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Aug 18, 2024
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カテゴリ: カテゴリ未分類
今は解散して存在しない日本のオーディオ機器メーカーに「マイクロ精機」と云う会社がありました。

そのマイクロ精機に席を置き、レコードプレーヤーの開発に携わったひとりが、後にステラボックスジャパンと云う会社を興しました。
ステラヴォックス本社はかつてスイスに存在した業務用テープレコーダーの会社ですが、ステラボックスジャパンはステラヴォックスに限らず、スイスの超高級オーディオ製品を輸入販売する代理店だったのですね。
ステラボックスジャパンは現在「ステラ」に社名変更してます。


その創業主は現社長の西川英章で、マイクロ精機以前はコンデンサ型(静電型)ヘッドフォンで有名な高級ヘッドフォンメーカー「スタックス (STAX) 」でヘッドフォンを開発してた生粋の技術屋です。
で、当初は輸入代理業だけしてたのですが、やはり技術屋、ガマンできなくなって自社でオーディオ製品を作ることにしたのです。
そのため、ステラの自社ブランドとしてTechDAS(テクダス) を発足させました。
きょうご紹介するのは、そのTechDASの第一号レコードプレーヤーにして、同社の最高級プレーヤーをご紹介します。

価格、驚かないでくださいね。

1千万円でもまだ足りない...とても趣味で買えるような代物と違います。
愛媛県で標準的な家を建てるときの土地取得費用が平均で1,050万円らしいです。
自社製品の第一号機がこんなとてつもないレコードプレーヤーで、いったい買う人(買える人)がいるのかしら?
ところが少数とは云え、ちゃんと売れてるのですね。
欧米の市場でも、とびきり値段がはるけど、音がいいレコードプレーヤーとしてつとに有名です。
しかし安いレコードプレーヤーだったら1万円前後で買えるのに、1,000万円越えのレコードプレーヤーって、何としても異常ですね。
レコード盤を乗せて回転するプラッターと云う台座に純金でも使ってるのかしら?
いえいえプラッターは重いので、純金なんかで作ったらたわんでしまいます。

このレコードプレーヤーのプラッターはステンレス製です。

一方、レコード盤から音を拾い出すカートリッジの構造は基本的に電磁石です。
レコード盤のわずかな凹凸をカートリッジが感知して、電磁石で電気信号に変え、それをアンプで増幅して音を鳴らしてるワケです。

つまりプラッターもカートリッジも共に磁気を帯びている。
その僅かなプラッターの磁気がカートリッジに影響して、音を歪めてしまうんですね。
そこでAir Force One では、ステンレスから磁気を取り除く特殊な技術を持った企業に頼んで消磁してからプラッターにしているのです。


こっちはもっと高くって1,320万円です。
こうした特殊技術がAir Force One にはゴマンと満載されてるのですが、最大の特徴は外部振動を完全遮断する技術でしょう。
つまりレコードプレーヤーは床と接地しているので、スピーカーの振動や生活振動がレコードプレーヤーに伝わります。
これがレコードプレーヤーの音質を決める最大のカギなんですね。
大抵のレコードプレーヤーはスプリングで振動を軽減したり、安いものだと緩衝材で対策してます。
ところが、これだけでは完璧では無いのです。
なぜならレコードプレーヤーのプラッターはモーターで回転させてます。
このモーターの振動がレコードプレーヤーの最大の敵なんですね。
そこで高級レコードプレーヤーでは、モーターの回転をプラッターに伝えるのに普通ベルトを使うのを、「糸」を使って振動が極力伝わらないよう工夫されてます。
糸を使っても完璧ではありません。
糸を通じて、わずかながらモーターの振動は伝わります。
そこでAir Force One は全く違うアプローチをしてます。

Air Force One はレコードプレーヤー本体の他に、モーターに電気を供給する電源を別ユニットにしてもってます。
これは高級レコードプレーヤーではよく使われる手で、モーターを駆動する電気を家庭用電源そのままでは電圧が微妙に変化したり、ノイズが多いのでその対策として取ってる手法です。
Air Force One は、もうひとつ別ユニットがあります。
それは「エアーポンプ」です。


このエアーポンプで空気を送り出して、プラッターを浮かせてるのです。
ところがプラッターを浮かせると、こんどはプラッターとレコード盤の間に隙間ができてうまく音を拾えません。
そこでエアーポンプでレコード盤をプラッターに吸着して隙間を埋めてるのです。

ちょっと待ってください!
浮遊と吸着って、全く真逆のことしてるぢゃないですか。
そんなことが現実に可能なんでしょうか?
そこがAir Force One のスゴイとこなんですね。

Air Force One のプラッターを支える軸は1本ではなくて、1本の中が何ミクロンと云う精度で二重構造になってるのです。
そして外側の軸で空気を送り出してプラッターを浮かせると同時に、内側の軸は反対に空気を吸い込んでレコード盤を吸着させてるのです。
その二重構造の軸の間に、何十年使っても劣化しないグリスを封じ込めて、軸と軸の回転をスムーズにしてるのです。
何ともスゴイ技術です。
それに加えてレコードプレーヤー本体は物性の異なる2種類のアルミ合金による3層サンドイッチ構造で共振の発生を抑えています。
最下部のベースシャーシとトップシャーシはマグネシウムとの合金なんですね。
レコードプレーヤー本体の重量は合計で43kg もあって、これも音に素晴らしい効果を生み出してます。

とにかくAir Force One は最新で独自技術の集大成みたいなレコードプレーヤーです。
こんなスゴイものを、自社製品第一号で作り上げたステラはあっぱれですね。

それに加えて、レコードプレーヤーのカートリッジは「針」でレコード盤の音溝をトレースして音を拾うワケですが、この針を無くしてLEDと太陽電池の「光」でトレースするカートリッジを開発した会社も日本にあります。
このカートリッジで拾った音が抜群に良くて評判なんですが、これを作れるのも世界中で「DS Audio」と云う日本のメーカー1社のみです。
そこでAir Force One にDS Audio の光カートリッジを載せると、世界最高のレコードプレーヤーが出来上がるのですね。
「ステラ」も「DS Audio」も非常にちいさい会社です。
だけど技術力は世界中が束になってかかっても敵わない、まさに日本の中小企業そのものなんですね。





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Last updated  Aug 18, 2024 05:19:21 AM
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