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「相棒」二次小説です。出演者様·制作会社様·放送局様とは一切関係ありません。両性具有・男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。「尊は、まだ戻らぬと?」「はい、申し訳ありませぬ・・」「そうか・・」妖狐界の都にある王宮で、尊の母・梓はそう言って尊の乳母である葛葉を見た。「あの子の強情さ、一体誰に似たのやら。陰陽師などに恋をしたら、辛い目に遭うのはあの子だというのに・・」尊が、あの人間と出会い、恋に落ちたのは、今から千年前の事だった。その人間は、妖の天敵である陰陽師だった。帝を惑わし、殺そうとしていた尊が瀕死の重傷を負い、京の街を彷徨っているところを、その陰陽師に救われたのだ。その日から、尊はその陰陽師と暮らすようになり、やがて尊は陰陽師の子を産んだ。幸せな日々は長く続かず、陰陽師は帝が放った追手の攻撃を胸に受け、最愛の尊の腕の中で亡くなってしまう。死の間際、陰陽師は尊とひとつの約束を交わす。それは、“いつか生まれ変わったら、またお前を愛してやる”というものだった。その約束だけを信じて、尊は千年彼を想い続けた。だが―「肝心の陰陽師が、その約束を忘れたとはな。」「人の想いなど移ろいやすいものだというのに・・」「梓様、大変でございます!」「どうした?」「それが、那智様が尊様に会わせろとこちらに突然押しかけて来て・・」「またか。」梓は、深い溜息を吐いて衣擦れの音を立てながら自室から出て、客人が待つ寝殿へと向かった。「遅かったな。」「申し訳ございませぬ。急にいらっしゃるならいらっしゃると文を寄越して下されば、おもてなし出来ましたのに・・」いきなり訪ねて来るな、無礼だと遠回しにそう那智を非難した梓は、愛想笑いを浮かべながら彼を見た。「尊は何処に?」「あの子なら、何処をほっつき歩いているのやら・・」「嘘を吐くな!あの、忌々しい人間の元へと行っているのだろう!」「何故、それがおわかりになられたのです?」「俺の目は節穴ではないぞ。尊が千年前から誰を想っておるのかを、知っておる!」「ならば、話が早いですね。那智様、尊を人間界から連れ戻して下さいませ。」「あいわかった。」梓と那智がそんな話をしている頃、尊は漸く泣き止むと、眼鏡を掛けて立ち上がった。「どちらへ?」「隣だよ。長い間留守にしていたら、上司がうるさいから。」「そうですか。」「お前はついて来なくていいよ。」尊はそう言って歩き出したが、守が自分の後をついて来ている気配を感じ、イライラした。「守、僕はもう子供じゃないから、いちいちついて来なくていいから!」「申し訳ございません、昔の癖で・・」尊と彼の乳兄弟・守が廊下で言い争っていると、そこへ般若顔の男がやって来た。「おやおやこれは、誰かと思ったら、警察庁のソン警視様じゃありませんか!?」「たけるです。伊丹さん、何かあったんですか?」「三日前に銀座のホステスが殺されて、現場で被害者の元交際相手が居たそうで、今からそいつを引っ張っていくところです。」「へぇ~、そうなんですかぁ~」「ついて来ないで下さいよ。」「そんな事しませんよ。」そう言った尊の顔は、何処か楽しそうだった。「じゃ、俺はこれで失礼します。」「は~い。」伊丹が去った後、尊はじっと守を見た。「いけませんよ、尊様。」「僕、何も言ってないけど?」「あなた様が考えていらっしゃる事は、手に取るようにわかります。」守は美しく磨き上げられたかのような翡翠の瞳を尊に向けながらそう言うと、彼は拗ねたような顔をした。「大丈夫、伊丹さん達に見つからないようにすればいいんだし。」「そういう問題ですかね。」半ば呆れたような顔をした守を廊下に置き去りにして、尊は伊丹の後をこっそりと尾行した。「警察だ!」「畜生!」銀座のホステス殺しの元交際相手は、伊丹達の顔を見るなり、脱兎の如く逃げ出した。「芹沢、向こうへ回れ!」「はいっ!」容疑者の元交際相手―鈴木は、息を切らしながら雑踏の中へと逃げ込んだ。(クソッ、何でこんな日に・・)“話したい事がある”と部屋に呼び出された鈴木は、そこで元恋人の変わり果てた姿を見てしまった。「俺は、誰も殺してなんかないのにっ!」「逃げるから、疑われるんでしょう?だったら、本当の事を話した方がいいですよ。」鈴木の前に、切れ長の瞳をした美人が現れた。細身のブランド物のスーツに身を包み、切れ長の瞳を自分に向けた男は、鈴木に警察手帳を見せた。「ど~も、警察です。」「クソッ!」「コラァ、待てぇ~!」「退け~!」鈴木は護身用のバタフライナイフを取り出し、その刃先を尊の首元に翳した。「動くなっ、動いたらこいつを殺すっ!」「ソン、何でここにっ!?」「すいませ~ん、皆さんに気づかれないように後をつけていたんですけど、バレちゃったみたいです~」「ナイフ突き付けられてんのに舌を出して可愛い顔をするんじゃねぇ、調子狂うだろうがっ!」「ごめんなさ~い。」「てめぇ、ゴチャゴチャうるせぇなっ!」鈴木はイライラして尊を睨んで彼を傷つけようとしたが、尊は鈴木の鳩尾を肘打ちし、彼が体勢を崩して呻いたところに強烈な回し蹴り彼に喰らわせた。「こんなオモチャ、振り回したら危ないよ。」「は、はい・・」鈴木は呆けたような表情を浮かべながら尊を見ていた。「芹沢さん、怖かったです~」「なぁにが、“怖かったです”だ!いきなりか弱い振りをするんじゃねぇっ!」「え~、酷~い~」尊がそんな事を言いながら伊丹にしなだれかかった時、下腹に鈍痛が走った。「おい、どうした?」「何でもありません・・」何とかその場を凌ごうとして伊丹に向かって愛想笑いを浮かべていた尊だったが、ドロリとしたものが太腿を伝う感触がして、思わず眉間に皺を寄せた。(最悪・・)「ズボン、汚れてんぞ?何処か怪我してんのか?」「大丈夫です・・」「尊様!」守がトレンチコートの裾をはためかせながら尊の元へと向かうと、彼は路地裏で苦しそうに下腹を押さえながら息を吐いていた。「このような所に居ては、お風邪を召されます。」守はそう言いながら、尊に自分のトレンチコートを羽織らせた。「大丈夫、自分で歩けるよ。」「なりません。」意地を張って自分で歩こうとする尊を制した守は、彼の身体を横抱きにした。「やめて、おろして!」「これで、わたし達は失礼致します。」「お、おぅ・・」突然の出来事に呆気に取られた伊丹達は、お姫様抱っこをされた尊を見送る事しか出来なかった。「先輩、誰っすか、あのイケメン?」「知るかよ、馬鹿!」