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2021年09月23日
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「銀河鉄道の夜」宮沢賢治原作 ますむらひろし・画 扶桑社文庫

ますむらひろしの「イーハトーブ乱入記」を読んで紐解いた。そこで出されたいくつかの問い「ケンタウル祭で川に流される烏瓜」「天気輪の柱とは何か」「三角標とは何か」「プリオシン海岸」「ボス」「ハレルヤではなくハルレヤと歌われたこと」「幻想第四次とはどんな世界なのか」「どこまでも行ける切符とはどんな切符だったのか」「プレシオスの鎖とは」等々‥‥を、確かめたかった。

ご存知のように「銀河鉄道の夜」は有名なわりには、不思議な言葉が散りばめられている。多くは明らかにはなったけど、原作自体が改稿中の未完成作品であり、まだ謎も多い賢治の代表作です。このマンガが発表された当時は解説する辞書などはなかったし、解明されていないことは多かった。マンガで画にする時には、これらの解釈を避けては通れない。このマンガで初めて画になったことはあまりにも多いのです。

迷ったけど、発表順に読んだ。つまり、第三次改稿の「ブルカニロ博士編」を読む前に第四次改稿を読んだ。第四次が約100頁、第三次が約200頁だから、情報量は倍化している。

ケンタウル祭で精霊流しのように流される烏瓜 は、上だけ丸く掘られてそこに灯りを入れる仕組みに描かれていた(船の形ではない)。そうすると、烏瓜の灯りは星のように川を流れる。ますむらひろしさんは「ー乱入記」において、星座表と見比べながら原作の日付を8月15日、つまりお盆の日と結論つけている(ちなみに今年の旧暦の8月15日は9月21日でした)。やはり、妹としこのために書かれた物語だということが、そのことでもわかる。

第四次稿において「あの 謎めいた天気輪の柱が、いつの間にか三角標の形に変化する」 場面、実はますむらひろしさんはこの時(83年)に三角標の形をハッキリ意識していなかったので、灯台のような天気輪に木造の旗がつくような描写になっていた。第三次稿(85年)はまた違う表現になっていたが、今度は数頁に分けてジョパンニが銀河鉄道に乗る重要な場面を三角標を使いながら描いていた。ただ問題は第四次改稿には、その詳細な描写はないのだ。

銀河鉄道なのに、「がらんとした桔梗色の空」には星々はない。まるでアメリカの峡谷のようなプリオシン海岸を含む川の中に無数の星々がある。此処では明確に川が「天の川」になっている。これが 「幻想四次元世界」 のひとつの姿だった。川の周りでは、鳥を捕る人もいれば、トウモロコシもできるし、林檎さえできる。イーハトーブがそもそも幻想四次元世界なのかもしれない。

川では発掘調査もしていた。120万年前の地層から出てきた「 ボス

賢治はまるでキリスト教徒のように、銀河鉄道に乗った人々の様子を描き出す。けれども、賢治がキリスト教を信仰したわけではないのは、ジョバンニと沈没船に乗っていた家庭教師との論争を聴けばよく判る。賢治は正式にキリスト教と論争をするつもりはなかったから、彼らの歌を「 ハルレヤ 」と改変したのだろうか。

セロの声をした山高帽子を被った男の人が「 おまえは、あのプレシオスの鎖を解かねばならない 」とジョバンニにいう時、ますむらひろしさんはその先に北斗七星を見せた。これは一般にはない解釈である。ある人は旧約ヨブ紀の「プレアデスの鎖」のことで、それは「人間の手によっては解くことのできないものの象徴であるとされている」という人もいる。どちらにせよ、「北斗七星」が「解」そのものではないことは明らかである。

どこまでも行ける切符 」に書かれた「いちめんの黒い唐草模様の中に、おかしな十ばかりの字を印刷したもの」も、やはり画になった。ますむらひろしさんは、まるでサンスクリット語崩しのような文字を描いている。

謎はこれだけではない。

それは、現在描き続けられている完成すれば600頁のオールカラーの大作「銀河鉄道の夜 四次稿編」にあるのだろう。いつかは読まねばならない。いい値段はするし、マンガは図書館には置かないようだから、買わなくてはいけない。いつかは決心せねば。マンガの画のわかりにくい説明をつらつらと書いてしまった、私の拙い書評を最後までお読みくださってありがとうございました。

2021年9月21日 88回目の賢治忌に記入





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最終更新日  2021年09月23日 13時55分01秒
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