「何の事です?」 セバスチャンはそう言うと、玄琴を爪弾いた。「昔から、そなたは愛する者の事となると見境がつかなくなるな。」「わたしは、もう喪いたくないのですよ。」 セバスチャンが母と死別したのは、彼が七歳の時だった。「お母様・・」「強く生きなさい。」 それが、母の最期の言葉だった。「憎しみに心を支配されてはならぬ。」「わかっております。」 大妃とセバスチャンがそんな話をしていると、王妃の使いが二人の元にやって来た。「王妃様が、お二人をお茶にお誘いしたいと・・」「わかりました、すぐに伺いますと王妃様にお伝え下さい。」 セバスチャンと大妃が王妃の元へ向かうと、部屋の中から賑やかな笑い声が聞こえて来た。「随分と、賑やかですね。」「ええ。今日はわたくしの誕生日なので、こうして皆さんを呼んで楽しくお話をしているのですよ。」「そうなのですか。それで、この場にわたしを呼んだのは?」「贈り物は用意したのでしょうね?」「えぇ、勿論。」 セバスチャンは王妃にそう言って微笑むと、夾竹桃を持って来た。「いいわね。」「わたしが育てた花ですよ。あぁ、この花を焚いて眠れば、美しい夢を見られるとか。」「まぁ・・」 無知な王妃はセバスチャンの嘘を信じて、その日の夜に苦しみながら死んだ。―おいたわしい―何という事・・「母上、母上~!」 強力な後ろ盾を失い、嘆き悲しむヒョンジャの姿を、セバスチャンは冷めた目で見つめていた。「お前だろう、母上を殺したのは?」「はて、何の事やら・・」「とぼけるな!母上に夾竹桃を贈ったのはお前だろう!」「王妃様はご自分が無知だから死んだのです。美しい花を敵から贈られて喜ぶなど、愚かな・・」「黙れ!」「おやめ!」 セバスチャンに殴りかかろうとするヒョンジャを、大妃と内侍(ネシ:宦官)達が慌てて止めた。「セバスチャン、後で妾の部屋に来るように。」「はい。」 セバスチャンが王妃の葬儀で騒ぎを起こしていた頃、シエルは本を読みながら彼の帰りを待っていた。(遅いな・・) シエルがそんな事を思いながら二冊目の本に手を伸ばそうとした時、一人の男が彼の前に現れた。 彼は黒衣を纏い、長い銀髪をなびかせながら黄緑色の瞳でシエルを見ていた。「ひっひっ、やぁっと見つけたよぉ。」「お前、誰だ?」「小生の事を忘れてしまったのかい?まぁ無理もないねぇ、小生と君達が会った時、君はまだ赤子だったからねぇ~」 黒く長い爪でシエルの頬を撫でた男は、風のように去っていった。(何だったんだ、あいつは・・)「シエル、遅くなってすいません。」「遅かったな、何をしていた?」「世子様と少し揉めまして・・大妃様に少し絞られました。」 セバスチャンはそう言うと、菓子が入った袋をシエルに手渡した。「どうぞ。」「ありがとう。」 シエルが袋を開けると、そこには動物の形をした色とりどりの茶菓子が並んでいた。「これは?」「王妃様のお誕生祝いに配られたお菓子ですよ。まぁ、王妃様がお亡くなりになられてしまったので・・」「王妃様を、殺したのか?お前の母親に汚名を着せた犯人なんだろう?」「わたしが王妃様を殺しました。しかし、わたしの母を死に追いやったのは、彼女ではありません。」「どういう事だ?」「わたしの母を陥れたのは、王妃様を操っていた者達ですよ。」「え?」「王妃様の死で、彼らは慌てるでしょう。」 セバスチャンはそう言って軽く咳払いした後、シエルが読んでいた本を見た。「おや、軍記物など読むなんて、珍しい。」「ここに偶々あったから読んでみただけだ。」「そうか、あやつが動き出したか?」「どうなさいます、旦那様?」「やはりあの男、“あの時”に殺しておけばよかった!」そう言った男は、悔しそうに唇を噛み締めた。にほんブログ村
2023年10月25日
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甘くて美味しかったです。芋の甘味がギュッと詰まっていました。
2023年10月23日
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素材は、黒獅様からお借りしました。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。一部暴力・残酷描写有りです、苦手な方はご注意ください。「ダガー、退くで!」「わかりましたよ!」ダガーは、そう言うと舌打ちして、シエルとエリザベスに背を向けて去っていった。「アラ、つまんないわね。」グレルがそう言って空を見上げると、東の空に太陽がまさに顔を出そうとしていた。(まずい!)「シエル、シエル!」「坊ちゃん!」セバスチャンがシエルの部屋に入ると、彼は窓から離れ、両手で顔を覆っていた。「坊ちゃん、しっかりして下さい!」セバスチャンは自分の上着をシエルに被せた。「大丈夫ですか!?」「セバス・・チャ・・」セバスチャンは太陽の光からシエルを守る為に彼の上に覆い被さったが、シエルはセバスチャンを突き飛ばした。「いつまでもひっつくな、気色悪い!」「坊ちゃん、太陽の光に当たっても平気なのですか?」「あぁ。奴らは?」「彼らは太陽が昇る前にここから去っていきました。彼らは太陽の光を浴びると死ぬそうです。」「そうか。じゃぁ何故、僕は死なないんだ?」「それは、わかりませんね。」シエルとセバスチャン、エリザベスは空き家から出て、街道を歩いた。「エリザベス様~!」「ポーラ、無事だったのね!」エリザベスはそう言うと、自分の侍女と抱き合った。「良かった、無事だったのね!」「エリザベス様もご無事で良かったです!」「お母様達は?」「皆さん、ご無事ですよ。」「良かった!」ポーラとエリザベスは、エリザベスの家族が居る南部へと向かう事になった。「シエル、元気でね!」「リジ―も、元気で。」南部へと向かう特急電車に乗る為、エリザベス達と駅で別れたセバスチャンとシエルは、避難民達でごった返すバスターミナルで、東部行きのバスを待っていた。「どうぞ。」「これは?」「近くの売店で買いました。あなた、昨日から何も食べていないのでしょう?」「ありがとう・・」シエルは、セバスチャンからスモークサーモンとクリームチーズのベーグルを受け取ると、かぶりつくようにそれを食べた。「おやおや、行儀が悪いですね。」「うるさい。」セバスチャンはシエルの口元をハンカチで拭うと、彼と共に東部行きのバスへと乗り込んだ。「ん・・」「東部に着くまで、ゆっくり休んで下さい。」避難民達が乗るバスとは違うバスに乗り込んだセバスチャンとシエルは、個室型の座席で疲れを癒していた。「ジェイド・・」「ふふ、強がっていても、まだお子様ですね。」セバスチャンはそう呟くと、眠るシエルの髪を撫でた。バスは夜通し走り続け、東部に到着したのは夜明け前の事だった。「これから、どうするんだ?」「まだ、決めていません。取り敢えず、休む場所を探しましょう。」「そうだな。」セバスチャンとシエルは、バスを降りて暫く東部の街を散策する事にした。「ホテルも決まりましたし、暫くこの街に滞在しましょう。」「あぁ。」逃亡生活を続けていた所為か、シエルはホテルのベッドに横になると泥のように眠ってしまった。「伯爵、久し振りだねぇ~」シエルが目を開けると、そこには自分を見つめる葬儀屋の姿があった。「どうして、ここがわかった?」「君の荷物に、GPSをつけていたのさぁ。小生にとって君は宝だからねぇ、あの悪魔に横取りされたくないんだ。」「失礼な方ですね。」セバスチャンはそう言うと、葬儀屋に向かってナイフを放ったが、それは壁に突き刺さった。「酷いねぇ、はるばるここまで来たっていうのに、お茶のひとつも出してくれないなんて酷いねぇ~」「セバスチャン・・」セバスチャンは渋面を浮かべた後、葬儀屋に紅茶を淹れた。「どうぞ。」「ティーパックでも、執事君が淹れた紅茶は美味しいね。」葬儀屋はそう言うと、黒いリュックサックからパウンドケーキを取り出した。「食べる?」「要らない。」「伯爵、そう言えばお兄さんが君に会いたがっていたよ。」「ジェイドが?」「あぁ。」葬儀屋はパウンドケーキを食べ終えると、シエルに一枚のメモを手渡した。「これ、小生の連絡先ね。いつでも電話してもいいよ。」「わかった。」「じゃぁねぇ~」葬儀屋は、嵐のように去っていった。「相変わらずおかしな奴だな・・」「ジェイド様っていうのは、あなたの双子のお兄様ですね?」「あぁ。」「会いたいですか、お兄様に?」「わからない・・」両親を亡くしてから、シエルはジェイドと二人で支え合いながら生きて来た。ジェイドと離れて時折恋しく思っているシエルだが、彼に会いたいかと言われたら、会いたいという即答は出来ない。何故なら―「坊ちゃん?」「済まない、ボーッとしていた。」「色々あって、疲れていたのでしょう。」セバスチャンがシエルの方を見ると、彼は溜息を吐いてベッドから起き上がった。「どちらへ?」「買い物だ。逃げるのに必死で、財布と携帯しか持って来ていないから・・」「坊ちゃんに何かあったら困りますから、わたしも行きますよ。」「・・好きにしろ。」初めて来る街だというのに、土地勘が無いセバスチャンは何故か大型複合商業施設の場所を地図無しで見つけた。「ここは、北部とは違って戦争中だとは思えない程平和だな。」ブランチを海沿いのカフェで取っていたシエルは、海岸で遊ぶ親子連れの姿を眺めた。毎日鬼と人間が殺し合いをし、焼夷弾の雨が降り注ぐ―それが、シエル達にとっての“日常”だった。だが、それ以外の“日常”の存在もあるのだという事に、シエルは今更気づいてしまった。学校へ行き、友人達と他愛のない話しをしたり、買い物を楽しんだり―そんな日常があるのだと。「坊ちゃん?」「ここにある光景が、“日常”になるまでどれ位の時間がかかるのだろうな?」「さぁ、それはわかりません。しかし、“希望”は必ずありますよ。」「そうか・・」「もう日が暮れますから、ホテルに戻りましょう。」「あぁ。」二人が東部の街で暮らしている頃、北部では鬼と人間達との戦いが激化していた。そんな中、ジェイドと葬儀屋は高級ホテル内にあるレストランで、ケルヴィン男爵と会っていた。「漸く会えて嬉しいよ。」「僕もです。」「あぁ、夢みたいだ!」「おっと、そこまでにしてくれないかなぁ。」興奮の余り、涎を垂らしながらジェイドに近づこうとするケルヴィン男爵を、葬儀屋は手で制した。「ねぇ、君の弟は、この街に戻って来ると思う?」「戻って来ますよ。」「その根拠は?」「あの子は僕の、世界で一番大切な僕の弟ですから。」「双子の絆、ね・・」にほんブログ村
2023年10月23日
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どの作品も読みごたえがあり、作品が発表された時代背景を想像しながら読みました。流石、アガサ・クリスティーといったところですね。
2023年10月22日
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温玉とチーズとの相性が抜群で、美味しかったです。少し寒くなって来たので、温かい飲み物や食べ物が恋しくなりますね。
2023年10月22日
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戦争で夫を喪い、息子と共に義理の両親と暮らすグウェンと、元スパイのアイリス。結婚相談所を営みながら、殺人事件の真相に迫るバディ物のミステリー。第二次世界大戦後のロンドンを舞台にしているだけあってか、当時の時代背景などが描かれていて面白かったです。
2023年10月21日
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スパイスと麺との相性が抜群で、皮つきポテトが美味しかったです。
2023年10月21日
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突如ネットに現れた「誘拐サイト」 。驚きの真相が明らかになり、犯人は闇の中に消えましたね。
2023年10月20日
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「PECEMEKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。ピスメでオメガバースパラレルです。α土方さん×Ω沖田さんという設定です。オメガバースに嫌悪感を抱かれている方は閲覧しないでください。「辰之進様、どうなさったのです、鼻歌などをお歌いになって・・」「いや、何でもない。」 上機嫌に鼻歌を歌いながら三味線を奏でる夫の姿を辰之進の妻・愛梨は訝し気に見ていた。「そうですか・・」 愛梨はそう言って自室に引き籠もると、溜息を吐いた。 辰之進と夫婦になって三年経つが、彼との間に子が授からないでいた。 愛梨と辰之進は、政略結婚で結ばれた。 Ωである愛梨は、幼い頃麻疹に罹り、その後遺症で子が授かりにくい身体になってしまった。 