「もう、信じられない、馬鹿っ!」「尊様、落ち着いて下さい。」「うるさいっ!」伊丹達と別れた後、尊は守に連れられたデパートの紳士服コーナーの試着室で真新しいスーツに着替えていた。「何であんな事をしたの!?」「尊様、あなた様の月のものの処置をするのは、わたくしの役目です。」「うるさいっ!」着替えを終えた尊は、守を睨みつけるとデパートの地下駐車場へと向かった。「お待ち下さい、尊様!」白のGT-Rの運転席に乗り込もうとした尊を、守は慌てて止めた。「離せよっ!」「自棄を起こしてはなりませんっ!」「どうして・・俺だけが、こんな身体なんだ・・男でも女でもない両性体(はにわり)になんて、産まれたくなかったっ!」「尊様・・」感情を吐露し、涙を流す主の背中を、守は優しく擦る事しか出来なかった。尊は、両性体として生を享けた。妖狐、特に王家の血をひく九尾の狐の一族に両性体の妖狐が産まれた事は、非常に稀な事であった。梓は産後の肥立ちが悪く、尊に乳を与える事を拒んだので、守の母であり尊の乳母である葛葉が彼を育てる事になった。尊と守は、実の兄弟同然に育った。守は尊の事を、年の離れた弟のように可愛がっていた。そんなある日の事、なかなか起きて来ない尊を案じた守が彼の部屋に入ると、褥の中に包まって泣いている尊の姿に気づいた。「尊様・・」「血が止まらない・・死んじゃう・・」守は、尊の夜着と敷布が赤く染まっている事に気づくと、すぐに女房達を呼んだ。「なに、それはまことか?」「はい、薬師が尊様を診ましたので、確かかと・・」「そうか。ならばあの子に良縁を見つけねばのぅ・・」尊が初潮を迎えた事を知った梓は、そう言って笑った。「お言葉ですが北の方様、尊様は十五になられたばかりで・・」「たわけ!妾はその年には既に尊を妊(みごも)っておったぞ。早くあの子に良縁を見つけねば、我が一族の血が絶える事になろう。」「しかし・・」「葛葉、今日から尊をこの屋敷へ連れて来い。あの子はあれでも我が一族の跡継ぎ。守と“間違い”が起きては困るからな。」「はぁ・・」尊は守達と引き離され、実の家族と暮らす事になった。「母様・・」「尊、そなたに頼みたい事がある。」「頼みたい事?」「其方の色香で、帝を惑わせ、殺せ。」「はい・・」尊に、拒否権はなかった。「守、尊に閨での作法を教えてやれ。」「北の方様・・」「北の方様に従いなさい、守。」「母上、わたしは・・」「北の方様も、酷な事をなさる。」葛葉がそう言って溜息を吐いた時、尊の部屋から悲鳴と怒号が聞こえて来た。にほんブログ村二次小説ランキング
2025年03月31日
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すっきりした味わいで、美味しかったです。最近買った、zoomのシャーペン。1本3520円と高いですが、書きやすいので気に入りました。大切に使います。ダイソーで買った筆箱。色とデザインが気に入りました。
2025年03月28日
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※BGMと共にお楽しみください。「相棒」二次小説です。出演者様・放送局様・制作会社様とは一切関係ありません。男性妊娠設定・オメガバース設定が苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。一部性描写含みます、苦手な方はご注意ください。尊が目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった。「お母さん、良かった!」「ごめんね、心配かけて。」尊はそう言うと、7年間離れていた息子の頭を撫でた。「この子は?」「あなたと僕の子ですよ。幸人っていうんです。幸人、お父様にご挨拶なさい。」「はじめまして・・お父さん。」そう言って前髪を弄る少年の横顔は、少し尊に似ていた。「あの、どうして僕、病院に?」「切迫流産しそうだから、安定期までお前は入院する事になった。」「そう・・ですか・・」「お母さん、僕お祖母ちゃんの家へ電話を掛けてくるね。」尊と春樹の間に流れていた緊迫した空気を敏感に感じ取ったのか、幸人はそう言って尊の病室から出て行った。「どうして、妊娠の事を・・」「黙っていたか、ですって?僕だって、まさか自分が妊娠しているなんて思いもしませんでしたよ。もう年も年ですし、正直言って驚いています。」尊はそう言うと、そっと下腹に手をあてた。「まぁ、暫く実家に帰って、色々と考えないと・・」「尊。」「仕事はどうしようかな・・」「何故、わたしに頼ろうとしない?」「いくら半分血が繋がった兄でも、あなたにはあなたの人生があるでしょう。それに、“あれ”は事故だったんですよ。」尊はそう言うと、そっぽを向いた。「もう、帰って下さい。」「わかった。」春樹が病室から出ていくのを見送った後、尊は頭からシーツを被り、目を閉じた。そして、“あれ”が起きた日の事を思い出していた。「尊、こちらがあなたのお兄さんよ、ご挨拶なさい。」初めて尊が春樹と出会ったのは、春樹が10歳、尊が7歳の時だった。「はじめ・・まして・・」「春樹さん、尊と仲良くして頂戴ね。」そう言った母の顔が、少し不安そうに見えた事を、尊は今でも憶えている。年が近い上に、通っていた学校も同じだったし、大河内家と神戸家との交流が盛んにあったので、春樹と尊ははじめぎこちなかったが、次第に打ち解けていった。半分血が繋がった、母親が違う兄弟。ただ、それだけで良かったのだ―尊が、オメガだと判るまでは。第二次性徴期、所謂思春期前後に、本来の性別に加え、第二性といったものが検査でわかる。特権階級に属するアルファ、一般人のベータ、そして繫殖種のオメガ。男女ともに子を成せるオメガは、地域や国によっては神聖視されているものの、依然として蔑視され、差別や迫害される存在だった。バース検査で、尊はオメガだと判った。大河内家の母、春樹の実母はその事を知ると、尊と春樹の交流を禁じた。春樹はアルファで、尊と“まちがい”が起きぬよう、両者の意思を完全に無視して、尊を神戸家の離れに軟禁し、学校へ通うことを禁じた。突然春樹と会うことを禁じられた尊は精神的に不安定になり、そんな中で彼は初めて発情期を迎えた。絶え間なく続く下半身の疼きに、尊は気が狂いそうだった。(春樹兄ちゃん、助けて・・)無意識に、尊は春樹を求めていた。そして、春樹もまた、尊を求めていた。「尊、尊!」「お待ち下さい、そこは・・」「どけ!」神戸家へと向かった春樹が、尊が軟禁されている離れへと向かうと、そこはむせ返るかのような甘い匂いに満ちていた。「はるき・・兄・・ちゃ・・」荒い息を吐き、自分を見つめる尊に、春樹は生まれて初めて欲情した。「抱いて・・」今すぐにここから離れろと、理性が春樹に警告を出したが、本能に抗えず、春樹は尊を抱いた。艶めいた声で啼く尊を、春樹は抱き潰した。「あぁ~!」意識が飛ぶ前に、春樹は尊の項を噛んだ。その事はすぐに、両家に知れ渡った。「何という事をしてくれたの!」怒り狂う春樹の実母を前に、尊の母・梓は平謝りするしかなかった。「二人共若い。大目に見てやれ。」春樹の祖父の一言でその場は収まったが、新たな問題が発生した。それは、尊が春樹の子を妊娠した事だった。「さぁ、来なさい!」「嫌だ~!」春樹の実母は尊を中絶させようとしたが、尊は激しくそれを拒んだ。「尊、諦めなさい。」「母さん・・」「あなたはまだ学生なのよ。」産まれた子をどうするのかを両家で話し合っていた頃、尊は学校から帰宅途中、自転車に当て逃げされ、流産してしまった。その日を境に、尊は春樹を遠ざけるようになり、二人が再会したのは、尊が警察学校に入った時だった。真新しい警察官の制服に身を包んだ尊は、凛々しかった。優秀であり、加えて誰もが振り向くような美貌を持つ尊は、たちまち注目の的となったが、それと同時に、彼は嫉妬と羨望、好奇の的となった。アルファの生徒が多くを占める警察学校の中で、オメガの生徒は、尊を含めてほんの一握りしかいなかった。春樹は尊に悪い虫がつくのではないかと心配していたが、それは杞憂に終わった。尊は周囲からのやっかみや嫌がらせなどにもめげず、無事に警察学校を卒業し、警察官としてのキャリアの階段を登っていった。「うわぁ、素敵なお店ですね。」春樹から飲みに行かないか、と誘われて尊が向かったのは、銀座にある、水槽の中で色とりどりの熱帯魚が泳いでいる店だった。「仕事の方はどうだ?上手くやっているか?」「まぁ、何とか・・」「それよりも、大切な話があるんだ。」「大切な話?」「番契約を解消しないか?」「俺の事が、嫌いになったの?」「違う・・」「もしかして、“彼”の所為?」さりげなく尊が春樹の耳元で“彼”の名を囁くと、春樹はビクリとその身を震わせた。「ねぇ、今夜は少し酔っちゃったみたいなので、家まで送って下さいよ。」尊はそっと、春樹の内腿を指先で撫でると、彼の耳元に息を吹きかけた。「わかった、送ろう。」店から出た春樹は、タクシーに乗り込み、尊を自分が住むマンションまで連れていった。「春樹さんち、いつ見ても眺めがいいですね~!」「おい、勝手にベッドに寝転がるな!」「え~、いいじゃないですかぁ~、俺をここへ連れて来たのは、“そういう事”をしたいからでしょ?」尊はそう言うと、口端を上げて笑った。「ねぇ、抱いて下さいよ。俺の事を滅茶苦茶に・・壊して?」尊はまるでサロメの、妖艶なヴェールを纏った踊りのように、一枚、また一枚と着ている服を脱ぎ出した。春樹は生唾を吞み込みながら、下着ごとスラックスを脱ぎ、シャツ一枚だけの姿となった尊を見つめていた。彼の股間は、痛い位に張り詰めていた。「あ・・そんなに・・あっ!」「うるさい。」苛立ちを含んだ口調で春樹はそう言った後、尊の血のような紅い唇を貪った。「あ~あ、こんなに痕をつけて。」「そうさせたのは誰の所為だと思っている?」「全身が痛くて、動けませぇん、今日は一日僕のお世話をして下さぁい。」「調子に乗るな。」「意地悪~」互いにそんな憎まれ口を叩き合いながら、春樹は尊を愛車で職場まで送った。「それじゃぁ、また。」「あぁ。」その日、春樹は尊の事ばかり考えてしまい、仕事が手につかなかった。昼休み、春樹が庁内の食堂へと向かうと、その場に居た職員達の視線が一斉に自分へと向けられている事に気づき、彼は少し居心地が悪い中でカレーを食べた。「あ、大河内さぁん~」そう言って自分に手を振りながら向かって来る尊の姿を見て、また職員達がざわつき始めた。「あのね、聞いて下さいよ~」「神戸、何かしたか?」「え?」「いや、周りの視線が痛いような気がして・・」「あ~、もしかして、それ僕が原因かも・・」カレーを食べながら、尊は今朝起きた事を話した。「おはようございます。」「おはよう。」登庁した警察庁の給湯室で、尊がコーヒーを飲んでいると、そこへ同僚達がやって来た。「神戸、それ・・」「あ、これ?」首筋に残るキスマークを同僚の一人に咎められ、尊は咄嗟に嘘を吐いた。「あ、これねぇ、昨夜知り合った子につけられてさぁ。困ったもんだよ。」「へ、へぇ・・」その時、同僚は尊から香水の匂いがした事に気づいた。(あれ、この香水・・もしかして・・)「何でバレたんでしょうね?」「さ、さぁな・・」「ねぇ、大河内さん、今夜も大河内さんの家に・・」「こら、そんな事言うな・・」「はぁ~い。」そんな二人の様子を、遠くから見つめている男が居た。山岡貴生、警察庁警備局警備企画課所属、階級は警視、将来有望なアルファのキャリア組の一人だ。「山岡、どうした?」「神戸さんの隣に居るのは・・」「警視庁の大河内監察官。なに、大河内さんに興味でもあるの?」「いや・・やけにあの二人、仲良いなって・・」「そりゃそうだろ、あの二人は番で、異母兄弟だからな。」「え!?」「みんな知ってるぜ。」貴生は、昼休憩が終わりエレベーターに乗り込もうとした時、駐車場へと向かう二人の姿を見かけ、無意識に彼らの後を追っていた。二人の姿は、すぐに見えなくなった。(あれ?一体、何処に・・)貴生が二人を捜すのを諦めようとした時、何処からか嬌声が聞こえた。ギシギシと、一台の車が不規則な揺れ方をしていた。(まさか・・)恐る恐るその車に貴生が近づくと、二人が車の中でシテいた。「んもぅ、夜まで我慢出来なかったんですか?」「うるさい・・」「こうして上からあなたを見下ろすのもいいですね。」尊は春樹の上に跨りながら、小刻みに腰を振った。「くっ、あぁ・・」「もぉ、駄目・・」尊は春樹と共に果てた。「ふぅ・・」汗ばんだ額に張り付いた前髪を尊が払うと、外から視線を感じた。「どうした?」「いいえ、何でもありませんよ。」にほんブログ村二次小説ランキング
2025年03月21日
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魔女と呼ばれたルクレツィアは、只管愛を求めた少女だったんですね。
2025年03月21日
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怒涛の展開が続き、ページをめくる手が止まりませんでした。ラストまで目が離せません!
