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毎日暑いですね。楽しいプールの季節の始まりです。さて、 プール後の洗眼は逆に目を傷めるのでしないほうが良い と言うのは、我々眼科専門医の間では既に常識となっているのですが、どうもまだ国民的な一般的常識までにはなっていないようなので、今日は復習としてこのお話をしたいと思います。 「プール後洗眼は悪影響」 塩素が角膜損傷 国内研究チーム発表 プールで泳いだ後に目を洗うのではなく、ゴーグルを-。水道水の消毒に使われている塩素が角膜を傷つけ目に悪影響を及ぼすことを、石岡みさき医師(両国眼科)、慶応大学眼科などの研究チームが実験で明らかにし、米国の眼科学専門誌に発表した。 学校現場で当たり前に行われる水泳後の洗眼は、かえって目にダメージを与える恐れがあり、研究チームは「洗眼はやめてゴーグルで保護した方がいい」としている。 実験は、健康な男女各5人を被験者として実施。250ccの(1)体液と浸透圧が同じ生理食塩水(生食)(2)水道水(3)生食に塩素を加えたもの-で目を洗い、角膜の状態などを複数の方法で調べた。 この結果、(1)~(3)のいずれも目を洗う前と比べて角膜上皮の傷がやや増えたが、塩素入り生食の場合に顕著だった。また、目を保護する粘液の成分が、水道水および塩素入り生食で洗ったときに減少し、生食では減らなかった。 さらに、色素の透過量で角膜上皮のバリアー機能を調べる検査では、塩素入り生食の場合のみ低下が認められた。 これらの結果から、浸透圧ではなく塩素が目に悪影響を与える主な原因と結論付けた。研究班の加藤直子・慶大非常勤講師は「強酸や強アルカリなどが目に入ったとき以外、目を洗う必要はない。プール後の洗眼は、さらに傷を広げる可能性があるのでやめた方がいい」としている。 上記記事は2011年3月1日の産経新聞より引用 私自身も学生時代にプールに入った後でみんなで並んで一律で高い水圧で目をジョボジョボ洗っていました。よくある「昭和の風景」だったわけですが、実はその頃も「洗眼って、目の中の大事な善玉の成分まで洗い流してしまいそうで、何か嫌だな」と漠然と思っていたのですが、やはりその直感は正しくて、本当に良くなかったんだというお話です。 少し具体的に解説をしておきましょう。 我々の眼の表面と言うのは、上から油層、水層、ムチン層(分かりやすく言うと納豆のネバネバのような層。眼の表面を守るのに重要な役割をしている)の3層があるのですが、目を洗いすぎるとこのムチン層が剥がれ落ちてしまい、 そこにバイキンが付きやすくなってしまうのです。 またいわゆる アイボンなどの眼を洗浄する薬剤も使いすぎると逆効果 になります。 アカスリのやりすぎが皮膚に良くないのと同じような話 かなと思いますね。 そのため大切なことは、水泳をする時には必ずゴーグルをつけて雑菌と塩素の多いプールの水が目に入らないように予防した上で、目の洗浄はほどほどにする、ということです。 皆様も是非この「新常識」を覚えた上で、夏のプールを楽しんでくださいね。♪
2018.06.28
さて当院では今月、新しいはやり目(流行性角結膜炎)の検査キットを導入しました。 従来型のはやり目の検査キットは、赤目(眼瞼結膜)を綿棒で「血がにじむ」くらいにゴシゴシと擦らなくてはきちんと検査が出来なかったのですが、元々目に炎症を起こして来院されている患者様からすると、「そうでなくても目が痛いのに、更に粘膜を擦られてはたまらない。!」という非常に負担の重いものでした。 ところが今回の新型検査キットはなんと、 試験紙を赤目にピトッと浸すだけ、ただそれだけ という簡単さなのです。またこのやり方ならば検査時の痛みもほぼ0なのです。画期的ですね。♬ でもそんなに検査法が簡単になってるのなら、検査の感度も落ちてるんじゃないの? と思われる方もいると思うのですが、従来型の痛いゴシゴシ検査法と較べても感度低下がないことが既にデータとして示されています。 これはまさに夢の様な検査法ですね。これからは、 はやり目の検査はもう痛くない ということです。実際当院でも既に多くの患者様にこの新型キットを使っていますが、大好評です。我々医療者側にも、患者様にとっても、両者にとっての大きな福音となりましたね。
2018.06.19