親族からは、“とんだ外れ嫁を貰ったものだ”と陰口を叩かれ、肩身が狭い思いをしていた。 そんな愛梨の事などを知らずに、辰之進は榮之助と共に毎日遊び歩いている。 榮之助は、愛梨の親戚筋に当たる少年で、Ωだった。 Ωが同じ屋根の下に二人居るのは珍しいようで、周囲から、“石女の嫁の代わりに側室代わりとして小姓を置いているのではないか”という根も葉もない噂話をしていた。「榮之助、お前にひとつ、聞きたい事があるの。」「聞きたい事?」「あなた、旦那様と・・」「辰之進様とは、番っておりません。」「そう・・最近、旦那様の機嫌が良いのだけれど、あなた何か知っていないかしら?」「そういえば・・」 榮之助は愛梨に、菓子屋で会った青年について話した。「そう・・」 総司は、その日巡察で洛中を歩いていた。(ん?) 背後から、何処か悪意を感じさせるような視線を浴びて振り向くと、そこには誰も居なかった。「沖田組長、どうかなさったんですか?」「いいえ、何でもありませんよ。」(確かに、感じたんだけれどなぁ・・) 屯所の中で素振りをしながら、総司はあの“視線”の事を考えていた。「総司、どうした?」「土方さん・・」「呼吸が少し乱れているぞ。巡察中、何かあったのか?」「はい、それが・・」 総司が歳三に、巡察中に感じた“視線”の事を話すと、彼は眉間に皺を寄せた。「そいつは人攫いかもしれねぇな。」「人攫い?」「最近、Ωの人攫いがこの辺りで出没しているんだとよ。」「物騒ですね。」「あぁ、だからお前も攫われないようにしろよ。」「大丈夫ですって!」 そんな事を歳三と話していた総司は、また次の日も“視線”を感じた。(また、だ・・)“視線”の正体が判らないまま総司が屯所に戻ると、その前に一人の青年が立っていた。「あなたは・・」「息災で何よりだ。」 青年はそう言うと、総司に微笑んだ。「どうして、ここがわかったんですか?」「君の匂いを辿って来た。」 彼は、総司を抱き締めると、その唇を塞いだ。「やめて・・」「漸く見つけた・・わたしだけの、“運命の番”。」「てめぇ、“俺の”総司に何をしていやがる?」 歳三は、そう言うと青年に刃を突きつけた。「そなた、あの時菓子屋に居た者だな?名を名乗れ。」「てめぇの方から名乗りやがれ。」「わたしは会津藩士・市原辰之進と申す。そなたは?」「壬生浪士組副長・土方歳三だ。総司からその汚い手を離しやがれ!」「土方さん・・」「そなた、この者の“番”か?」「だとしたら、どうした?」 歳三と青年は、暫くの間睨み合ったが、やがて青年は刀を鞘におさめた。「また会おう。」「変な野郎だ・・」 自分の前から立ち去ってゆく青年の背中を睨みつけた歳三が総司の方を見ると、彼は荒い呼吸をして苦しそうにしていた。「総司、どうした?」「土方さん・・」 歳三が総司に近づこうとした時、彼から噎せ返るような甘い匂いが漂って来た。「助・・けて・・」 総司は潤んだ目で歳三を見つめると、彼の胸に顔を埋めた。「今、助けてやる。」 歳三は総司を横抱きにすると、そのまま蔵へと向かった。(あいつ・・) 歳三の脳裏に、自分に対して挑発的な笑みを浮かべていた青年の顔を思い出した。 彼が、総司に対して何かを放ったのだろうか。 歳三は総司の“熱”を鎮める為、彼を抱いた。「土方、今まで何処に行っていた?」「あんたが知らなくてもいい事だ。」「ふん、生意気な口を利きおって。」 芹沢はそう言った後、鉄扇を歳三の頭上に振り翳した。「芹沢先生、こんな男放っておいて行きましょう。」「また、女の所か?」「貴様には関係のない事だ。行くぞ、新見。」「はい、先生!」(何とかしねぇとな。) その日の夜、Ωの娘が人攫いに遭い、数日後遺体となって発見された。 彼女の全身には、激しい拷問の痕があった。―これで三人目や。―恐ろしいわ。―はよ、犯人捕まえてくれへんやろうか。「いやぁね、こんな事件が続いたら、安心して町を歩けやしない。」「お嬢様・・」にほんブログ村
2023年10月20日
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ドラマが面白かったので、原作を図書館で借りて読んでみました。伊賀と甲賀の、敵同士の結婚。ラストが、希望に満ちたもので良かったです。
2023年10月20日
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悲しい復讐殺人事件でしたね。
2023年10月20日
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複雑に絡み合った殺人事件。一方的な恨みというものは恐ろしいですね。
2023年10月20日
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「ラプラスの魔女」の続編。最初から最後までページを捲る手が止まりませんでした。
2023年10月20日
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冒頭部分から引き込まれました。ユリアと共に、レーエンデで暮らしたような気分を味わいましたし、ファンタジーでありながらも国内の陰謀や伝染病罹患者への差別など、現実問題を描いた作品でもありました。現在三巻まで出ているので、続きは機会があれば読みたいと思います。
2023年10月20日
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今回の事件のなぞ解きも、読みごたえがありました。次回作が待ち遠しいです。
2023年10月20日
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クリスマスシーズンに現れた、謎の老人。その正体は・・読者のわたし達の想像に任せますというストーリーでした。
2023年10月19日
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味噌の濃厚な味わいとバターと麺との相性が抜群で美味しかったです。
2023年10月18日
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チョコが甘くて、ほろ苦いビスケットとの相性が抜群で美味しかったです。
2023年10月18日
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ミルクチョコレートが美味しかったです、ただサブレが歯の裏にひっついてしまうので、アルフォートは苺味かブラックチョコレート味の方が好きですね。