2025年03月19日
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twitterのフォロワーさんから教えて頂いたので、購入して漸く読了しました。異世界転生もので、面白かったです! 表紙見て、手前の緑の服を着た正統派美人が攻かと思ったら、後ろの小動物系の子が攻だなんて思いもしませんでしたwいやぁ、これからの展開が楽しみです!
2025年03月17日
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「相棒」二次小説です。出演者様·制作会社様·放送局様とは一切関係ありません。両性具有・男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。人気のない山道を、一台の車が猛スピードで走っていた。(畜生、畜生!)運転席でハンドルを握り締めていた女は、先程殺した憎い男の顔が浮かんで来て、それを振り払うかのように彼女は山道のカーブを猛スピードで走った。何処からか、狼の声が聞こえて来た。空耳だと女は言い聞かせ、次のカーブを曲がろうとした時、ハンドルを切り損ね、彼女は車ごと崖下ごと転落した。「酷いもんだ、車ごと黒焦げになって、ホトケさんの身元が判らないんじゃな・・」「後少しで、女の背後に居たマフィアの尻尾を掴めたのによぉ。」組織対策犯罪五課の角田課長は、崖下で燻っている車を見てそう言った。その時、車の近くに人影らしきものが見えたような気がした。角田が目を擦って再び崖下の車の方を見ると、そこには誰も居なかった。(気の所為、か・・)「よ、暇か?」「相変わらず暇ですよ。それよりも課長、マフィアとの繋がりがあった女を取り逃がしちゃったんでしょう?」「そうなんだよ。山道のカーブでハンドルを切り損ねて、そのままっ・・て、後味悪い結末を迎えて、気分悪いったらありゃしないよ。」角田は愛用のパンダマグカップにコーヒーを注いでそう言った後、溜息を吐いた。「それにしても、女の身元は判らないんですか?」警視庁特命係の亀山薫がそう言いながら自分の木札をひっくり返した時、薫の上司である杉下右京が特命係の部屋に入って来た。「おはようございます。」「右京さん、おはようございます。あれ、それ何ですか?」薫は、右京が右手に握っているものを見た。それは、可愛い鈴だった。「これ、幸子さんから頂きました。幸運を呼ぶそうなので、亀山君の分も頂きましたよ。」「うわぁ~、右京さん、ありがとうございます!」薫は右京から鈴を受け取り、それを鳴らしてみせた。『んふ、呼んじゃいましたね。』耳元で、誰かの声が聞こえたような気がした。(空耳、かな?)「亀山君、どうしたんですか?」「いや、さっき誰かに呼ばれたような気がしたんですがねぇ。」「気の所為じゃありませんか?それよりも、この鈴、よく見ると狐の顔をしていますねぇ。」「あ、本当だ~」薫はその鈴を、財布につけた。同じ頃、警視庁11階にある監察室では、その部屋の主・大河内春樹が眉間に皺を寄せ、来客用のソファでカップ麺を食べている不審者を睨みつけていた。そんな彼の事などお構いなしに、不審者は豪快にカップ麺を啜ると、その白い顔を春樹に見せた。射干玉の如き艶やかな黒髪に、目尻に紅をひいた切れ長の黒い瞳を持った青年は、巫女装束を纏っていた。「あぁ、美味しかった。」「食事が終わったのなら、ここから出て行け。」春樹が渋面を浮かべながら青年にそう言うと、彼は笑ってこう言った。「あなたの種を貰うまで、帰りません。」「は?」「僕、あなたに会う為に、ここへ来ました。」青年はそう言って春樹の右手首を掴むと、彼をソファの上に押し倒した。「何を・・」「あなたはそこでじっとしていて下さい。僕が全部、しますから。」青年は巫女装束を脱ぎ始めると、春樹のネクタイを緩め始めた。「やめろっ!」春樹は反射的に青年を突き飛ばした。「酷い・・」「いきなり襲い掛かってきて、被害者面するな。」「だって、あなたが一向に手を出してくれないから~」「大体お前は誰なんだ?」「だからぁ~、僕はあなたの許嫁の、神戸尊です!」「わたしに男の許嫁はおらん。」「え・・じゃぁ、あの“約束”を憶えていないんですか?」「何の話だ?」春樹の言葉を聞いた青年は、頬を膨らませながら彼にこう返した。「あの時、あなたは―“いつか生まれ変わったら、またお前を愛してやる”と言っていたじゃないですか!?」「知らないな。」「わかりました、もういいです。」青年はそう言うと、監察室から出て行った。術をかけ、巫女装束から細身のスーツとネクタイ姿へと身なりを整え、青年―妖狐・神戸尊は涙を堪えながら警視庁の廊下を走り、階段を降り始めた。カンカンと履き慣れていない革靴を鳴らしながら、尊は階段を降りていたが、途中で涙を堪え切れなくなり、階段の端に座り込んで泣いてしまった。「尊様、見つけましたよ。」尊が俯いていた顔を上げると、そこには長身をスーツに包んだ褐色の肌をした青年の姿があった。「その様子だと、あの男に振られたのですね?」「振られてないよ、あの人が僕の事を忘れているだけ!」尊はそう言って眼鏡を外すと、乱暴に手の甲で涙を拭った。「いけません、これを。」青年はそう言うと、尊にハンカチを手渡した。「守、お前、どうしてここに?」「あなた様の母君から、あなた様を人間界から連れ戻すようにと命じられました。」「嫌だ、僕は帰らない。」にほんブログ村二次小説ランキング
2025年03月17日