さて2010年12月の発売以来、今や日本人の国民病とまで言われる「ドライアイ」の治療を革命的に進歩させた参天製薬の名薬にして、発売7年が経過した今もベストセラー街道をばく進する、ジクアス点眼液。 このジクアス点眼液はその薬理作用上、目の細胞からの水分とムチンという物質の分泌を促進するので、点眼後に涙の量を増やしてくれます。そしてその「うるおい効果」が点眼後約1時間も持続するという、画期的で優れものの目薬です。 その為、「ジクアスが無いともう生活が成り立たない。」と仰られる患者様もたくさんいらっしゃるくらいに大人気のお薬なのですが、ベストセラーで売り上げが多い(2018年3月期で見て、1年間で128億円)が故に、逆にクレームが目立つ点眼薬でもあります。 そしてそのクレームの中で断トツに多いのが、 ジクアスを点眼すると、その後で半透明のネバネバした目やにがたくさん出てきて気持ち悪い というものです。この「ジクアス点眼後に目やにが出る」という患者様からの訴えは非常に多く、私が1週間外来をしていると、最低でも1、2回は聞きます。 これは一体何なのでしょうか? ジクアスの何か危険な副作用なのでしょうか? 今日はこの「ジクアス点眼後の目やに」の正体について、私が眼科専門医として分かりやすく回答しましょう。 先ほども書いたように、ジクアスを点眼すると目の表面からムチンという物質が放出されます。これは納豆の様にネバネバしたものなのですが、この ジクアスの効果で出てきたムチンが、目の表面の常在菌をトラップしてトリモチのように絡めとって「目やに」として出てくる のです。 つまり、 ジクアス点眼後の目やには、お薬が効いている証拠 でもあるということなんですね。 ちなみに、このジクアス点眼後の目やには、無構造でバクテリアなどをトラップしたものであり、炎症細胞はほとんど認められない、いわば無害なものであることが専門的な研究によって既に分かっています。 以上をまとめると、 ジクアス点眼後の目やにに対してはそれほど神経質になる必要はない と思います。ただドライアイ治療ではジクアス以外にも有力な選択肢はたくさんありますので、どうしても不快で気になる場合には違う点眼薬に変えればそれで済む話でもあります。 なので、どうしても気になる方は、是非気軽に次回の外来で私達眼科専門医に相談してくださいね。
2018.06.11
さて私は2018年4月に第122回日本眼科学会総会(日眼:にちがん)に参加してきました。この春の日眼と秋の日本臨床眼科学会(臨眼:りんがん)は、我々眼科専門医にとっては一種のお祭りの様なものです。その理由なのですが、学会と言うのは年中たくさん開催されているものの、この2つは特に参加者が多く、それを反映して様々な楽しいイベントや宴が開催されたり、機械展示場が広くて多くの新しい検査・手術機械に実際に触れることが出来るからです。 今日の日記は、自分が「あっ、これめちゃ欲しい。」と思った、個人的な物欲がスパークしたものを備忘録的に残しておくものです。 まず一番いいと思ったのが、ドイツのカールツァイス社の最新型の眼底カメラのCLARUS 500。 このカメラは画角は133度しかないのですが、同時に複数枚の写真を撮ってそれを瞬時にコンピューターで繋げることによって非常に広い範囲の眼底を一度にバンとチェックすることが出来ます。当院では既に約3年前にこのカールツァイスの新型カメラのライバルとなる イギリスのオプトス社のオプトスデイトナ (画角は200度と非常に広くそこが大きな長所) というマシンを買ってしまっているので、ちょっと買い替えるという訳にはいかない(オプトスも凄く高額だったし、減価償却も全然終わっていない)のですが、このツァイスのマシンは写真の色調が美しくて自然なのがとても魅力的だな、と思いました。涎がタラタラと出ましたね。。。ちなみにブースにいらっしゃった社員の方によるとお値段は、「、、、ま、十分に1本は御用意頂かないと、、、」とのことでした。くー、欲しいけど結構イクなあ、、、 痺れますね。。。 後は、自分は日々の診療で日の丸国産メーカーであるタカギセイコー社の細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)を気に入っていて10年使い続けているのですが、その顕微鏡を設置しているスライディングテーブルに薄型でクールでカッコいい、更に可動域も広がっているというナイスな新型が出ていて、これもかなり欲しいなと思いました。 このように、 学会と言うのは「行くと欲しいものだらけである意味危険な場所」 でもあるのですね。(笑)
2018.06.04
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