心の赴くままに

心の赴くままに

PR

Profile

kishiym

kishiym

Keyword Search

▼キーワード検索

Calendar

Comments

cozycoach @ Re:徳川忠長 兄家光の苦悩、将軍家の悲劇(感想)(11/20) いつも興味深い書物のまとめ・ご意見など…
2022.02.19
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類

 ”日本車は生き残れるか”(2021年5月 講談社刊 桑島浩彰/川端由美著)を読みました。

 グローバル自動車産業が激変する中で、日本の自動車産業はどのようにすれば国際競争力を維持し生き残ることができるのか、について変化の道筋を探っています。

 日本は島国ということもあり、なかなか日本国外の情報が伝わりにくく、変化に関する情報が伝播するのにどうしてもタイムラグが発生してしまいます。

 一方でこのタイムラグが、急速な産業変化において致命的な事態を招く恐れがあります。

 今の自動車産業の変化のスピードを日本の外から見ていると、もはや日本の自動車産業は致命的な状況にあるのではないでしょうか。

 率直にそのような思いを持つ機会も多いですが、ただ嘆息しているだけでは無責任であると感じるといいます。

 日本最大の雇用者数を抱える自動車産業の競争力を維持するために、自動車産業に関わる全ての人間は、今一度その現実を直視せずして、先人たちが築き上げたこの産業基盤を守り、発展させることはできません。

 まだかろうじて比較優位性のある今のうちに、何としても次世代のモビリティ産業に必要な要素技術の獲得や開発を必死になって進めなければなりません。

 桑島浩彰さんは1980年まれ、東京大学経済学部卒業。ハーバード大学経営大学院、ケネディ行政大学院共同学位プログラムを修了しMBA、MPAを取得しました。

 その後、三菱商事、ドリームインキュベータ、ベンチャー経営2社を経て、現在K&アソシエイツ取締役、カリフォルニア大学バークレー校ハース経営大学院エグゼクティブ・フェローを務めています。

 企業のマッチングサービスを提供するリンカーズにおいて、米国事業を立ち上げ、シリコンバレーや米国の中西部と日本の製造業をつなぎ、日本の再生を図ろうと日々奮闘しているそうです。

 現在、神戸大学大学院経営学研究科博士課程在学中で、東洋経済オンラインなどに記事寄稿多数あります。

 川端由美さんは1971年生まれ、子供の頃から自動車が好きで、車をつくれるらしいと聞いて工学部に進学し、群馬大学大学院工学科を修了しました。

 エンジニアとして住友電工に就職し、その後、二玄社に転職し、自動車雑誌の編集記者やカーグラフィック編集部にも所属しました。

 退社後、2004年ごろからフリーランスのジャーナリストとして、自動車の環境問題と新技術を中心に取材活動を行っています。

 海外のモーターショーや学会を精力的に取材、戦略コンサル・ファームに勤務後、戦略イノベーション・スペシャリストとしても活躍しています。

 桑島浩彰さんは1980年に生まれ、当時のバブルに沸く日本経済のもと、当時小学生として受けた社会の授業で鮮明に記憶してことがあるといいます。

 世界第2位の経済大国として、自動車・電機・半導体・鉄鋼・造船・石油化学など、各基幹産業が世界的な競争力を保持していました。

 授業では、米国との貿易摩擦が激化する中でいかに世界との調和を図っていくか、という問いかけがあったそうです。

 それが中学生となった1993年以降、一つまた一つと日本の基幹産業が国際競争力を失う姿を見せつけられ、とうとう最終消費財で当時の競争力を今も維持しているのはほぼ自動車産業だけになってしまいました。

 そして、その自動車産業までもが、急速なデジタル化とサプライチェーンの水平分業の流れを受け、その競争力を侵食されようとしています。

 世界の自動車産業が100年に一度の変革期を迎えているいま、日本の自動車メーカーは、欧米はもとより中国にも大きく後れを取っています。

 日本の自動車業界は崩壊するのではないかというような言説が、いつのころからか目立つようになりました。

 いうまでもなく、自動車産業は重工業・電気電子と並んで戦後の経済復興の立役者であり、重工業や家電メーカーが衰退しつつある現在は、日本経済を支える大黒柱的な存在です。

 日本自動車工業会の統計によれば、自動車製造業の製造品出荷額は62兆3040億円と、GDPの約1割を占めます。

 全製造業の製造品出荷額に占める自動車製造業の割合は18・8%、自動車関連産業の就業人口は2018年時点で542万人に達します。

 日本のGDPの約1を占める巨大産業の崩壊など想像もつきません。

 このコロナ禍の時代にあって、トヨタ自動車など一部のメーカーは、むしろ販売台数を伸ばしており、自動車業界の危機など大嘘だと断ずる業界関係者や専門家も多いです。

 日本の自動車産業は崩壊しませんが、戦い方のルールは大きく変化し、新しいルールに適応できた企業だけが生き残ることができるといいます。

 新しいルールのキーワードは、ここ数年で世界中に広がったCASEです。

 コネクテッド(connected)のC、自動化(automonous)のA、シェアリング(shared)/サービス(service)のS、電動化(electric)のEのそれぞれの頭文字をとったものです。