2023年10月17日
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ザクザクっとした食感で美味しかったです。少しペッパーが辛かったなぁ・・
2023年10月17日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」オメガバースパラレルです。作者様・出版社様とは一切関係ありません。オメガバース・二次創作が苦手な方はご注意ください。「お疲れ様です。」「お疲れ~」火月はアルバイト先のスーパーから出て、従業員用の駐輪場に停めてあった自転車に乗ってシェアハウスへと向かっている途中、一台の車が自分を尾行している事に気づいた。気味が悪いな―そう思いながら火月が自転車を漕いでいると、その車は一定の距離を取り、火月を尾行した。恐怖とパニックに陥った火月が闇雲に自転車を漕いで車から逃れようと脇道を抜けた時、彼女の前に一台のトラックが現れた。「バカ野郎!」あと少しでトラックに轢かれそうになった火月が我に返って背後を振り向くと、そこにはあの車の姿はなかった。「ただいま・・」「遅かったね、どうしたの?」「実は・・」シェアハウスに無事帰宅した火月は、禍蛇に車の事を話した。「え~、何それ怖い!最近変質者がここら辺に出没しているみたいだから、気をつけないとね。」「うん・・」「それにしても聞いた?Ω隔離政策、いよいよ本格的に進んでいるらしいよ。」「本当?」「嫌な世の中になったよね。」禍蛇はそう言うと、溜息を吐いた。「火月、バイト先では苛められていない?」「うん。バイト先の人は皆優しいよ。学校では、転校生に目をつけられて疲れるけど・・」「転校生?どんな奴?」「銀髪の、帰国子女って奴?何でも、理事長の親戚みたい。」「ふぅん。」禍蛇はそう言うと、鶏の唐揚げを口の中に放り込んだ。「何かさぁ、俺達Ωには人権ないって言われているような気がしてならないんだよね。俺さぁ、偶々俺達Ωに生まれただけだっていうのに、“居ない者”扱いされてさぁ・・」「わかる。」夕食後、火月と禍蛇が食べ終わった食器を流しで洗いながらそんな事を話していると、突然玄関のチャイムが鳴った。(こんな時間に、誰だろう?)火月が恐る恐るインターフォンの画面を覗き込むと、そこには自分を尾行していた一台の黒塗りの車が映っていた。「警察、呼ぼうか?」火月の怯える様子を見て何かを察した禍蛇がそう言うと、火月は無言で頷いた。『本当に、ここなの?』『間違いありません、お母様。』『待って・・あれ・・』車から出て来た親子と見られる三十代前半位と見られる男性と、五十代前半と思しき女性は、そんな会話を交わした後、遠くから見えるパトカーの赤色灯に気づいたのか、素早く車の中へと戻り、去っていった。「そうでしたか。最近物騒なので、パトロールを強化していきますね。」「お願いします。」通報を受けてシェアハウスに駆け付けて来た警察は、そう言って去っていった。「戸締りをしっかりしないとね。」「うん。」「お休み。」「お休み。」火月と禍蛇がそれぞれの部屋で眠りに就いた頃、一組の親子が都内某所にあるマンションの一室である事を話していた。「“あの子”には、会えなかったわね。」「お母様・・」「どんな手を使ってでも、“あの子”をこの家に取り戻さないと・・」『マザー、“お時間”です。』「わかりました、すぐ行きます。」「お母様、気を付けて。」激しい雷鳴と共に、部屋が闇一色に包まれた。(停電か・・)有匡は舌打ちすると、懐中電灯のスイッチを入れ、読んでいた週刊誌の記事に目を通した。そこには、ある新興宗教団体が起こしたリンチ殺人事件についての、凄惨な内容が書かれていた。(“輝く星”か・・確か、数年前に何処かでこの団体を見たような気がするな。)有匡は記憶の糸を手繰り寄せながら、“ある出来事”を思い出そうとしたが、いつの間にか眠ってしまった。雷鳴が轟く中、森の中にある白亜の宮殿で、“儀式”が行われた。「さぁ、祈りなさい。」祭壇の中央には、心臓を抉り出され絶命している少年の遺体があった。「さぁ!」雷鳴が轟き、それに呼応するかのように信者たちが一定のリズムで祈り始めた。「マザー!」「マザー!」信者達に崇められ、彼らに“施し”を授けている女性は、神域“輝く星”の代表である、高原鈴子である。「さぁ、祈りなさい。祈ればあなた方は救われるのです!」―オォォッ!宮殿内は、異様な熱気に包まれていた。―お父さん、お母さんは何処に行ったの?―有匡、これからはお父さんと一緒に暗そうね。幼い頃、母が家から出て行った後、父はそう言って自分を抱き締めた。―お父さんは・・だから・・時折、父の言葉が、一部ノイズが入り聞こえなくなってしまう。(一体、これは・・父は、わたしに何を伝えようとしているんだ?)「土御門先生、少しやつれた顔をしていますね?大丈夫ですか?」「昨夜、中々寝付けなくて・・」職員室で有匡が自分の机で仕事をしていると、同僚の女性教師がそう言って有匡を見つめて来た。「寝不足は身体に良くないですよ?」「そうですね、気をつけます。」有匡はそう言った後、仕事を再開した。「はぁ・・」火月は、図書館で何度目かの溜息を吐いた。麗がいつも火月の姿を見ると何かと絡んで来るので、火月は教室には行かずに、図書館に避難していたのだった。図書館には、火月のようにΩの生徒が居て、火月はすぐさま彼らと親しくなった。「高原さん、シェアハウスに住んでいるの?」「うん。それまで、施設で暮らしていたんだ。」「へぇ、そうなの。Ωでも住めるシェアハウスってあるんだ。」「Ωっていうだけで、門前払いする不動産屋が多いからね。」昼休み、火月達が中庭で昼食を取っていると、そこへ麗がやって来た。「高原さん、この子達は?」「あなたには関係ないでしょう。」「おやおや、冷たいねぇ。」麗はそう言ってわざと口笛を吹くと、去っていった。「気にしなくてもいいわよ、あんなの。」「九条君って、わたし苦手。」「わたしも。」有匡は中庭での光景を廊下で見ながら、口元に笑みを浮かべた。「先生、どうされました?」「いいえ、何でもありません。」「早くしないと、職員会議に遅れますよ。」「はい・・」職員室に入った有匡は、自分の席に暁人の姿がある事に気づいた。「理事長、わたしの机で何をしているのですか?」「いえ、ちょっと汚れを取ろうと思いまして・・」暁人は少しバツの悪そうな顔をすると、有匡の机から離れた。(何だったんだ・・)「皆さん、揃いましたね。では、職員会議を始めます。」「理事長、手短に終わらせましょう。」「そうですね。今回皆さんに集まって貰ったのは、Ω隔離政策についてです。」暁人はそう言うと、有匡達に書類を渡した。「Ωについてのアンケート?」「この学校には、αやβの生徒が多く、Ωの生徒は少数派です。なので、Ωについての意識調査のアンケートを・・」「そのアンケートを全校生徒に取って、どうなさるおつもりなのですか?」「そ、それは・・」「もしかして、バース性の差別解消の為だとお思いになっているのなら、それは大間違いです。」有匡がそう言って暁人を睨むと、彼は顔を赤くして俯いた。「先生方、期末テストがもうすぐ行われますので、カンニング対策や試験問題の漏洩対策を万全にして下さいね。」職員会議は滞りなく終わった。「それにしても、理事長は一体何を考えているのかしら?」「本当ですよ、あんなアンケート、何の意味もありませんよ。」「そうそう、今は期末テストへの対策をしなければ。」「高田先生、聞きました?最近、“輝く星”が復活したそうですよ。」「“輝きの星”?何です、それは?」「高田先生は、若いから知りませんよね。今から三年前、凄惨なリンチ殺人事件が起きたでしょう?その事件を起こしたのが、“輝く星”なんです。」「そういえば、この前駅前で集会を開いていた人達を見ましたけれど、みんな赤い服を着て不気味でした。」「その人達が、“輝く星”の団員達だよ。赤は、教団のシンボルカラーなんだってさ。」「へぇ・・」「ここだけの話だけど、理事長が“輝く星”の信者みたいだよ。」「え~!」そんな噂が学内を飛び交う中、有匡達は期末テストを迎えた。「ただいま・・」「お帰り。テスト、どうだった?」「何とか、出来たかも。禍蛇は?」「微妙。数学は出来た方かなぁ。」「今日は疲れたから、もう寝るね。」「お休み。」期末テストが無事終わり、火月は安堵の溜息を吐きながら自転車を漕いでいると、一台のワゴン車が近づいて来た。「見つけた!」「聖女様だ!」ワゴン車から出て来たのは、鮮やかな赤い服を着た数人の男女だった。火月は助けを呼ぼうとしたが、口に薬品が染み込んだハンカチを押し当てられ、意識を失った。「火月、遅いな・・」「もうバイトが終わった頃よね?火月ちゃんのスマホにかけてみたら?」「うん・・」禍蛇は火月のスマホに何度もかけたが、繋がらなかった。「繋がらない・・」「警察に行きましょう、手遅れになる前に!」(火月、どうか無事でいて!)「暁人様、“彼女”を捕えました。」「そうか。」「“彼”は、どうなさいますか?」「それはわたしに任せて下さい。」暁人はそう言った後、口端を上げて笑った。(誰だ、こんな時間に?)自宅で仕事をしていた有匡は、知らない番号がスマホに表示され、詐欺電話だと思いながらも、通話ボタンを押した。「もしもし・・」『あぁ、やっと繋がった!あんたが有匡!?』「誰?」電話を掛けて来た相手は、火月の親友だという。彼女の話によると、火月がアルバイト先のスーパーから未だにシェアハウスに帰宅していないという。『あんた、火月が何処に居るのか知っているよね!?』「知る訳がないだろう。どうしてわたしのスマホの番号がわかったんだ?」『火月が、自分に何かあったらあんたにかけるようにって、俺に教えてくれたんだよ。』「警察には連絡したのか?」『もうとっくにしているよ!』「わかった。わたしも火月を捜してみる。」有匡はそう言うと、車で火月のバイト先へと向かった。「あぁ、彼女なら三時間前に帰りましたよ。」「そうですか・・」「そういえば、以前彼女の事をしつこく尋ねて来た人が居ましてね。」「どんな人でした?」「赤い服を着た、女の人ですよ。髪はお団子にしていて、高そうな眼鏡を掛けていました。」(赤い服・・)ゾワリと、有匡は嫌な“何か”を感じた。「あ、名刺貰いましたよ。」スーパーの店長は、そう言うと一枚の名刺を有匡に手渡した。そこには、“輝く星・代表 高原鈴子”と印刷されていた。「ありがとうございました。」「いえいえ、彼女、早く見つかるといいですね。」「え、えぇ・・」店長の言葉に微かな違和感を抱きながら、有匡は人気のない道を車で走っていた。すると、脇道に一台の自転車が倒れている事に気づいた。(これは・・)車から降りた有匡は、スマホで自転車の写真を撮り、それを禍蛇のスマホに送った。『火月の自転車だよ。』何故火月の自転車がここにあるのか―有匡は、スーパーの店長の話を思い出しながら、火月が何者かに拉致されたのだろうと考えた。(一体、彼女は何処に・・)「あのう、すいません・・」突然背後から声を掛けられ、有匡が振り向くと、そこには赤いワンピースを着た女が立っていた。「A町には、どう行けばいいのでしょう?」「あぁ、A町には、その先の交差点を右に曲がって・・」有匡は女性に道案内をしていると、突然首筋に激痛が走り、意識を失った。―有匡、ごらん、あれが、“聖女”様よ。幼い頃、母に連れられた白亜の宮殿で、有匡は子を抱いている“聖女”を見た。―あの方に抱かれているのが、希望の子よ。母は、“輝く星”の信者だった。彼女は土御門家の財産を、教団に献金する為に食い潰していた。だから―「う・・」「お目覚めになられましたか、“聖女”様?」火月がゆっくりと目を開けると、そこは白一色の世界だった。「ここは・・」「ここは、“聖域”。」火月が部屋の中を見渡すと、壁には一人の女性の肖像画が掛けられていた。女性は、自分と瓜二つの顔をしていた。(お母・・さん・・?)同じ頃、有匡は手枷と足枷をつけられた状態で目を覚ました。「アダム様・・」部屋の中に、あの赤いワンピースの女性が入って来た。「どうか、お情けを・・」彼女はそう言った後、徐にワンピースを脱いで裸になった。にほんブログ村
2023年10月15日
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濃厚で美味しかったです。こういった甘いケーキを食べるのは久しぶりです。コーヒーによく合います。
2023年10月15日
