私訳・源氏物語

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March 11, 2006
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カテゴリ: 雑感
地下鉄の入り口に、ひとりの若い女性が人待ち顔に立っているのを、何度か見かけたことがあります。

いくつくらいでしょうか。流行おくれの赤い服を着ていることが多く、人懐こそうな顔で、誰を待つともなく人の流れを目で追いながら、立っているのです。
まるで誰かが、声をかけてくれるのを待っているかのように。
痩せて寒そうな女性だな、と思いました。

ある日地下鉄のコンコースを足速に歩いていて、ふと、どきりとしました。
人ごみの中で突然、何か強烈なものと、視線があったのです。
赤い服を着て、壁際にしゃがみこんでいる、あの女性でした。
しかもにっこりと、本当ににっこりと、まるでシャクヤクの花のように微笑んでいるのです。
「遅いわね。待ったのよ」そんな感じのする表情をしていました。


あの女性の、無意味で不気味な微笑が、何とも哀れに感じたからです。
あんなにしてまで人恋しいものかと思ったのです。

彼女の行為が、待つ人あってのこととは考えられませんでした。
特定の人を待つ場合、「その人」だけを探しているものですし、関係のない人になど、目を向けたりしないものです。むしろ通行人を見ないように、そしてあまり目立たないようにするのではないでしょうか。
まして「微笑む」なんて、考えられないことです。

どうして雑踏の片隅で、対象のない笑顔をつくるのか私にはわからない・・・。
けれど、その孤独な魂は理解できるような気がしました。
彼女だって、私にはわからない悲しい人生ドラマを生きているのかもしれないのですから。





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最終更新日  March 8, 2017 06:52:14 PM
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