 2016年に開催されたパリーモーターショーで、当時のダイムラー会長のディーター・ツェッチェが使った言葉として知られています。

 世界的には、ACES(autonomous connected, electric and shared mobility)という言葉の方が一般的ですが、本書では、日本で浸透したCASEを使用しています。

 日本の自動車業界では往々にしてE(電動化)やA(自動化)の開発が先行して話題になりがちですが、CASEを並列で眺めていると本質を見誤る恐れがあるそうです。

 CASEの最大のポイントは、Cつまりコネクテッドによって自動車がIoT(lnternet of Things モノのインターネット)の枠組みの中に組み込まれていくという点です。

 自動車というモノがインターネットにつながると、自動車を取り巻く世界は大きく変わり、自動車産業の本当の大変化はそこから始まるのです。

 もともとはOA機器だったパソコンがインターネットにつながった結果、GAFA(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル)に代表される無数のIT企業が生まれました。

 電話がネットとつながったスマートフォンの登場によって、莫大な数のアプリケーションやサービス提供者が生まれました。

 これと同じ文脈で今の自動車業界はとらえられるべきであり、これから起きるのはネットにつながった車から生まれるまったく新しい、膨大な数のモビリディサービスです。

 自動車はloTのoT、つまりネットにつながったモノになり、その後、巨大なモビリティサービスの市場が次々と誕生していくと思われます。

 従来の自分の会社の技術を使って次世代の事業を考えるという時代から、社会的な課題から需要のある事業とは何かを考える時代に移ってきています。

 気候変動の抑制に多国間で取り組むことを謳った2015年のパリ協定採択以来、欧米や中国ではカーボンニュートラルに熱心です。

 カーボンニュートラル、化石燃料の枯渇といった社会的な課題から需要のある仕事を考え、先手を打っていました。

 地域や国を挙げて、二酸化炭素の排出量を抑え植物の吸収量とあわせてゼロにするという、自動車の電動化や代替燃料の利活用に取り組み、自動車産業の側も数年前から対応してきました。

 また、人口減少による公共交通のドライバー不足を解消するための自動運転であったり、個人所有の限界から、シェアリングという新しい業態が生まれたりするのは、いずれも社会的な課題が起点となっています。

 欧米あるいは中国の自動車産業は、自社の技術にこだわらず、ライバルとも手を組んだり、次々と積極的な買収を行ったりしてきたのです。

 翻って、日本の自動車産業は、モノづくりという意味では今でも世界トップレベルの技術を持っています。

 ですが、自社の技術力、自社のモノづくりにこだわり続けたあまり、社会的な課題から事業を考えるという視点がやや足りなかったのではないでしょうか。

 モノづくりの思考回路から抜け出せない経営陣がいる企業では、電動化の技術開発を技術者たちが夜を徹して開発するなどという、時代錯誤の企業経営につながりかねません。

 必要なのは、電動化に関する自社の優れた技術よりも、社会的な課題に気づかずに、あるいは気づきながらも自社の立場に慢心して本当に必要な開発を怠り続けた経営陣の反省ではないでしょうか。

 実は、電動車に必要な個々の技術は日本の企業が得意とする分野でもあります。

 単なる電動化の技術開発やEVの商品開発であれば、一社の努力で乗り越えられるかもしれません。

 ですが、求められるのは地球環境問題という大きな社会課題に向けた解決策であり、欧米や中国と同様に、日本も国と産業が一丸となって活路を見出さなければなりません。

 さもなければ、日本の自動車業界は世界的に競争力を失うでしょう。

 日本の自動車産業は、ここから国と業界が一丸となって日本経済の大黒柱であり続けるのでしょうか。

 それとも、世界の新しいルールに沿った動きを取れず競争力を失い、業界全体が崩壊へと向かってしまうのでしょうか。

 本書は、世界の自動車産業の昨今の動きを詳述しながら、日本の自動車産業にいま求められているものは何なのかを解き明かそうとする試みです。

はじめに/第1章 自動車産業はどう変わるのか/第2章 いま米国で何が起きているのか1-ビッグ3の逆襲/第3章 いま米国で何が起きているのか2-シリコンバレーの襲来/第4章 いま欧州で何が起きているのか/第5章 いま中国で何が起きているのか/第6章 日本車は生き残れるか/おわりに

[http://lifestyle.blogmura.com/comfortlife/ranking.html" target="_blank にほんブログ村 心地よい暮らし]



【中古】 日本車は生き残れるか 講談社現代新書2617/桑島浩彰(著者),川端由美(著者) 【中古】afb


【中古】 VWの失敗とエコカー戦争 日本車は生き残れるか 文春新書1058/香住駿(著者) 【中古】afb





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2022.02.19 07:24:40
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: