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2010.08.09
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(Sicille, Le blason des couleurs en armes, livrees et devises , Germain Rouze et Olivier Arnoullet, Lyon, 1528)
~悠書館、2009年~

 15世紀中頃、紋章官シシルという人物によって執筆され、その後何者かの手によって増補され出版された『色彩の紋章』の全訳です。訳者の伊藤亜紀先生は15-16世紀イタリアの色彩や服飾について、徳井淑子先生は12-15世紀の色彩や服飾について、それぞれ専門にしていらっしゃいます。伊藤先生の著書は読んだことがありませんが、先月末に名古屋大学で行われた西洋中世学会でのご発表を、興味深く拝聴しました(15世紀の文化人、クリスティーヌ・ド・ピザンの自画像とその服の色に関する興味深いご報告でした)。
 徳井先生の著作は、下記の3冊について記事を書いています。
・徳井淑子 『服飾の中世』 勁草書房、1995年
・徳井淑子編訳 『中世衣生活誌 日常風景から想像世界まで』
・徳井淑子 『色で読む中世ヨーロッパ』 講談社選書メチエ、2006年

 本書の構成は次のとおりです。

ーーー
はじめに

『色彩の紋章』第1部
『色彩の紋章』第2部

解説
1.隠れたベストセラー―「紋章指南書」から「色彩象徴論」へ(伊藤亜紀)
2.博物誌の伝統と近代的な感性(徳井淑子)

あとがき


「色彩の紋章」第2部・註
解説1・註
解説2・註

引用・参考文献
ーーー

ミシェル・パストゥロー が多数発表している紋章や色彩に関する議論もとうぜんかかわってくる、興味深い史料です。
「解説1」でも指摘されているとおり、第1部と第2部は大きく性格を変えています。伊藤先生による解説の標題のとおり、第1部は紋章(の色)に関する議論が中心ですが、第2部では紋章色に限らず、いろんなニュアンスの色についても論じられています。
 個人的には、第1部の方を興味深く読みました。紋章色には、金属色である金と銀、そして色彩の赤、青、黒、緑、そして赤紫の2グループがあります。金属色の背景に置くことのできる図柄の色は、金属色以外の色彩なのですが、パストゥローの議論でなじみ深いこの説も、この史料の中に読むことができて、興味深かったです(紋章に焦点をあてた史料を読むのは今回が初めてですし…)。
 また第1部は、先の2グループの合計7色について、それらの象徴性をまとめています。たとえば、それぞれの色が対応する曜日、惑星、美徳、人生の7つの世代などなど…。そして、「わたしは人生の七つの世代を七つの色にたとえて語ったが、これは前例のないことである」(49頁)という著者の言葉も興味深かったです。なお人生の諸時期というテーマについては、以前紹介した事典の項 「人生の諸時期」 が参考になります。

 本書は、史料自体も興味深いのですが、詳しい訳注や、二人の訳者による解説がとてもありがたかったです。史料の翻訳を刊行するのであれば、これくらいの訳注や、その史料の意義を示す解説(論考)が付されていてほしいものですね。

 こちらも興味深い史料でした。

(2010/07/13読了)





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Last updated  2010.08.09 07:17:30
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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