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素材は、てんぱる様からお借りしました。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。※シエルが女装しています、苦手な方はご注意ください。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。「ん・・」「おはようございます。」「うわぁ!」 シエルは眠い目を擦りながら自分の隣にセバスチャンが寝ている事に気づいた。「そんなに驚かなくてもいいでしょう?」 セバスチャンはそう言って呆れ顔でシエルを見た。「旦那様、起きていらっしゃいますか?」「えぇ、起きてますよ。こんな朝早くに一体何の用です?」「それが、世子様から文が届きました。」「そうですか。」 奴婢から異母兄からの文を受け取ったセバスチャンは、それに目を通した後、渋面を浮かべた。「僕が、宮女に?」「ええ。」「宮廷とは、どんな所だ?」「伏魔殿ですよ。」「伏魔殿?」「ええ。あそこには、厄介な魔物が棲んでいるのですよ。」「厄介な魔物、ねぇ・・」 シエルは、そう言いながら溜息を吐いた。「どうしたのです、不安なのですか?」「もしかしたら、宮廷に僕の家族を殺した仇が居るかもしれない。そう思うと・・」「あなたは、家族の仇を討とうと今日まで生きて来たのでしょう?もう覚悟はお決めになられたとばかり・・」「覚悟・・」「シエル、あなたが殺された家族の仇を討つという思いが今も変わっていないのなら、わたしはあなたの復讐に力を貸しましょう。」「わかった。」 セバスチャンはシエルが世話になっている妓楼へ文を出した。「行首様、大変です!」「何だい、天地がひっくり返ったかのように大騒ぎして。」「シエルが、宮女に・・」「何だって!?」 シエルの養母は、シエルが宮女となる為の教育を受けさせたいので、暫く自分の元でシエルを預からせて欲しいという旨のセバスチャンからの文を読んだ後、気絶しそうになった。「あの子が宮女なんて、勤まるのかねぇ?」「さぁ、こればかりは天頼みだねぇ。」 行首はそう言った後、天を仰いだ。「全問正解です。科挙の試験問題を難なく解けるとは、あなた中々やりますね。」 セバスチャンはシエルをそう褒めた後、ボロボロの布切れを見た。「“あれ”は何です?」「雑巾だが?」「あなたに料理と裁縫の才能が壊滅的にないという事がわかりました。これからわたしが徹底的に教えなければならないようですね・・」 セバスチャンはそう言って溜息を吐いた。「行首様、お世話になりました。」「まさかあんたが宮女になるなんてねぇ。ミカエリス様の言う事をちゃんと聞くんだよ。」「はい。」「あぁ、これをあんたに。」 行首は別れ際に、シエルにある物を手渡した。 それは、蒼い宝玉がついた簪だった。「これは・・」「あんたの家令が、あたしに渡してくれたんだ。いつかあんたが、ここから出て行くときに渡してくれってね。」「タナカが・・」 シエルの脳裏に、妓楼で自分と再会した時の老家令の笑顔が浮かんだ。「これは、あんたのお母さんの形見なんだってね。」「お母様の・・」「身体には気を付けるんだよ。」「はい。」 シエルは、三年間暮らした妓楼を後にした。「さてと、宮廷にあなたが入るまでまだ時間がありますからね。わたしがあなたを一から厳しく躾けますので、覚悟して下さいね。」「望むところだ。」 こうしてシエルは宮廷入りする日までセバスチャンに礼儀作法などを叩き込まれた。「料理と裁縫も少しはマシになりましたね。」 セバスチャンはシエルの髪を梳きながら、そう言うと溜息を吐いた。「シエル、これから一人で身の回りの世話が出来ますか?」「馬鹿にするな。」「冗談ですよ。」 そして遂に、シエルが宮廷入りする日が来た。「シエル、良く似合っていますよ。」「そうか?」 シエルが着ているのは、淡赤色の上着と藍色のチマだった。「まぁ、あなたの髪色に映えますね。」 セバスチャンはそう言うと、シエルに髪飾りを見せた。「それは?」「女官は王妃様や側室様のように派手な髪飾りや簪をつけてはいけませんが、この程度の物なら大丈夫でしょう。」「ありがとう。」 小さな蒼い石が刺繍された紅い髪飾りをシエルの髪に結びながら、セバスチャンはこれからシエルに待ち受ける運命を思い、溜息を吐いた。「どうした?」「いえ、何でもありません。」 セバスチャンは、シエルを連れて王宮へと向かった。「セバスチャン、良く来たな。その子が、シエルか?」 王宮に入ったセバスチャンとシエルは、女官達を引き連れた大妃と会った。「媽媽、お初にお目にかかります、シエルと申します。」「ほぉ、幼いながらも良く礼儀を心得ておる。お前の教育の賜物か?」「はい。」「シエルよ、そなたは妾の元で働くが良い。」「ありがたき幸せにございます。」 こうしてシエルは、大妃の下で宮女として働く事になった。「そうか、シエルが大妃様付きの女官に・・」「これからどうなさいますか、世子様?」「それは、あいつ次第だ。」 ヒョンジャは、そう言うと美味そうに酒を飲んだ。 宮女として働く事になったシエルだったが、朝から晩まで忙しく王宮内を走り回り、一日が終わると泥のように眠っていた。 そんな中、シエルは大妃に呼び出され、彼女が居る宮殿へと向かうと、そこにはヒョンジャの姿があった。「世子様・・」「かしこまらずともよい。近う寄れ。」「は、はい・・」 シエルがヒョンジャの隣に座ると、彼はシエルを自分の膝上に座らせようとしたが、大妃に止められた。「おやめなさい、シエルが怖がっているだろう。」「申し訳ありません。」「そなたがこの者を宮女にしたいと王様に申し出たのは、何故だ?」「それは、この者をわたしの側室にする為です。」「年端のゆかぬ娘を側室にするだと?そなた、気でも狂っているのか!?」「落ち着いて下さい大妃様、今すぐこの者を側室に迎えると思っていません。」「そうか。シエル、そなたはどう思っておる?」「わたしは・・」「大妃様、世子様もいらっしゃるとは思ってもいませんでした。」 氷のような冷たい声と共に、セバスチャンが部屋に入って来た。「セバスチャン、そなたも来たのか。」「大妃様、シエルの働きぶりはどうですか?」「良く働いてくれておる。」「そうですか、それは良かった。それよりも世子様、先程のお話、本当なのですか?」「何の話だ?」「とぼけないで下さい。シエルを側室になさろうと大妃様におっしゃっていたではありませんか?わたしは認めませんよ。」「そなたが決める事ではない。」 ヒョンジャとセバスチャンの間に、静かな火花が散った。「セバスチャン・・」「シエル、少し疲れているようですね?目の下に隈が出来ていますよ。」 セバスチャンはそう言うと、そっとシエルを抱き上げた。「申し訳ありませんが、シエルをわたしの部屋で休ませます。」「そうか。」 セバスチャンがシエルを連れて向かった先は、王宮から少し離れた宮殿だった。 