
その「大社造」の特徴は、切り妻・妻入りの構造で、平面では九本の柱が、田の字型に配置された正方形の間取りとなっている。
今回の約20名からなる出雲ツアーには、とある神社の神主が案内人として付き添ってくださり、巡拝するここかしこの神社境内にて、地元ならではのエピソードを交えた奥深い解説を聞くことができた。
なかでも印象に残ったのは、冒頭画像に映る神魂神社での「大社造」にまつわる解説であった。
その解説を要約すると・・・「よく御神座の向きが取り沙汰されますが、出雲では九本柱の中心にある「心御柱(しんのみはしら)」が御神体であり、これに向かって神主は祈っているのです。」・・・という話であった。
その話を聞いて私は・・・そうだったのか…深い話だな・・・と思ったと同時に、上の画像に映る造形が心中に浮かんだのであった。
後日、昼食後の休憩時に、いま一度この「心御柱」が神主を囲んで話題になったとき、私は胸ポケットに携帯していた自作の「綿棒工作キット」を取り出し、神主の目前でこの上の画像の造形を作ってみせた。
☆関連記事・・・ 根源的構造『軸立て』の公開
その出来上がった造形を披露しつつ、「大社造」の田の字型に配置された九本柱との関連性を語り、この造形を支える中心の軸(画像では赤色で強調)が「心御柱」に見立てられるとの解説を試みた。
すると宮司は・・・そのように立体的に説明できると分かりやすいね・・・と言われ、またその場で作った造形を通して共感することができ、とても嬉しかったことを憶えている。

さて上述の「大社造」にも関連するのだが、この上の画像は出雲大社の千家国造家に伝わる「金輪御造営差図」という古代御本殿の平面図を撮影したものである。(島根県立「古代出雲博物館」にて撮影)
参拝する人誰もが目を見張る出雲大社の御本殿だが、現在の御本殿は江戸時代の延享元年(1744年)に立て替えられたものを基盤とし、高さ八丈(約24m)ある。しかし、古伝によると昔は高さ十六丈(約48m)、さらに上古は高さ三十二丈(約96m)もあったとされてきた。
上載の図面に加え解説にもあるように、高い御本殿を支える柱は、三本の巨木を鉄輪で束ねて一本の柱としたという伝承があるのだが、実はこれを証明する驚きの発見こそ、平成12年に出雲大社境内で発掘された「三本の柱」であった。
※関連記事・・・ 三本一組の「御柱」
ちなみに、その後の科学的な調査の結果、この発掘された「三本の柱」は、鎌倉時代の宝治二年(1248年)に再建された際の御柱であろうということになっている。
そこで上掲画像の「古代本殿の設計図」に触発され、出雲の神主の前で作った造形に、「三本の柱」を三本の綿棒を束ねて一柱に見立て、本殿を支える九本の柱として構成したものが、角度を変えて一つの作品を撮影した上下二枚の画像に映る造形だ。
なお、全部で九本の柱のうち、中心の「心御柱」を見立てた軸が区別できるよう、造形の中心軸を金色に着色した。手前味噌だが、なかなか醍醐味のある出来栄えである。
ここで思い出したのは、冒頭でも記した「大社造」の特徴とされる「九本柱」に関して・・・《この「九本柱」という建築様式の原点は「田和山遺跡」です。》・・・という出雲の神主の解説であった。
この弥生時代前期末から中期後半にかけて(紀元前2~1世紀)の遺跡とされる「田和山(たわやま)遺跡」(松江市乃白町)では、その遺跡の山頂部において九本柱の遺構等が発見されており、おそらくこの「九本柱遺構」が「大社造」の原点と考えられるということだ。
実は私自身、この「田和山遺跡」には深い思い入れがある。というのも、長年にわたって何度も「出雲行脚」を続けてきたことで、私の心中に浮き彫りになってきた古代出雲国における【東・西・南・北】の四つの聖地があった。
そしてある時、その【東】と【西】を結ぶ東西線に【南】と【北】を結ぶ南北線を交差することで、【中央】としての「田和山遺跡」が見出せたことから、その計五ヵ所(下に記載)となる聖地を改めて現地探訪すべく、2016年8月中に一泊二日の出雲行脚を敢行したのであった。
【東】… 揖夜神社(松江市出雲町)・【西】… 日御碕神社(出雲市大社町)・【南】… 八雲山(松江市八雲町/須我神社の神体山)・【北】… 加賀の潜戸(松江市島根町/島根半島の景勝地)・【中央】… 田和山遺跡(松江市乃白町)
以下にリンクした八編の記事は、古代出雲国における上記【東・西・南・北・中央】の、五つの聖地を巡った軌跡を連載したものである。
☆関連記事・・・ 出雲行脚の総集編(1)
☆関連記事・・・ 出雲行脚の総集編(2)
☆関連記事・・・ 出雲行脚の総集編(3)
☆関連記事・・・ 出雲行脚の総集編(4)
☆関連記事・・・ 出雲行脚の総集編(5)
☆関連記事・・・ 出雲行脚の総集編(6)
☆関連記事・・・ 出雲行脚の総集編(7)
☆関連記事・・・ 出雲行脚の総集編(8)

PR
サイド自由欄