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素材表紙は、mabotofu様からお借りしました。「相棒」「名探偵コナン」「天上の愛地上の恋」二次小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。両性具有·男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。ウィーン宮廷付司祭・アルフレート=フェリックスは、コナン達をアウグスティーナ教会内にある事務所へと案内した。『どうぞ。』『ありがとう。さっきの人は誰?』『あの方はルドルフ様、やがてこの国の皇帝となられる方ですよ。』そう言ったアルフレートの顔は、穏やかなものだった。『あの方達は、あなた達のお知り合いですか?』『右京さんは、僕達の保護者なんだ。』『そうなんですね。』コナンは、今右京達がどうしているのかが気になった。『大丈夫、ルドルフ様なら、あの方達に酷い事はなさらない筈ですよ。』『そう・・』コナン達とアルフレートが楽しいお茶会をしている頃、右京と尊、そしてルドルフを乗せた馬車は、ウィーン警察本部へと向かっていた。長身の尊とルドルフが乗っている所為なのか、広い馬車が少し尊には窮屈に感じた。『あなた方は、どちらから来たのですか?見たところ、清国人ではなさそうですね。』『僕達は日本から来ました。』『日本?』右京の言葉を聞いたルドルフの碧い瞳が、美しい光を放った。『そういえば、以前ウィーンで万博があった際、あなた方の国が素敵なパビリオンを出展されていましたね。』『ええ。』『後でゆっくりとホーフブルクでお話をお聞きしたいものですね。』(え、どうしたんだろう?)先程まで自分達を警戒していたルドルフの態度が急に好意的なものへと変わってきたので、それを見た尊は、思わず首を傾げてしまった。『皇太子様。』『今朝身柄を拘束した囚人の様子は?』『変わりありません。ですが、恋人を呼べとうるさくて・・』馬車から降りたルドルフは、部下から奇妙な報告を受けた。『こちらへどうぞ。』『あの、先程のお話は・・』『あぁ、昨日あなた方と同じように宮殿周辺をうろついていた不審者を見つけましてね、今牢屋に居ますよ。』「あの、その人はどんな格好をしていたんですか?」尊はルドルフに英語でそう尋ねたが、ルドルフは流暢な英語でこう返した。「そうですね。あなたの上司に似たような髪型と眼鏡をかけていましたね。背は、あなたより少し高いかな。」「ハルキサン、ドウシテ・・」尊は日本語でそう呟くと、溜息を吐いた。『その不審者は、彼の恋人なのですよ。もしお時間があるのでしたら、彼と話をさせて頂けませんかね?』『わかりました。』ルドルフの案内で、右京と尊はその『不審者』が居る牢屋へと案内された。そこには、髭が伸び、いつも隙なくセットしていたオールバックの髪を乱した恋人・大河内春樹の姿があった。「春樹さん、春樹さん!」「その声、尊か?」春樹は、尊の声を聞いて俯いていた顔を上げた。「どうして、こんな所に?」「わからん、気がついたらあの宮殿の前に居て・・」『彼は我々の知り合いなので、彼を牢屋から出して頂けないでしょうか?』『わかりました。』春樹は七日ぶりに釈放され、右京達と共にホーフブルクへと向かった。『皇太子様、お帰りなさいませ。あの、そちらの方達は?』ホーフブルクでルドルフを出迎えた侍従達は、そう言って主と共に馬車から降りて来た右京達を訝しげな目で見た。『この人達はわたしの大切な客人だ。失礼のないようにしろ。』『は、はぁ・・』侍従達はチラッと右京達の方を見たが、ルドルフに睨まれ、彼らは蜘蛛の子を散らすかのようにその場から去っていった。『わたしの部下達の非礼を彼らの代わってお詫び致します。』『いいえ、構いませんよ。』右京達がそんな事を話していると、一人の女性が彼らの方へと駆け寄ってきた。『どうした、何かあったのか?』『はい、実は・・』その女性が言うには、ルドルフの母・エリザベート皇妃が右京達に会いたいと言って聞かないのだという。『母上が・・』女性から話を聞いたルドルフは溜息を吐いた後、右京達を見た。『母上が、あなた達に会いたいと・・』『わかりました。』(え、あのエリザベート皇妃と会えるの!?)昔、母に連れられて何度も劇場へ観に行ったミュージカル鑑賞で、尊が一番気に入っていたミュージカルが、『エリザベート』だった。ミュージカルと現実の人物とは全く違う事はわかっているのだが、今まで夢中になって観て来たミュージカルの主人公と会えるという事に、尊は少し興奮していた。『こちらです。』(わ、凄い美人・・)数人の女官達に囲まれたエリザベートの姿を見た尊は、彼女の余りの美しさに、言葉を失った。『お初にお目にかかります、皇妃様。』『まぁ、美しい方ね。切れ長の黒い瞳が素敵ね。』『ありがとうございます。』拙いドイツ語でそうエリザベートに言った尊は、彼女の次の言葉に、耳を疑った。『ドレスを着せて化粧させたら、もっと美しくなるでしょうね。』(え?)尊が困惑した表情を浮かべながら右京達の方を見ると、彼らは自分と同じ表情を浮かべていた。『母上・・?』『そうだわ、彼を今夜の舞踏会に女装して出席させたら、誰も気づかないわよ。みんなもそう思わない事?』『えぇ・・』エリザベートの言葉に、尊はこれから自分がどうなるのかを悟った。『母上の気まぐれには困ったものだ。』ルドルフは、エリザベート付きの女官達に尊が何処かへ連れて行かれるのを見送りながら、深い溜息を吐いた。『皇妃様と神戸君を会わせたくなかったようでしたね。』『何故、それを?』『王宮へと戻る馬車の中で、あなたは少し上の空のようでした。そして皇妃様付きの女官と思われる女性がやってきた時、厄介な事が起きるとわかった。違いますか?』『ええ、その通りです。母上はしょっちゅうウィーンを留守にし、たまに戻ってきては、気まぐれな事をして、周囲を振り回す・・困ったものです。』『皇妃様は旅の御方、ですね。』『はい。』ルドルフと右京がそんな事を話していると、尊の悲鳴が奥の部屋から聞こえてきた。「右京さん、助けてください!」「おやおや、これは一体どういう事でしょう?」右京とルドルフが奥の部屋に入ると、エリザベート付きの女官達に尊がウェストをコルセットで締め付けられていた。「どうしたもこうしたもありませんよ。部屋に入っていったら、急に服を脱がされて・・」「彼女達の着せ替え人形になってしまったという訳ですね。