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朱雀院からご寵愛をいただいていたにもかかわらず、女三宮の婿君に選ばれなかったことをとても残念に思い、諦めきれないのは柏木・衛門督(えもんのかみ)でした。彼は結婚には「皇女を」と理想が高く、父・太政大臣の東の対に長く一人住まいしていました。
「三月(やよひ)ばかりの、空うらゝかなる日、六条院」で、柏木衛門督はじめ、若い公達が蹴鞠をしておいででした。
柏木は女三宮がいらっしゃるあたりを横目でちらちらとご覧になります。
蹴鞠で大勢の人が集まっているにもかかわらず、女三宮の女房たちは特に用心もせず、立ち居振る舞いの気配にも、奥ゆかしさが感じられません。その上、御簾からこぼれ出ている衣の端はしや、透いて見える影の色合いなどは「春の手向けの幣袋」かと思われるほど、趣味が悪いのです。御几帳もだらしなく片隅に引きのけてあるままなので、自然と女房たちの様子が近くに見えてしまいます。
作者は身分の高い女三宮がひたすら幼く、彼女をお守りする取り巻きの女房たちもまったく洗練されていず、非常識であることを強調しているようです。