長年放置されているようで、雑草が生い茂り、宮殿の柱や扉の漆喰が所々剥がれ落ちている。 だが、内装は荒れた外観とは対照的に、清潔で調度品も立派な物ばかりが並んでいた。「ここには、お前一人しか居ないのか?」「ええ。大抵の事は全てわたし一人で出来ますからね。それに、わたしは側室の子ですから・・」「側室の子?お前、王族なんだろう?それなのに・・」「どうして、このような所に住んでいるのかって?わたしの母、王の側室は、この国を混乱に陥れた悪女だからですよ。」 セバスチャンは、シエルに自分の生い立ち話を聞かせた。 セバスチャンの母は、都で名妓と謳われた妓生だった。 その美貌と才覚に、王は惚れ込み、彼女を側室にした。 だがそれを快く思わなかったのは、ヒョンジャの母―王妃・ミョン氏だった。 ミョン氏はセバスチャンの母を卑劣な罠で陥れ、彼女は悪女の汚名を着せられ、獄死した。「わたしが王宮に居るのは、真実を明らかにする為です。」 そう言ったセバスチャンの瞳に、迷いはなかった。にほんブログ村
2023年10月13日
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甘さ控えめで美味しかったです。
2023年10月11日
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素材は、てんぱる様からお借りしました。「黒執事」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。※シエルが女装しています、苦手な方はご注意ください。男性妊娠要素あり、苦手な方はご注意ください。 とある両班の邸で、盛大な宴が開かれていた。 そこには沢山の料理や酒、そして宴席に華を添える妓生達の姿があった。「はは、こんなに美女揃いだと、宴が終わってしまうのが惜しいなぁ。」「まぁ、旦那様ったら!」 噎(む)せ返るような白粉の匂いに、セバスチャン=ミカエリスは吐きそうだったが、上役の機嫌を損ねる訳にはいかない。 セバスチャンが酒を飲んでいると、少女達の群舞が始まった。 皆揃いの韓服を着て、短刀を持って舞っている姿は、可愛らしかった。「あの子達は?」「うちの童妓(トンギ:見習い)達ですよ。」 暫くすると、少女達の中から一人の少女が出て来た。 濃紺のチマに、真紅のチョゴリといった地味な色合いの物だったが、それらを着ている少女は、とても美しかった。 蒼銀色の髪と、雪のように白い肌。 そして何よりセバスチャンを魅了したのは、美しい蒼の瞳だった。「あの子も、童妓ですか?」「ええ。水揚げ前ですが、音曲も書画も他の子より抜きん出ていてね、行首様もあの子には一目置いているんですよ。何でも、元は両班の娘だったとか。」「へぇ・・」 セバスチャンは舞を披露していた少女から暫く目を離せなくなった。「あの子を、お気に召しましたか?」「えぇ。」「では、あの子だけ旦那様のお部屋へお連れします。」 宴が終わり、妓生達はそれぞれ“仕事”の為に客と用意された部屋へと引き上げていった。 セバスチャンは、今自分の前に座っている少女を見つめていた。 少女は、濃紺のチマを握り締めながら震えていた。「そんなに怯えなくてもいいのですよ。」「あの・・」「どうして、あなたのような子が、妓楼に居るのです?男児は、童妓ではなく使用人になっている筈でしょう?」「一体、いつから・・」「最初から気づいていましたよ。」 セバスチャンはそう言うと少女、もとい少年の右目を覆っている眼帯に気づいた。「右目は、どうなさったのです?」「これは・・」「失礼。」 セバスチャンが少年の右目を覆う眼帯を外すと、その下には美しい朝焼けを思わせるかのような紫の瞳が現れた。「これは、生まれつきですか?」「はい。」「そういえば、まだあなたのお名前を聞いていませんでしたね。わたしは、セバスチャン=ミカエリスと申します。」「シエル=ファントムハイヴと申します。」「シエル、あなたはこれからどうしたいのですか?」「わからない。ただ、僕は自分の家族を殺した奴に復讐したい。」 シエルは、三年前自分と、自分の家族の身に起きた悲劇の事をセバスチャンに話した。 三年前― その日、シエルは風邪をひいて、母屋から少し離れた自室で寝ていた。「お父様、お母様?」 喉の渇きを覚えたシエルが母屋に入ると、中は不気味な程静まり返っていた。 足元に何か濡れたような感触がして、それが両親と双子の兄の血である事に気づいたシエルは、悲鳴を上げた。 その直後、何者かに拉致され、陵辱された後、シエルは妓楼の前に捨てられた。 本来男児は妓楼には不要で、せいぜい使用人か用心棒にしかなれないのだが、行首がシエルの美貌と聡明さに目をつけ、彼を童妓にした。 稽古や雑務の合間に、シエルは自分の家族を殺した犯人を捜し始め、それがある王族だと気づいた。 その王族に近づく為には、王宮で宮女として働く事が一番の近道なのだが、妓生として王族に近づき、情報を集める方がいいとシエルは考えたのだ。「そうですか。では、わたしがあなたの力になりましょう。わたしはこれでも、両班なので、王族の事には詳しいのですよ。」「そうか。では僕に協力してくれるな、セバスチャン?」「ええ。でも、わたしがあなたに協力する代わりに、ある物を要求します。」「ある物?」「それは・・」 セバスチャンがシエルの耳元で何かを囁くと、シエルは頬を赤く染めた。「そんな事・・」「出来ないと?ならば、あなたには復讐を諦めた方が良いですね。」「嫌だ、僕は・・」「もう後にはひけないのでしょう?ならば、わたしに身を委ねなさい。」 セバスチャンはそう言うと、シエルを褥の上に寝かせた。 唇を塞ぐと、シエルは身を捩って暴れたが、セバスチャンの鍛え上げられた身体はビクともしなかった。「嫌だ、あぁっ」「おやおや、胸を触られただけで感じるとは、この先が思いやられますね。」「おい、どこを触って・・」「旦那様、いらっしゃいますか?」「何ですか?」 セバスチャンは、シエルのチマの乱れた裾を直し、部屋から出て廊下に居る奴婢を睨みつけた。「旦那様に、お会いしたいという方が・・」「こんな夜更けに、一体誰です?」「久しいな、セバスチャン。」 そう言いながらセバスチャンの前に現れたのは、彼の異母兄・ヒョンジャだった。「一体こんな夜更けに、わたしに何の用があるのです?わたしは今、“お楽しみ中”なのですよ。」「それは失礼。では、明日出直すとしようか。」 ヒョンジャはそう言った後、そっと部屋の中を覗き見て、シエルの存在に気づいた。「可愛いな、お前?名は?」「シエルと申します。」「セバスチャン、この娘を妓楼に埋もれさせるには惜しい。シエル、そなた宮女になるつもりはないか?」「え・・」 シエルは、ヒョンジャの言葉に思わず部屋から出てしまった。「わたしと共に来い。」「そうはいきませんよ。」 セバスチャンはそう言うと、ヒョンジャの腕の中からシエルを奪い返した。「また会おうぞ、シエル。」「あの方は、一体・・」「あの方は、ヒョンジャ様・・わたしの不倶戴天の敵ですよ。」 セバスチャンはそう言うと、シエルを押し倒した。「さぁ、続きを致しましょう。」「やめろ、あっ・・」 セバスチャンは、己の胸に顔を埋めるシエルの髪を優しく梳いた。「失礼致します、父上。」「こんな朝早くからどうした、ヒョンジャ?」「ある者を、宮女にしたいのです。その者の名は、シエル=ファントムハイヴ。」「わかった。」にほんブログ村