頑張って下さい。」「え、右京さん、えぇ~!?」尊はそのまま、エリザベート付きの女官達の着せ替え人形となってしまった。「右京さん!」「コナン君、皆さん、ご無事でしたか?」「うん。あれ、尊兄ちゃんは?」「彼は今、色々と立て込んでいて忙しいようで、今は僕達には会えないそうですよ。」「え~、ちょっと残念!コナン君から、美人のお兄さんに会えるって話を聞いて、歩美楽しみにしていたのに~」「なぁなぁ、今夜パーティーがあるって聞いてたけどよ~、うな重とか出るのか?」「元太君、ここでうな重は出ませんよ。」「何だ、つまんねぇのっ!」コナン達と右京が話している姿を見たルドルフは、彼らの後を慌てて追いかけて来たアルフレートの姿に気づいた。『アルフレート、子守を任せて済まなかったな。』『いいえ。それにしても、先程皇妃様付きの女官の皆さんが少し浮足立った様子で奥の部屋へと入っていかれましたが、何かあるのですか?』『あぁ、いずれわかる。』その日の夜、ホーフブルクで皇帝主催の舞踏会が開かれた。「うわぁ、凄いですね~」「まるで映画の中に居るみたい~」「美味そうな料理ばかりで、どれ食うか迷うな~」「おいお前ら、あまりうろちょろするなよ~」「江戸川君、右京さん達はどこに?」「さぁ、事件の事で情報収集に行っているんだと思うぜ。」「そう。」哀がそんな事を言いながら会場を見渡していると、一人の美女が会場に入って来た。紫色の光沢があるドレスを揺らし、艶やかな黒髪にダイヤモンドとアメジストの髪飾りをつけた彼女は、不安そうに切れ長の黒い瞳で会場を見ていた。「ちょっと、行って来るわね。」「おい、灰原!」哀はすぐさま女性の元へと駆け寄り、彼女にこう尋ねた。「誰かを捜していらっしゃるの?」哀の存在に気付いた女性は、哀に微笑むとこう答えた。「ありがとう、日本語を話せる子が居て助かったよ。」その声は、男の声だった。「あなたが、吉田さんが言っていた、美人のお兄さん?」「うん。右京さんを捜しているんだけど・・」尊がそう言ったとき、楽団が音楽を奏で始めた。「右京さんなら、きっと事件の事を調べている筈だって、江戸川君が・・」「そう、教えてくれてありがとう。」尊は哀に礼を言い、大広間から出ようとしたが、踊る客達が邪魔になって中々動けずにいた。(困ったな・・)「わたしと一曲、踊って下さいませんか?」「は、はい・・」突然差し出された誰かの右手に尊がそっと触れると、その誰かは踊りの輪に加わった。「随分とワルツがお上手なのですね。」「ええ。母方の祖父に色々と仕込まれまして・・」尊がそう言って自分と踊っているルドルフを見ると、彼は溜息を吐いた。「母上の気まぐれには困ったものだ。それにしても、そのドレス良く似合っていますよ。」「ありがとうございます。」ルドルフとワルツを踊った後、尊は大広間から出て事件現場へと向かったが、慣れないハイヒールとドレスの所為で上手く走れなかった。「右京さん、何処ですか~?」大声を出したのが、茂みの中に潜んでいた事件の犯人を誘き出してしまったらしく、尊はハンカチを口で塞がれ、気絶した。彼が目覚めたのは、薄暗い倉庫の中だった。「ん・・」『気が付いたか?』そう言って尊の前に現れた男は、冷たい光を宿した翠の瞳で尊を睨んだ。『皇太子が男色家だったとは、誤算だったが、まぁいい。』(もしかして、こいつが・・)にほんブログ村二次小説ランキング
2025年03月14日
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イオンでちいかわポップアップストアが期間限定でやっていました。ハチワレのボールチェーンを買いました。1個税込1430円でした。一番くじのタオル。デザインが可愛いです。
2025年03月08日
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「相棒」二次小説です。出演者様・放送局様・制作会社様とは一切関係ありません。男性妊娠設定・オメガバース設定が苦手な方はご注意ください。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。その日、神戸尊は熱っぽかった。体温計で熱を測ると、平熱だった。(まさか、ね・・)仕事を休もうと思っていた尊だったが、こんな日に限って警察庁で大事な会議がある事を知って舌打ちした。(この前発情期が来たのが三ヶ月前だし・・まだ早いよな。)ただの風邪だろう―尊はそんな事を思いながら、一応抑制剤をピルケースに入れ、それを上着の内ポケットにしまった。「おはようございます。」「おはよう、神戸君。今日も色っぽいなぁ・・」「あはは、そうですかぁ?」長谷川のセクハラはいつもの事なのだが、この時尊はいつものように愛想笑いを浮かべながらやり過ごそうとしていたが、何故かイライラが治まらなかった。「あ~、畜生なんだよセクハラ狸爺め!」警察庁の男子トイレの個室で尊が毒づいていると、男子トイレに誰かが入って来る気配がした。「それにしても、今日の神戸さんも色っぽかったなぁ。」「わかる~、あれで40代とか信じられないし。」「にしてもさぁ、前は警視庁の特命係に居たんだろ、あの人?」「あの人材の墓場に?」「色々とあの変わり者の杉下警部と色々事件を解決したらしいぜ。でも、急に警察庁に出戻って来たし・・」「長谷川元副総監の愛人だって噂だぜ?まぁ、あんなに美人でオメガだったらわかるような気がするなぁ~」「わかる~、でも神戸さんには番が居るんだろう?」「神戸さんに、番?誰だよ?」「それがさ・・あの、鬼の首席監察官だよ!?」「え、マジ!?」自分の噂話をしている連中は、ぺちゃくちゃと喋りながら男子トイレから出て行った。(良かった、やっと行ったか・・)尊がそんな事を思いながら男子トイレの個室から出ようとした時、間が悪い時に大河内春樹―自分の異母兄と鉢合わせしてしまった。「尊、顔色が悪いな。