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右の弘徽殿方は、
「かぐや姫が昇ったという天上界は、ほんに下界の人間の及ばぬところですから、
誰にとっても知り難いことでございましょう。
しかし現世での因縁では竹の中から生まれたのですから、
素生の賤しい人のようでございますね。
竹取の翁の家だけは明るく照らしましたけれど、
宮中の畏れ多い御威光には並び立つことがございませんでした。
安倍のみむらじが大金を投じて求めた火鼠の皮衣が、
一瞬のうちに燃えてしまったのもひどくあっけないものですし、
庫持の御子が難題と知って、蓬莱の玉の枝の偽物を作って
わが身に瑕をつけましたので、これもこの物語の失敗となります」
と主張します。
竹取の絵は巨勢の相覧、詞書は紀貫之のものです。
料紙は紙屋紙の裏に唐の薄絹を貼り、赤紫の表紙に紫檀の軸と、普通の装丁なのです。
さて右方は、
「宇津保物語の俊蔭は、激しい波風に溺れて見知らぬ国に漂着したのですが
入唐の目的も果たし、ついには唐の朝廷にも我が国にも、世に類稀な楽才を広め、
後世に名を残しました。
それを思いますと、絵柄も唐土と日本とをうまく取り並べて面白い所が多く、
やはり勝れた趣という点では並ぶものがございません」
と言います。料紙は白い表紙に青い表紙、黄色の玉の軸なのでした。
絵は常則、詞書きは小野道風ですので今めいて華やかで、輝くほどみごとに見えます。
これに対して左方は反論することができず、負けとなってしまいました。