2023年10月09日
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クローズドミステリーとしては、弱かったかなあ。真相もあっけないし、微妙なおわりかたでした。やや駆け足気味で読んでしまった所為なのかな、次回はじっくり読みたいと思います。
2023年10月08日
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ピリ辛で、しつこくなくて美味しかったです。
2023年10月08日
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自分を捨て、認知症となった母と、共に暮らす事になった千鶴。「親子とは?」を、読者に問い掛ける作品でもありました。血が繋がっているからこそ、厄介な関係なのかもしれませんね、親子って。宇多田ヒカルさんの「親だって人間じゃん」という言葉が読んでいる間思い出しました。
2023年10月06日
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今回も読みごたえがありました。
2023年10月06日
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原作は何度も読み返しましたが、映画はCS放送で初めて観ました。最初の、夢に向かって邁進する佐織の姿、そして理不尽に奪われたその命のための復讐。捜査しても犯人を送検できなかった草薙の悔恨が原作よりも巧みに描写されていて、湯川さんと対峙するシーンは胸にズシンときました。ガリレオシリーズは、後味が悪い結末が多いですが、この作品には復讐せざるおえない人達に同情してしまいます。佐織の恋人の肩に、蝶が止まるシーンに、胸がジーンときました。
2023年10月06日
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今回も大活躍の木曜殺人クラブ。ある女性キャスターの失踪事件の真相は闇に包まれましたが、やはり今回の話も面白かったです。
2023年10月04日
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和風ファンタジー物。四巻まで出ていて完結しているので、面白そうだから全巻機会があったら読んでみようと思います。それよりも、「人と違う」ことで家族から蔑ろにされたり世間から差別され迫害されたりするのは、人間も妖も変わらないかもしれませんね。
2023年10月04日
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向島で生きる芸者たちに降りかかる事件を、持ち前の着物愛で推理する暎子。彼女と実父との軋轢が解消する日が来るのかどうかわかりませんが、冬真との関係もこれから気になりますね。暎子が向島で生きる意志を固めたシーンを読んで、思わず彼女にエールを送りたくなりました。読んでいて、着物の事をもっと知りたくなりました。
2023年10月04日
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母の入院、父の不倫と出奔に翻弄されながらも懸命に生きる彩乃。事件の真相は衝撃的なものでしたが、彩乃の活躍に期待します。
2023年10月03日
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人の闇を祓う仕事人の話。闇を抱えている人はどこにでもいますよね。
2023年10月03日
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食べごたえがあって美味しかったです。
2023年10月03日
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体の悪いところを治してくれる不思議な「カバヒコ」。様々な人達の願いがあるのですが、それを完全に治してくれるというよりも、その人達が抱える悩みを解決してくれるような手助けを「カバヒコ」はしているんじゃないかなと思いました。
2023年10月02日
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食べごたえがあって、美味しかったです。
2023年10月02日
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キキとトンボさんの子供、ニニとトトの旅立ち。子供達の成長と旅立ちを読めて、満足でした。
2023年10月01日
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結ばれたキキとトンボさん。次巻で完結…寂しいですね。
2023年10月01日
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すれ違うトンボさんとキキ。二人の思いが通じあってよかったです。
2023年10月01日
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トンボさんへの想いに気づくキキ。さて、これからどうなるのでしょうか?
2023年10月01日
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