ちゃんと飯、食っているのか?」「俺に構わないで下さいよ。」「待て!」自分に背を向け、男子トイレから出て行こうとする尊の腕を、春樹は掴んだ。「離して下さい。」「あの時の事は、済まないと思っている。」春樹の言葉が、ナイフのように深く尊の胸を抉った。「ご結婚、おめでとうございます―兄さん。」「待て、ちゃんと話を・・」「俺を捨てた癖に、今更善人ぶらないでください!」尊は春樹を睨みつけ、そのまま彼に背を向けて去っていった。ひとり残された春樹は、その背中が遠ざかってゆくのを黙って見送るしかなかった。「その件は・・」会議がそろそろ終わろうとした時、尊は激しい眩暈と吐き気に襲われたが、なんとか平静を装って耐えた。「すいません、今日は・・」「神戸君、ゆっくり休みなさいね。」長谷川は、何処か思わせぶりな笑みを浮かべながらそう言うと、尊の肩を叩いた。「まさか、ね・・」尊の脳裏に、春樹と愛し合ったあの夜の事が浮かんだ。彼と番になり、セックスする時は必ず避妊していた―筈だった。あの夜は、記憶が曖昧で自分が何をしたのかさえ憶えていない、もしかしてと思い、一週間前に購入した妊娠検査薬を試してみた尊は、その結果に愕然とした。「そんな・・」妊娠検査薬の判定は、陽性を示す一本線が表示されていた。(今更、こんなの・・)もう、春樹とは別れたのに。彼にはもう、新しい相手が居る。彼の邪魔をしてはいけない。そんな事を思いながら尊が愛車をとめている地下駐車場へと向かおうとした時、バタバタと慌しい足音が聞こえて来た。「あ、神戸さん、お久し振りです!」そう尊に挨拶したのは、警視庁捜査一課の芹沢刑事だった。「何か、あったんですか?」「ええ、この前の美容系インフルエンサー殺人事件の犯人が判って、今からそいつを逮捕しに行くんで、じゃ!」「という事で、神戸元警部補はお引き取り下さい!」芹沢の頭を叩きながら、尊に憎まれ口を叩いて伊丹が彼の脇を通り過ぎていった。(相変わらず、忙しそうだな・・)自分も、あの中に居た頃の事を思い出しながら、尊が愛車の元へと向かおうとした時、警視庁のロビーから誰かが言い争うような声が聞こえて来た。(何だ?)尊が警視庁のロビーへと向かうと、そこには私立小学校の制服を着た少年が受付職員と揉めていた。「僕のお父さんに会わせて下さい!」「あのね僕、お父さんのお名前を教えてくれるかなぁ?」「僕のお父さんは、おおこうちさんです!」そう言った少年は、自分と瓜二つの顔をしていた。「え・・」「大河内さんって・・」「首席監察官の・・」少年の周辺に居た職員達が一斉にざわめくのを聞いた尊が元来た道を戻ろうとした時、彼は少年と目が合った。「お母さん・・」「君、誰?」尊はそう言って少年を冷たく突き放そうとしたが、その時下腹に鈍痛が走った。「お母さん、どうしたの、お母さん!?」「離せ・・君なんか‥知らない・・」苦しそうに喘ぎながら尊が少年を自分から引き剥がそうとした時、聞き慣れた声がして、声の主を呼んだ。「春樹さ・・」尊の意識は、闇に呑まれていった。にほんブログ村二次小説ランキング
2025年03月07日
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表紙素材は、装丁カフェからお借りしました。「相棒」「名探偵コナン」「火宵の月」の二次創作小説です。作者様・出版社様・出演者様とは一切関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「ここのナポリタンは絶品ですね。」「そうですか、それは良かったですね。」子供のように嬉々とした表情を浮かべながら尊がナポリタンを頬張るのを眺めていた右京は、零と瓜二つの顔をした青年・安室透が自分のテーブルにパンケーキを置いた時、彼の左腕に真新しい包帯が巻かれている事に気づいた。「どうぞ。」「どうも、ありがとう。」バターが載ったパンケーキを右京がフォークとナイフで器用に切り分けていると、『ポアロ』のドアベルが鳴り、一人の少年が店に入って来た。「安室さん、こんにちは~」「コナン君、いらっしゃい。」年の頃は七歳位だろうか、眼鏡をかけた利発そうな少年が慣れた様子でカウンター席に座った。「コナン君、ご注文は?」「アイスコーヒーと、パンケーキ!」「わかった、少し待っててね。」安室はそう言うと、厨房の奥へと消えていった。「神戸君、彼、やはり降谷さんではないかと思うんですが・・」「え、何ですか突然そんな事を言うなんて・・」尊は右京の言葉を聞き、食べていたナポリタンで噎せそうになった。「いえね、今朝事件現場で降谷さんとお会いした時、彼の左腕に包帯のようなものが巻かれている事に気づきました。安室さんも、その時僕が見た同じ包帯を左腕に巻いています。」「ただの偶然じゃないですか?」「いいえ、偶然などではありませんよ。僕が降谷さんの左腕の包帯に巻かれている事に気づいた時、微かに血が滲んでいましたが、さっき彼が厨房の奥へと消えた時、その包帯が新しくなっていました。きっと、忙しいランチタイムの時間帯の中で、傷の手当てをしたのでしょう。」「そんな短時間でよくそんな事がわかりましたね。」「ふふ、細かい所が気になるのが僕の悪い癖。」「ねぇねぇ、おじさん達って、刑事なの?」突然カウンター席に座っていた少年がそう言って右京と尊に話し掛けて来た。「おや、どうしてそう思うのでしょう?」「だってこの近くにある神社で殺人事件が起きたじゃない。僕、ここに来る前に黒のGT-Rがこのビルの地下駐車場に停められていなくて、このビルの近くにあるコインパーキングに停められているのを見て、もしかしてね、と思ってね。」「見事な推理ですね。君、何者ですか?」「江戸川コナン、探偵さ。おじさん達、それなぁに?」少年―江戸川コナンは、右京が持っている紅玉の耳飾りを見た。「殺人事件の証拠品ですよ。恐らく、事件の目撃者の奥さんのものではないかと。」「女性物だよね。しかも左耳用の。」「何故、それがわかるのですか?」「勘でね。もしかして、事件の目撃者って、この人でしょう?」コナンはそう言うと、二人に事件の数日前にスマホで撮った写真を見せた。そこには被害者と共に、一人の男性が彼の隣に映っていた。雪のように白い肌に、黒檀のような艶やかな黒髪、そして血のように赤い唇、切れ長の瞳をした美男子だった。「コナン君、彼とは知り合いですか?」「うん。彼は橘神社の宮司で、土御門有匡さんだよ。詳しくは知らないんだけど、一ヶ月前に神社の前で倒れていたみたい。」「そうなのですか。」右京はそう言うと、事件の目撃者・土御門有匡の切れ長の瞳を見た。「碧みがかった黒・・不思議な色をしていますね。」「有匡さんのお母さんが、イギリス人なんだって。有匡さんのお母さんは碧い瞳をしていたから、隔世遺伝かもしれないって話してくれたよ。」「情報、ありがとう。」右京がそう言ってパンケーキを食べ終えた後、安室が二人の元に来た。「コーヒーのお代わり、いかがですか?」「いいえ、結構。それよりも怪我の調子はいかがですか、安室さん・・いいえ、降谷さんとお呼びした方がよろしいかもしれませんねぇ?」「人違いではありませんか?」安室の口調は穏やかなものだったが、彼の碧い瞳は剣呑な光を放っていた。「あなた、今朝事件現場で左腕に包帯を巻いていましたね?しかしその包帯は、さっき新しいものとかえられていた。包帯の下にあるのは、今朝起きた事件の前に、何かの事件に巻き込まれた時に負った切り傷ですね。違いますか?」「流石、警視庁のシャーロック・ホームズと呼ばれる事はありますね。」安室―降谷零は、そう言って大きく息を吐いた。「杉下さん、あなたは呪詛を信じますか?」「呪詛・・呪いが今回の一連の事件に関連していると?」「ええ。僕も最初、信じませんでしたが、今朝の事件より前に、同様の事件が神社周辺で起きているんです。被害者は全員五十代の男性。それ以外に、ある共通項があるんです。」「共通項?」「こっくりさんって知ってますか?一種の降霊術のようなもので、昔小学生の間で流行った・・」「そのこっくりさんを、被害者全員がやっていたと?」「まぁ、こっくりさんをする時に使った紙がそれぞれの事件現場に落ちていましたからね。そして、こんなものも落ちていました。」降谷がそう言って二人に見せたのは、紙人形だった。「この紙人形に、ある人物の名前が書かれていました。」「誰なんですか?」「あなた方もよくご存知の方だと思います。警視庁警務部首席監察官・大河内春樹警視正。」「えっ・・」降谷の口から恋人の名が出た途端、それまでポーカーフェイスを気取っていた尊の顔が強張った。「被害者達が、何故大河内さんに呪詛を?」「神戸君、それを調べるのが僕達の仕事でしょう?」「あ、そうですね・・」尊が右京の言葉で我に返った時、『ポアロ』のドアベルが鳴り、二人にとっては見知った顔の三人が店の中に入って来た。「特命係のお二人が、何故こんな所にいらっしゃるのでしょうかねぇ?」トリオ・ザ・捜一の伊丹刑事は、そう言って二人を睨んだ後、カウンターに居た降谷を見てえっ、と大きな声を上げた。「な、なんで・・あなたがここに?」「おや伊丹さん、降谷さんとはお知り合いですか?」「この連続殺人事件で知り合いましてね。」降谷がそう言った時、右京のスマホが鳴った。「もしもし・・はい、わかりました、すぐに参ります。」「誰からですか?」「病院からです、有匡さんの意識が戻ったそうですよ。早速、彼に会いに行ってみましょう。」「僕も行くよ。」「毛利さんには僕の方から言っておくから、行っておいで、コナン君。」「は~い。」こうして、コナンは右京と尊と共に、米花中央病院へと向かった。「土御門有匡さん、はじめまして。僕は、警視庁特命係・杉下右京と申します。」「神戸尊と申します。」尊はそう言うと有匡に一礼したが、彼はじっと自分の顔を見つめている事に気づいた。「あの、僕の顔に何か?」「いえ、昔あなたと良く似た顔をした男を思い出しましてね。」「そうですか。有匡さんは、この耳飾りに心当たりはないですか?」「この耳飾りは、わたしが火月―妻に与えたものだ。」有匡はそう言った後、右京が持っている紅玉の耳飾りを見た。「あなた方は、陰陽師という存在を信じますか?」「この世には、科学で証明出来ないものこそ、真実だと僕は思っています。」「この耳飾りには、式神の護りをかけていました。火月の命に危機が及ぶようであれば、式神が動くというものです。しかし、その耳飾りは、火月のものではありません。」「何故、そう断言出来るのでしょう?」「先程、この耳飾りに式神の護りをかけたと言ったでしょう。式神は、主の呼び掛けには必ず応えますが・・」有匡は耳飾りに向かって祭文を唱えたが、耳飾りは粉々に砕け散った。「この耳飾りは、事件の犯人が捜査をかく乱する為に現場に置いたものでしょう。」「あなたは、犯人の顔を見たのですか?」「一瞬だけでしたが、犯人の左手に、火傷の痕がありました。」「そうですか、どうもありがとう。」右京と有匡の話が終わったタイミングを見計らって、尊は有匡にこう尋ねた。「一連の殺人事件の被害者達が、こっくりさんをして呪詛を行なった事は知っていましたか?」「呪詛・・そういえば、神主さんと宮司の益岡さんと、四人の男達が揉めていましたね。ある男を呪殺したいから、協力してくれと。恨みがあったそうで。」「大河内春樹さんですか、その男というのは?どうして、被害者達は大河内さんを・・」「何でも、職場を不当解雇されて、恨んでいたそうです。こっくりさんといっても、管狐という妖狐の一種で、願掛けには向きません。それに、呪詛は呪詛返しという大きなリスクがあります。」「呪詛返し?」「呪詛には、掛けられる相手と掛ける相手に、それぞれ呪詛がかかるという事です。人を呪わば穴二つ、というものですね。」にほんブログ村二次小説ランキング
2025年03月03日
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